短編集。   作:ゆ☆

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尽くす彼女 ゆきのん

 

 大学生になって早数年。

 雪ノ下雪乃と交際を始めて数ヶ月。

 

 なにがどうなって付き合い始めたかは大体想像がつくとは思うので省略。

 

 週に何度か一人暮らしを始めた俺のワンルームの安アパートに泊まりにくるお嬢様。

 なんでも、俺の家っていうのがポイント高いらしい。

 俺は雪ノ下の家がいいんだが…。

 あと、ポイント制度を流行らせた小町は後で叱る。

 

☆ ☆ ☆

 

『比企谷くん、今日行かせてもらうわ』

『了解』

 

 と連絡のやりとりをした今日の朝。

 そろそろ来るはずなんだが…。

 迷ってないよね?大丈夫だよね?

 

 外に出ようかと思ったところでガチャっとドアが開いた。

 

「どこに行くの?」

 

「あ、あーっとコンビニ?」

 

「嘘ね。お財布、あそこに置いてあるわよ?」

 

「…お前が迷ってるかと思って迎えに行こうとした」

 

「あら、じゃあその辺で待っていればよかったわ」

 

「お前な…」

 

 こういう茶目っ気が雪ノ下にはある。昔ではあまり見れなかった部分かもしれない。

 

「ご飯は?」

 

「食べた」

 

「もしかしてそれのことを言ってるのかしら」

 

 雪ノ下が指を指す方向にはカップラーメンと菓子パンのゴミ達。

 片付けるの忘れてた…。

 

「はぁ、あなたもう少しちゃんとした食生活をしなさい」

 

「はいゆきのママ!」

 

「ふ、ふざけないの!!」

 

「へいへい。まぁゆっくりしてけよ」

 

 雪ノ下の頬は赤く、外の寒さを物語っている。

 俺が家にいる時は大体コタツ付いてるからまずコタツに案内しよう。

 まぁワンルームだからコタツしかないんだが。

 

「出来合いで悪いのだけれどおでん買ってきたわ」

 

「おぉサンキュ。大根大根…っと」

 

「ふふ、どうぞ食べて」

 

 肘をつき頬に手を当てて微笑む姿。

 うちの彼女天使か何か?

 

「あっそうだ、風呂沸いてんぞ」

 

「じゃあ頂こうかしら」

 

 うちはワンルームだが、ユニットバスが嫌で仕方なく風呂とトイレは別だし風呂はまぁ一般住宅くらいの大きさはある。本当このこだわりだけは捨てれなかった捨てなくてよかった。

 

 雪ノ下が風呂に入ってる間にソシャゲをプレイ。ログインくらいはしなきゃね…。あの子といる時にソシャゲやると怒るから…。

 

「比企谷くん着替え、ないかしら?」

 

 スマホに集中しながら返事だけ返す。あとこれだけだから待ってください。

 

「そこの押入れから適当に取れよ」

 

「…じゃあこれで」

 

「お前それ俺の高校のジャージなんですけど」

 

「懐かしくていいじゃない。…ほらこの名前も」

 

「…お前さ恥ずかしいなら言うなよ。後、恥ずかしさに巻き込むな」

 

「…比企谷雪乃」

 

「お前な…」

 

 比企谷雪乃。その名前を想像したのはもう数回を超えてるぞ俺は。

 だが、まだ学生だし、その、な?

 

「俺も風呂入って来るわ」

 

 いかん。ちょっと1人の空間で落ち着こう。

 …この風呂雪ノ下が入った後なんだよな。

 

「顔真っ赤よ?」

 

「気にするな。ちょっとあれがあれなだけだから」

 

「え、ええ。そこまで言うなら…」

 

 よし寝よう。時計の短針は11の数字を示していることだし!

 

「んじゃ、歯磨いたし寝るか?」

 

「そうね」

 

「…雪ノ下さんや?なんでこんなに詰めてくるのかな?」

 

「これを忘れていたわ」ちゅ

 

「…ばっか、顔真っ赤だぞお前」

 

「あなたも同じよ」

 

 ほんと、恥ずかしいならよせばいいのに。

 でも俺があんまり自分から行けてないから雪ノ下がしてくれるのかもな。

 

 

 雪ノ下は俺に背を向けて寝ている。

 ふむ。なるほど。

 

「きゃ」

 

「…抱き枕ゆきのん」

 

「…はぁ」

 

「いて!抓るなよ」

 

「ちゃんと私に許可を得てからにしなさい」

 

 

 …うちの雪ノ下さんは俺からのアプローチに厳しかったのだった。

 

 


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