短編集。   作:ゆ☆

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相模南という女

文化祭の一件以来クラス中から視線を感じる。

 

視線だけならまだいいが、たまに俺をネタにしていじりあってる話まで聞こえてくる。

 

ボッチによくある自意識過剰だと自分をそう思いこませるのも最近では些か疲れてきている。

 

 

その中でも特に視線を向けてくる相手がいる。

 

 

相模南だ。

 

 

こいつは視線や悪口だけならまだしも直接嫌がらせをしてくる。

 

 

例えば

 

イヤホンを刺して机に伏せて寝たフリをしていると手が引っかかったフリをしてイヤホンを外してきたり(本人は余程嫌なのか顔を真っ赤にして走り去っていった)

 

 

自分の机を覗いてたらくしゃくしゃでなんと書いてあるかもわからない紙が入っていたり(しかし何故か相模南としっかり名前は書いてある)

 

 

俺が嫌いなトマトをわざわざ買ってまで自転車のカゴに入っていたり(教室で嫌いな物の話を戸塚としていたのを聞かれたらしい)

 

 

と方向性がちょっとぶっ飛んでる。

 

 

 

ここで、俺はある仮説を立てた。

 

 

 

もしかしたら相模南という女はアホなのではないかと。

 

 

 

☆☆☆

 

 

ここで俺はある実験をしてみることにした。

 

トマト事件を見るにこいつは俺が嫌なものを送りつけてくるのかもしれない。

 

そこで俺は教室で唯一話してくれる天使、戸塚との会話の中で好きなものをわざと嫌いと言ってみることにした。

 

 

「おはよ、八幡!」

 

 

「おぉ、おはようさん。」

 

 

「なんだか眠そうだね…。朝ご飯はしっかり食べた?嫌いなトマトでもちゃんと食べないとダメだよ?」

 

 

「おう。トマトもしっかり食べるぞ。なんなら三食毎回食べるまである。」

 

今日も視線を感じて、視線の方向に目を向けると相模が俺たちの会話を聞いていた。

 

 

「しかし嫌いと言えばあれだな、最近好みが変わったのか甘い物が少し苦手になってきたな。」

 

 

「へぇそういうこともあるんだね。八幡は甘い物好きってイメージがあるから意外だよ。」

 

 

「あぁ最近ではもう目にするのもウンザリするな。」

 

 

「そこまでなんだ…。帰りになにか甘い物食べに行かない?って誘おうとしたんだけどな…。」

 

 

と戸塚がションボリしてしまった。

 

悪い、戸塚後でちゃんと説明するからね!!

 

 

 

後日、下駄箱にくしゃくしゃの紙に包まれたチョコが入っていた。(ちなみにまた紙に名前が書いてある)

 

 

視線を感じ後ろを振り返ると柱に隠れているつもりなのだろうけど、バレバレな相模がいた。

 

 

ここで俺は一芝居打つことにした。

 

 

「はぁ、甘い物をわざわざ下駄箱に入れられるとはなんて酷いイタズラなんだ。」

 

 

と少々大きめの声で言った。

 

 

その声が聞こえたのか顔赤くしてニヤニヤ笑っている相模がいた。

 

 

笑いたいのはこっちだ。俺が好きな物をわざわざプレゼントしてくれるんだからな。

 

 

 

これはいいぞと、俺はさらに一芝居打つことにした。

 

 

 

ある日由比ヶ浜に話しかけられた。

 

 

「あれ?ヒッキー今日はあの甘〜いコーヒーじゃないんだ。」

 

 

「あぁマッカンか?実はちょっとあの甘さが嫌いになってしまってな。」

 

 

「えー?ヒッキーがあのコーヒー飲まなくなるなんて大丈夫?病気とかじゃない?」

 

 

「違う違う。別になんとなくだなんとなく。ほら、歳を重ねると味覚が変わるのか苦手だったものが平気になったりするだろ?あれの逆だ。」

 

 

「あー!確かにそれあるよねー。あたしもね…」

 

 

と由比ヶ浜が話している時に横をチラッと見たら案の定こちらを見ている相模。

 

 

ちなみにわかっているとは思うがマッカンは毎日飲んでいる。

 

 

由比ヶ浜には後で説明すればいいか。

 

 

 

後日、下校しようと自分の自転車を見たらカゴの中にマッカンが入っていた。

 

少々ウンザリした顔をしてみる。

 

 

そして視界の片隅にまたもやニヤついてる相模。

 

 

 

やはりあいつはアホみたいだ。

 

 

 

 

☆☆☆

 

あたしには密かに好きな人がいる。

 

 

文化祭で自棄になり、やらかしかけた時助けてくれた比企谷だ。

 

 

最初は誤解して友達と悪口を言い合ったりしていたけど葉山君や結衣ちゃんがあいつの悪口を全く言わないことに疑問を覚え、何日か寝る前にあの時の出来事を思い出すようになりぼんやりとだがもしかしかしたらあいつはウチを助けてくれたのかもしれないと思い始めた。

 

 

そんなある日葉山君があいつを思いつめた表情で見ていた。

 

 

何故だろうか、それを見たら思い過ごしだと思っていた答えは確信に変わったのだった。

 

 

そこから恋するのは早かった。

こんなチョロい女じゃなかったのに…。

 

 

 

そんな時にあいつの席の横を通ったら指があいつのイヤホンに引っかかってしまいイヤホンが抜けてしまった。

 

あいつがこっちを見てる恥ずかしさのあまり何もなかったことを装い素通りしたけど。

 

 

せめて、感謝と謝罪を伝えようと緊張して手が震え、力が入りながらも紙に

 

ごめん、そしてありがとう。相模南

 

って書いた紙をあいつの机に入れておいた。

 

あいつはウチの文字が解読出来なかったのかゴミだと思ったらしい。

 

確かにすっごい緊張して紙がクシャってなったけどそれくらい読めし!!

 

 

 

ある日は戸塚君との会話の中であいつがトマトを嫌いなことがわかった。

 

けどトマトは健康にもいいし健康でいて欲しくてトマトをプレゼントしたりもした。

 

あいつは嫌がらせだと思ったみたいだけど…。

 

 

なんかやることが全て裏目に出てしまった感がある…。

 

 

けどウチは学習する女である。

 

 

ある日また戸塚君と話している姿を見かけた。

 

どうやら甘いものが苦手だという話をしているみたいだ。

 

 

しかし、ウチをなめてもらっては困る。

 

前からあいつを見ているこっちとしてはそんなものは嘘だとバレバレなのだ。

 

罪滅ぼしって訳じゃないけど少しでも喜んでもらおうとあいつの下駄箱にチョコを仕込んだ。

 

 

その反応を見ることにしようと思い柱の陰からあいつを覗いてみた。

 

 

「はぁ、甘い物をわざわざ下駄箱に入れられるとはなんて酷いイタズラなんだ。」

 

 

とバレバレの嘘を吐いてる姿が笑えてきてニヤニヤしてしまった。

 

 

 

またある日は結衣ちゃんと話している姿を見た。

 

今度はいつも飲んでいるあの甘いコーヒーが嫌いだと嘘を吐いてるらしい。

 

 

あれに騙されるほど伊達に毎日あいつを見てはいない。

 

 

あの笑える姿をもう一回見ようと思い今度はあいつのチャリのカゴにコーヒーを入れてみた。

 

 

ププッあいつちょっとウンザリした顔を作ってる。

 

 

その姿にまた笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

あいつのことが好きだなんて人には言えない。

 

けど、あいつの姿を見ていたい。

 

 

あいつはまさかあたしがあいつのことを好きだなんてわからないだろう。

 

けど、今はそれでいい。

 

 

今はまだ許されなくていい。

 

 

今はまだこういう一方的に可愛いイタズラを仕掛けて陰から覗くだけでいいのだ。

 

 

その姿がとても可愛いのだから。

 

 

まだ手のひらで転がされてあげる。

 

それでいつか、あいつにこう言うのだ

 

 

全部知ってたよばーか!って。

 

 




pixivでルーキーランキングと男子に人気ランキングどちらも2位を取ってテンションあがってしまい投稿…。

よかったら、評価、コメント等お待ちしています。

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