Devil of a child   作:神崎 真由

7 / 19
第三話 右眼

「おはようございますー」

 

今日も真夜はバイトです。

 

いつも元気に挨拶を返してくれる麻衣さんはいない。

 

それもそのはず、今日は平日で午前10時だからだ。

 

麻衣さんは高校2年生、そしてバイトも2年目。

 

だから彼女は1年上の先輩になるわけで。

 

「おはようございます、真夜さん。今日は、私が事務仕事を教えます」

 

リンさんがリンさんの小部屋(勝手に命名)から出てきて言った。

 

「承知しました」

 

とは言ったものの、まだリンさんとはほとんど話したことないし、気まずく……なるだろうなあ。

 

 

リンさんの説明は分かりやすかった。

 

そして思ったより、業務内容は複雑ではなかった。

 

「これで説明は以上です。何か分からない点があったら聞いてください」

 

「ありがとうございました。あの、お茶入れるので待っててください」

 

「はい」

 

 

 

真夜さんがお茶をいれに給湯室に消えた。

 

リンは溜め息をついた。

 

ナルに「目を光らせておきます」と言った以上、情報収集しないわけに行かない。

 

お茶を一緒に飲むのもそれの一環だ。

 

まどかとも麻衣さんともキャラクターの違う真夜さんにどう接していいか、いまいちわからない。

 

はぁ…………。

 

本日二度目の溜め息をついた。

 

 

 

真夜はできたお茶を運ぶ。

 

「おまたせしました」

 

そう言って私はティーカップを二つ置いた。

 

リンさんが早速飲んでいる、猫舌ではないらしい。

 

「懐かしい味です」

 

「どうやら私のいれるお茶はナルのお兄さんと同じ味らしくて……。リンさんもお兄さんの紅茶を?」

 

「ええ」

 

リンさんの「ええ」で話が途切れてしまう。

 

気まずい……。

 

「リンさんの右眼」

 

「右眼」にリンさんが固まる。

 

触れちゃいけない話題だったのかも。

 

でも今更引けないし。

 

「すごく綺麗です、綺麗な青色」

 

不思議な感じのする、澄んだ色。

 

「…………」

 

何故分かるって?

 

私は透視ができるから。

 

透視しながら町を歩けば、歩く人体模型達in渋谷になるわけで。

 

たまーに、癌とか見つけちゃう、告知はできないけど。

 

「そう言われたのは初めてです」

 

よかった、それほど気を害したわけじゃなさそう。

 

「お茶ありがとうございました」

 

そう言ってリンさんはあの小部屋に戻った。

 

 

 

 

やはり彼女は本物の能力者なのかもしれない。

 

後ろ手に扉を閉めて、立ち尽くしてリンはそう思った。

 

私の前髪から瞳が透けるということはないだろう。

 

しっかり目を覆うように隠しているのだから。

 

綺麗です…………か。

 

こうやって人に良い意味で驚かされることがあるから、まだ人を嫌いになりきれないのかもしれない。




視点変更が苦手。

文章書くのは難しい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告