「おはようございますー」
今日も真夜はバイトです。
いつも元気に挨拶を返してくれる麻衣さんはいない。
それもそのはず、今日は平日で午前10時だからだ。
麻衣さんは高校2年生、そしてバイトも2年目。
だから彼女は1年上の先輩になるわけで。
「おはようございます、真夜さん。今日は、私が事務仕事を教えます」
リンさんがリンさんの小部屋(勝手に命名)から出てきて言った。
「承知しました」
とは言ったものの、まだリンさんとはほとんど話したことないし、気まずく……なるだろうなあ。
リンさんの説明は分かりやすかった。
そして思ったより、業務内容は複雑ではなかった。
「これで説明は以上です。何か分からない点があったら聞いてください」
「ありがとうございました。あの、お茶入れるので待っててください」
「はい」
真夜さんがお茶をいれに給湯室に消えた。
リンは溜め息をついた。
ナルに「目を光らせておきます」と言った以上、情報収集しないわけに行かない。
お茶を一緒に飲むのもそれの一環だ。
まどかとも麻衣さんともキャラクターの違う真夜さんにどう接していいか、いまいちわからない。
はぁ…………。
本日二度目の溜め息をついた。
真夜はできたお茶を運ぶ。
「おまたせしました」
そう言って私はティーカップを二つ置いた。
リンさんが早速飲んでいる、猫舌ではないらしい。
「懐かしい味です」
「どうやら私のいれるお茶はナルのお兄さんと同じ味らしくて……。リンさんもお兄さんの紅茶を?」
「ええ」
リンさんの「ええ」で話が途切れてしまう。
気まずい……。
「リンさんの右眼」
「右眼」にリンさんが固まる。
触れちゃいけない話題だったのかも。
でも今更引けないし。
「すごく綺麗です、綺麗な青色」
不思議な感じのする、澄んだ色。
「…………」
何故分かるって?
私は透視ができるから。
透視しながら町を歩けば、歩く人体模型達in渋谷になるわけで。
たまーに、癌とか見つけちゃう、告知はできないけど。
「そう言われたのは初めてです」
よかった、それほど気を害したわけじゃなさそう。
「お茶ありがとうございました」
そう言ってリンさんはあの小部屋に戻った。
やはり彼女は本物の能力者なのかもしれない。
後ろ手に扉を閉めて、立ち尽くしてリンはそう思った。
私の前髪から瞳が透けるということはないだろう。
しっかり目を覆うように隠しているのだから。
綺麗です…………か。
こうやって人に良い意味で驚かされることがあるから、まだ人を嫌いになりきれないのかもしれない。
視点変更が苦手。
文章書くのは難しい。