Devil of a child   作:神崎 真由

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第一話 ハジマリ

「私、悪魔の子なんです」

 

そう突然言われ、あるものは戸惑い、あるものは意味がわからないという顔をした。

 

彼女は初対面の彼らに自分の過去─痛みの伴った記憶─を話した。

 

真夜は幼い頃よくポルターガイストをおこした。

 

皿を割ってしまうのなんて日常茶飯事。

 

遊んでいて、壁に人形をめり込ませたこともあった。

 

それに加えて、見えるはずのないものが見えた。

 

何もないところへ向って話している彼女を両親は気味悪がった。

 

彼女が原因の夫婦喧嘩が多かった。

 

母は彼女に辛く当たった。

 

殴られたことだってあった。

 

父はまるで彼女がいないかのように振舞った。

 

彼女が中学三年生の12月に母は妊娠した。

 

お腹の子への影響を気にして、母は彼女を避けた。

 

彼女もそれを理解していたから近づかないようにしていた。

 

母も父もいつだって彼女を「悪魔の子」と言って忌々しく思い、畏怖していたことを彼女は知っていた。

 

年が明けた2月に、母に話があると言われ行くと……

 

「『お腹の子と一から家族をやり直したいから、中学卒業したら一人で暮らして。お金は出すから』そう言われたんです」

 

なんと声をかけていいかわからない彼らの中でナルだけが「今まで大変でしたね」と声をかけた。

 

声をかけられるのはきっとナルしかなかった。

 

同じく血の繋がった親に愛されなかった痛みを知る彼にしか。

 

ナルの言葉に、彼女は微笑んだ。

 

色々なものを諦めてきた、そんな悲しい微笑だった。

 

「本当に、ごめんなさい」

 

麻衣が勢いよく深く頭を下げた。

 

「俺からも。うちの麻衣が悪かった」

 

同じように滝川も頭を下げた。

 

綾子が、あんたはいつから父親になったのよと突っ込みを入れながら、「この子悪気はないの、許してやって」と言った。

 

「そ、そんな、謝らないでください。その、気にしてません、大丈夫です!私、こう見えてタフなんです」

 

そう言った彼女はテヘッと笑った。

 

笑顔には16歳相応の幼さが残っていて、滝川はさらに心が痛くなった。

 

「真夜さん~~」

 

彼女は泣いた麻衣に慌てた。

 

「え、えと、取り敢えずハンカチどうぞ。そのこういう時どうしたらいいかわからなくて…………」

 

おろおろしている彼女を見てナルが麻衣に言う。

 

「さっさと泣きやめ。話が前に進まない」

 

「はいよー。すいませんでした」

 

ナルをギロリと睨んだ麻衣の目は涙が止まっていた。

 

「あなたを採用します、明日10時にここに来てください」

 

「ありがとうございます」

 

こうしてSPRに新しいメンバーが1人増えたのだった。


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