「私、悪魔の子なんです」
そう突然言われ、あるものは戸惑い、あるものは意味がわからないという顔をした。
彼女は初対面の彼らに自分の過去─痛みの伴った記憶─を話した。
真夜は幼い頃よくポルターガイストをおこした。
皿を割ってしまうのなんて日常茶飯事。
遊んでいて、壁に人形をめり込ませたこともあった。
それに加えて、見えるはずのないものが見えた。
何もないところへ向って話している彼女を両親は気味悪がった。
彼女が原因の夫婦喧嘩が多かった。
母は彼女に辛く当たった。
殴られたことだってあった。
父はまるで彼女がいないかのように振舞った。
彼女が中学三年生の12月に母は妊娠した。
お腹の子への影響を気にして、母は彼女を避けた。
彼女もそれを理解していたから近づかないようにしていた。
母も父もいつだって彼女を「悪魔の子」と言って忌々しく思い、畏怖していたことを彼女は知っていた。
年が明けた2月に、母に話があると言われ行くと……
「『お腹の子と一から家族をやり直したいから、中学卒業したら一人で暮らして。お金は出すから』そう言われたんです」
なんと声をかけていいかわからない彼らの中でナルだけが「今まで大変でしたね」と声をかけた。
声をかけられるのはきっとナルしかなかった。
同じく血の繋がった親に愛されなかった痛みを知る彼にしか。
ナルの言葉に、彼女は微笑んだ。
色々なものを諦めてきた、そんな悲しい微笑だった。
「本当に、ごめんなさい」
麻衣が勢いよく深く頭を下げた。
「俺からも。うちの麻衣が悪かった」
同じように滝川も頭を下げた。
綾子が、あんたはいつから父親になったのよと突っ込みを入れながら、「この子悪気はないの、許してやって」と言った。
「そ、そんな、謝らないでください。その、気にしてません、大丈夫です!私、こう見えてタフなんです」
そう言った彼女はテヘッと笑った。
笑顔には16歳相応の幼さが残っていて、滝川はさらに心が痛くなった。
「真夜さん~~」
彼女は泣いた麻衣に慌てた。
「え、えと、取り敢えずハンカチどうぞ。そのこういう時どうしたらいいかわからなくて…………」
おろおろしている彼女を見てナルが麻衣に言う。
「さっさと泣きやめ。話が前に進まない」
「はいよー。すいませんでした」
ナルをギロリと睨んだ麻衣の目は涙が止まっていた。
「あなたを採用します、明日10時にここに来てください」
「ありがとうございます」
こうしてSPRに新しいメンバーが1人増えたのだった。