Devil of a child   作:神崎 真由

16 / 19
第八話 束の間のバカンスと融和

7月。

 

本格的な夏が始まった。

 

夏風邪をひき真夜は数日高熱で寝込んでいた。

 

回復して、真夜はバイトに行ったが誰もいない。

 

不審に思い、麻衣に電話をかけたところ、「今、吉見宅の調査でSPRは出払ってるの。人手は足りているから自宅待機しといて」とのこと。

 

**********************

 

私、真夜はせっかくの休みなら買い物をしようと思い街に出た。

 

少しメイクをしたら、もう高校生には見えない。

 

夏のワンピース数着と、夏調査用の通気性と伸縮性を備えた紺のワイシャツを買った。

 

なぜ、ワンピースかって?

 

すばり、着るのがめんどくさくないから。

 

午前中で買い物を終え、午後は数学の勉強。

 

「sinθ......cosθ......」

 

角度をπラジアンで表すのは、逆にめんどくさくしているように感じるのは私だけ....?

 

 

そんな風に数日を過ごし、今日は私は図書館にいる。

 

平日の図書館は空いていて非常に快適だと思う。

 

今、サスペンス物を読んでいる。

 

読みながら、どうしたらこの被害者は殺されずに済んだかを考えるのが面白い。

 

一見完全犯罪に見える事件を、刑事なり探偵なりが謎解きするのは私にとってはそこまで重要じゃない。

 

謎解きの中の興味深い情報を頭に止めておく程度だ。

 

私は刑事にも完全犯罪の犯罪者になる気もない。

 

だったら、殺されないようにするにはどうすればいいか、それを考えるのが一番生産的だと思う。

 

 

今日読んだ本は、ソコソコかな。

 

ふと見たら、携帯のラントがチカチカとしている。

 

確認したら、留守電が入っていた。

 

ナルが倒れたから病院に来て欲しいという内容だった。

 

急いで図書館から出て、はっとして自分の今日の格好を確認する。

 

ポニーテール、無地の紺のワンピース、黒のパンプスだった。

 

スーツじゃないけど、地味だしいけるだろう、きっと。

 

私は病院に向かった。

 

「ねえねえ、僕らと遊ばない?」

 

明るい茶髪の男性二人組に囲まれた。

 

片方は自転車に乗っていた。

 

こういう時は、はっきりいうのが良いだろう。

 

「ごめんなさい、知り合いが病院に運ばれて、今から行かなきゃいけないので」

 

男性らが顔を見合わせる。

 

自転車に乗っている方が口を開く。

 

「それって、マジ?」

 

「本当です。だから、急いでるんです」

 

自転車に乗っている方が、少し考えた後、ニカッと笑う。

 

「よし、分かった。後ろ乗りな」

 

「え、でも」

 

歩きの方が騒ぐ。

 

「お、俺は!?」

 

「歩いてでも帰ってろ」

 

自転車に乗っている方が、歩きの方の男性をバッサリ切り捨てる。

 

肩を落として、彼はトボトボ歩いて去っていった。

 

迷惑をかけているんじゃないか、私は不安になった。

 

「でも、悪いです......」

 

「可愛い子ちゃんと二人乗りなんて男の夢叶えられるなら、どこまでも走るからさ、ほら」

 

結局乗せてもらうことになった。

 

「俺、来夢。君は?」

 

「真夜です」

 

来夢さんは、ニカッと笑う。

 

「真夜ちゃんね、ヨロシク☆」

 

来夢さんは、見た目もキラキラしていたが名前もキラキラだった。

 

数十分後病院に到着した。

 

「本当にありがとうございました」

 

本当にありがったかったので、私は心を込めてお礼を言った。

 

「いいよ、早く行ってあげな」

 

自転車の彼に一礼して、私は走った。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告