IS-Lost Boy-   作:reizen

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新年、明けましておめでとうございます。今年も解釈が独自過ぎて付いて行けないかもしれませんが、よろしくお願いします。


……暇さえあれば書いてました(笑)


ep.67 変わる男と動く何か

 海上で爆発が起こる。一夏の姿をした何かが吹き飛ばされ、氷推を突きつけられた。

 

「さて、お前の目的を聞かせてもらおうか?」

 

 透は勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「………誰が教え―――いってぇえええええ?!」

「すまない。運命が滑った」

「運命が滑ったってなんだよ!? 意味わかんねえよ!!」

 

 透は突っ込まれて笑うが、さらに氷推を展開する。

 

「で、話すのか? 死ぬのか? どっちだ?」

「話すから! ……俺がここに来たのは、織斑一夏から異変を感じ―――待て。引くな。俺はそういう趣味じゃねえ!!」

 

 全力で否定する一夏の姿をした何か―――スライムだが、透はため息を吐いて言った。

 

「まぁ、お前が男を掘りたい理由はこの際置いておくが」

「だからその気はねえと言ってるだろうが!!」

「高がその程度で俺を蹴り飛ばしたとは、良い度胸だと思わないか?」

「いや、あれは………そうした方がインパクトがあるというか……」

「確かにあったな。おかげ生徒は俺が切れて前のように校舎を吹き飛ばすと思ってほとんどが逃亡したからな」

「校舎吹っ飛ばすのかよ……」

「案外簡単なことだ。それに、本気を出したら日本沈没なんて余裕でできる」

 

 これでもまだ出力を抑えている方だ―――そう宣言する透に対してスライムは戦慄する。

 

「まぁ、これに懲りたらとっとと帰れ」

「……見逃してくれるのか?」

「織斑一夏に憑依することを諦めたらな。あのリア充に憑依してセックス三昧の生活を送りたいという夢は同じ男として応援しなくもないが、たぶんもう無理だろうし」

「……時雨智久、か?」

「そうだな。たぶんアイツはもっと強くなる。というか、なってもらわなくちゃ困る」

 

 ―――俺がな

 

 ドヤ顔をしながら言った透に、スライムは逃げだそうとした。

 

『―――あー、聞こえます~』

 

 透が持っていた通信機から声が聞こえるまでは。

 

「瞬か。間違って殺しちまったか?」

『というか殺されかけましたよ。って言うか本当っスか? 織斑一夏が暴走してIS学園襲撃してるって』

「たぶん本当だろうな」

 

 それを仕向けたのが誰かを悟った透は、迫ってくるスライムを蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発が起こる。

 IS学園の施設の一部が破壊され、ISの絶対防御が無事かすら怪しい一撃を見舞った智久は着地するとすぐに虚のところに移動して抱きしめた。

 

「大丈夫ですか、虚さん」

「………ええ。それよりも織斑先生は………」

「こっちは処置は終わったけど、すぐに手術しないとマズいわね。出血が酷い」

 

 智久は何かを感じ取り、虚から離れて立ち上がる。

 

「楯無さん。織斑先生と虚さんをお願いします」

「え?」

「おそらくこれからの戦いは僕以外じゃ相手にならないので」

 

 爆発地点の煙が晴れる。そこには禍々しい気を放っている一夏がおり、智久を睨んでいた。両目は白目を剥いており、その容貌はまるで鬼のそれだった。

 

「智久君……」

「大丈夫です。所詮彼は紛い物。負ける気はしませんし………こういう時くらい、()に頼ってください」

「………わかったわ」

 

 虚はボロボロになったラファール・リヴァイヴを展開して動けると意思表示し、楯無は血だらけの千冬を抱えて離脱。その動きを見せたと同時に一夏は接近するが、智久が防いだ。

 

「君の相手は僕だ」

 

 砂鉄の槍を瞬時に生み出した智久は一夏の攻撃を受け止める。一夏は黒いブレードを握る右手を槍から離して智久の首を狙ったが、智久はすぐに一夏を突き飛ばして距離を取る。

 

「クソッ」

 

 悪態を吐く一夏を無視して智久は砂鉄の槍を地面に突き立てた。

 

「固有結界………展開。顕現せよ、如何なる撃を通さぬ世界―――《無制限の闘技場(アンリミテッド・コロッセオ)》!!」

 

 智久を中心に一夏を呑み込んでフィールドが展開される。

 

 

 そこは、中世のコロシアムだった。

 とはいえ観客席というものは存在しておらず、2人を中心に徐々に広がっていく。

 

「何だ……ここは………」

「ここは僕が作り出した固有結界というものだよ。大丈夫。ここはすべてにおいて平等だから」

 

 すると急にフィールド内に岩石が降り注ぐ。一夏も智久も回避していく。

 

「妨害!?」

「悪いけどこればかりは僕にも予想できないかな? 僕もこの奥義を使ったのは初めてだから―――力、抑えているでしょ?」

 

 智久から放たれるオーラが荒々しくなり、その場から消えて一夏を蹴り飛ばした。

 一夏は咄嗟に2本のブレードで受け止めるが、耐えきれずに消し飛んだ。

 

「何ッ!?」

「そうか。君はそういう方向の知識が足りていないんだった。忘れていたよ」

 

 着地した智久はまるで蛆虫を見るような目で一夏を見た。

 

「―――やはり君は人だよ、織斑一夏君」

 

 智久は落ちてくる岩石を渡り昇っていく。そして一夏に触れると一夏の身体から棘のような真紅の針―――もとい、槍が無数に飛び出した。

 

「君は所詮、「人」でしかない。「人」は特殊な事をされない限り「人」を超えられない。だけど、僕はもうその枠を超えた。生まれながらにして存在は不平等だからね。それは仕方ないことだよ」

 

 まるで大人が子どもに語り聞かせるように優しく話す智久。

 

「だから、もう君は絶対に僕に勝てない。君の敗因は圧倒的に君とその周囲が無能しかいなかったことだ。全く。一体何を考えて、いつまでも君みたいな無能が優れていると思っているのか。織斑千冬ですら、僕に一度殺されかけているというのに」

 

 智久は電気によって槍を形成し、それを一夏に突き立てた。

 

「あッ!? ガッ?!」

「君が他人を守りたいと願うのは勝手だけど、それはつまり相手の幸せを踏みにじるのと一緒なんだよ。中途半端な覚悟で僕の前に立つ―――それがどれだけ馬鹿らしいことか。まぁ、要はね―――他人を殺す勇気もない人が、戦うな」

 

 次々と電気の槍が飛び出し、それが一夏の全身に電気を発する。悶え苦しむ一夏に智久は無慈悲に言った。

 

「さようなら、永遠の無能―――君は無知すぎて弱すぎた。恨むなら君の生まれた環境を恨め。与えられることでしか強くなれないゴミクズ野郎」

 

 全身が焦がされ、動かなくなった一夏。それによって結界そのものが一夏を敗北者として結界を解除した。

 

 

 

 

 

 一夏の敗北によって事件は終わった。

 一夏はこれまでの功績を考慮、また目を覚ました時の本人の認識の差異から機体の暴走によるものとされ、1週間の謹慎となった。

 

「それで責任者として俺に対して賠償の請求、そんなところか」

「そうだ。では、早速提出してもらおうか?」

 

 IS委員会の役員が透の家に来てそう述べるが、透は却下した。

 

「お断りだ。それに俺は最初から言っておいたはずだろ? 生徒の暴走に関しちゃ責任は取らないって」

「だが今回は貴様個人の研究所にいての暴走だ。ならば貴様が何かしたに違いない」

「なんとまぁ、むちゃくちゃだな」

 

 ため息を吐く透は、ビットを飛ばして相手の携帯電話の着信履歴を調べた。

 

「おい、何をする!? プライバシーの侵害だぞ!!」

「やっぱり。これは飛ばしか」

「あなた、あまりオイタをしない方が良いわよ。痛い目を見たくなければね」

 

 秘書と思われる女性が透にそう言う。が、それがいけなかった。

 

「誰だよ豚なんか家に入れた奴は。ここは解体所じゃないんだぞ」

「なっ!? 誰が豚ですって!?」

「この豚、人語を話すのか」

 

 驚いた風にする透。そんな透に突っかかろうとした女性はレアとアクアに捕まってどこかに連れ去られた。

 

「おい貴様ら! 透! 今すぐ彼女を返せ!」

「あ?」

 

 透は相手の顔を足で床に踏みつける。

 

「相変わらず、朝間の坊っちゃんは理解が遅いでちゅねー」

 

 今ので気絶したらしい男を智久は蹴り上げ、壁に叩きつける。

 

「がはっ! ……お、俺は……」

「やっほー。さて―――何本折れば喋る?」

 

 それから透は従兄の骨を折り続け、さらに秘書が徐々に変えられていく姿を見せて尋問していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ってことがあったんだ』

「夜塚さんは悪魔か何かですか」

『まぁ、否定はしねえよ? 結局その女は俺が生み出した触手で徹底的に犯したし、2人をあえて裸で奴らの家の玄関前に突き立ててやって戦争になりそうだけど』

『でも中々妊娠しなかったねー』

『じゃあ、エロ本ネタの「触手に種を入れられた女性は孕むか」という証明は「孕まない」で良いですね。次は弱った暴牛の相手でもしてもらいましょうか』

 

 レアさんはちょっとズレがあった気がしたけど、アクアさんまでとは思わなかった。

 無邪気な幼女たちの所業に慄いていると、透さんは話を続ける。

 

『そんなわけだから、そっちの生徒と教師は返却済みだ。こっちの戦争が終わったらまた改めて俺と戦ってくれ。……まぁ、1日で終わるけど』

「わかりました」

 

 僕は一緒にいる織斑先生の変わりにそう答える。何故なら―――

 

「……………」

 

 織斑先生は震えているからだ。

 

「夜塚透、か。戦ったらいろいろと強敵になりそうだな」

「大丈夫ですよ。たぶん僕らが余計なことをしなければ問題ありませんから。それに―――今回の主犯はすでに捕まえていますし」

 

 僕らの後ろで特殊な電磁縄で捕縛されているフォーリアを見ると、フォーリアは震え始めた。

 

「ふっ。私も焼きが回ったものね。まさかあんな簡単に捕まるなんて」

「……どうしたんだ?」

「闇鋼を壊そうとしたらでてきたので捕まえて縛りました」

「………鬼かお前は」

 

 いやぁ、容赦なく相手を潰す向こうに比べたら可愛いものだろう。

 

「それで、こいつの処分はどうします? 僕としてはこのままIS委員会に売ろうかなって思っているんですが」

「ごめんなさい! もうしないから本気で許して!!」

 

 どうやらその提案だけで折れたらしい。

 

「だってムカつくじゃない。ただ顔が良いのと篠ノ之束の知り合いってだけで持ち上げられてさ。智久だって頑張っているのに評価されないんだよ? それって嫌じゃない?」

「やだなぁ。そんなことどうでもいいよ」

 

 僕は満面な笑みを浮かべてはっきり言った。

 

「―――そもそも、轡木夫婦以外で僕のことをちゃんと理解できるほどの強さを持っている人っていたっけ?」

 

 世界にそんなことがわかる人が何人いるんだって話である。

 実際のところ、今の僕だと舞崎君と夜塚さん、後は姉さんぐらいが相手になる。というよりも、その人たちじゃなければ僕に勝てないはずだ。轡木さんは、あの人の場合は異次元だしね。

 

「僕の評価がおかしいとかどうでもいいよ。僕は僕だ。ISでも生身でも、世界の誰かが吠えたところで僕が強いことに変わりない。だから、余計なことをしなくてもいいよ。何だったら、今からどこかの軍事施設を生身で強襲しようか?」

「本気か?」

 

 織斑先生が聞いてくる。今ここで「Yes」と答えたら戦うことになりそうだけど、僕はあえてそう答えた。

 

「ええ。僕の強さを証明できるなら」

 

 正直なところ、僕は今すぐにでもこの学園を捨てて姉さんを倒しに行きたい。だけどその間に他のISが攻め込んできたら厄介なことになるのは明白だ.

 

「時雨」

「わかっていますよ。今はここでの生活もある程度楽しいですし、喧嘩を売られた時のみ対処します」

 

 そう答えたけど、僕はあまり乗り気じゃない。

 今はともかく、この力を試したかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めて! その子に触らないで!!」

 

 とある場所。そこで長い金髪の女性が叫ぶ。

 だがISを装備した者はコアを回収し、容赦なく離脱した。

 

「返して……あの子を……」

「―――諦めろよ」

 

 追おうとする金髪の女性を一人の男が蹴り飛ばす。

 

「アンタのその心意気はまぁ認めてやらなくもないけどさ。運が悪かったと思いな」

「そんな。あの子はただ飛びたかっただけ―――」

「悪いな。どうでもいいんだ、そう言うのは」

 

 男は女性を蹴り飛ばして気絶させる。するとタイミングが良いのか兵士が現れ、IS操縦者がいるにも関わらず引き金を引いた。

 しかし男はすべて回避して離脱した。

 

「逃がすな! 追え!!」

 

 しかしそこで彼らはありえないものを見た。

 男は海上を平然と走り、離脱していくISに追いついて飛び乗ったのだ。

 

「お待たせ」

 

 IS操縦者は無視してスピード上げる。基地に戻っても男が気絶することはなく、平然とシャワーを浴びていた。

 

 それから彼らは上司であるスコール・ミューゼルに報告に行く。

 

「二人ともご苦労様。でもね―――誰が先に休憩して良いって言った?」

 

 スコールは殺気を出しつつそう言うが男は平然と答える。

 

「だって報告が面倒だったから」

「そう」

 

 そこから一瞬だった。スコールはISを展開して男を抑えつけにかかった。男は抵抗もせずに抑えつけられる。

 

「どういうつもりかしら?」

「さぁ。それとも反撃してもらいたい…のか?」

 

 スコールはすぐさま飛び退く。男は立ち上がり、軽く首を回した。

 

「まぁ、この業界じゃあアンタは有名だし、その有名人にこうして警戒してくれるってのは心から自信にも繋がるが……だが邪魔だな」

 

 男は飛び出し、スコールに踵を落とす。IS装甲にヒビが入ったのを確認した男は満足そうな笑みを浮かべるが、男と一緒にいたエムも、怒られるかとニヤニヤと観賞していたオータムも唖然とした。

 

「忘れちゃいないか? 俺は轟霞個人と契約はしているがアンタらとはそれをしちゃいない。それに軍事施設に大した装備もなく突っ込だらそりゃ休憩も欲しいっての。それとも何? アンタの命令を無視してあの施設を消し飛ばした方が良かったか?」

 

 殺気がさらに増幅する。スコールは制止すると謝った。

 

「ごめんなさい。少々やりすぎたわ」

「ま、こっちも先に連絡しなかったのも悪いけどな。俺としてはアンタらにも得があるように動いたつもりだったが」

「……言われれば確かに我々にとってもプラスにはなるな」

 

 エムも同意するように言うと、男は勝ったと言わんばかりにドヤ顔をした。

 

「そういうことだ。じゃあな」

 

 3人の女を残してその男は部屋を出る。するとずっと待っていたのか、幼女が男に抱きついた。

 

「しっずるー! もう待ちくたびれたぁ~」

「はいはい。これからは解放されるから大丈夫だぞ」

「ほんと!? やったー!」

 

 そんな会話が彼女らにも聞こえており、だからこそスコールは冷や汗を流す。そして―――

 

「オータム、あの件のことだけど……」

「………わかってる」

 

 それは二人だけの秘密。そしてそれは後々に大きな分岐点となるのだが、それはまだ誰も知らない。


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