IS-Lost Boy-   作:reizen

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ep.64 夜塚十滅士

 気を失った智久を2人の少女が受け止めた。

 

「お前たちは……」

「今、ここで話すのはマズいかと思いますよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「………………」

 

 赤髪ロングで小柄の少女がラウラを睨んでそう言った。ラウラもそれに同意したのか黙る。

 

「レア、アクア、ご苦労」

「これくらいはお安い御用ですー」

「当たり前です。私たちとて伊達に訓練をしていません」

「………あの、もしかしてこの人たちも……ですか?」

 

 シャルロットがそう質問すると、透は「まさか」と答える。

 

「お前たちにはまだ早いよ。ラウラ・ボーデヴィッヒですら単独で相手をするのは難しい」

「ですです」

「自信を無くしたいならどうぞ。遠慮なく殺しますので」

 

 2人は軽くそう言った後、智久を校舎内に運んでいく。簪と本音は追いかけようとするが、透がそれを遮った。

 

「安心しろ。俺は天才とはいえ他人の命を軽視するつもりはない。それに余計なことをしてあの会社を敵に回したくはないのでな」

 

 今、北条家は更識家と同盟―――いや、合併をしようとしている。その最中に智久を解剖したとなれば大問題となるだろう。もっとも透はISを動かそうと思ったことが1度もないが。

 

「では武器を選んでくれ。同時に、ISは提出してもらうがな」

 

 当然だが、専用機持ちは驚きを露わにした。

 

「そ、そんなことできないわよ!?」

「そうか」

 

 透は姿を消す。しばらくすると透は姿を現し、彼の手には専用機持ちたちから奪ったISがあった。

 

「なっ!?」

「アンタねぇ………」

「当然の措置だ。特に篠ノ之箒と凰鈴音は日頃からISを使用しての制裁していることがあるという報告もある。そんな奴らに未だにISを持たせている事自体理解できないんだがな」

「貴様……覚悟はできているんだろうな……」

 

 箒は睨むと、後ろからガタイの良い男子生徒が声をかけた。

 

「あの……あの人に喧嘩を売るのは止めた方が良いぞ?」

「何?」

「そうね。あの人に喧嘩を売るのは自殺行為だわ。死ぬわよ」

 

 近くにいた女生徒もそう言った。ただし、怯えながら。

 

「何だ? あの男は一体何がすごいんだ?」

「わからないならなおさら、大人しく修行をした方が良い。もっとも、数年程度で勝てるレベルになるかどうか……」

「噂じゃ、実家の私兵を家族諸共壊滅させたって噂もあるんだから………」

「ふん。どうせ手を抜かれたんだろう」

「悪いが、あそこは人情なんてかけらもないところだ。家族だから手を抜くなんて生温いことはまずされない。何だったら俺と立ち会うなら真剣を使っても構わんぞ? 1年程度眠れば身体も回復するだろうよ」

 

 そんな会話がされている間、簪はISである指輪を外して棒を取った。

 

「か、かんちゃん……良いの?」

「北条カンパニーの人間なら……今の私はそこの所属だし」

「物分かりが良くて何よりだ。安心しろ。お前ら2人がやられたところで誰もお前らには手を出さねえよ。………まぁ」

 

 透はふと、視線を別の方に向けた。

 

「あのロリ……絶対に犯す……」

「男は引っ込んでなさい! ここは女同士、くんずほぐれつが常識よ!!」

「隣の大人しそうな子も中々……じゅるり」

「わかった。あの子たちの前にあなたを殺すわ。すべてのロリは私のペットよ」

 

「一部セーブが利かない奴らがいるから、いざという時は派遣するから」

「………頑張る」

 

 色々と不安が残る特訓はようやく開始された―――当時に、

 

「小川ひろ子、戦闘不能!」

「っしゃ!! 犯せ犯せ!!」

 

 教員の1人が脱落した。

 

「なっ!? もう?!」

「当たり前だ。仮にもここは黒葉高校。普段勉強ができないこいつらがどれだけストレスを貯め込んでいると思っている? その前に獲物が出てきたんだ。狩らない方がおかしい。だがな、俺は「戦え」とは言ったが、「共闘するな」とは言った覚えはないぞ」

 

 その言葉が合図だったのか、黒葉の生徒たちが専用機持ちたちを分断しにかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼を覚ますと、その部屋はとても明るかった。

 

「あ、起きましたね」

 

 雫ちゃんがメイド服姿で僕の近くに来る。雫ちゃん用の特注なのか、胸の上部が見えるデザインの腕に太ももだけ晒すという、見せる部分を理解しているデザインとなっている。

 

「あれ? 学校は?」

「………ああ。まぁ、私はいつも幸那とトップ争いしていたので数日休んだ程度で問題ないんですよ」

「そういう問題!?」

 

 確か私立高校って場合によっちゃ退学があるんだっけ? まぁ、本人がそう言うなら問題はないと思うけど……。

 

「そうだ! 今何時? 確か特訓って―――」

「特訓は既に終わりましたわ」

 

 それを聞いた僕はすぐに部屋を飛び出すと、簪さんと本音さんが近くで―――男子生徒に囲まれていた。

 僕はすぐに体内の筋肉を刺激させて加速して、その囲いを破壊する。

 

「………ねぇ。死んでくれる?」

 

 とりあえず全員八つ裂きコースで構わないか。そう思った時、上から思いっきり殴られた。

 

「落ち着け。お前の嫁どもはもちろん、結局誰もセックスしてねぇよ」

「あなたはどうしてそういうことを平然と言えるんですか!?」

 

 すぐに後ろから攻撃した夜塚さんに突っ込む。……って言うかこの人、今サラッと僕の背後を取ったよね……。

 

「………俺もまぁ、そういう経験はあるというか………大体は救った奴に迫られていると言うか……」

「織斑君並のプレイボーイ!?」

「誰があんな雑魚だ」

 

 それに関しては否定しないけど……。

 

「それにしても効果はてきめんだったようだな。だいぶ馴染んでいるようだが」

「え? あ………そう言えば……」

 

 まぁ、これまで半日近く休むってことはあまりなかったからさ。

 

「そういえば、他の人たちは……」

「全員そこの部屋だ」

 

 僕は遠慮なくドアを開ける。するとボロボロになった女性陣が呆然としている。

 

「…………時雨」

「篠ノ之さん。もしかしてここにいる全員、負けたの……?」

「………そうだ」

 

 ボーデヴィッヒさんも含まれるという事はかなり手練れなのだろう。もしくは状況的に完敗だったりして。

 本音さんと簪さんに続き、雫ちゃんも入室するとボーデヴィッヒさんに似た少女が2人付いてきてドアを閉めた。彼女らは織斑君を車椅子に乗せて連れてきたようだ。

 

「………そういえば、あの特訓っていつまで続いたんですか?」

「ん? 銀髪ロングが2時間でリタイア。そこで終わったから更識簪と布仏本音が残っていたってところか。後の全員は無駄乳ロングが30分持ったくらいだろうな」

「と、当然じゃない! あんな大人数が相手だなんて………」

 

 凰さんが抗議するけど、何言ってんの……?

 

「「あれくらい、本気出せば全滅できる程度だよ(ぞ)」」

 

 僕と夜塚さんの言葉が重なった。

 

「は?」

「何を言うか! 貴様は何もしていないだろう!!」

「………すみません。さっきの人たちをもう一度集めることってできますか? 何でしたら、銃火器の使用も許可しますけど」

「今はダメだな。あと銃火器も禁止だ」

「……今はダメ?」

 

 何故、と思っていると夜塚さんが補足してくれた。

 

「今は全員が恋愛シミュレーションゲームをしているからな。意外とブームになって今では下手に他の作業をさせると怒り狂う」

「「「……………は?」」」

「何故ここで?」

「加速する少子化対策の一環だな。今では男女平等になっているが、それでもまだほとんど奴らが異性に対する警戒を解かない。だからこそ、入りやすいものを用意したが………意外にカップルというものはできやすいということを痛感したよ」

 

 まぁ、中高生は多感な時期でもあるし、その辺りは目を瞑ってあげましょう。

 

「でも良いんじゃないですか? 知り合いに自分の思い通りにならないからってISで攻撃する人もいたりしますし、織斑君には絶対するべきものだと思うけどね」

 

 それなら少しは女の気持ちを理解できるかもしれない。

 

「まぁ、お前たちは今は体を休めろ。今日は小手調べ。明日からは本格的な修行に入る」

 

 そう言い残した夜塚さんは病室から出る。僕もそれに続き、用意された部屋で休んだ。ちょっと雫ちゃんを警戒していたけど、抱き着かれるだけで大したことはされなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。朝から僕は不調に陥った。

 

「……………ぐっ」

「まさかここまで効果があるとはな。だが耐えろ」

 

 織斑先生並みのスパルタ。いや、今はそこは重要じゃない。

 機能装着させられた特殊な首輪の能力が本格的に作動したのだ。

 

「実際のところ、専用機持ちの中でお前が一番筋力が低い。おそらくは能力を筋肉がきちんと発達する前に使えるようになったからだろう」

「能力? 智久に何か特殊な力でもあるのか?」

「それに関しては自分で知るんだな。もっとも本人は話す気はないだろうが」

 

 暴露する人は誰もいないと思うけど………。

 

「なぁ、能力って何なんだ?」

「織斑、質問している暇はないぞ。今日からお前たちには俺の軍団の幹部と戦ってもらう」

「………またなの?」

 

 教師の1人が文句を言った。

 

「何か?」

「私たちはIS操縦者よ! 生身の戦闘なんて意味がないわ!」

「………バカか、お前は」

 

 すると文句を言った教師が壁に叩きつけられた。

 

「俺は中学二年にして、自分が本当は世界の頂点に立つ存在だと理解した。人はそれを中二病だなんだと笑っていたな。でもそう思うのは当然であり必然であるだろうよ」

 

 夜塚さんはそこから1歩も動いていない。だけどおそらく、彼は教員を攻撃している。

 

「貴様にはできるのか、女。俺にはできるぞ? さぁ、やれよ」

 

 今、僕は電気を使って戦うことはできない。だからそういう時のための武器を装着する。

 

「まぁ待て、時雨智久」

「……ああ、大丈夫です。僕はその教師を助けるつもりはありませんよ。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。何でしたら精神崩壊させてから男の排出物を咥えるのが楽しみって性格に変えてくださっても構いませんよ」

「な、何言ってんだよ智久!?」

「君こそ何言ってるの?」

 

 全く。この男は甘すぎる。

 

「僕がこの修業を受けに来たのは、凰さんを殴った時に自分の強さと夜塚さんの能力、そして僕らにぶつける人間の総合力を加味して「さらに強くなれる」と思ったから。IS学園を襲わないのは、襲った後をどうするかイメージまだできていないし、IS部隊や専用機持ちを一掃しても最後に僕より強い人と戦わないといけないから。はっきり言って君のお姉さんをはじめとする教師陣がどうなろうか知ったことじゃない。むしろ襲われて当たり前だよ。本来なら女と言うだけで四肢を捥いだり金儲けの道具として使ったりするのが当然であり義務化して当たり前だしね。本音を言えば、君たちと肩を並べて戦う事自体不快だ」

 

 そう言い、後ろから来る攻撃を防ぐ。

 

「―――おや、残念。せっかく殺そうとしたのに」

「………なるほど。君は暗殺に特化しているんだね」

「一目見てわかるとは、あなたもまた人を殺す側にいると言う事ですか」

 

 どうやら彼が僕の相手だ。近くでは織斑君が突然吹き飛ばされたけど、暗殺者は飛んでいる織斑君すらも足場にして加速する。

 

「本気で殺しに来てくれて構わないよ。そうじゃないと修行にならない」

「そう言ってくださり、何よりですよ」

 

 考えてみれば、電気を使えないのは記憶をなくした時と大した変わらないんだ。だから―――今更焦ったところで大したことはないよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪は薙刀の柄の一部を外し、リーチを短くする。そうすることで今回の敵に対応しやすくするためだ。

 

「なるほど。情報通り、あなたは他の専用機持ちとは違うのですね。安心しました。おバカさんでしたらどうしようかと」

「…………心配どうも」

「では、倒させていただきます」

 

 アクアと呼ばれた少女が簪に仕掛ける。

 アクアの戦闘スタイルは短刀。彼女は素早く簪に斬り込もうとするが、本音が妨害した。

 

「させないよ」

「それはこっちのセリフだぜ☆」

 

 レーザーが本音に襲い掛かる。本音は回避するが、進行方向を予想してアクアの片割れであるレアが襲い掛かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いよ」

 

 箒が2本の木刀でプラスチック弾を捌いていると、腹部を蹴り飛ばされる。

 

「この―――」

「遅い、遅い」

 

 

 陽気な男が繰り出される剣戟を次々と回避し、さらに箒を蹴った。

 

「君は無駄な動きが多すぎるんだよ。だから隙を消しているようで隙を作っている。剣道という枠組みの中で技を磨いてきた人の弊害だね」

「自分はそうじゃないとでも言いたいのか!?」

「そうだね。僕はそのつもりだったけど―――やっぱり上には上がいるもんだよ。あそこにいるバーサーカーでさえ、ボスには一方的に潰されるしね」

 

 箒は視線を少しバーサーカーと呼ばれた男に向けるが、その男は一夏をボコボコにしていた。

 

「一夏!?」

「あ、思い人が気になる? 別に助けに行ってもいいよ?」

「本当か?」

「僕の弾幕から逃げられるならね」

 

 すると陽気な男は背中からアームを展開して、ガトリング砲を展開した。

 

「フル、バースト!!」

 

 陽気な男はそう叫び、仲間がいるにも関わらずプラスチック弾を発射させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?」

「女を殴るのは忍びないが、これもまた務め」

 

 ある場所では鈴音が長棒を扱う巨漢にひたすら殴られ、

 

「君、万能タイプだって聞いていたけど大したことないっスね」

「………僕は……」

「ああ、もう喋らない方が良いっスよ。後はちゃんと治療させてあげるので、時間になるまで寝ていてください」

 

 ある場所ではシャルロットは既に戦闘不能にされていた。

 

「その程度か、軍人。これでは肩慣らしにもならない」

「………なんなんだ……貴様らは」

 

 既にボロボロになっているラウラ。彼女の前に立つ長身の男はため息を吐く。

 

「全員が何らかの異常を持った戦士。夜塚透によって編成された10人の戦士。夜塚十滅士さ」

 

 少し照れながらその男は頬をかいた。

 その近くでは、教員がたった1人の男によって倒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 黒葉高校の制服を着た白髪の男が警備員に許可証を見せると、警備員が彼に端末を渡した。そこにはIS学園内のマップで戦闘可能領域が記されており、指示された場所に向かった。

 

「………なるほど。確かにISと専門の狙撃手では勝手が違うようだな。気配が消し切れていない」

 

 まるでISを展開するように男は銃を展開し、相手がいる場所に銃口を素早く向けて引き金を引いた。




男:女=8:2
しかもその内の2人が透にぞっこんなのでまた探さないといけないというね。



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