IS-Lost Boy-   作:reizen

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もはや中毒になりつつある小説投稿。
内容薄いでしょうが書くのはおもしろいです。


ep.16 怪しまれるフランス貴公子

「手加減はしませんわ!」

「さっきのは本気じゃなかったしね!」

「山田先生、僕が注意を引き付けるのでその隙に倒してください」

「わ、わかりました!」

 

 僕が近接ブレード《葵》を展開して仕掛けようとすると、2人は回避して僕を無視する。

 

「雑魚は無視よ!」

「わかってますわ!」

 

 なるほど。僕を倒すのは後で先に山田先生ってわけね。それができるならの話だけど。

 

「そういえば、凰さんとオルコットさんは織斑く―――」

「先に向こうを倒すわよ!」

「言われなくても!」

 

 はい、作戦成功。

 しかし、ほとんど言ったのに織斑君は反応が薄いという。苦労するねぇ、この人たち。

 僕の所のレーザーと衝撃砲が襲い掛かる。なんとか回避して《焔備》を展開した僕は牽制のために標的を絞らず攻撃した。

 

「―――デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

「あっ、はい。山田先生が使用しているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です」

 

 下の方でデュノア君が解説を始めている。僕はそれを聞き流しながら迫ってくる青龍刀を回避して凰さんの顔に銃弾に浴びせた。その隙に山田先生がオルコットさんに攻撃するけど当たらない。

 

(……おかしい)

「こんのぉっ!!」

 

 迫り来る青龍刀に僕は凰さんの顔を殴って怯ませる。さらに《チャージスピア》を展開して衝撃砲の1基を破壊して離脱した。

 

「これで止めです」

「ついでにおまけ」

 

 手榴弾を放る。すると、山田先生の方からミサイルが飛んで行き、凰さんとオルコットさんに攻撃した。

 そしてくるくると回りながら2人は地面に落下した。

 

「くっ、まさかこのわたくしが……」

「あ、アンタねえ……何面白いことに回避先読まれてんのよ……」

「鈴さんこそ! 時雨さんにあっさりと衝撃砲を壊されていたじゃないですか!」

 

 お互いが睨み合っているので、僕はバッサリと切って落としてあげた。

 

「どっちもどっちだね」

「何ですって!」

「そもそも、あなたがあんな挑発をしなければ良かったんですわ!」

「そうよ! 大体、アンタはその子と付き合ってるじゃない!」

「………同居と同棲の違いすらわからないんだ。可哀想に。そんなんだからチャンスすらも逃すんじゃないか。あーあ。あの時の会話を録音して学校中にばら撒けばよかったよ」

 

 すると凰さんは顔を真っ赤にしてつかみかかろうとしてきたので、僕は足を引っかけてこかせる。

 

「そこまでにしろ、馬鹿共」

「わかりましたよ」

 

 僕は凰さんを睨むのを止めて自分がいた場所に戻る。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。時雨も活躍していたが、そこまで動けたのは山田先生がいたからだと思え」

「まぁ、織斑先生だと逆に突っ込んで殲滅するから経験値が得られない分、山田先生と組んでいる方が戦えるという点では優秀ですよね。そういう意味では織斑先生は山田先生に劣っていると思います。女性的に魅力も含めて」

 

 うんうんと頷きながらフォローすると、織斑先生に何故か睨まれた。そんなことないだろうと言いたそうな顔だけど、山田先生の方が頼りになると思う。

 

「では、先程言った通りに専用機持ちをリーダーにしてグループに分かれろ」

 

 織斑君が来る前に言われたことを思い出しながら、僕はボーデヴィッヒさんの所に向かったけど……誰も来ない。というか二人の男子に集中している。

 

「この馬鹿者共が。出席番号順にグループに分かれろと言っただろうが! 次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド100周させるからな!」

 

 やっぱりそうなりたくないのか、みんなはちゃんと各々の場所に移動した。

 

「最初からそうしろ、馬鹿者共が」

 

 こればかりは擁護できない。まぁ、する気ないけど。

 しっかし、少しばかり空気が張り詰めすぎじゃないかな。

 

「ボーデヴィッヒさん」

「何だ」

「もう少し友好的な雰囲気を出せない? 流石にみんな声をかけづらいと思うんだけど」

「そんなことをする必要があるのか?」

 

 鬱陶しそうに答えるボーデヴィッヒさん。これはちょっとやばいな。

 

「いいですかーみなさん。訓練機を1班1機取りに来てください。数は打鉄が3機、ラファール・リヴァイヴが2機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

 

 そう言われたので僕はすぐにラファール・リヴァイヴを取りに行った。普段は打鉄しか使えないからこの機会に触ろうと思ったからだ。

 

「手伝うよ~」

「私も」

 

 布仏さんと……誰かわからないけどたぶんクラスメイトが手伝ってくれた。お礼を言って一緒に運ぶと、班の1人が文句を言った。

 

「えー、私打鉄がいいんだけど」

「それは今度訓練機申請で使ってください。さて、実習始めるよ。………ところでボーデヴィッヒさんから指示とかはない?」

「知ったことか。貴様らで勝手にすればいいだろう」

 

 少し話を振ればこの態度である。

 一体何が不満なのかわからない。もしかして僕だろうか。

 

「そうやって距離を取っても何も始まらないよ? 自分から歩み寄らなきゃ」

「どうして私が、こんな認識が甘い奴らと一緒にしなくちゃいけないのだ!」

「……認識が甘い?」

「だってそうだろう。ISをファッションか何かと勘違いしているような輩など相手にする価値はない!」

 

 ざっくりと言うなぁ。

 班員もさっきの事を聞いてボーデヴィッヒさんを睨み始める。

 

「確かにそうかもしれないね。でもさ、そんなことを言って今の君に何ができるんだい?」

「何?」

「認識が甘いのは十分理解している。じゃなければ今頃女尊男卑なんてものは存在しないはずだしね。でもさ、今君はここの生徒であのクソた……織斑先生から未熟な人を教えることを任されている。なら今はそれに従うか無視して学校を辞めるかのどっちかしかないと思うけど?」

「…………確かに、貴様の言うことは一理あるな。良いだろう。この新兵共は私が鍛えてやろう」

「あくまでもマイルドにね」

 

 ふう。なんとかなった。

 ボーデヴィッヒさんは周りよりも少し過激だけど、キチンとした訓練を施してくれた。

 

「さて、最後はお前だ」

「あ、僕は専用機持ちだから免除だよ」

「何? ならば何故貴様がここにいる?」

 

 言いたい。君がコミュ障だからだって。

 

「まぁ、織斑先生はボーデヴィッヒさんの生徒としての立ち振る舞いを心配したんじゃないかな? それで比較的に摩擦が少ない僕をフォローに付けたんだと思うよ?」

 

 我ながら苦しい言い訳をして午前の授業を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。僕は屋上で布仏先輩と布仏さんの3人で食事をしていた。

 

「これ、時雨君が作ったんですか?」

「ええ。少しくらいならできるので」

 

 それでも幸那には負けるけど。

 

「凄くおいしいです」

「そうですか? お口に合ったようで良かったです」

「私は毎朝食べてるんだよ~」

 

 すると何故か先輩は妹を睨んだ。何故?

 

「ところで先輩、どうして僕らと一緒に食事を? 妹さんもそうですが、友人と食事を摂らないんですか?」

「そのことですが、時雨君は3人目の男子をどう思いますか?」

 

 僕は少し視線を外して近くにいる織斑君たちを見る。

 

「詳しくは剥いて確かめる必要はありますが、おそらく彼は黒です」

「その根拠は?」

「匂いです」

 

 そう言うと2人は少し引いた。

 

「あの、しぐしぐ? いくら何でもそれはないと思うんだけど……」

「すみません。予想外の答えにどう返せばわかりません」

「特に深い意味はありませんよ。ただ、彼から女のフェロモンを感じたので、おそらく黒です」

「……男にしかわからないもの、ですか」

 

 ところで布仏さん、何で君はさっきから僕から離れるように椅子を引いているのかな?

 妹の所業に少し泣きそうになっていると、姉の方は別の事を言った。

 

「せめて、もう一手何か欲しいですね」

「じゃあ、今すぐベルトを取って脱がします? パンツまで偽装していたとしてもさらに脱がせば流石に性別まではごまかせないと思うのですが」

「嫌われるので止めておいた方が良いと思います」

「でも相手はスパイなんでしょ? 既成事実をでっちあげられたくもないので早急に処分した方が良いと思いますが?」

 

 そう言うと、布仏先輩は考え込んだ。

 

「……時雨君。できればあなたからは手を出さないでもらえますか?」

「今更嫌われることに恐れはありません」

「いえ。そういうことじゃないんです。相手は代表候補生。現在織斑君も代表候補生級の待遇を約束されていますが、織斑君と違ってデュノア君は実力だけで言えば申し分ないかもしれません。仮に女だとしたら、3月以前にはISを動かしている可能性もありますし」

「……つまり、僕じゃ対処するのは力不足ということですか?」

 

 そう言うと先輩は困った顔をし、少し間をおいて言った。

 

「………はい」

「…そうですか」

 

 そう答えると、先輩は僕の表情を伺い出した。

 僕は今日の昼食のメインである唐揚げを口に含みながら冷静に考える。

 

(………仮に僕がデュノア君を脱がした場合、相手がどのような行動に出るか)

 

 場所によるだろうか。もし人気がない場所ならもしかしたら殺されるかもしれない。

 

「わかりました。僕だって命が惜しいので我慢します」

「……ありがとうございます」

 

 安堵する先輩を見ながら僕はふと思った。

 

「……専用機、欲しいな」

「専用機ですか?」

「あれ? 前はいらないって言ってなかった~?」

「そうだけど、前のことを考えたらやっぱり自分専用の機体は欲しいなって思って」

 

 せめて、今の打鉄を可能な限りカスタムしたい。

 

「ただでさえ、アルバイトはできなくて勉強や体力作りに励んでいるのは正直つまらないし、打鉄は設定をあまり弄ってはいけないとか言われているし」

「……IS学園はアルバイト禁止ですからね。ですが時雨君の場合は仕方ありませんよ。数が少ない男性操縦者なんですから」

 

 先輩にそう言われているけど、それでも僕はアルバイトがしたい。お金を貯めて孤児院のみんなと遊びに行きたいのだ。

 

「………ところで時雨君、打鉄のカスタムは禁止されていると言っていましたが、武装開発に関して何か言われていますか?」

「………言われてないですね」

「じゃあ、ちょうどいいアルバイトを紹介してあげますよ」

 

 そう言って先輩はウインクした。思いのほか可愛かったので僕は顔を逸らす。

 ……いけない。先輩のおっぱいの感触を思い出してしまった。

 

(………孤児院に戻ってから、ちょっとなまってるな)

 

 更識先輩と一緒に寝るという行為(幸那と言うクッション付き)をしてしまったので、女に対して少し警戒が緩んでいるかもしれない。内心、僕は精神を鍛えなおすことを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――以上が時雨君の考えのようです。元々の警戒心が強いこともあって、シャルル・デュノアに疑念は抱いています」

「そうですか。どうやら我々の思い過ごしだったようですね」

 

 夜。学園長室で2人の大人に対して虚はそう報告する。それを聞いた菊代は安堵し、十蔵は感心した。

 

「ええ。それにしても随分と仲が良いですね。急な昼食に呼んでもすぐに合流するとは」

「………私の実力じゃありませんよ」

「だとしても助かります。こちら側にいるあなた方を智久君が信頼してくれるなら立ち回り安いのでね」

 

 虚はその言葉を聞き流し、すぐに質問した。

 

「それと、少し協力していただきたいのですが」

「協力? 何でしょうか?」

「……時雨君の武器開発の許可が欲しいんです」

 

 その言葉に十蔵は笑みを浮かばせる。

 

「なんだ、そのことですか。てっきり妹さんに嫉妬して「自分もあの部屋に住まわせてほしい」と言われるかと思いましたよ」

「助けてもらったとはいえ、そこまでする義理はないと思っています」

 

 しかし十蔵は顔をニヤつかせるのを止めない。

 

「まぁ、今はそう言うことにしておき―――痛いですよ」

「自業自得です。布仏さん、もしかして技術面でのカバーを考えているの?」

「はい。聞けば彼の打鉄はデータ収集のために無改造のままにするようにと政府から通達があったそうですが、本来の目的は別と私は考えています」

「その本来の目的とは、一体何を指していると思いますか?」

 

 十蔵の質問に虚は一度両目を閉じ、開いてから答えた。

 

「織斑一夏よりも悪い成績を残すため、でしょうね」

「なるほど。私もそれは間違いではないと思いますね。本来なら、通常機体のままでは実力差で敗北し、最悪殺される可能性も考えるべきです。しかし、彼らは敢えてそうしないのはおそらくそういうことなんでしょう」

 

 菊代は頷いて答えると、改めて虚に言った。

 

「開発した武装はこちらで公表手続きを行っておきます。布仏さん、あなたは彼にその道の才能を開花させてあげてください」

「わかりました。では、私はこれで失礼します」

 

 2人の前から去る前に一礼し、外に出る時に改めて一礼した虚は扉を閉める。

 

「だから言ったでしょう、杞憂だって」

 

 どこか楽しそうな顔をする十蔵。夫のその姿を見た菊代はため息を吐いた。

 そう。今回この2人はクラス対抗戦の襲撃後からしばらく経過した後、フランスから男性IS操縦者が専用機を持った状態で転校してくることはあらかじめ聞いていた。そして同時に生徒会の人間にはそのことを通達し、智久を含め一切の情報の公表を教員含めたIS学園の人間にはしないように働きかけた。

 1つは智久を試すこと。そしてもう1つはフランス政府直々からのお達しでもあった。

 

(しかし、デュノア社は一体何を考えているのでしょうね)

 

 普通ならそんなことはありえない、してはいけないことなのだ。それを堂々と行ったデュノア社。おそらくフランス政府の一部も噛んでいるこの行為にどう対処しようか迷う菊代。だが、十蔵はそうではなかった。

 

「……まぁ、しばらくは泳がせましょう。時雨智久のスキルアップにつながるでしょうしね」

「まさか、生徒を危険な目に遭わせるつもりですか?」

「彼がただの生徒なら控えるつもりですが、彼の場合はそうではない。IS操縦者であることを含めてね」

 

 夫が企んで遊ぶことに今に始まったことではない。そして同時にいつもバックアップしていることを知っている菊代は、半分嫌がりながら渋々黙認することにした。


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