ーーーー奉仕部は今日も駄弁る。
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「ではでは、先輩、よろしくでーす」
「ああ……」
「彼女、今度はどんな要求を?」
「うん、なんか、今度の日曜に外出に付き合えって」
「……だんだんと建前もなにもなくなってきてるわね。もはや隠す気ないのね、あの子」
「……なにがだ?」
「……ここは一つ、がつんと年上の格を見せつけてやるのはどうかしら、比企谷君」
「あ、おい、なんだよこれ。なんかの、受信機……? おい、雪ノ下っ」
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「あれ、先輩、今日はずいぶんと早いんですね」
「ああ、お前に寒い思いさせるのもアレだしな」
「なるほど、なるほど。非常にグッドな心がけです」
「そりゃどーも。……それと、その服、似合ってるな。特にそのヘアピン、俺は好きだぞ」
「あっ……えへへ。そういうの、ポイント高いですよ、先輩」
「……おう。じゃあ、行こうぜ」
「え、あの、せ、先輩? 手、つ、つなぐんです、か……?」
「いいだろ、べつに」
「は、はい……」
「行くぞ」
「……はひ」
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「ふむ、このネックレス、お前に似合うんじゃないのか」
「はい、か、かわいいですね……」
「だろう。よし、会計してくる」
「はい……」
「…………ん、戻ったぞ。とりあえず、この店は出るか」
「えっと、じゃあ、あの、少し座りたい、かもです……」
「わかった」
「すみません……」
「なんだ、やけにしおらしいな」
「だって、先輩が……」
「俺が? なんだよ」
「え、えっと、その……。いつにもまして強引というか、なんというか……。あう……」
「声小っちゃくて、なに言ってんのか聞こえねぇよ。……ほら、座るぞ」
「はひ……」
「……ん、ほら、こっち向けよ」
「ふぇ……?」
「よ、っと……。これで、いいか……? うん、似合ってるな」
「え、あの、先輩……?」
「買ってよかった。そのネックレス、やっぱり似合ってるぞ」
「ふぇっ!? ……あ、あの! えっと! あ、ありがとうございましゅ……!」
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「くっく、くふふ……」
「……先輩、笑いすぎです。もういい加減、忘れてください」
「あ、ああ、悪い……。くふっ……」
「…………」
「くっくっく、そう怒んなよ。ちょっとした、いつも意趣返しだって」
「……先輩が、今、私にやるのは洒落になりません」
「どうやら、そうみたいだな……。ふっふっ……」
「……もう! 先輩!」
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『どうかしら、楽しめた……?』
「……程々にな。ただ、お前、俺の演技力を過大評価しすぎじゃねぇ? あんな事細かに、しかも急に指図されても、咄嗟に動けねぇよ」
『そういうわりに別段大根でもなかったし……。ふふっ、案外才能、あるんじゃないかしら』
「やめろ、空恐ろしい……。あと、雪ノ下。お前、今度一色に謝りにいくの、付き合えよ?」
『ふふふっ。ええ、考えておくわ』
「ホント、頼むぞ……」