――――奉仕部は今日も駄弁る。
*
「雪ノ下はいねぇの?」
「ゆきのん、インフルエンザだって。陽乃さんからメール来てて……」
「ほーん、そうなの……。……あれ、やめてよね。次俺じゃん」
「たはは……。あたしもこの前なっちゃったもんね……」
「…………」
「…………」
「……心配、か」
「そりゃ! そう、だけど……」
「つっても、インフルってんなら見舞い行くのもあれだからなぁ」
「でも、だけど……」
「……まぁ。じゃあよ、部長もいないことだし、部活はもう切り上げて、どっか行こうぜ」
「え……?」
「ほら、カバン持てよ。おいてくぞ」
「あ、ちょ、まっ、ヒ、ヒッキー!?」
*
「さて、どうする? 不肖この比企谷、今なら大抵のお願いは聞き入れられるぞ」
「……ん」
「あ? クレープか?」
「ん……」
「よっしゃ、わかった。じゃあ、待ってろ」
「…………」
「……ほら、味聞くの忘れてたから、どっちか選べよ」
「こっちがいい……」
「ん、ほら」
「……ありがと」
「……うまいか?」
「ん……」
「そうか……」
「…………」
「…………」
「ヒッキー……」
「なんだよ」
「……そっちのも、食べさせて?」
「んぐっ……」
「ダメ、なの……?」
「……ったく。ほら」
「ん、あむ……。おいし……」
「そうかよ。よかったな……」
*
「ねぇ、ヒッキー」
「なんだよ」
「……ほんとはあたしの罪悪感とか、あたしが考えてること、ぜんぶわかってたんだよね……?」
「…………」
「あたし……あたしが、インフルエンザを持ってきちゃったから……」
「…………」
「でも、ヒッキーはあたしに、そうじゃないって言いたい、んだよね?」
「そう、だな……。そうだ。これは、お前がそう悩む筋合いの問題じゃない。どうしようもない、のっぴきならないことだ。なにせ、ウィルスだ。お前や、まして俺や雪ノ下ですら、どうにもならないもんだ」
「…………」
「だから、俺たちは、あいつが快復して、そんで登校してくんのを迎えてやるだけでいいだろ。そうじゃねぇか?」
「……うん、そっか。そう、かな……?」
「ああ、そうだ。だから、今日家に帰ったら、あいつにメールでもしてやれ。早くよくなりやがれってな」
「うん……。うん、そうする……」
「おう。じゃあ、もう大丈夫だな」
「えへへ……。ありがとね、ヒッキー……」
「べつに。クレープ奢って、話聞いただけだ。気にするな」
「うんっ。じゃあ、また明日! ヒッキー!」
「おー、じゃあな。気をつけて帰れよ」
「わかってるっ。バイバーイっ!」