奉仕部で駄弁るだけ   作:ひょっとこ_

4 / 14
四駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪ノ下はいねぇの?」

 

 

「ゆきのん、インフルエンザだって。陽乃さんからメール来てて……」

 

 

「ほーん、そうなの……。……あれ、やめてよね。次俺じゃん」

 

 

「たはは……。あたしもこの前なっちゃったもんね……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……心配、か」

 

 

「そりゃ! そう、だけど……」

 

 

「つっても、インフルってんなら見舞い行くのもあれだからなぁ」

 

 

「でも、だけど……」

 

 

「……まぁ。じゃあよ、部長もいないことだし、部活はもう切り上げて、どっか行こうぜ」

 

 

「え……?」

 

 

「ほら、カバン持てよ。おいてくぞ」

 

 

「あ、ちょ、まっ、ヒ、ヒッキー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうする? 不肖この比企谷、今なら大抵のお願いは聞き入れられるぞ」

 

 

「……ん」

 

 

「あ? クレープか?」

 

 

「ん……」

 

 

「よっしゃ、わかった。じゃあ、待ってろ」

 

 

「…………」

 

 

「……ほら、味聞くの忘れてたから、どっちか選べよ」

 

 

「こっちがいい……」

 

 

「ん、ほら」

 

 

「……ありがと」

 

 

「……うまいか?」

 

 

「ん……」

 

 

「そうか……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「ヒッキー……」

 

 

「なんだよ」

 

 

「……そっちのも、食べさせて?」

 

 

「んぐっ……」

 

 

「ダメ、なの……?」

 

 

「……ったく。ほら」

 

 

「ん、あむ……。おいし……」

 

 

「そうかよ。よかったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ヒッキー」

 

 

「なんだよ」

 

 

「……ほんとはあたしの罪悪感とか、あたしが考えてること、ぜんぶわかってたんだよね……?」

 

 

「…………」

 

 

「あたし……あたしが、インフルエンザを持ってきちゃったから……」

 

 

「…………」

 

 

「でも、ヒッキーはあたしに、そうじゃないって言いたい、んだよね?」

 

 

「そう、だな……。そうだ。これは、お前がそう悩む筋合いの問題じゃない。どうしようもない、のっぴきならないことだ。なにせ、ウィルスだ。お前や、まして俺や雪ノ下ですら、どうにもならないもんだ」

 

 

「…………」

 

 

「だから、俺たちは、あいつが快復して、そんで登校してくんのを迎えてやるだけでいいだろ。そうじゃねぇか?」

 

 

「……うん、そっか。そう、かな……?」

 

 

「ああ、そうだ。だから、今日家に帰ったら、あいつにメールでもしてやれ。早くよくなりやがれってな」

 

 

「うん……。うん、そうする……」

 

 

「おう。じゃあ、もう大丈夫だな」

 

 

「えへへ……。ありがとね、ヒッキー……」

 

 

「べつに。クレープ奢って、話聞いただけだ。気にするな」

 

 

「うんっ。じゃあ、また明日! ヒッキー!」

 

 

「おー、じゃあな。気をつけて帰れよ」

 

 

「わかってるっ。バイバーイっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。