――――奉仕部は今日も駄弁る。
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「ミカンってさ、皮剥いてるとたまに身が裂けて果汁が飛んでくるの」
「……まぁ、わからんでもないが」
「でね、酷いときはそれが目に入っちゃってさ。それであたしが悶えてるの見て、お父さん、笑うんだよ? 酷くない?」
「そうだなぁ……。が、この寒いのにやっぱり炬燵とミカンは外せないだろ」
「んー、それもわかるけどさぁ……」
「……思うに、ミカンの皮に対して力みすぎなんじゃないかしら、由比ヶ浜さん」
「え、そうなのかな……」
「食い意地張ってるってこと、」
「ヒッキー、うっさい」
「あ、はい」
「にしても、この時期になると皆が皆、炬燵炬燵と言い出すけれど、実際のところ、そんなにいいものなのかしら」
「え、なに、お前、炬燵入ったことねぇの?」
「ええ、まぁ、そうね。ないわ」
「はぇー、そうなんだ……」
「それはもう、あれだな。人生の四割損してるぞ、雪ノ下」
「残りの六割も底が知れるわね。……でも、そうね。そこまで言われるとさすがに興味が湧いてくるわ」
「あ、じゃあさ、部活はもう切り上げて、ヒッキーの家で勉強会しない?」
「え、なんで俺の家、」
「いい考えね、由比ヶ浜さん。期末も近いことだし、いいんじゃないかしら」
「拒否権はないんですかそうですか……」
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「お邪魔するわね、小町さん」
「小町ちゃん、やっはろー」
「雪乃さん、結衣さん! いらっしゃいです!」
「悪いな。勉強会するんだと」
「お兄ちゃん、おかえりー。いいよいいよ。なんなら、小町も一緒に勉強しちゃうまであるよー」
「ああ、いいんじゃないか。俺も文系科目なら見てやるんだが……。なぁ、雪ノ下。小町の勉強、見てもらえねぇか?」
「ええ、構わないわよ」
「悪い、サンキュな。じゃあ、居間で炬燵入っててくれ。なんか飲み物持ってくる」
「ありがと、ヒッキー」
「ああ」
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「どうだよ、雪ノ下。人生初の炬燵は」
「……そうね。やはり、一個人で日本という国の伝統文化に抗うことは、土台、無理な話だったのよ」
「……ちょっと、くっ殺せって言ってみてくんない?」
「は? くっ、ころ……?」
「あ、もういい。悪い。俺が悪かった」
「なにを言っているのかしら、この男は……」
「それはさておき。この状況、どうしたものかね……」
「そうね。一個人だろうと、四人集まろうと、伝統文化にはやっぱり勝てないのよ」
「ああ、そうみたいだ。まさか、四人全員で根落ちなんてな。笑えねぇ」
「……ねぇ、比企谷君」
「なんだよ」
「夕飯、ご相伴に預かっていってもいいかしら」
「あー、まぁ、いいんじゃねぇか。小町も、喜ぶだろ」
「ふふ……そうね。では、お台所を借りるわね。夕飯、私が作らせてもらうわ」
「いいのか?」
「ええ。だから、できあがるまでにその子たち、起こしてあげてちょうだいね」
「了解。……ったく、起こし辛ぇ。幸せそうな顔して、寝こけてんじゃねぇよ。まったく」
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「もう! 女子の寝顔見るなんて、ヒッキー、サイテー!」
「悪かったって」
「あ、雪乃さん。このおひたし、すっごくおいしいです」
「そう? よかった。由比ヶ浜さんは?」
「おいしいっ。おいしいけど……! ゆきのぉん!」
「ふふっ、よかったわ」