奉仕部で駄弁るだけ   作:ひょっとこ_

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三駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカンってさ、皮剥いてるとたまに身が裂けて果汁が飛んでくるの」

 

 

「……まぁ、わからんでもないが」

 

 

「でね、酷いときはそれが目に入っちゃってさ。それであたしが悶えてるの見て、お父さん、笑うんだよ? 酷くない?」

 

 

「そうだなぁ……。が、この寒いのにやっぱり炬燵とミカンは外せないだろ」

 

 

「んー、それもわかるけどさぁ……」

 

 

「……思うに、ミカンの皮に対して力みすぎなんじゃないかしら、由比ヶ浜さん」

 

 

「え、そうなのかな……」

 

 

「食い意地張ってるってこと、」

 

 

「ヒッキー、うっさい」

 

 

「あ、はい」

 

 

「にしても、この時期になると皆が皆、炬燵炬燵と言い出すけれど、実際のところ、そんなにいいものなのかしら」

 

 

「え、なに、お前、炬燵入ったことねぇの?」

 

 

「ええ、まぁ、そうね。ないわ」

 

 

「はぇー、そうなんだ……」

 

 

「それはもう、あれだな。人生の四割損してるぞ、雪ノ下」

 

 

「残りの六割も底が知れるわね。……でも、そうね。そこまで言われるとさすがに興味が湧いてくるわ」

 

 

「あ、じゃあさ、部活はもう切り上げて、ヒッキーの家で勉強会しない?」

 

 

「え、なんで俺の家、」

 

 

「いい考えね、由比ヶ浜さん。期末も近いことだし、いいんじゃないかしら」

 

 

「拒否権はないんですかそうですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔するわね、小町さん」

 

 

「小町ちゃん、やっはろー」

 

 

「雪乃さん、結衣さん! いらっしゃいです!」

 

 

「悪いな。勉強会するんだと」

 

 

「お兄ちゃん、おかえりー。いいよいいよ。なんなら、小町も一緒に勉強しちゃうまであるよー」

 

 

「ああ、いいんじゃないか。俺も文系科目なら見てやるんだが……。なぁ、雪ノ下。小町の勉強、見てもらえねぇか?」

 

 

「ええ、構わないわよ」

 

 

「悪い、サンキュな。じゃあ、居間で炬燵入っててくれ。なんか飲み物持ってくる」

 

 

「ありがと、ヒッキー」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだよ、雪ノ下。人生初の炬燵は」

 

 

「……そうね。やはり、一個人で日本という国の伝統文化に抗うことは、土台、無理な話だったのよ」

 

 

「……ちょっと、くっ殺せって言ってみてくんない?」

 

 

「は? くっ、ころ……?」

 

 

「あ、もういい。悪い。俺が悪かった」

 

 

「なにを言っているのかしら、この男は……」

 

 

「それはさておき。この状況、どうしたものかね……」

 

 

「そうね。一個人だろうと、四人集まろうと、伝統文化にはやっぱり勝てないのよ」

 

 

「ああ、そうみたいだ。まさか、四人全員で根落ちなんてな。笑えねぇ」

 

 

「……ねぇ、比企谷君」

 

 

「なんだよ」

 

 

「夕飯、ご相伴に預かっていってもいいかしら」

 

 

「あー、まぁ、いいんじゃねぇか。小町も、喜ぶだろ」

 

 

「ふふ……そうね。では、お台所を借りるわね。夕飯、私が作らせてもらうわ」

 

 

「いいのか?」

 

 

「ええ。だから、できあがるまでにその子たち、起こしてあげてちょうだいね」

 

 

「了解。……ったく、起こし辛ぇ。幸せそうな顔して、寝こけてんじゃねぇよ。まったく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう! 女子の寝顔見るなんて、ヒッキー、サイテー!」

 

 

「悪かったって」

 

 

「あ、雪乃さん。このおひたし、すっごくおいしいです」

 

 

「そう? よかった。由比ヶ浜さんは?」

 

 

「おいしいっ。おいしいけど……! ゆきのぉん!」

 

 

「ふふっ、よかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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