――――奉仕部は今日も駄弁る。
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「もし小町に彼氏ができたとしたら、俺はいったいどうなってしまうんだろう」
「ドストエフスキー屈指の傑作小説を読み終えた感想がそれなの?」
「そんな冷たい目でこっち見んな。悪かったな、妹脳で」
「小町さんを思う気持ちはよしとして、それを傘に着て変なことを考えている可能性を考慮してのことよ」
「ねーよ。さすがにそこまでは」
「いえ、そうとも限らないわ。よくニュースでも報道されているじゃない。ついカッとなってやってしまったとか、ね……」
「ねぇ、なんでそんなに情緒たっぷりに言うの? 怖いんだけど」
「まぁ、それはそれとして」
「えぇ……」
「由比ヶ浜さんの姿が見当たらないのだけど」
「あー。あいつはどうも、家族の誰かがインフルエンザだとかで、看病するとかで即行で帰ったよ」
「あら、そうだったの、気の毒ね……」
「まぁ、俺たちが気を揉んでもしょうがねぇ話でもあるけどな」
「身も蓋もないことを言わないでちょうだい。まったく、そんなだからヒキガエルだなんて言われるのだわ、嘆かわしい……」
「そ、そこまで言いいますかそうですか……」
「悔しかったらもうちょっと気の利いた紳士を目指してみればいいんじゃないかしら」
「くそっ、なんだあの挑発的なポージング。あいつノリノリじゃねぇか……」
「ふふっ、やはり、比企谷君には酷な要求だったかしら……?」
「……やってやろうじゃねぇか、この野郎!」
*
「お嬢様、どうぞお掛けください」
「……ええ」
「お茶はいかがですか?」
「……いただこう、かしら」
「では、僭越ながら、私がお淹れします、お嬢様」
「…………」
「……お嬢様、ダージリンでございます」
「ありがとう……」
「いえ」
「……おいしいわ」
「恐縮です」
「比企谷、君……」
「お嬢様、お辞めください。どうか、八幡と。私めに敬称など不要でございますれば」
「……は、はち、八、幡……」
「なんでしょうか、
「っ……」
「お嬢様……? どうされました、お嬢様」
「い、いえ、なんでもないわ。ええ。まったく。ぜんぜん」
「それは、よかったです。
「っ、だから、もうっ。それ、卑怯よ、比企谷君……!」
*
「いや、しかし驚いた。顔真っ赤にして、涙目なんだもんよ」
「うっ……わ、忘れてちょうだい。早急に……」
「善処する」
「馬鹿……」
「ていうか、お前、そんなに俺に下の名前で呼ばれるの嫌だったの……? ちょっと傷ついちゃうんだけど」
「べ、べつに! そ、そういうわけじゃない、けど……」
「な、なんだよ。急にでかい声出すなよ……」
「いえ、ごめんなさい……」
「お、おう……」
「…………」
「…………」
「あの、比企谷君……」
「……なんだ」
「よければ、だけど……また、紅茶を淹れてもらえる、かしら……?」
「…………まぁ、また今度な」
「え、ええ……っ」