――――奉仕部は今日も駄弁る。
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「……ねぇ、なんでここにいるの、小町ちゃん」
「え、威力偵察?」
「威力っ!?」
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「というわけで、全国のお兄ちゃんのラブリーエンジェルこと、比企谷小町でーす」
「全国のお兄ちゃん……」
「わー、小町ちゃん! やっはろー!」
「いらっしゃい、小町さん。紅茶は飲むかしら?」
「え、なんで歓迎ムード?」
「結衣さん、雪乃さん、やっはろーです! お紅茶、いただきます!」
「ええ、わかったわ。あら、そこのぬぼーっとした彼は、昨日のことさえ覚えていられないほどなのかしら……。粗大ゴミ扱いも視野に入れるべきかしらね」
「やだ、捨てるのにさえお金掛かっちゃうあたり、俺マジ金食い虫」
「その上、無駄飯食いだわ。さすが、ふふっ。ヒッキー、というだけあるわね」
「まぁ、引き篭もりはあんまし否定できねぇな」
「あ、ちょ、ゆきのん!? ち、ちち違うよ!? ヒッキーっていうのはそういう意味じゃなくてっ! えっと! と、とにかく違うの! もうっ、ヒッキーのバカ!」
「なんで俺……」
「相変わらずだね、お兄ちゃん」
「おう。で、お前はなにゆえここにいるの?」
「高等学校見学の一環です。だってほら、小町来年ここに入学するからさ」
「妙に自信ありげだな」
「そりゃね。お兄ちゃんの妹だし」
「お、おう……」
「む。平塚先生の許可もちゃんともらってるし、いいよね!」
「おう。わかった、わかった……」
「むぅ……」
「なんだよ……」
「あ、ん、な、い! して!」
「……雪ノ下の紅茶、飲んでからな」
「ん!」
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「つっても、そんなに広いわけでもねぇからな。ほら、今ので一通りは見て回ったぞ」
「そうね。……後は、あそこくらいじゃないかしら」
「だねー。あ、今、ちょうどいい時間なんじゃない?」
「ええ。行きましょうか、由比ヶ浜さん、小町さん」
「うんっ」
「はいっ」
「あ、なに、まだどっかあったっけか……」
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「……で、なんでまた俺のベストプレイスに」
「ベストプレイス……。まぁ、いいわ。ぼっちのあなたは知らないのだろうけど、ここ、結構景色もいいし、物好きな輩がよく居座っているので噂高いわよ」
「え、マジか……」
「あはは、一応あたしも、ここ、好きだよ」
「そうだったのか……。てっきり、俺だけが知ってる場所だと思ってたのに……」
「唯一の居場所を奪われてしまったのね。かわいそうな比企谷君」
「……口元吊り上がってるぞ、これ以上ないくらいに」
「デフォルトよ。今だけの」
「……さいですか」
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「あ。お兄ちゃん、風が止んだよ……」
「夕凪だな。いつも風が吹き抜けていくここだと、感じられやすいのか。俺も初めて知ったわ」
「ね、結構いい場所だよね」
「ええ、そうね」
「……はい、あたしも気に入りました」
「なら、よかったわ」
「だねー」
「はい、これで勉強のモチベーションも維持できそうです!」
「うん、頑張れ! 小町ちゃん!」
「はい、結衣さん!」
「……さ、日も落ちてきたし、帰ろうぜ」
「ええ、そうね」
「おー、帰ろー!」
「ですー!」