――――奉仕部は今日も駄弁る。
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「あ、あーしはべつにっ、あんたのこと、き、嫌いじゃない、から……!」
「あ……?」
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「へ? 優美子の様子がおかしかった?」
「ああ。なんか、ぶっ壊れてたってか、キャラ崩壊ってか……」
「いつもと様子が違っていた、と」
「まぁ……」
「……どうしたのかなぁ。そういえば、今日はいつもよりケータイさわってる時間多かった気がするなぁ」
「そんな日もあるだろ……。あいつに限れば、なんかの罰ゲームとかって線もないよな」
「ということは、なんらかの心変わりがあったとか、頭を強く打ったとか、そのあたりかしらね」
「えぇっ!? それ、病院とか行ったほうがよくない!?」
「……あの、由比ヶ浜さん。頭を打った云々っていうのはあくまで例え話よ」
「そ、そっか。たはは……」
「……まぁ、なんにせよ、由比ヶ浜。お前の連れなんだから、気にかけてやれば?」
「うんっ、そうする!」
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「あ? 素直になりたい?」
「そ。あーし、あんま自分の気持ち言葉にすんの、得意じゃないの。隼人にふられたのは、また違う理由なんだろうけど、この機会にちょっとだけ自分を変えてみよっかなって」
「えぇ……。……ていうか、お前、ふられてたの?」
「なに、あんた知らないの? ……結構噂になってるけど」
「知らねぇよ。興味ねぇし」
「……あっそ」
「それで、その変えてみようって第一歩が昨日のアレか」
「ま、そういうことだし。ほんとのとこは、嫌いじゃないけど、好きでもないって感じだけどね。あーいうの、男子は好きなんでしょ?」
「……嫌いじゃねぇ、ってだけ言っとく」
「ふふっ、なにそれ」
「気にすんな、皮肉だ。……で、その自分を変えるのを手伝えってことでいいのか?」
「なに、いいの?」
「それが、奉仕部への依頼だってんならな」
「……んー、じゃあ、奉仕部のあんたへの依頼ってことにするし」
「……了解した。で、いつからやる?」
「…………」
「……三浦?」
「じゃあ、今からどっか行くし」
「は……?」
「いいっしょ、べつに。これは依頼なんだし、素直なあーしに、あんたは逆らえないし」
「おっ、い、待て! それはなんか、違くねぇ!?」
「違わないし。ほら、行くよ」
「おい、三浦!」
*
「……で、ウィンドウショッピングにブティック、なんか洒落乙な喫茶店に加えて、挙句アクセサリーまで買わせやがって。気はすんだのか?」
「うーん、まぁ、ぼちぼち?」
「お前な……! ……はぁ。で、もう、いいんだな?」
「……やっぱ、わかる?」
「そりゃ、知らなかったとはいえ、当人から聞かされりゃ、察しもつくだろ」
「そ、っか……」
「戸部とかでよかっただろ。なんでわざわざ俺に付き合わせたんだよ……?」
「……隼人を除けば、だけど。ヒキオ、あんたが一番マシだって、思っただけ……。それだけ……」
「……そりゃ光栄だな」
「ん。なんだかんだでほら、こうして馬鹿みたいな女の気晴らしにも最後まで付き合っちゃってさ……」
「まぁ、お前みたいな、今にも泣き出しそうなやつがなんか言ってきたら、気にはなるだろ……」
「……声かけなきゃ、ガンスルーなくせに」
「よくわかってんじゃねぇか」
「ふふっ。バーカ……。……バーカ」
「……ほら、帰るぞ。そんで、飯食って、風呂入って、とっとと寝ちまえ」
「……うん、そーするし。じゃね、ヒキオ」
「おう」
「……ありがと!」
「……なんだよ。ただの口実かと思えば、ちゃんと素直になってら」