ラフムに転生したと思ったら、いつの間にかカルデアのサーヴァントとして人理定礎を復元することになった件   作:クロム・ウェルハーツ

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4.ビルから叫ぶ……ラフム、お家帰る!

 マシュたちと別れたラフムは今来た道を一人で戻る。ラフムが先ほど開けた穴から外に出ると、外はボロボロだった。

 世紀末みたいな光景。

 21世紀が始まって4年目の冬木だけど、世紀末みたいな光景だ。2004年の冬木の綺麗な街並みをこんなにした原因の一つであるアーチャーの姿を思い浮かべる。白髪に褐色の肌。人気投票常に上位の彼の姿を。

 アニメではクラスがランサーのライダーさんが出てきたりしたけど、アーチャーは変更されていなかった。弁慶(偽)は七章で出番があったから、リストラをされたのかもしれない。で、アニメのライダーは誰なの、あれ。ダレイオス君っぽかったけど、細部は違ったし謎だ。

 

 おっと、閑話休題。閑! 話! 休! 題!

 一度使ってみたかった言葉だ、閑話休題。だってさ、使わないじゃん、閑話休題なんて。憧れを回収してラフムはそっと壁に爪を突き立てる。ビルの壁をまるで蜘蛛男のように登っていきながら敵について考えを巡らせる。

 

 アーチャーがアニメFirst Orderでも続投して出てきたということは、どのような世界線でも変えられることのない確定事項であると考えられる。例えると、Fate/stay nightのどのルートを選んだとしても言峰は死ぬというようなものと同じようなものだろう。そこ、言峰は第四次終了時点で死んでるってツッコミはいらないよ。もし、そんなツッコミされたら、ラフム泣いちゃうぞ。

 

 まあ、そんな訳で目下、敵だとされるのがアーチャー:エミヤだ。チュートリアルのリニューアル後、初回十連でエミヤを引いた古参の方は驚いたに違いない。『なんで真名を出してるんだよ』と。

 もはや、『君たちの知っている聖杯戦争ではないのだよ』と言わんばかりのやり方。どちらかと言えば、真名よりもクラスの方を隠す方が有効なFGOだ。FGOからstay nightに入った方は逆に序盤でランサーと互角に戦うことができるアーチャーTUEEEEEとなるだろう。

 それほどまでに、FGOのクラス相性の差は大きい。だからこそ、FGO配信直後は猛威を振るった。何せ、出発前の確認画面で敵の相性が見えない時期があったのだから。

 弱点属性のエースがあっさり落とされてポカンとしたプレイヤーも多いと思う。リセマラを100回ほどして手に入れた青王が消えていく光景を見て、『最優のサーヴァントじゃなかったんですか!?』と叫んだこともあった。

 そんな初期のFGO。

 そこで取られた手段は、全クラスに攻撃が有利相性である攻撃役のバーサーカーに加えて、ほとんどのクラスに防御が有利相性で回復もできるお守り役のジャンヌ(ルーラー)を連れて行くというもの。ラフムもよく『オレのバーサーカーは最強なんだ!』とか『やっちゃえ、バーサーカー!』とか言ってスマホをポチポチしてた。

 

 ここまで言えば、勘付いた人もいるかもしれない。

 そう、ラフムのクラスは“ランサー”である。ランサーのクラスはセイバークラスに弱く、そして、アーチャークラスに強い。もう一度、言おう。

 

 ラ ン サ ー は ア ー チ ャ ー に 強 い !

 

 敢えて言おう。アーチャークラスはカスであると。

 

 今のラフムはランサー。アーチャー相手には攻撃が増加し、相手からの攻撃は減少するクラスだ。つまり、負ける要素はない。命令とあらば、あのギルガメッシュにも勝ってみせよう。あ、賢王様(キャスター)は座っていてください。

 ラフムの基本方針は“俺より弱い奴に会いに行く”というもの。態々、弱点クラスで向かうような蛮勇はラフムにはいらないのだ。

 

 カチリと音を立てて、爪をビルの端に引っかける。今、ラフムがいるのは狙撃によって中ほどから上が完全に吹き飛んだビルの上の階。天井から上が吹き飛んでいて、屋上テラスみたいな気分が味わえる。ちなみに、寛ぐと別のビルの屋上から矢が飛んでくる仕様です。

 

 ぶらりとぶら下がっていても、話が進まない。息を大きく吐き出して、決意を固める。

 引っ掛けた爪を支点にグイッと体を持ち上げて、死角となる壁へと素早く身を寄せる。気分はスネーク。段ボールはないけど。そっと、壁から顔を出してアーチャーがいるビルを見つめる。

 

 まだ、気づかれていないようだ。

 少し整理してから行動を始めよう。

 

 |―|←アーチャー

 | |

 |ビ|    |\ ←ラフム

 |ル|    |ビ|

 | |    |ル|

 

 今のラフムとアーチャーの位置関係はこんな感じだ。

 省略したけど、もちろんアーチャーがいるビルとラフムがいるビルの間にはいくつかビルがある。これからの目標は、ビルの上を飛び移ってアーチャーとの接近戦に持ち込む。その後、アーチャーの腹に爪を突き刺して『お前が墜ちろ』と言わなくちゃいけない。

 けど、それを実行するためには、なるべくアーチャーに気付かれることなく接近しなくちゃ撃ち落とされる。

 だが、問題はアーチャーが持つスキル:千里眼Cだ。

 簡単に言えば、むっちゃ目が良い。今まではアーチャーの視界に入っていないから事なきを得ているけれども、一度でも視られたら即、矢を放たれるだろう。

 

 ここに居ても、話が進まない。息を大きく吐き出して、決意を固める。

 いや、もう少し様子を見よう。

 

 なんでラフムが人間離れした動きを簡単に出来ているのか考えを整理することも大切だ。

 実はラフム、ネットにアップしてるメアリースーな二次オリ小説がある。それでの妄想力が力の源だと思われる。二次オリ小説の中ではラフムはやるよ、かなりやる。むっちゃ強い敵の前で、両手に剣を持ってかっこいいポーズを取ったりすることもできるぐらいに妄想の中ではラフムは強い。

 

 つまり、妄想でのイメージに体が完全について行っているラフムに敵はない!

 

 ごめん、嘘。バビロニアで走り回った時に色々な動きを試していただけの話。一日にも満たない時間だったけど、運動量は半端なかったから大抵の動きには対応できる。

 

 ここに居ても、話が進まない。息を大きく吐き出して、決意を固める。

 いや、もう少し様子を見よう。

 

 なんでラフムが人間の言葉を話せないのか考えを整理することも大切だ。

 ラフムという種族は見た目から分かるように身体能力は高く、見た目から分からないように学習能力が半端ない。こんな悪の組織の下っ端怪人みたいなフォルムのラフムだけど、頭はすっごい良い。バビロニアで活動しているラフムたちは一日ほどで人の言葉を話せるようになっていた。

 けど、ラフムは人の言葉が話せない。多分、人の言葉を覚える機会がなかったからという可能性がある。実際、ラフムが出会った人間の言葉を話すのはキングゥぐらいのもの。さらに、キングゥはその時は胸に穴が開いていて満足に話すこともできない状態だった。こんなに少ない機会じゃあ、人の言葉を覚えられない。そして、今のラフムはサーヴァントだ。霊は成長できない。マスター適正などの外的要因でステータスは変動するものの、それは“座”に登録された状態に近づくだけの話。どれだけ時間をかけても、死んだ時以上の能力に成長することなんてできない。

 更に言うと、トラックにはねられた時、ラフムは人間だった。その時の記憶から言葉を理解できるものの、その時に慣れていた人の体での言葉の理解の仕方だ。人とは全く違うラフムの体で言葉を話すことは非常に難しい。だから、言葉を理解できても使いこなせないというのが今の状況だ。

 

 ここに居ても、話が進まない。息を大きく吐き出して、決意を固める。

 いや、もう少し様子を見よう。

 

 ……ちくしょう。話題が出てこない。もう引き伸ばせないじゃないか!

 ああ、行きたくないなァ……。

 

 けど、ここでアーチャーを仕留めて置くのが安全だ。大ボスであるオルタちゃんとアーチャー二人を同時に相手取りたくない。強力なサーヴァントに技巧派なサーヴァントを同時に戦うなんて勝ち目がない。

 

「ehc@……」

 

 ……贋作者、武器の貯蔵は充分か?

 


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