東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】   作:カリーシュ

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5話 異界の剣士

―紅魔館 門

 

sideキンジ

 

「さて、到着したわけだけど―」

 

……なんというか。

 

「赤いわね」

 

「目に悪そうなんだぜ」

 

……ここまで真っ赤だと、一周回って芸術に見えるな。

 

「ちょっとくらい血が垂れてても気付かなそう―ん?」

 

 

同じく真っ赤な門の脇には、緑色のチャイナ服を着た女性が―

 

「Zzzー…」

 

「…門番か?」

 

「門の前で居眠りする門番って。まあ余計に戦わずに済んだからいいだろ。なあ魔理沙」

 

「…」

 

「…」

 

?なんで門番と下を交互に見てるんだ?

 

……イヤな予感がするな。

 

 

具体的に言うと、今のこいつら、目が逝ってる時の白雪と似た気配がするんですけど?

 

 

 

「なんで目が座ってるんだよ。ほら行くぞ」

 

「キンジ」

 

「な、なんだよ?」

 

 

 

「「アイツに鉛玉ぶち込んできなさい(くるんだぜ)!!」」

 

ゲシッ

 

イヤな予感、的中!

全く嬉しくねぇ!!

 

て言うか他人を蹴るな!

 

 

「はっ!?な、何事ですか!?」

 

「あーあ、起きちゃった。それじゃキンジ、ガンバ」

 

「わーったよ! やりゃいいんだろ!」

 

 

〜武偵祈祷中〜

 

 

「中には1人も通しません!背水の陣の構えです!」

 

「…1人で陣なのか?」

 

「う…気にしたら負けです!

虹符『彩虹の風鈴』!」

 

「―ッ!」

 

迫り来る弾幕を、紙一重でかわしていく。

まあレヴァリエとかと比べればまだマシか。

 

 

 

 

 

? 不意に弾幕が途切れ―

 

「どうやら飛べないようですね!なら私の得意分野です!」

 

「なッ!?」

 

回し蹴り―あの構えは、カンフーか!?

大振りだから軌道は読めるが、―スピードとパワーがケタ違いだッ!

コイツも妖怪かよ!

 

「次は当てます!」

 

「危ないから当てんでいい!」

 

バスバスバスッ!

 

牽制にベレから弾幕を撃つ。

 

……スペカの弾幕の後だとショボく見えて虚しいのはナイショだ。

 

 

 

「!?銃火器!?でもなんで弾幕を―?!」

 

それぞれ距離を取る。

 

いくら軌道が読めても、スピードが問題だ。連打が来たら避けきれない。

 

不幸中の幸いなのは、向こうは『銃』がどんな物かを理解して、警戒してくれてるってことか。

 

 

考え込んでるのを隙と判断したのか、一気に距離を詰めてくる。

 

「はあぁあっ!!」

 

放たれるのは、左ストレート。

 

「この距離でもキリングレンジなのかよッ!?」

 

咄嗟に紙一重で躱す。が―

 

「もらいました!」

 

「ッ!しまっ―」

 

後ろ回し蹴り―ダメだ、避けきれない!

ガードは間にあっ―重ぉッ!?

 

派手にぶっ飛ばされて―

 

 

「…あ"っ!」

 

「グエッ!」

 

「うわっ!?」

 

グォォ………ん? 妙に柔らかいような…?

 

 

 

……ゲッ!?!? ま、魔理沙ぁ!?

 

!?ちょ、よ、よく見ると、ふ、ふふふふふ服がはだけて―

 

 

ドクン

 

 

それに、近いから果物みたいな香りが―

 

 

 

ドクンッ

 

 

 

「う〜ん…キンジ? 大丈夫なんだぜ…?」

 

?! い、今そんな上目で見られたら―

 

 

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

 

 

「ん?

―キンジ、まさか!?」

 

「…心配を掛けさせたかな?

―大丈夫、ここからが反撃だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だったか、キン―

…うん、大丈夫そうでなにより。

…こりゃ勝ったな」

 

「氣の流れが、変わった…!?」

 

「待たせてしまったね。

さて、―続きを始めようか」

 

「…!?

―本気で行きます」

 

……!!向こうの気配も変わった!

 

来るかッ!

 

「―シッ!!」

 

門番の放った渾身の右ストレートは、左肩を捉え―

 

 

 

 

 

―思い出せ!前に父さんが1回だけ見せてくれた、あの技―!!

 

 

 

 

 

「―『絶牢』」

 

―右足での蹴りが、門番のこめかみを打った。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう―」

 

いやはや、土壇場で上手くいってヨカッタヨカッタ。

 

「…キンジ」

 

「なんだよ士道?」

 

そんな呆れかえった目で見て、どうした?

 

「今のなんだよ!?お前完全に殴られてたよな!?なんで門番が倒れてるんだよ!?」

 

「カウンター技だ。なんなら教えてやろうか? 本当は門外不出の技だけど、どうせ知ってる奴ロクにいないからすぐに幻想入りしてただろうし」

 

「多分分かんねぇし出来ねぇよ!」

 

「後でやりなさい。今は前に進むわよ」

 

「そうなんだぜ!折角キンジが絶好調なんだぜ!」

 

「「ハイハイ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔館 ホール

 

「建物の中に入った訳だけど―」

 

「分かれ道だな。どっちに行く?」

 

「私のカンじゃ、上ね」

 

カンて……アバウトな。

 

「私は下だと思うんだぜ」

 

「ならオレ、霊夢で上、キンジと魔理沙で下を調べて行こうぜ」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔館 廊下

 

side士道

 

「…それで、何時までついてくるつもりかしら?」

 

……何か急に喋り始めたんだが。

誰か近くにいるのか?

 

「―よく気が付きましたね」

 

フッ、と、まるで最初からいたようにメイド服の少女が現れた。

 

「……えっと、いつ気がついたんだ? オレは全く分かんなかったんだが」

 

「カンよ」

 

「便利な言葉だなオイ!そ、それより今の今までいなかったよな、このメイドさん!?」

 

「十六夜 咲夜と申します」

 

「よし士道、ゴー!」

 

「ゴー!じゃねーよ!しかもノータイムで言ってんじゃねぇ!? それよりさっきもこんなやり取り―」

 

ダンッ!

 

ヒッ、な、ナイフ…

 

「やるなら早めにお願いします。地下に向かった侵入者の相手もしなくてはならないので」

 

「あら、ここの警備は人手不足なのかしら?」

 

「いえ。地下に向かった侵入者の手当てをしなければならないからです」

 

「―なんですって?」

 

地下に向かった―キンジと魔理沙か!?

 

「私が話せる事は以上です。始めましょう」

 

「……士道はスペカを温存しておきなさい。私がやるわ」

 

…霊夢じゃないが―

 

 

嫌な予感がするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔館 ヴワル図書館

 

霊夢たちと別れた後、階段で地下降りると、異様に広い空間に出た。

 

そして、梯子付きの棚の中身は、

 

パッと見ただけでも、ボロボロの古い本から割と最近、元の世界から幻想入りしてきたと思われる真新しい本が、ぎっちり詰まっていた。

 

「うわー…凄い量の魔導書なんだぜ…」

 

「これ全部がか?部屋の果てが見えないな」

 

「そーだなー」

 

……この反応は。

 

「…魔理沙。借りるならちゃんと図書館の人に言えよ。あとちゃんと返すんだぞ」

 

「分かってるんだぜ!ちゃんとかえすんだぜ!…死ぬまでには」ボソッ

 

やっぱり図星かい。

 

……幸い、丁度ヒスってるし、ここの構造覚えておくか。

何度か来ることになりそうだしな。

 

「―思いきり聞こえてるわよ、人間」

 

「ぜ!?」

 

「……雰囲気が人じゃないな。妖怪か?」

 

声の聞こえた方を見ると、ぱっと見病弱そうな少女がいた。

 

……誰かいるのは気がついていたけど、また女かい。

 

「妖怪じゃないわ。魔法使い、パチュリー・ノーレッジよ」

 

「…ん?」

 

「私達も魔法は使えるけどまだ人で、あっちは魔法で人間辞めた種族魔法使いなんだぜ」

 

つまり、人間でも妖怪でもなくて、魔法が使える人間辞め人間…?

 

「…こんがらがりそうだな。それでノーレッジさん、本を借りたいんだが」

 

「断るわ」

 

デスヨネー。

 

「なら弾幕ごっこでもぎ取るんだぜ!」

 

「…人が、種族差を超えて勝てると思っているの?」

 

「その為のスペカなんだぜ!」

 

「…分かったわ。相手をしてあげる」

 

「じゃっキンジ!ちょっと行って来るんだぜ!」

 

「ハイハイ」

 

―って、返事聞く前に行ったぞアイツ……

 

ん?

 

「そこに居るのは誰だ?」

 

「こあっ!?」

 

「…」

 

「こ、こあ〜」プルプル

 

……いかにもな翼の生えた女が、震えていた。

 

「…最近のコスプレは頭にまで翼を生やすのか?」

 

「こあ!?コスプレじゃありません!」

 

「そ、そうか」

 

こあ以外に喋れたのかコイツ。

 

「はっ!そうだ!私、侵入者を探さないといけないんだった!」

 

「…それって天然か?それとも本気で言ってるのか?」

 

「はい?とにかく行ってきます!」

 

「イッテラー……」

 

いろいろと大丈夫か、この洋館?残念な妖怪の溜まり場になってないか?

 

まあ、魔理沙の方もまだ時間かかりそうだし、そこらの本でも物色してるか。

 

 

 

〜武偵読書中〜

 

 

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」

 

「むきゅ!?」

 

 

ピチューン

 

 

最後のむきゅってなんだよ!?

 

「さあこれで盗り放題なんだぜ」

 

「…もう何も言わん」

 

「そういうキンジは何読んでたんだぜ?」

 

「ああ、これか? ウチのクラスのSSRの連中がハイテンションで自慢してた本と同じタイトルだったからな。ちょっと興味が湧いた。まああっちが写本で、原本は行方不明だって―」

 

「ゲホッゲホッ―その『法の書』、本物よ」

 

「」

 

……幻想入りしてましたか。

 

じゃああいつらが原本を読む可能性は限りなくゼロだな。

 

「まあどっちにしろ借りて行くんだぜ!」

 

「…後でちゃんと返しなさい」

 

「やったんだぜ!」

 

……!

 

「―でもその前に」

 

「俺達に客―いや、俺達の方が客か?」

 

「? それってどういう―」

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達が、お姉さまの言ってた魔法使いと探偵さん?」

 

「…若いな。こっちじゃ外見はアテにならないけどな」

 

気配を感じた方向から現れたのは、パチュリーより幼いように見える金髪の少女と、俺と同じ位の年の少年だった。

ただ、少女の背には、―異形の翼が生えていた。

 

 

「うお!? 誰なんだぜ!?」

 

「私はフラン。フランドール・スカーレット。吸血鬼だよ」

 

「…今度はヴァンパイアか。もう驚かねえぞ。それで、後ろの奴は?

―ッ!?」

 

……!!??

何だ……コイツは!?

 

 

「―キリト。剣士 キリトだ」

 

「…魔理沙。フランの相手を頼んでいいか?」

 

「どういう意味何だぜ?」

 

「奥にいる奴。アイツは多分、強い。もしかしたら、俺が負けるかもしれない」

 

「!?でもキンジ、前にヒステリアモードは―」

 

「あくまで対人では無敵同然ってだけだ…心配するな。勝てるさ」

 

魔理沙の背を軽く押して、吸血鬼に向かわせる。

 

「お話は終わった?」

 

「…ああ、付き合ってやるんだぜ!」

 

「アハ、アハハ、アハハハハ!!」

 

……あの吸血鬼もあり得ないレベルの威圧感なんですけど。

 

―まあ、目の前の自称剣士に比べれば、マシか。

 

「―さて、こっちも始めようか」

 

「―そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔館 屋上

 

side霊夢

 

廊下にいたメイドを速攻でピチュらせて、主がいるここの場所を吐かせて駆けつける。

 

カン頼りに進んでもよかったけど……

 

そのカンが、魔理沙たちの危機を警告してる。

 

私らしくない程急いで、出た先には―

 

「―アンタがメイドの言ってた『お嬢様』かしら?」

 

「…思ってたよりも早かったわね」

 

紅魔館の主である、吸血鬼がいた。

 

「さっさとケリをつけましょ―って言いたいところだけど、始める前に一つだけ教えなさい。

 

―ここの地下に居るのは何?」

 

「……魔法使いと使い魔、私の妹にその従者よ

…もっとも、その従者は貴女のところの武偵を上回る程の人外だけど、ね」

 

「―! 士道!」

 

「分かってる!霊夢、負けるなよ」

 

タッタッタッ……

 

 

念のため、士道を向かわせたし―

 

 

私も仕事するとしましょう。

 

 

「―今夜は、月が紅いわね」

 

「…確かにそうね」

 

 

 

「こんなに月も紅いから、」

「こんなに月も紅いのに、」

 

 

 

「―楽しい夜になりそうね」

 

「―長い夜になりそうね」

 


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