東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】   作:カリーシュ

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ニャル様の活躍をご期待の皆様、





マジでごめんなさい。m(_ _)m


47話 無貌の神

 

―霧の湖

 

side霊夢

 

「………やっぱり、ここにいたわね」

 

不自然に濃い霧を消去させ、湖岸まで突き進むと、

 

見覚えのある背が見えた。

 

 

「久し振り……いえ、この間会ったばかりね」

 

「紫……これは一体どういうことなのよ。

さっきの藍―一種の神降ろしよね。

アレは一体何なの?」

 

「………」

 

 

扇子で口元を隠しながら、少し間を空けて、

 

「……知りたい? 貴女だけではなく、後ろの方達も」

 

「はぐらかさないで、さっさと吐きなさい。

さっきの藍に憑いてた奴はなに?

あの『腐食の女』は誰?

あんたたちは何を企んでるの?」

 

「そうねぇ……

 

 

 

―まあ、問題無い範囲でなら良いでしょう」

 

―扇子を、閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女達……特に、外来人である2人は、『世界』や『宇宙』についてどの程度知っているかしら?」

 

「またそうやって―

「それは物理的にか? それとも概念としてか?」

 

私を遮って、士道が話を進めた。

 

「今話してるのは私なのよ?!」

 

「…少し代わってくれ。

今度の異変は、桁が違う。 慎重に行こう」

 

「う…………

 

わ、分かったわよ」

 

 

すごすごと引っ込む。

…笑ってんじゃないわよ紫!!

 

 

「―霊夢。 良い相手を見つけたわね」

 

「!? ちょ、そんなんじゃないわよ!!」

 

良い相手って、そ、そんな……

 

「あら? 私は異変解決のパートナーの話をしているのだけれど?」

 

「……話を戻してもらっていいか?」

 

 

紫のせいで脱線した話を軌道修正する。

 

 

「…それで、物理的か、概念的か、ね。

……答えは、『どっちも』よ」

 

 

アイツ、また訳の分からない言い方を―

 

 

「なら少なくとも、オレの答えは『何も知らないに等しい』だな」

 

「正直ね。

……なら、まずは私達が『ナニカ』を答えましょう。

 

 

 

 

 

私達は……簡単に言えば、『神』に分類されるわね」

 

「幻想郷は神サマのバーゲンセール状態だからありがたみが薄れるけどな。

……『ハイヨルコントン』か?」

 

「バーゲンセールは余計よ。

……懐かしいわね。 昔、その名で呼ばれてたわ。

……『這い寄る混沌』、『無貌の神』、『顔のないスフィンクス』、『燃える3眼』―

 

 

……それが、かつての私」

 

「妖怪の賢者はそもそも妖怪じゃなかったってか?」

 

「そうなるわね。

藍に降ろしたのも、貴方達の言う『腐食の女』も、

―今妖怪の山と迷いの竹林で暴れている彼らに降ろしたのも、同じ神話で語られる神よ」

 

「………」

 

 

!? 妖怪の山と迷いの竹林!?

それって、今キンジたちがいる所じゃ―

 

 

「……あんたや、キンジたちが今戦ってるだろう連中が、神サマの一種だってのは分かった。

なら、何の為に異変を起こした?」

 

「……………

私達の神話では、ある程度の上下関係が存在するわ。 その最上位に君臨する存在を、愉しませる為」

 

「バケモノが崇めるバケモノ、か。

そりゃさぞかし強そうだ。

―愉しませる? さっさと呼び出すなりなんなりして、弾幕ごっこでもしてもらえばいいだろ。

何でこんな大事になる?」

 

「……それを話す為には、まず『世界』について知る必要があるわね」

 

「……オレたちが幻想入りした時の季節のズレ、全く違う『外側の世界』―これが関係するのか」

 

「……貴方、正式に博麗の名を継ぐ気は?」

 

「そっちの返答による。 満足のいく答えが返ってきたら考えるよ」

 

 

ちょ、紫も士道も何言ってるのよ!?

 

 

「…………

―五河士道、上条当麻、遠山金次、桐ヶ谷和人。

貴方達外来人のいた場所と、この幻想郷は、物理的には繋がってないわ」

 

「……やっぱりか。

灼爛殲鬼。 ステルス。 超能力。

これらがある以上、幻想郷の規模はもっと小さいだろうからな」

 

「それもそうね。

―ここから先は、そう簡単に話す訳にはいかないわ。

世界の、本質に関わる」

 

「つまり―

聞きたきゃ実力行使か?

いい加減情報の細切れにはうんざりだったんだ。

灼爛殲鬼(カマエル)

 

 

ゴゥっっ!!

 

 

「…話は終わったかしら?」

 

「ん。 どうやら、あっちの神サマは隠し事が大好きってことも分かったしな」

 

そりゃそうよ。 でなきゃこうも面倒くさくならないわよ。

 

「じゃ、ここから先はいつも通り―

妖怪退治よ!!」

 

お祓い棒を構える。

 

 

 

「ちゃっちゃと片付けるわよ!!」

 

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に、切れないものなどあんまり無い!!」

 

「お前が何かを『否定』するなら、オレはお前を『否定』する!!」

 

「テメェが自分の思い通りに事が進むと思ってるなら―

その『幻想』をぶち殺す!!」

 

 

 

 

 

「……私は、この一時だけ妖怪であることを辞めるわ。

博麗の巫女―私を、越えられるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―vs

 

 

―【這い寄る混沌】―

 

―【無貌の神】―

 

―【顔のないスフィンクス】―

 

―【闇に吼えるもの】―

 

 

 

―【ニャルラトホテプ(八雲 紫)】―

 

 

 

 

 

 

 

「熱符『(メギド)』!」

 

「空観剣『六根清浄斬』!」

 

「霊符『夢想封印』!」

 

「……相変わらず、ね」

 

弾幕が、斬撃が、熱線が紫に殺到する。

 

一番早い熱線が紫に直撃―

 

 

 

 

 

「「「なっ!?!?」」」

 

「あらいやだ♪」

 

す、すり抜けた……ですって?!

 

「……生き急げば、見えるものも見えなくなるわ。 気をつけなさい。

結界『光と闇の境目』」

 

弾幕が、一気に展開される。

 

けど―

 

「いつも使ってるスペカじゃない。

よく分からない神としてのスペカは無いのかしら?」

 

士道と妖夢は兎も角、紫と何度も弾幕ごっこをしてきた私なら、楽勝よ。

 

「そうしたいのは山々だけど………ねぇ。 私は土の神性なのよ?」

 

「え?………あ、そういえば忘れてた」

 

「不幸だっ!?」

 

成る程。 能力消去が出来る上条が地面にいるから、神としての力が使えないのね。

 

 

「じゃあ、そろそろ終わるわね」

 

「……それはどうかしら? 少なくとも其方には、私に弾幕を当てる方法が無さそうだけれど?」

 

「う……」

 

……問題はそこなのよね。

 

 

向こうの攻撃は、いつも通りの紫のスペカに、正体不明の能力。

 

スペカは、私にとっては前に攻略済みだし、初見のスペカが出て来ても、アイツの癖は分かってるから余裕。

能力は幻想殺しが地面にいるから封印されてる。 嘘の可能性もあるけど、私のカンが、紫は本当のことを言ってるって判断したから、不意打ちされる心配は無い。

 

 

だから紫に弾幕を当てるだけの簡単な話の筈だったのにぃ………

 

 

「どういうカラクリか教えなさいよ!!」

 

「そう言われて、はいこれこれこうだからですと答える奴はいないでしょう」

 

「「「…………」」」

 

私たちの視線が、地面に集中する。

 

 

「……毎回毎回、初めての奴と弾幕ごっこやる時に幻想殺し(イマジンブレイカー)について説明しているんでせうがそれは」

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

「………なんか締まらないわね」

 

幾ら正体が全く違ったとはいえ、見知った相手が、いつも通りの態度でいたら、切り替えようが無いわよ。

 

「紫ー。 アンタ、なんか変身とか出来ないの? アンタのカラクリ見破るまで、なんかもうちょっと欲しいのよね」

 

「そういうのはせめて、見破ってから言いなs

「士道、あそこに砲」

ぁい!?!?!?」

 

カンで指した所に熱線を撃たせると、関係ない所にいる紫が回避行動をとったわ。

 

「……なによ、めちゃくちゃ単純じゃない」

 

「……………ノーヒントで答えの出せる貴女の勘がおかしいのよ」

 

さっきまでいた紫が消え、逆に私が指した所に浮かびあがってくる。

 

「で、アンタの負けまで秒読みの訳だけど?」

 

私、士道、妖夢で囲む。

 

一応上条にも、ほぼ真下に移動して貰ってるし、急降下で逃げても無駄よ?

 

「そうそう。 藍に憑いてたニョグタと同じ手を使っても効果は無いから」

 

「……その名を知ってるのと、五河士道がここにいる時点でやる気が失せたわ………」

 

溜息を吐く紫。

 

「今のは降参ってことでいいのかしら?」

 

「そうねぇ…………降参―

 

 

 

 

 

―したいけど、もうちょっと続けるわ」

 

「……何よ。 言っとくけど、もう詰みよ」

 

「ええそうね。 私自身それは理解してるし、第一に、先程名前を挙げた4人が揃った時点で、『腐食の女』―クトが待つ場所へは案内するつもりだったわ」

 

………つまり、

 

「アンタにとっては、勝っても負けても変わらない戦いだったってこと?!」

 

「そういうこと♪」

 

「」

 

め、眩暈が………

 

 

 

「じゃあ、さっきの世界の本質うんぬんはどうなるみょん?」

 

「………全てを話す訳にはいかないわ。

知れば、戻れなくなる」

 

 

「じゃあ、消化試合としましょうか」

 

「……もうちょっと言い方ってもんがあるでしょう?」

 

「うっさい。 士道、後は任せたわ」

 

「オレぇ!?!?」

 

 

弾幕ごっこの練習を士道に言いつけ(断じて面倒くさくなったからじゃないわ)、さっさと降りる。

 

 

……紅魔館にオヤツでもパクリに行こうかしら―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM:『旧支配者のキャロル』

 

 

 

 

 

「―全員、伏せなさい!!」

 

 

ゴッッッッッッ―

 

 

 

?!?!?!

 

ば、爆発!?

今度は何よもう!!

 

 

 

 

 

「―オ―――オォlo―――」

 

 

 

「な………何よ、アレ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソレ(・・)は、円形の形の炎で、真ん中に3つの燃える、花弁のようなものがある『ナニカ』。

 

 

 

「………何よ、コレ―

クトゥグアの眷属? だとしたら何故ここに………?」

 

「紫様!! アレが何か知ってるみょん!?」

 

「……ハッキリとは。 予想の域を出ないわ。

―ん? ちょっと待ってなさい」

 

……あの感じは、念話ね。

 

 

それよりも、目の前のコイツ………何なのかしら?

 

 

全身火の塊だし………

 

でも、その割には神々しさっていうか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……もの凄い、嫌な予感が―

 

 

 

 

 

「―ハァァァァっっ!?!?

クトゥグアの召喚に干渉の跡があったぁぁぁぁぁ!?!?!?

……………じ、じじじじじじゃあ、今私の目の前にいるのって―」

 

 

 

紫の顔が面白いくらい真っ青を通り越して真っ白になっている。

 

しかも、分身して見えるまで震えてるし、何か分かったのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―『外なる神(Outer God)』の一神………

 

 

―『ヤマンソ』?」

 

 

 

 

 

 

 

「えっと………どうだったみょん?」

 

念話を終えたらしい紫に、妖夢が聞いてるけど……

 

 

……私のカン、外れてるといいな。

 

 

「……………わよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―全員、死ぬ気で逃げるわよっっ!!!」

 

 

 

 

 





補足説明
ヤマンソ:『外なる神』の一神。
分類上はクトゥグアの眷属だが、コイツが現界した瞬間、クトゥグア及びその他眷属は即逃げると言われている程危険。
クトゥグアの召喚に失敗、或いは召喚門を開きっぱなしにすることで降臨する。

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