東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】   作:カリーシュ

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46話 黒の剣士

―迷いの竹林 跡

 

sideクトゥグア

 

【「……ふむ、こんなものか」】

 

先ほど、この我を追い詰めた存在に、我の星の大気の一部を叩きつけてやったが……

 

 

……脆い。 たったあの程度の熱で、もう虫の息とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―みんなを、返せっ!!!

禁弾『スターボウ

【「……失せろ」】

 

 

この娘本体の火を扱う能力に我の火力を足した火球を、鬱陶しく跳ね回る羽虫に叩きつける。

どうやら、人とは違う種らしい此奴らは、今程度の熱量では死なぬようだが……

 

……わざわざこの我が、一々トドメを刺す必要はない。

 

あの火傷ではそう長くは持たぬし、仮に生き延び、再び挑まれたところで、また焼いてやれば良いだけのこと。

 

 

さらにこの娘の身体、不安の残る次元で、且つ不完全だが、曲がりなりにも不老不死だ。

ちょっとやそっとの攻撃は、再生すれば済む。

……あの存在の連撃を喰らった時には、流石に一瞬焦ったがな。

 

 

 

 

 

……あの存在と言えば……

 

【「……あの絶望しきった表情―」】

 

…おっといかんいかん。 つい恍惚としてしまった。

一刻も早く、我自身の封印を解かねば。

 

 

 

 

 

 

 

【「……また邪魔か」】

 

再度発生させた火球を背後に放る。

この気配―適当な死に損ないがつっかかって来たのかと思ったら、新手か?

 

……まあいい。 炭にしてやれば、何であろうと変わらぬ。

 

 

 

【「……燃え尽きろ」】

 

先に放った一撃が躱されたことは分かっているので、振り替えり、視界の端を通った影に向かって火球を撃つ。

 

……これで終わりか。呆気ない―

 

 

 

 

 

―ギンッッ!!

 

 

 

 

 

【「………なんだと?」】

 

火球を―

 

 

 

 

 

切り裂いた(・・・・・)、だと?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM:『Grip & Breakdown』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【「……面白い。

貴様は、何者だ?」】

 

目に写ったのは―

 

 

枝に白と黒の透明な石(・・・・・・・・)がぶら下がったような翼。

そして―

 

 

 

紅い2本の剣(・・・・)を構えた、男。

 

 

 

 

 

【「……貴様……面は先程の男に似ているな。 兄弟か何かか?」】

 

 

『「……オレか(ワタシ)

オレは(ワタシは)キリト(ユナ)

さっきテメェが殺してくれた奴(さっきアナタがコワしたヒトの)本人だよ(妹だよ)」』

 

 

若い人間の雄の声と、雌の声が、混ざって聞こえる。

 

……気にくわん。 土のクズを思い出させるな。

 

 

【「……そうか。 なら消えろ、死に損ない」】

 

今度は火柱を喰らわせる。

 

 

『「鈍い(遅い)それならマスパの方が(それなら魔理沙の方が)断然早い(ずっと早い)!!」』

 

奴はそれを危なげなく躱し、距離を詰めてくる。

 

……馬鹿め。 そのまま近づけば、焼壁が貴様らを―

 

 

『「―秘弾(秘弾)そして誰もいなくなった(そして誰もいなくなった)』!!」』

 

【「……ぬぅ。 消えた、だと?」】

 

 

焼壁に衝突する寸前、何かを宣言すると同時に奴の姿が消え、代わりに大量の妖力弾が四方八方にばら撒かれる。

 

焼壁に当たった物は燃えている。

この弾幕程度で、この我への道を作り出すことが出来るとでも?

 

【「……小癪な。

―辺り一帯、焼き滅ぼせば済む話」】

 

再び、我が星の大気を呼び寄せ―

 

 

 

『「―させるわけ無いだろっ(させるわけナイヨネェ)!!

斬忌(希望)―」』

 

焼壁の内側(・・)に現れたと同時に、2本の剣が、大袈裟に構えられる。

 

 

その紅き剣が、更に緋く染まって行く―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「―『And Then There Were None(それでも彼らはいなくならない)』!!!」』

 

 

 

 

 

 

 

【「……無駄なことを」】

 

迎撃用に、奴の初撃が届く前の刹那の隙に、溶岩製の長棒を生み出す。

 

 

奴は未だ不敵に笑うが―

 

これで、終わりd

 

 

ドガガガガッッ!!

 

 

【「ヌゥゥゥゥっ!?!?」】

 

飛来したエネルギー塊が、長棒を打ち砕いただと!?!?

 

そんな馬鹿な―不可能だ!!

 

 

 

『「―オイオイ(ネェネェ)ちゃんと他人のスペルカード宣言(ちゃんとワタシたちのスペカの名前)聞いてたか(聞いてた〜)

ユナは(ワタシは)、―

 

 

 

 

 

それでも(それでも)彼らはいなくならないって(彼らはいなくならないって)言ったんだ(言ったんだ)!!」』

 

 

彼方を、見やれば―

 

 

 

 

 

 

 

「―何時から、私たちがもう戦えないと?

従者や妹が踏ん張っているのに、のうのうと寝ている姉がいるか!!」

 

「おほほほ! 私の能力ならその程度の結界、突破は楽勝よ!!」

 

「……いやいや、私の能力(波長操作)がなかったら詰んでましたからね? 特に姫様」

 

「そのうどんげを助けたラッキーうさちゃんへの言葉は? ねえねえ?」

 

 

 

 

 

【「……ば、かな―」】

 

この短時間で、狂気を―

 

増えてるあのクソチビの所為か!?!?

 

 

 

 

 

―弾幕と同時に放たれた剣の一撃目が、右肩から、斜めに胴体を裂く、

 

続けて、薙ぎ払いが、突きが、斬り上げが、振り下ろしが、身体を容赦なく穿って行く。

 

その数、8連撃。

 

 

【「……貴様―

 

下等種族の、分際でェェェェェエエエっっっ!!!」】

 

『「―これで(コレで)……

 

 

終わりだァァァァァァァアアアアアっっっ(コワレろォォォォォォォオオオオオっっっ)!!!」』

 

右の剣での刺突が、左胸を貫き、

 

 

 

素早く引き戻された二刀が、低い位置に、身体に巻きつかせるように構えられ、

 

一瞬のタメの後―

 

 

 

 

 

交差するように、我の首に炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

【「……これっぽっちか?」】

 

我の首をx字に切り裂いた状態で、奴の動きが止まる。

 

剣の輝きも消え、殺気すら失せている。

 

 

【「……残念だったな。 この身体は不死だ。 今程度の攻撃では、我を斃すことは出来ぬ」】

 

―さぁ、絶望しろ。

 

 

その悲痛な表情を、我に見せ―

 

 

 

『「―いや(いや)

 

今ので(今ので)十分だ(じゅーぶん)それ以上は(それ以上やったら)妹紅を殺しかねない(その人死んじゃうもん)」』

 

【「……何をバカ、なっっっっ?!?!?!」】

 

 

―なんだ、この痛みは!?!?

 

胸を押さえ、膝を着いてしまう。

屈辱的だが、今はそんなことを気にする余裕は………っ!!

 

 

『「……ユナには(ワタシには)『目』が見える(『目』が見える)

アンタの中には(アナタの内側に)妹紅のとは別に(その人のと違う)もう1つの『目』が見えたんだ(もう1つの『目』が見えたんだ)

そこを(そこを)オレが斬った(キリトが斬った)

その結果は(その結果は)………

言うまでもないな(言うまでもないかな)」』

 

 

……さ、寒い―

 

我が、この身体から、剥がれて行く。

 

……おのれ。

 

 

 

 

 

 

 

…………おのれおのれおのれオノレオノレオノレオノレオノレオノレ、

 

 

 

 

 

おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええぇえぇええぇえぇぇえぇぇぇぇええええっっっっっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だが、

 

【この怨み、はらさでおくべきかっ………!!

 

……だが、見事だ。

我は、また貴様を焼き滅ぼしに現れるぞっっ!!

貴様――貴様だけは、絶ェェェっっっ対にィィィィィイイ―】

 

 

言葉を吐き続ける我に、奴は、怯えを一切見せず―そもそも、我に畏怖や恐怖の感情を一切持たず、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「……何度でも(コンティニュー)

 

お前に次は、無い!!(アナタがコンティニュー出来ないのさ!!)」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―そして、我に向けて、広げた掌を―

 

 

 

 

 

―ゆっくりと、握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキリト

 

『……ふぃ〜、キンチョーしたよ〜。 ワタシもう寝るね〜』

 

「お疲れ、ユナ」

 

 

頭の中から聞こえるユナの溜息―

これだけでどんな表情か想像がつく―に、労いの声をかけ、左手の剣を鞘にしまい、右手の妖力で作った剣は消す。

 

 

 

「―キリトーーーっ!!」

 

ドッシーーン!

 

「ぐぼぉ!? ……ふ、フランもお疲れ。 よく頑張ったな」

 

「えへへ」と幸せそうな顔をするフランの頭を撫でてやる。

 

……うん、ボコボコにされ、トドメのタックルを喰らってなければ思わず忠誠心が溢れ出てきそうだ。

 

 

「…で、さっきのアレはどんなカラクリよ?」

 

疲れが面に出てるレミリアが聞いてくる。

 

後ろには、咲夜と鈴仙に支えられてる美鈴や、パチュリーまでいる。

 

 

「…正直、オレにもよく分からん。

ただ、フランの『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が引き金だってことは分かるな」

 

オレがフランと美鈴を庇って死にかけ―と言うより、肉体的には即死した時、

フランが能力を発動させ、オレの中のナニカ(・・・)を『破壊』することで、ユナが表に出る事が出来るようになり、結果、一時的とはいえ、オレにも『目』を見る能力や吸血鬼のパワーが発揮出来たのだろう。

 

 

 

……気になるのはそのナニカ(・・・)だが…………

 

人間としての『桐ヶ谷和人』そのものか、人間と妖怪の境界か、それとももっと別のものか―

 

真実を知る時は、永遠に来ないだろうな。

 

 

 

 

 

「―で、貴方の立ち位置はどうするつもりですか?」

 

「? どういう意味だ、美鈴?」

 

「いえ……さっき、貴方自身の世界に残っている人たちへ、何やら謝ってたじゃないですか。

それに、詳しくは分かりませんが、妖怪化したとなれば外の世界に出る事は自殺行為と聞きますし、そもそも幻想郷で人間が妖怪になることってご法度じゃあ………」

 

「」

 

―アレ? これ霊夢に抹殺されるオチか?

 

 

 

 

 

「……パチュリー、なんとか誤魔化す魔法ってn

「あの巫女の勘の前には無駄でしょうね」

……フラン、もっかい能力t

「もうそんな危ないことヤダ!」

……oh」

 

やべぇどうしようと右往左往していると、レミリアが突然吹き出した。 何故に?

 

「そんな心配しなくても大丈夫よ。

私には、紅魔館のメンバー全員が―

 

家族(・・)が皆揃っている『運命』が見えたもの。 きっとなんとかなるわ。

 

 

……あと美鈴。 そんなビクビクしなくても、貴女をクビになんてしないし、詮索もしないから安心しなさい。

そもそも、私が物心つく前からいる貴女を、間違えてもクビになんて出来ないわ。 吸血鬼異変の時だって、貴女がいなければ私は死んでいたのかもしれないし」

 

「あはは……

ありがとうございます、おぜうさま」

 

そうか、運命、か……

 

我らのカリスマがそう言うなら、大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさい。 つまり美鈴、貴女お嬢様の赤ん坊の頃を知ってるってことよね?」

 

「え? まあ、ハイ。 少なくとも妹様が産まれる前から居ますが?」

 

「羨ましい妬ましい!!」

 

「ちょ!? いきなり殺人ドールは―

 

アーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 

……ナイフの群にピックを混ぜたオレは悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

「……楽しそうね、貴女たち」

 

「永琳か。

……その、大丈夫か? 藤原さん。 思いっきり斬っちまったけど」

 

オレの疑問に対し、若干のドヤ顔で、

 

「妹紅が飲んだ蓬莱の薬は誰が調合したと思ってるのかしら?

失神してることを除けば健康体そのものよ。 姫様が側にいることだし、後数十分もすれば意識も戻るわ」

 

「起きなかったら、それはそれで貴重な薬の被験体が……」なんて恐ろしいことを呟き始めたので、心の中で合掌。 強く生きてください。

 

 

「―そうそう。 さっき妖怪の山に向かったメンバーとの連絡がついたわ。 向こうも片付いたそうよ」

 

「となると、敵本拠地の霧の湖に集合か。

……翼マジでどうし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まあ、結果オーライか」

 

あの特徴的な翼は、いつの間にか消えていた。

途中から口の中でチクチクしてたのが消えたのも、慣れたんじゃなくて牙が引っ込んだのか。

 

 

 

じゃあ、懸念事項が1つどうにかなったし、

 

「行くか! 霧の湖!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うどんげ、貴女もついて行きなさい。 私と姫は此処で離脱するわ」

 

「え"」

 

 

 

 

 




補足説明
クトゥグア:某ジャパニーズクトゥルフ作品では1番好きなキャラなのに、気がついたらこうなった。
なお、当たり前ですが生きてます(・・・・・)。当たり前ですが生きてます。
大事なことだから2回言いました。
右手の剣:禁忌『ヒノカグツチ』
原作東方紅魔郷の製作途中において、レーヴァテインに変更された剣。
ユナ固有のスペカとして登場させました。
ユナ:キリトが死にかけたことで表に出てきたブラコン。 フランとは違う固有スペカを持つ。
例:禁忌『ヒノカグツチ』
秘弾『そして誰もいなくなった』
希望『それでも彼らはいなくならない』
キリト:完全EX化3人目。 吸血鬼化。 士道(天使完全制御)上条(龍の顎)キリト(吸血鬼化)の中で1番原作離れしている。
なお、『目』を見る能力と翼の形状はユナ頼りなので、今回のみ………の予定。
斬忌『And Then There Were None』:10連撃の二刀流オリジナルソードスキル。 『十人の小さな兵隊』で、兵隊が減っていく歌詞になぞった連撃となっている。トドメは斜め上への首切り(首吊り)
ネーミングセンス? ………言わないで。

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