東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】   作:カリーシュ

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今回はかなり短めです。

1話に纏めると長くなる、
だからと言って分けると短い。

……どうしてくれよう?


ま、結局は戦闘描写もっと書けやって話なんですがね。
あぁ、文章を書く程度の能力が欲しい。後時間も欲しい。(切実)

欲を言えば画力とお金と思考ry(以下略



41話 黄衣の王

―妖怪の山

 

sideキンジ

 

 

「……何だ………アレは………?」

 

霊夢の指示で文と魔理沙と白狼天狗を連れ、妖怪の山へと急ぐと―

 

 

 

『黄色のローブ』を纏い、フードを目深に被ったナニカが、深きものの群を粉砕していた。

 

「………味方、なんだぜ?

あ―」

 

キンジも、一瞬そう考えた。

 

 

 

 

 

かち上げた深きものを、カマイタチで3枚におろし、微塵切りにし、空気の塊で赤い霧に変えるまで徹底的に殺戮して無ければ。

 

 

「―ッ!?」

 

「うぇ………しばらく肉は食えそうに無いんだぜ……」

 

「兎に角、一度本隊に合流しましょ―」

 

 

ガッ―!!

 

 

「? どうしたんだ、ぜ―」

 

 

ふと黄色のナニカから目を逸らし、さっきまで先行していた白狼天狗がいた場所を見ると―

 

 

 

 

 

灰色の鱗が全身を覆い、左右非対称に隆起した眼球を持ち、醜く不揃いの尖った牙と長く、異常に湾曲した爪を持つ、カラスにも、モグラにも、ハゲタカにも、アリにも、腐乱死体にも見えるナニカ(ビヤーキー)が、白狼天狗の首から上を呑んで(マミって)いた。

天狗も意識があるのか、狂ったように暴れていたが、次第に力無くグッタリとした。

 

「………は? え?」

 

「―ッヤロォ!!」

 

咄嗟に首を真下から桜花で殴り飛ばすと、喉にでも入ったのか、直ぐに吐き出された白狼天狗を抱える。

 

「オイッ! 大丈夫か!?

クソッ、先ずコイツを何処か安全な所に―

「キンジさんっ! 無事ですか!?」

―椛か!? スマン、コイツを頼む!」

 

近づいて来た椛に白狼天狗を預ける。

 

「―――――!」

 

「―させるかってんだッ!!」

 

山の頂上付近へ逃げる椛を、ビヤーキーが追撃しようと俺を追い抜かすタイミングで脳天を再び桜花で殴り堕としてやる。

素早く周囲を確認するが―

さっきのヤツは、あの一体だけだったみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 

―さて、

 

「魔理沙、文。 覚悟は出来たか?」

 

マジックアイテムと化したベレッタキンジモデルをコッキングしつつ尋ねる。

 

「いつでもいいんだぜ」

 

「あやや、カメラが直るまでは待って欲しかったですね」

 

八桂炉を、天狗の団扇と刀を構えたのが気配で分かる。

 

 

 

「―――――」

 

向こうも、やはりと言うべきか『腐食の女』の関係者らしく、有るかどうかすら確認出来ない目が此方を捉えたのが分かる。

 

 

「この遠山桜、散らせるものなら―散らせてみやがれッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM:『旧支配者のキャロル』

 

 

 

 

 

 

 

―vs

 

 

―【名状しがたきもの】―

 

―【星間宇宙の帝王】―

 

―【邪悪の皇太子】―

 

―【黄衣の王】―

 

 

 

―【ハスター】―

 

 

 

 

 

「先手必勝!

恋符『マスタースパーク』―

なっ!?」

 

魔理沙十八番の極太レーザーがナニカに迫るが、その姿が一瞬で消える。

 

「どうなって―うぐぉッ!?」

 

急に発生した竜巻に身体を削られながら、気配のする方向を見ると、

直ぐそこに、ソレはいた。

 

「キンジさん!? くっ!!」

 

竜巻そのものは文の団扇のひと扇ぎ(風を操る程度の能力)で消滅するが、ナニカは再び消える。

 

「瞬間移動系の能力なんだぜ!?」

 

「だとしたら出現ポイントを先読みしねえと―ッ!?」

 

「―――――」

 

虚空から放たれたカマイタチを、ヒステリアモードのスーパースローになった視界で躱す。

掠ったときの斬れ味からいって、防弾制服なんて紙同然だぞ……ッ!?

 

 

 

「―――――」

 

「そこかッ!! 『桜花』ッ!

―チッ!」

 

 

「―――――」

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!

―ああもう! いい加減当たるんだぜ!!」

 

 

「―――――」

 

「うひぃ!? ちょ、その威力のカマイタチは洒落になりませんって!?」

 

クソッ、完全に弄んでやがる……!

 

 

 

 

 

「…2人とも、何か掴めたか?」

 

「……」

 

「あやや……いくら幻想郷最速の私でも瞬間移動が相手だと……

ってまた来たぁ!?」

 

「―――――」

 

虚空からの不意打ちではなく、停止した状態での攻撃。

なんで瞬間移動のアドバンテージを捨ててまで止まっ―

 

 

 

 

 

……なるほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ビュォォォォォオオォォォオオオオォォォォオォォオオ――

 

 

「……ハハ……桁が違い過ぎるんだぜ……」

 

「ああ……ソウダワタシマダセンタクモノトリコンデナカッタワーアハハハh―」

 

「オイオイオイオイオイ、流石に冗談キツイぞ……ッ!」

 

 

ひっくり返したらそのまま山をスッポリ覆える程の、巨大な竜巻が発生していた。

凄まじい吸引力で既に岩や大木が渦巻き、巻き込まれようものならミキサーに入れられるのと大して変わらない結果になることは目に見えている。

 

 

 

そんな、もはや別モノと化した竜巻が、

 

 

俺たちに向かって、ゆっくりと、撃ち出された。

 

 

 

「に、逃げましょうキンジさん!?

私たちだけじゃ手に負えません!!」

 

「コレを放っといたら山どころか地底まで被害が広がるぞッ!?」

 

「広がらしときゃ良いんですよ!!

被害が出れば鬼が出張って来てくれる可能性があります!!」

 

「ンな無茶苦茶な―ガッ!?」

 

「―――――」

 

今のは―アイツの打撃(エアハンマー)か!?

つまり、あの竜巻は、アイツの制御から外れている。

 

コイツ、最早災害同然じゃないか!!

 

 

 

 

 

……だけど、何の為にあんな姿勢を崩す(・・・・・)程度の弱い攻撃なんか―

 

 

「―起きるんだぜ!? 文! 文!?!」

 

「なッ―!?」

 

視界の端に映ったのは、意識を失ってるらしい文と、それが竜巻に引き寄せられないよう引っ張っている魔理沙。

よく見れば文は頭から血を流してるし、魔理沙も帽子が吹っ飛んでいる。

 

「…テメェ、頭狙ったのかよ……ッ!!」

 

「―――――」

 

言葉での返事は無い。

が、視線は正直だな、コイツ。

 

 

 

 

 

―助けたいなら、コレを如何にかしてみろ―

 

 

 

 

 

「……やってやろうじゃねえか」

 

ヒステリアモードの()が、変わっていくのが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後に分かることだが―

 

女性を奪われた(人質にされた)ことで発動する―

 

 

『ヒステリア・ベルセ(・・・)』に―

 

 

 

 

 

 

 

竜巻の根元に急ぐ。

引きずり込まれたら元も子もないので、加速はしないで減速の調整だけだが、それでも異常なまでの吸引力だから直ぐに辿り着ける。

 

 

 

竜巻みたいな渦巻くエネルギーの塊を止める方法―

 

そんなモノ、強襲科(アサルト)は勿論、何処も教えてくれない。不可能(・・・)な事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

―だからどうした。

 

 

 

 

 

 

 

「纏めてブッ飛ばせば終わりだッッ!!」

 

 

何処ぞのフィクションの様に、渦巻きのコアにして、1番エネルギーが集中する場所―

『渦の先端』を狙うッ!!

秋水も併用して―

 

「『桜花』――グァッ!?!?」

 

高速回転する金属の塊を殴ったような感触が、手に伝わる。

 

回転とは逆ベクトルのエネルギーを叩き込む以前に、そもそも介入すら出来ない。

 

 

 

 

 

「―ならッッ!!」

 

素早く距離を取る。

 

以前の、この近くでの出来事―

鬼との戦闘で相手の使ってた技。

便利そうだからと、記憶を頼りに練習しておいたアレ(・・)に、桜花、秋水も併用して―

 

 

 

「―一歩、」

 

 

 

だが、まだ足りない。

 

なら―

 

 

 

 

 

「―二歩、」

 

 

 

 

 

いつもとは違うヒステリアモードだから気付けた、体内の『魔力の流れ』も

右手に集中させる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―『三歩必殺』ッッッ!!!」

 

 

 

グワァァァッッッッッッッ!!!!

 

 

 

岩盤をぶち抜いたような音を立てて、拳が、流れに逆らうように竜巻にめり込む。

拳ごと弾き飛ばされそうになるが、秋水と中途半端な桜花を連発して強引に踏みとどまる。

 

 

 

 

 

 

 

―踏みとどまることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

巻き込まれていた石や枝が、容赦なく全身を打つ。

特に、竜巻に突き刺さっている右手など、とっくに骨がボロボロになっている。

 

これは……

冗談抜きで死にかねないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―魔理沙……何処だ?」

 

 

 

 

 

―気がついたら、無意識の内にオレが居候している家主の少女を、目で探していた。

 

 

 

アイツでヒステリアモードになってしまった事があるにもかかわらず、オレを嫌う訳でも、利用する訳でもなく、認めてくれた少女。

 

未だ―と言うより、一生残るだろう女嫌いのオレが、一緒にいて緊張しない相手。

 

格上でも格下でも、誰が相手でも決して崩れない、男勝りな態度の、普通の魔法使い。

 

 

 

 

 

 

 

消え入りそうな魔力の線を見つけて、辿った先には―

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、魔力を使い切って、

 

眠るように目を閉じて、竜巻に吸い込まれていくアイツが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―その光景を見た瞬間、俺の中でナニカが切れて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば、右の拳を振り抜いて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜巻を掻き消していた。

 

 

 

 

 

その一瞬、星のように金色に輝くオーラ(・・・・・・・・・・・・・)のような物を視界の端に捉えていたが、気にしている余裕はなかった。

 




補足説明
ハスター:風の神性。 旧支配者4神のなかで、1番人類に友好的(多分)。
水の神性とは異常なまでに仲が悪く、原典でも、水の神性の活動を妨害する側の人間のピンチには眷属であるビヤーキー等を遣わし、セラエノまで連れて来させることがある。
おうし座ヒヤデス星団のアルデバラン付近に封印されているらしいが、定かでは無い。

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