東方英雄伝 ~ラノベの主人公が幻想入り~ 【完結】   作:カリーシュ

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3話 弾幕ごっこ

 

―博麗神社

 

side士道

 

 

ヒュンヒュンッ!

 

 

頭上から大小様々な、紅白の弾幕が降り注ぐ。

 

そのまま真っ直ぐ飛ぶものもあれば、途中で爆散・拡散するもの、

スピードは遅いがゆっくりと追尾してくるものもある。

 

それらを全力で走って、時に転びながらも躱し、時々こっちも火の子レベルの弾幕を放つ。

 

……即弾幕の海に沈むが。

 

 

「ほら士道! 全然こっちに届かないわよ!」

 

「も、もうちょっと手加減してくれ! 避けるので精一杯だ! そもそもオレ飛べないのに!」

 

「なら飛びなさい!」

 

「んな無茶な―」

 

とうとう避けきれずに、追尾弾が不可避の距離に迫り来る。

咄嗟に弾幕を放つも―

 

 

速攻で掻き消えた。 うん分かってた。

 

 

 

ピチューン

 

 

 

 

「は〜。情けないわねぇ」

 

「な、んで、こんな、目、に」

 

……今日これだけで、もう何回弾幕にぶっ飛ばされたんだよ。

 

「そりゃ私がアンタをこき使う為よ」

 

……もう賽銭箱にはビタ一文入れん」

 

「夢想封印いっとく?」

 

「ヤメテクダサイシンデシマイマス」

 

神も仏もないのであった。

つーか通常弾幕ですら避けきれない奴にスペカとか、殺す気しか感じられないんだが。

 

 

 

 

 

「―おーい!どいてくれー!」

 

ん……何処からか声が、

でも見渡す限りだれも―

 

 

ドゴォっ!!

 

 

「ドムっ!?」

 

「イテっ!」

 

「」

 

ピチューン×3

 

 

 

 

 

 

 

ひ、酷い目にあった。

 

……まぁ、この魔女っぽい奴が連れてきた奴の方が死にそうになってるけど。

 

「…で、魔理沙。半死半生のやつなんか連れてきてどうしたのよ?」

 

「弾幕ごっこをやるんだぜ!」

 

「…そいつ、とても弾幕撃てるようには見えないんだけど」

 

というか今この瞬間にポックリ逝ってもおかしくなさそうだが。

 

「さっきの青髪はどうなんだぜ?」

 

「スペカはまだ、飛ぶのもまだだけど、弾幕そのものは撃てるわよ」

 

……誰か心配してやれよ。 口から人魂っぽいのが出てるんだが。

あとマリサとやら。 オレを巻き込むな。

 

 

 

取り敢えず、人魂っぽい何かはさっき投げつけられたお札で押し込んで、ついでに斜め45度に軽く手刀を叩き込む。

ゲフッ!? て聞こえたが気にしない。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

「……なんとかな。酷い目にあった。

……? なんか頭が痛むんだが知らないか?」

 

「知らん」

 

って、復活早いな。 見た感じオレと同じ高校生っぽいのに。

……どこの制服だろ?

 

「…そっちこそ大丈夫か? なんか全身ボロボロだが?」

 

「ハハハ、まぁ色々あってな。

弾幕とか弾幕とか弾幕とか……」

 

「…よく分からんが同情するよ」

 

「……ありがとな」

 

こいつもマリサに弾幕でぶっ飛ばされたのか?

遠い目をしてるんだが……ま、下手に触らないほうがいいだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキンジ

 

「―ホイ終わった」

 

「サンキュー。ったく、封魔針はねぇっての」

 

「あれもう完全な凶器だろ。なんであんなデカい針があんだよ」

 

「さぁ?」

 

武偵手帳に挟んである応急セットで簡単な治療を済ませる。

 

さっきまでそこの巫女に弾幕でフルボッコにされてたらしい青髪の愚痴を聞くと、弾幕と一口に言っても光弾やレーザーは勿論、針やお札といった飛び道具(?)、果ては体術や剣術まで有りとのこと。

 

実際に刺さったらしい、レイピア並にデカイ針を見せられた時にはビックリしたが……

あのサイズの針を正確に、連続で投げられるなら銃いらないな。

 

「…今更だけど、随分治療に手馴れてるな」

 

「まあ武偵だし、それくらいの傷は日常茶飯事なんだよ」

 

「ぶてい?

……なあ、空間震って聞いたことあるか?」

 

「…いや、ないな。なんだそれ?」

 

「…もう一つ聞いていいか?幻想郷に来た時の季節は何だった?」

 

「…ズレてるのか。俺は夏だった」

 

「みたいだ。コッチは春だった」

 

妙に肌寒いと思ったらそういう事か。

 

 

「やっぱり外の世界でも異常が…?」

 

「うお、霊夢!?急に来るな心臓に悪い」

 

100%余すことなく同意する。

そもそも脇丸出しで動き回るんじゃねえ!?

 

「アンタが勝手にビックリしたんでしょ。…それより情報整理よ。私のカンが正しければ、かなり面倒なことになったわ」

 

「面倒なこと?」

 

「その前にアンタ達、自己紹介は済んだの?」

 

……あ。

 

「…五河士道、高校生だ」

 

「俺は遠山キンジだ。同じく高校生」

 

「遠山?珍しいな。確か同じ姓の人が良く時代劇に出てたような…」

 

「よく知ってるな。遠山金四郎だろ。…ウチの御先祖だよ」

 

「マジで!?スゲー」

 

「ハイハイ、盛り上がってないで」

 

 

 

〜精霊武偵説明中〜

 

 

 

「―銃が普通に出回ってる世界か。怖えー」

 

「空間の揺れ…炎の斧…ステルスの一種か…?」

 

ぶっちゃけSSR(超能力研究科)の連中の事をただのオカルト好きの集まりだと思っていたが………

……帰ったら白雪に聞いてみるか。確かアイツもSSRの高ランクだった筈だし。

 

 

「…どうやら、結界の外の世界もメチャクチャになりつつあるみたいね」

 

「うーん、難しいことは良く分からないんだぜ。それよりも弾幕勝負しようぜ霊夢!」

 

「アンタはそればっかり、ハイハイ分かったわよ」

 

「おし!それじゃキンジ!乗るんだぜ!」

 

「あれ、デジャビュ?し、士道!?助けてくれ!!」

 

「スペカは見る分には綺麗だからな。ガンバレ(ドンマイ)

 

「ウソだッ!ギヤァァ!?」

 

このッ、裏切りモンがぁぁぁあ!?!?

 

「ほらちゃんとつかまってないとまた気絶するぜ?」

 

「だから俺は女が苦手

「飛ばすぜ!!」

―もうどーとでもなれ!! 俺は知らないからな!!」

 

白黒に軽く抱きつく。恥ずいしヒスる!

どうかヒスりませんようにどうかヒスりませんようにどうかヒスりませんようnった舌噛ん、だ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―その景色を言い表すなら、まさしく『幻想的』だった。

 

視界に入りきらない程の赤や黄の大小の光球やレーザー。

 

それぞれが、真っ直ぐ飛び、囲い、ホーミングしてくる。

 

一見絶対に当たりそうだが、その光の奔流の中を躱しながら駆け抜ける、おとぎ話のような格好をした、2人の少女。

 

 

「綺麗、だ」

 

「お、やっと笑ったんだぜ!」

 

「え―」

 

「キンジ、今までずっとどっか哀しそうな顔してたんだぜ」

 

「…」

 

思い出すのは、兄さんのこと―

 

 

「―なあ、キンジ。私には誰かを喪う哀しさなんて分からない」

 

「…」

 

「でもな、キンジ。きっとその死んだ兄貴も、キンジが笑ってるほうが幸せだと思うぜ?

私は難しいのは苦手だから上手く言えないけど、とにかく!今を思いっきり楽しもうぜ!

なんたって、―

 

 

 

 

 

ここは幻想郷だからな!」

 

 

 

…………………

 

「―魔理沙」

 

「なんだぜ?」

 

 

 

 

 

「―ドヤってるヒマあるなら前見ろ前!レーザー来てるって!!」

 

「へ―うお!?」

 

げぇ、アクロバットは止めてぇ…!

 

思わず思いっきり抱きついてしまう。

同時に思い出すのは、白黒の笑顔。

 

!?…なんでコイツで、ヤバい、素数―あ。

 

 

 

 

 

 

 

やっちまった、間に合わなかったか。 今回はやたら早かったな。

 

―ヒステリアモード。

 

 

 

 

 

 

 

『ヒステリア・サヴァン・シンドローム』

 

オレに―遠山家に呪いのように存在する能力。

 

性的興奮(・・・・)によって分泌される脳内物質が、過剰に放出され、ウンタラカンタラ(実は詳しいメカニズムは分かってない)で、一時的に超人になる体質。

 

これが原因でオレは中学で酷い目にあったし、親父も―

 

 

……今は考えないようにしよう。

それよりも、ヒステリアモードに気づかれないようにしないと―

 

 

ん…?

何だ、この線みたいなの?

魔理沙自身、箒、魔理沙の撃った弾幕から見える、光る線や点。

同じ光が、別の場所からも見える。

 

これは、もしかして―

 

 

「魔理沙」

 

「!?な、何だぜ!?雰囲気が変わったのぜ!?」

 

「箒の運転に集中して貰えるかな」

 

「え、でもそれじゃ勝てない―」

 

「大丈夫。俺を信じて」

 

コラヒス俺耳元で囁くな気持ち悪い!

 

「オッケーなんだぜ!でもどうするんだぜ?」

 

……この子は人を疑うってことを知らんのかな?

 

「―弾幕を撃つ」

 

「え、ちょ、銃は駄目なんだぜ!!」

 

「大丈夫だ。弾は入ってない。マガジンを入れてないし、チャンバーも空にしてあるからな」

 

「…『弾は』って、何入れてるんだぜ?」

 

「魔法の杖さ」

 

「?」

 

本来マガジンを入れるべき場所には今、『発光している』バタフライナイフが突っ込んである。

 

俺のカンが正しければ―

 

 

狙うは、前から飛んできたホーミング弾。

 

引き金を引く―

 

 

パシュっと、割と小さな発砲音と共に、銃弾サイズの光弾が発射される。

 

「ッしゃ!!」

 

「うお、マジで出たぜ!?」

 

これで迎撃―

 

 

バチンッ

 

 

「…嘘だろ」

 

「打ち消し切れて無いんだぜー!?」

 

……今起きた事をそのまま話すと、

光弾が相手の放った弾幕に当たった瞬間、弾け飛んだ。

 

その結果は当然、

 

 

ピチューン

 

 

 

 

 

 

 

「…なあ士道。弾幕ごっこって、気絶するためのもんなのか?」

 

「…否定しきれないな」

 

……そこは否定して欲しかった。

 

 

 

「それよりキンジ!さっきの何なんだぜ!」

 

「…やっぱ気になるか?」

 

「「「そりゃ勿論」よ」だぜ」

 

デスヨネー。

……どう言い訳しよう?

 

「あー、まあ、あれだ。二重人格みたいなもn

「嘘ね」

!? 根拠は?」

 

「カンと今の態度」

 

「あー、えーと…その」

 

「次嘘言ったら封魔針千本飲ますわよ」

 

……この脇巫女、SSRより尋問科(ダデュラ)向けだろ。 性格的に。

 

取り敢えず、

 

「…三十六計逃げるに如かず―!?」

 

「悪いな、キンジ。オレも命が惜しい」

 

「てめ、士道、離せ―分かった、話す!話せば分かる!話すから針とヤバそうな薬品しまえお前らぁぁぁぁぁあ!!?」

 

結局(自称)自白剤盛られた。

 

 

 

〜武偵自白中〜

 

 

 

「…これで、全部、です」

 

結局……全部喋っちまった………カン当たりすぎだろ……

 

 

まあ反応の方は当然、

 

「…うわぁ」

 

「変態」

 

「じゃあキンジさっきの酷いんだぜ!」

 

「…返す言葉もございません」

 

「それ魔理沙に向かって言ったら?」

 

「…」

 

……なんて言えば良いか分からん。

そもそもどのツラ下げてコイツに話しかければ―

 

「…キンジ」

 

「…

 

「…何で今まで黙ってたんだぜ?」

 

「…」

 

恥ずかしい、もあるけど、1番は―

 

「昔、コレでトラブルに巻き込まれたから、です」

 

中学の時―

何処からかヒステリアモードのことがバレ、女子どもに都合のいい『正義の味方』にされた。

 

あの時期は………本当に酷かった。

 

 

……今回も、そうなるのか?

いや、コイツらは『正義の味方』(そんな下らないモノ)が必要な程弱くない。

 

―なら拒絶か。 まあ、利用されるよりはマシか。

 

 

 

 

 

 

 

「…キンジ」

 

「ハイ」

 

 

 

―が、次に飛んできた言葉は、オレの予想の真逆を、遥か彼方までぶっちぎっていた。

 

 

 

 

 

「―なんでそんな『面白そう』な能力早く言わないんだぜ!?」

 

「…だよな。気持ち悪―

 

 

 

 

 

……え?」

 

 

 

「ヒステリア・サヴァン・シンドロームね。幻想郷風に言えば、『興奮することで数十倍強くなる程度の能力』かしら?」

 

……ど、どうなって、

 

「トリガーがアレな感じはするけど、普段よりも圧倒的に強くなるなんて、マンガとかのヒーローっぽくてカッコイイじゃねえか!」

 

!?!?!?

 

「キンジ!」

 

「は、ヒャい!?」

 

「魔法使いになれなんだぜ!」

 

「!?」

 

「さっきの弾幕!あれ魔力弾だぜ!キンジならなれるし、能力使わないなんて勿体無いんだぜ!」

 

襟を掴んでズルズルと……ッ!?

じょ、状況が全く把握できん!?

 

「へ、ちょ、引っ張るな!士道辺りをスカウトすればいいだろうがッ!」

 

「キンジじゃなきゃイヤなんだぜ!」

 

 

……サヨナラ平穏。

コンニチハ(非日常)

 

 

―これだけは言わせろ。

 

「どうしてこうなったああぁぁぁ…」

 

 

 

 

 

side士道

 

「…世の中広いんだな」

 

あんな変わった能力があるなんてな……

 

「なにお爺ちゃんみたいなこと言ってんのよ。アンタも早く飛べるようになりなさい。霊力量的には出来ない方がおかしいんだから」

 

「まだやるのか!?」

 

「勿論♪」

 

「ウソだドンドコドーン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―その夜

―テラス

 

「―ねぇ、大丈夫なの?」

 

「どういう意味?」

 

夜闇に浮かぶ月を眺めながら、隣に座っている妹に声をかける。

 

「…もうすぐ異変を起こす話はしてあるでしょ」

 

「私は大丈夫だけど?」

 

「…そうじゃなくて、最近貴女の専属にした従者のことよ」

 

「ああ…この間咲夜が厳しいってちょっと疲れてたよ?」

 

「…そう」

 

指を鳴らす。

 

次の瞬間、まるで最初から居たように現れたメイドが、紅茶を継ぎ足す。

 

 

目の前の『妹』もマネして指を鳴らす。

 

若干の時間差で影から現れたのは、中性的な顔の少年。

 

 

改造させた、全身黒尽くめの執事服に、何よりも目立つのは、隠しきれていない、背負った2本の剣(・・・・)

 

「…えへへ」

 

「急にどうしたのよ?」

 

「ん〜、楽しみだなあって」

 

「…そうね」

 

空に浮かぶは、小さな三日月。

満月には、あと2週間程かかるだろう。

 

 

「…せっかくこんなに月も緋いのだから、楽しまないとね」

 




ヤバイ…紅魔館のEX感が…

・妹様開放済み。
・『二刀流の黒の剣士』、敵キャラ。

…アレ?クリアできるか、コレ?
難易度がルナティック(デスゲーム)固定になってる気が…

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