ZERO-OUT   作:Yーミタカ

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今回、あまり話進まないです、申し訳ありません。
そして途中のキュルケご先祖様の逸話は完全に捏造なのであしからず。


第十二話 麺処 火国

 すでに日も落ちたというのに昼のように明るい城郭街の大通りで、ルイズは寧夢がメイメイに似たロボットを整備しているのを、屋台の長椅子に座って待っていた。

「まだかかりそう?」

「いんや、あと一本、配線直したら終わり!」

ルイズには読めないが、屋台には『麺処 火国』と書かれた、炎を模したような看板がかけられている。

 

 二人がなぜこのようなところに来ているかというと、実験を終え、片付けをした後、寧夢が提案したからだ。

「そうや、ちっと外、食べ行かん?ルイズはんのオゴリで。」

「いや、わたし先立つ物ないし。」

ルイズは寧夢が冗談を言っていると思ってそう答えたが、寧夢は首を横に振る。

「そやったらなおさらや。それに先立つモンやったらあるやん?」

寧夢はルイズが錬金した金を持ってそう言った。

「え?そんなのこっちじゃ石コロって・・・」

「才人、やっぱちゃんと教えとらんねぇ?ルイズはんはさ、この金とかってどんな使い道が思い浮かぶ?」

ルイズは寧夢にそう尋ねられると、

「ネックレスとか指輪とか・・・」

と、自信無く答える。州でそれに類する物を身に付けていたのは、人骨で作った物といった例外を除外するとジョーイくらいで、それもルイズから見れば『安物』の一言に尽きるほど簡素であったため、装飾品自体が一般的に利用されないと考えたためだ。

「装飾品やね、要は。ウチやったら電子部品の材料っち考えるわ。使う人も多いけん部品のがオススメよ。装飾品は欲しがる人がハイソやけぇ、上手くやれば高く交換できるけど、そんな人とコネつなぐ手間と、気に入ってもらえるセンス考えたらコスパ悪いわね。」

寧夢がそう言うとルイズは彼女の言わんとしていることがわかったので手を打つ。

「どんな物でも必要な人がいるってこと?」

「そぉ、商売のキホンやね。どげんガラクタに見えても、欲しがる人はおるっちゃけん。」

物々交換とは、交易、商売において最も原始的なもので、その発祥は人間が石槍で巨象やシカを追い回していた頃まで遡るとさえ言われている。州が属していた『太陽の国』でも1000年ほど前、藁しべ一本から物々交換で億万長者になった者もいたというし、ハルケギニアにもこの藁しべから億万長者になった者と似たような話がある。

 炭焼職人が使い手の無い木の棒一本を、松明に使う木の棒を欲しがっていた狩人相手に鹿の干し肉と交換し、食料をミスで腐らせてしまい、空腹に苦しむ行商人と、その干し肉と布生地一巻を交換し、納期に間に合わせる布が無くて困っていた町の仕立て屋に持っていくとロバ・アル・カリイエ産の絹布だとわかり1000エキューで売ることができた。このお金を元手に商いを続けたこの男は一代で財を為し、貴族の位を買って『ツェルプストー』の家名を名乗ることとなった。言うまでもないが、ルイズと犬猿の仲である女生徒の先祖だ。

 これを知った時のルイズは痛快であった、仇敵の弱みを知ったのだから。しかしある時の口喧嘩で『炭焼の子』と言った瞬間ツェルプストーはルイズにグーで殴りかかり、ルイズも殴り返した結果、殴り合いとなってシャルとジョゼットに止められるという事があった。素人の女子が殴りあっただけなのだから大した怪我をしたでないのに泣いていたツェルプストーを見てルイズは、さすがに言ってはいけないことを言ったと反省し、後に謝罪した。彼女も使用人や政敵となる家柄の者に『母の不倫で出来た子』だの『拾われ子』だのと陰で言われることがあったがツェルプストーは一度もそれを言ったことはなかった。

 そんな話を思い出した彼女は、『貴族の位を買う』ということに、『自分の価値を金に換えて国に売り込む』と考えた。ツェルプストーの先祖であれば自分の商才を国に売り込んだと考えられるし、他の者も何らかの才を売り込んでいる、これも先の寧夢が言っていた『作った装飾品を気に入ってもらえるセンス』と同じで商売の一つなのだ。

 

「とりあえず練習しよか?まずはさっきのをウチに渡して、加工する。加工費はホンマやったら即払いやけど、今回はツケにしとくけんね。」

「ツケってそこはしっかり取るのね?」

「当たり前!取引の練習なんやけんね。まあ、ご飯一回オゴリでええけど。」

寧夢がそう言うとルイズは胸を撫で下ろす。事実上、今回は無料でやってくれるというわけだ。寧夢はルイズが錬金した貴金属とウランを旋盤で加工し、樹脂の板に金銀銅白金で幾何学模様を描いたり、糸にしたり、ウランを丸い穴無し壺のようにしていく。

「さて、電子部品にフュージョンセル、これだけあれば上々やね。」

「こんなの、どうするの?」

「まず知り合いに交換してもらうけぇ、ついて来て。」

そう言って寧夢はルイズを伴い、早苗を留守番に残して家を出る。

 

寧夢はルイズを、寧夢が使っていたような工具を模した看板がかけられた店に連れて来た。

「ルイズはん、何か聞かれたらメンドーやけぇ、ウチの弟子っちゅうことにしといて。」

店に入る前に寧夢はルイズにそう言うと、ルイズは首を縦に振る。

店の中は雑然としており、ルイズは魔法学院の恩師、コルベール先生の研究小屋を連想した。

店の中には恰幅のいい、白髭にコルベール先生のような頭髪の無い頭の、初老の男が寧夢の家にもあった機械を組み立てていた。この店の店主だ。

「今日はもう店じまいだぞ、ん?おぉ、マイスターじゃねぇか!こんな時間にどぉした?」

「オヤッサン、ちっと取引したいもんがあるんや。」

寧夢はルイズに目配せし、持たせていた袋から電子部品、フュージョンセルをカウンターに出させる。

「おや、嬢ちゃん、見かけねぇ顔だな?マイスター所の新入りか?」

「はい、ミス・ササキにはお世話になっております。」

「みす、佐々木?」

ルイズは寧夢を先生ということにした話し方をしたのだが、店主には聞き慣れない言葉であり、怪訝な顔をした。

「あぁ、そん子な、古代人なんよ。どうも米の国ん人の流れ汲んじょるみたいで、ちっと話し方おかしいけど気にせんといて。ほんでさ、これを水と換えてほしいんやけど、どやろか?」

「少し待ってろ。こいつは・・・や?マイスターのか?ハハァ、嬢ちゃん、まだ見習いだな、てっきり嬢ちゃんの初仕事かと思ってな。」

「そうよ、まだこん子、入門したばっかやけぇ、売り物は作らせられんわ。」

寧夢はルイズが下手なことを言わないようにフォローするため、ルイズは身振りだけで寧夢の言ったことを肯定するだけである。

「じゃあ、いつもどおりのでいいな?」

そう言って店主は寧夢に数枚の板を渡し、寧夢はその板を見てルイズに渡す。

ルイズが受け取った板には、先の尖った兜を被った男の肖像と数字が書かれており、数字の横には水の容れ物が描かれている。

 

「ネム、これ何?水って言ってたのに・・・」

「ああ、それも話さんとな。この城郭街だけの通貨、『水券』よ。これを市庁舎か街の入口に持っていくと、水に換えてくれるんよ。」

「あ、じゃあこの数字は換えてもらえる数ってこと?」

「そうそう、考えてみてん?こんな大量の水、引っ提げて歩くとかやってられんやろ?」

水券に書かれていた水の量は、どうにか数字を理解できるルイズも簡単に想像できた。少なくとも彼女が手に持って歩ける量ではない。

「それとこの街での取引んコツやけど、最後はなるべく水以外のモンで終えて街を出るんよ、そやないと交換率の関係で不利やけんね。」

寧夢は簡単に喩え話で取引の流れを説明し、水10本を持ち込んで水券に替え、すぐに水に戻すと手数料引きで8本になってしまうことを教える。

「何て言ったらいいのかな?騙されてるみたいな・・・」

「ま、その通りっちゃその通りやな。この手数料、要は『安全料』なわけやけど、100%安全な場所なんて無いんやから。

 あ、見えてきたわ、アソコよ。」

寧夢は大通りの屋台を指差す。その看板には『麺処 火国』と書かれ、白い布を頭に巻いたプロテクトロンが屋台の店番をしていた。

『ヘイラッシャイ!』

「立花、久しぶり、元気しちょった?」

『ヘイラッシャイ!』

プロテクトロンが同じ言葉を話しながら頭を下げる。

「ネム、『ヘイラッシャイ』って何か意味があるの?」

ルイズは自分がわからないだけで『ヘイラッシャイ』に特別な意味があると思ってそう尋ねるが、寧夢は首を横に振る。

「こん子ね、故障しちょって『ヘイラッシャイ』しか言えんのよ。やけどさ、何となく何を言いよんのかわかるけぇどうにかなっちゅうんや。」

『ヘイラッシャイ!』

立花は寧夢の紹介に答えるように頭を下げる。

「じゃ、立花、黒ラーメン二人前お願いね。ルイズはん、水券。」

寧夢がそう言ってルイズから水券を受け取り、それを立花に渡すと立花は差分の水券を返し、同時に電子部品、機械部品、弾薬を差し出す。

『ヘイラッシャイ!』

「ん?ああ、整備やね?やったら今日はこれより、餃子二人分つけてくれん?そっちがええわ。」

『ヘイラッシャイ!』

立花は出した部品等を片付け、背中を向ける。承知したという意味である。

「ルイズはん、ちっと待っちょって、こん子の整備、ちゃちゃっと終わらせてまうけん。」

そう言って寧夢は整備を始め、冒頭に戻るのだ。

 

 寧夢が整備を終えると立花は屋台で調理を始める。野菜を切り、麺を茹で、ハムのようなものを炙り焼き、腸詰のようなものを焼いている間に大きなスープボウルというよりはフィンガーボウルのような器にスープ、麺、野菜、炙り焼きしたハムを入れる。スープは黒い油のようなものが浮かんでおり、ルイズは寧夢の顔を見る。

「ネム、これ・・・」

「黒ラーメンよ、やっぱ城郭街来たんやったらこれ食べなね!いただきます!」

寧夢はルイズが戸惑っているうちに食べ始め、ルイズも気後れしながら、慣れない箸を使ってまずは麺をすする。

「あら・・・見た目と違ってあっさりしてる。」

「やろ?このクセの無いとこがええんや!」

寧夢はそう言いながらルイズが、箸を上手く使えないのを察する。

「立花、フォーク一本・・・」

「あ、大丈夫よ、ネム。練習しないといけないから。」

ルイズは寧夢の申し出を断り、慣れない箸を使い続ける。

「ルイズはん、持ち方やけど・・・」

それを見かねた寧夢は、ルイズに箸の持ち方を教え、ルイズもスムーズに食べ始める。

 

「そういえばさ、この子、タチバナだっけ?『ヘイラッシャイ』しか言えないのって故障なのよね?治してあげないの?」

『ヘイラッシャイ!』

ルイズが話していると立花が、先の腸詰めを焼いたような物、餃子を二人に出した。

「ありがと、立花。いやね、治せるんやったら治したいんやけど、ウチにはでけんのよ。」

寧夢はそう話しながら餃子を頬張る。

「できないって、ネムでも?」

「・・・うん、立花の故障、中枢部にあるんよ、そげんとこウチがいじってもうたらまず壊してまうわ。」

ルイズはスープをレンゲで飲みながら寧夢にあらためて尋ねる。

「ネムにも出来ないことってあるんだ?」

「そげなこと当たり前よ。治せるとしたら一人、ウチなんか比にならん『キリン児』っちゅうのがね。」

「その人は・・・?」

ルイズは寧夢がその『キリン児』の話をして目に涙を浮かべたのに気づく。

「いろいろあってん、今はどこおるんかわからん。」

「その・・・ごめん。話したくないことなら・・・」

「ええよ、ルイズはんにも聞いてもらいたいけんさ。立花、ビール一本!ビンで!」

『ヘイラッシャイ!』

立花がビンを一本とグラスを二つ出すと、寧夢は水券を渡そうとした。しかし立花はその水券を突き返す。ルイズにはその姿が、

『御足はいらねぇぜ、嬢ちゃん。そいつは俺のオゴリさ。』

と、妙にかっこよく言っているように見えた。

「ありがとな、立花。ルイズはん、立花のオゴリやけぇ飲も!」

「あ、大体あってたのね、今の。」

寧夢が『ビール』と言っていたビンを開け、ルイズ、そして寧夢のグラスにそれをつぐと、シュワシュワと白い泡が麦色の酒から立ち上る。ハルケギニアではエールと呼ばれる酒に似ているそれを口に含むと、普段飲んでいるワインとは全く異なる苦みとコク、そして炭酸の刺激が口に広がった。

「・・・不思議な味ねぇ、あら?ネム?」

一方の寧夢は一杯飲み干したのと同時にテーブルに突っ伏していた。

「・・・めんなぁ・・・」

寧夢がそう呟くと、ルイズは寧夢に近づき、耳をすませる。

「ごめんなぁ、たっくん!ホンマ言いすぎたわぁ!!」

寧夢はそう叫びながらルイズに抱きつく。彼女はとある遠縁の親戚と違い、泣き上戸なのだ。

「ネ、ネム!?落ち着いて、どうどう・・・」

ルイズは助けを求めるように立花を見るが、立花は両手の平を上に向けるような仕草をして、

『ヘイラッシャイ!(諦めな、いつものこった。)』

と、答えるだけであった。

 

 しばらく泣いた寧夢は少し落ち着き、自分の座っていた方に戻る。

「さ、グラス乾いてるわよ。」

ルイズはそう言って寧夢にビールをつぐ。この具合がなかなか難しく、ルイズがついだビールはグラスの半分ほどが泡になってしまう。

「ありがとな・・・ルイズはんも。」

寧夢は慣れたもので、ビールを少しずつついでルイズのグラスはほとんどビールだけになっている。

「その、たっくんってのが『キリン・・・?」

「キリン児、神童、天才っちゅうヤツやね。卓也言うてね、いっつもウチを超える技師になるんやっち息巻いとったんよ。」

「え?その言い方だと、そのタクヤよりネムの方が腕が良かったんじゃないの?」

ルイズの問いに、寧夢は首を横に振る。

「ウチが出来ることっちゅうのは時間さえかければ誰かて同じこと出来るんよ、やけどあん子はウチどこか、多分州を探してん二人とおらんことが出来たんや。」

寧夢は一度、ビールを一気飲みして、ルイズは先の寧夢を真似してビールをつぎ、今度は泡を四分の一ほどにとどめる。

「戦前の物を理解できたんよ。」

「戦前のって、ネムだってサナエとかメイメイ、それにロードファイターだって・・・」

「それは残っていた戦前の物を『組み合わせた』だけ、知識と根気と時間があれば大なり小なり誰でん出来ることよ。やけどあん子やったら、設備さえあれば『ゼロから』早苗どこか、『リバティ・プライム』っちゅう、戦前最強っちウワサのロボットかて作りきったやろうな。」

熱く語る寧夢の様子に、ルイズは『卓也』が寧夢にとってどのような人物か、ある程度察しがついてきた。

「ただ、あん子はそんな才能を使いこなせんかったんよ。どんだけのもん作ってん組み立てをしきらんで・・・」

「ネム・・・そのタクヤってもしかしてネムの弟?」

ルイズが寧夢の話に割り込むようにそう尋ねると、寧夢はうなずく。

「そうよ。ほんでさ、あん子とんでもないもん持ってきたんや。」

「とんでもないもの?」

「それの設計図見て、あんまりにも驚いて・・・ほんで・・・」

全てを話す前に寧夢は屋台に突っ伏して寝息を立て始め、ルイズはごまかすように立花を見ると、立花は困っているとでもアピールするかのように頭に手を当てていたが、それはそのように見えるだけであった。

『ヘイラッシャイ!』

急に虚空へそう言ったのを見てルイズは立花が本格的に故障したのかと勘違いしたが、立花が周囲に聞こえるようにして通信していたため、どこと話しているかがわかったのだ。

【あらぁ?立花さんですかぁ?お久しぶりですぅ!】

早苗を通信で呼び出していたのだ。早苗はなぜか立花の話が細かくわかるようで、しっかり会話をキャッチボールしている。

『ヘイラッシャイ!』

【まあ、ご主人さまったらまたお酒を!?ごめんなさいねぇ、立花さん。お代は?】

『ヘイラッシャイ!』

【それはよかったですぅ!すぐにお迎えに参りますから・・・そういえばルイズさま、お連れのかわいらしい女性は?】

『ヘイラッシャイ!』

【あ、ご一緒ですね、申し訳ありませんってお伝えいただけますか?】

『ヘイラッシャイ!』

【本当に何から何まで・・・では。】

プツッと小さい音がして、立花はルイズの方を見る。

『ヘイラッシャイ!』

「あ、サナエの伝言ね、きっと。大丈夫よ、聞こえてたから。それよりありがとうね、サナエ呼んでくれて。それにお酒はタチバナのオゴリってのも、黙っててくれたんでしょ?」

『ヘイラッシャイ!』

立花は『ヘイラッシャイ!』としか話せないが、『ヘイラッシャイ!』には意味がある、それを汲み取れる者にとって立花は心暖まる相手なのであると、ルイズは寧夢が彼女をここに誘った理由を感じ取ったのであった。

 

 しばらくして早苗が来て、ルイズは寧夢を背負う早苗と共に帰路につく。

『あの立花さんのお店、ご主人さまのお父さまがご贔屓になさってたお店なんです。わたくしはその頃は存じませんが、叔母さんからお話しはうかがいました。』

「サナエの叔母さん?」

『ご主人さまのお母さまがお作りになったMs.ナニーです。三年前、亡くなりましたが。』

早苗の言う『亡くなった』とは当然だが『AI基部が修理不能なレベルで破損した』という意味である。

『何でも、戦前にラーメン屋を兼業なさってた探偵という方の知識、記憶を持つ人造人間だったそうです。』

早苗はそう言って叔母から受け継いだ写真を、眼から光の像を出して見せた。屈強な男と、その隣に立つ表皮が剥がれた人間・・・に見えたがよくよく見ると人間を模したガーゴイルかゴーレムの表皮が経年劣化でボロボロになったような男と、先の立花、幼い寧夢、寧夢の母とおぼしきたくましい女、そして屈強な男が抱きかかえる、まだ赤子か、いいところ幼児といった少年を写し出した。

「この女の子、ネム?」

『はい、そうですよぉ!今とは似ても似つかないほどかわいらしいでしょう?』

「黙っててあげるけど、知れたら解体されるわよ?」

『ヒイッ!そ、そんなことより、こちらがお父さまとお母さまで、この坊やが弟さまの卓也さま、こちらが立花さんで、この方が麺処火国の店長、人造人間の左京さま。』

早苗は誤魔化すように映像に写る者達を紹介していく。

「人造人間って?」

『左京さまは実験の途中で破棄されたので違うそうですが、何でも州の人間と成り代わる者達だそうですよ。』

「成り代わるって、何でそんなことを?」

ルイズは単純に動機がわからずそう尋ねるが、それは早苗も知らないことで、

『残念ながら動機までは・・・』

と、答えた。

「じゃあさ、そのサキョーさんって人はどうしたの?」

『これも詳しくは存じ上げないのですが、副業に探偵をなさっていたそうで、そのお仕事の最中に行方不明になったとか・・・でも、立花さんは左京さまがいつかお戻りになる日まで、あのお店を守るおつもりのようですよ。』

「・・・そうなんだ、偉いわね、あの子。」

ルイズはそう言って早苗への質問をしなくなり、不思議に思った早苗が尋ねる。

『ルイズさま、ご主人さまのこととか、質問なさらないのですか?』

「ネムのこと?それじゃあさ、そのお乳をどうやって作ったか・・・」

『いえ、そういうお話しでなくて、お父さまやお母さま、弟さまのこと、お気にならないのですか?』

早苗の問いかけにルイズは、ハルケギニアでは考えられない、町の明かりが星々をかき消してしまった黒い空を見上げて答えた。

「それはもちろん、気になるわ。けどね、わたしは人のことを根掘り葉掘り調べるような悪趣味は持ってないの。だからさ、そのうちネムから話してもらう。それまでサナエも教えてくれなくていいわよ。」

早苗はルイズの答えに、驚くように眼の虹彩のような部分を大きくしたり小さくしたりした。

『・・・ご主人さまは良いご友人をお持ちになられました、ルイズさま、ご主人さまのこと、末長くよろしくお願いします。』

「大げさねえ、それにサイトがいるでしょ?」

『才人さまは・・・まあ、申し分ないお方だとは思いますが、ご主人さまのお父さま基準ですと、『娘はやれんな!』とおっしゃいそうですよ。』

「あらら、二人の間には大きな壁が立ち塞がるのね。」

と、軽口を並べながら二人と一体は夜道を歩いて・・・一体は正確には飛行していった。

 

 翌日、日が昇ると寧夢は頭を押さえて唸っていた。

「い、痛いわぁ・・・」

「二日酔いね。サナエ、お水ある?」

『こんなこともあろうかと、お預かりしてました水券、交換して来ました。ルイズさまもどうぞ。』

早苗は二人に水の缶を出し、二人で飲み干すが寧夢の二日酔いはまだ醒めない。

「ジョーイはん呼んでくれん?」

「ダメよ、こんなことで呼び出しちゃ。肩貸したげるから、一緒に行きましょ?」

二人はジョーイ宅に赴き、酔い醒ましを交換してもらった。その時のジョーイのあきれ返った顔を、ルイズは忘れることはないだろう。




いや、やっぱりタカハシがダイヤモンド・シティの癒しだったのでこちらでもタカハシポジションとして立花を、そして行方不明になってますが人造人間で探偵のニックポジションも。
ぶっちゃけニックみたいな頭脳キャラって書きにくいので、あまり書きたくないミタカです。
では、解説

左京(行方不明)
人造人間プロトタイプの彼、ラーメン屋を切り盛りしながら探偵業を営んでいました。名前の元ネタは某警部。やっぱり人造人間の存在感はニックが一番インパクトありましたね、ミタカ的には。

立花(プロテクトラン)
ダイヤモンドシティの癒し、タカハシポジションの立花。故障で同じ言葉しか話せないですが、立花はロボットとだけは話せます。(タカハシも話せている描写あったかな?)
ラーメンのイメージのために熊本ラーメンの店に何度も食べに行き、酒飲めないくせにビール飲んでたおバカは自分です。店長さん、ご迷惑をおかけしました。
余談ですが、早苗、実は人間には『さま』で、ロボットには『さん』付けにしてます。なので早苗は人造人間を『人間』と捉えています。

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