ZERO-OUT   作:Yーミタカ

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これで連続投稿は最後です。
ここまで書いて、よくもまあこれだけの字数を一話にまとめようなんて無謀なこと考えたものだと自分に少し呆れてます。


第十一話 魔法実験

「さて、今からルイズはんの魔法を見せてもらうわけやけど・・・」

寧夢はルイズの前に金属でできたボール・・・よくよく見ると早苗の頭部から『目』を外したようなものと、分厚い楯を用意した。

「えっと、ネム?これ、何?」

「万一の時の保険よ。

 とりあえず見てわかるヤツで、魔法やないとでけんもの、かつ結果が残るものがええけん・・・原子変換、『錬金』お願い。」

ルイズは寧夢が注文した魔法の種類を聞いて首をかしげる。

「錬金?魔法じゃないとできないって、こっちのアスファルトとかコンクリート?それに鉄だって錬金よりすごいでしょ?」

ルイズはこれまで、ハルケギニアでは絶対に存在しないものを何度も見ている。

それらと比べて錬金が、『魔法でないとできない』とは思えないのだ。

「考え方の問題よ、ルイズはんが言うた土の魔法『錬金』、ホロテープに書いちょったのやと『原子変換』っちゅうのは、普通は絶対でけんのよ。

 ルイズはんが言いよんもんは、材料と道具があって、作り方がわかればルイズはんトコでもできるんや。

 けど、石コロをたとえば鉄にするっちゅうのはコッチじゃムリ。

 何を混ぜても石は石やし鉄は鉄、石が鉄になりはせんし、鉄が他の金属、たとえば金になったりせん。」

原子論、物質を構成する最小単位たる原子は、他の原子になったり、二つ以上に分裂したり増殖したり、突如現れたり消滅したりしない。

質量保存則、どのように物質が変化しても質量が変化することはないという物理法則。

両者とも例外として核反応等があるが、そうでもなければ覆すことのできない原則である。

錬金の魔法はこれを覆してしまうのだ。

「じゃあ、いいけど・・・わたし、一番簡単な青銅の錬金も爆発させるのよ?」

「それはこっちでどうにかするけん大丈夫。」

寧夢はルイズのこめかみ、服を少しめくって胸、最後に手首へ紐のついた白い布を貼り付けながらそう言った。

紐は一つの機械につながり、その機械を寧夢は自分の義手と繋げる。

「どうにかするってどうやって?」

「ルイズはんが失敗で爆発させる原因・・・一つの系統使おうとしてもでけんのっち力の入れすぎで余った分が他の系統に流れよんのやと思うんよ。

 それこそ枝毛切るんにポン刀使いよんようなモンやないんかな?」

「ポントウ?」

「ゴメン、両手持ちの剣って言うたほうがええかね?

 とにかく、力をセーブするために脳波、心拍、脈拍、それと体の中んPip-Boyの反応を見ながら調節するんよ。

 それでん爆発した時は、あのMr.ガッツィーん頭、チタン合金やけぇまず割れはせんし、すぐ早苗が蓋する、それでんダメやったらこん楯の陰に隠れる。

 最悪、この地下室が崩落せんけりゃ中のモンは壊れても直せばええんやから、気楽にやってな?」

寧夢は楯を床に置き、すぐ持てるようにすると早苗にMr.ガッツィーの頭部を持たせた。

「それとね、作る金属やけど・・・いっちゃん難しい『金』にしてみ?」

寧夢はルイズから魔法の説明を受けた時に、スクウェアメイジでなければ金を錬金することはできないと聞き、力が強すぎるのならば一番多く必要なものにすれば爆発のリスクを下げられると考えたのだ。

「え!?ムリムリムリムリ!!青銅でも失敗するのよ!!」

一方ルイズにしてみれば、歩くこともできない赤子がドラゴンを乗りこなせと言われたようなものだ。

「やってみらんとわからんけぇ、これはウチを信じてな?」

中には拳二つ分くらいの石が置かれ、ルイズは寧夢の合図で錬金のルーンを唱え始める。

金の錬成となると、トリステインでもできるメイジは両手で数えられるほどしかいない。

それをやれと言われたルイズは、寧夢の言ったことも忘れて力んでしまう。

「・・・ルイズはん、もうちっと弱めて、全部振り切っとるよ。」

寧夢が背中を撫でる感触に言われたことを思い出し、深呼吸する。

「すうぅ・・・『錬金』。」

ルイズの目に映る全てがスローモーションに見える。

V.A.T.Sを使っているわけではないが、そのように感じてしまうのだ。

Mr.ガッツィーの頭部の中に杖を向ける、杖の先から何かが出たように見えるほど時間がゆっくり流れ、それが石に当たり、石が光ったように見えた。

「早苗、今!」

寧夢の合図で早苗は蓋を閉め、寧夢も楯を持ち上げ、ルイズをしゃがませて二人一緒に隠れると同時にMr.ガッツィーの中で小さな爆発が起こる。

いつものような大爆発ではない、ジョゼットの失敗魔法と同じくらいか、もう少し弱い。

「ゴメン、ネム・・・ここまでしてもらったけどダメだったみたい。」

ルイズは肩を落とす、手応えがあったように感じたが結局は爆発させてしまったのだから。

「いんや、まだよ。

 早苗、さっそく中を調べてな!」

『りょ~かいしました~!

 え~っと・・・分析開始――内部調査――』

寧夢はルイズに貼り付けた白い布・・・電極をはがしながら早苗に命じる。

すると早苗は目の一つを仲間の部品に突っ込み、たまに光りながら中を見回す。

『完了しました、こちらになります。』

早苗が出した分析結果、そして中の映像を見た寧夢は目を見開き、脳波測定器、心電図を義手から急いで外し、早苗からMr.ガッツィーの頭部を取り上げる。

「ウソやろ!?いくらなんでもそげなモンまで!?早苗、布!何でんいいから布広げて!!」

『は~い、えっと、こちらで?』

早苗は先ほどルイズの普段使いの服を作るのに使った布の余りを広げ、寧夢はそこに中身を慎重に出す。

「銀、銅に白金、金は・・・あ!融けてこびりついちょる!ウランまでひっつけてこの・・・取れた!」

中に残っていた物を義手で剥がして取り出すと、ルイズが錬金した残骸が布の上に全て出された。

砕けてしまっているが、黄金色に輝く石、白銀に輝く石、赤く輝く石、黒ずんだ鉱石等。

全て石ではない、元の石に比べて体積は幾分減っているが、全て金属、そして鉱石だ。

金、銀、白金、銅、そして最後の黒い鉱石だけはルイズには見覚えがない。

黒い鉱石は地下室が少し暗いのもあってか、薄緑色の光を発しているのが見える。

「キレイ・・・」

ルイズは無意識にその光る黒い鉱石を素手で取ろうとして寧夢に止められる。

「ルイズはん、念のためコレ使いよ?」

寧夢はルイズに手袋を渡し、ルイズは手袋越しに鉱石を手に取る。

「ネム、この光る石・・・もしかして宝石?」

「そんな話、どっかで聞いたことあるけどコレをアクセサリにするんはやめちょき、この光りよんの、放射能やけんさ。」

寧夢から教えられた衝撃の事実にルイズはその鉱石を思わず放り投げ、寧夢と早苗があたふたしながら鉱石をキャッチする。

「もぅお願いやけん、投げるんやめてな!」

「ゴメン、でもソレ、ものすごい毒なんでしょ?」

「それ、才人から聞いた?間違っちゃおらんけど、こんぐらいのやったら飲んだり割れて粉になったん吸うたり、今言うたみたいに、アクセサリにして肌身離さず持ち歩いたりせんけりゃ大丈夫やけん・・・そやね、ルイズはんも持っちょくとええわ、確かまだ予備が・・・あった!」

寧夢は先ほど操作していた大きな窓の横にあるテーブルの引き出しをガサゴソと探して、ブレスレットを出す。

ジョーイが使っていた懐中時計の着いたブレスレットに似ているそれは、時計の文字盤のすき間に小さな羅針盤らしきものと灰色の窓が着いている。

寧夢がその懐中時計ブレスレットを先の鉱石に近づけると、『カチカチカチ』と、時計の針がすごい早さで動いているような音がするが、時計は何事もないかのように時を刻んでいる。

音を出しているのは灰色の窓のようで、数字が小さくだが変わっている。

「よし、大丈夫やね。

 これ、ガイガーカウンター、方位磁石付の腕時計なんやけど、これがピーピー言うた時はそこから離れるようにしよ。」

「鉱山の小鳥みたいね。」

ルイズは鉱山で使われるガス探知法の小鳥を思い浮かべる。

ハルケギニアだけでなく最終戦争よりはるか昔の州でも使われていた方法で、鉱山の採掘中に小鳥を入れた鳥かごを置いておくことで、ガス漏れで苦しんだり崩落の予兆を察して激しく鳴き始めることをセンサーとしたのである。

「また原始的な方法やね、まぁ、それのもっと正確なヤツやと思って。

 それと時計、戻ってくる間に教えたとおりやけん、あと、遅れ始めたり止まった時は直しちゃるけん言うてね。

 最後に磁石、この字、『N』が北で・・・」

ルイズは城郭街に戻るまでの間に、寧夢とジョーイに時計の読み方を教わり、同時に帰ってから他のものの読み方を教えてもらう約束をした。

そのため、寧夢はルイズが磁石の読み方を知らないことをわかっていたのである。

「ありがと、それよりさっきの、錬金したヤツ、どうなの?」

「あ、そやった、忘れちょった。

 まずさ、聞くけど錬金っちこんなバラバラの金属ができるん?」

「いえ、ならないわ。わたしは言われたとおり『金』の錬金しかしてないもの。それこそ爆発で中身がはがれたんじゃないの?」

ルイズはあくまで先の錬金は失敗したと考えているが、寧夢はそう思っていない。

「たしかに、一部配線に金銀銅白金も使われちゅうけど、何があってんあんな塊ができるわけないわ。

 それに何より、加工前のウラン鉱石があるなんてありえんもん。」

「うらん鉱石?」

「さっきの光る石んこと。早苗とかん動力源ん材料やけど、さっきのガッツィーは完全に動力源抜いちょったし、そやなくても材料そのまま入れちょくなんてポカ、ウチはやらんから、ルイズはんの錬金以外に考えられへん。」

寧夢はそう言いながら布の上に広げた金属、鉱石を種類ごとにわけてまとめる。

総量は拳一つ分、約半分ほどに目減りしており、最も多いのが金で四割ほど、次が銀と銅で二割ずつ、最も少ないのが白金とウラン鉱石で一割ずつだ。

「ねえ、そもそもだけどこっちのホントに白金?銀じゃないの?」

「間違いないよ、ウチの義手と早苗で二重チェックしちょるしね。

 何かヘンなことがあるん?」

「だって白金なんて錬金できるメイジ、いないわよ?

 隣の国、ゲルマニアのシュペー卿ができるとか聞いたけど、あそこの連中見栄っ張りだからホントかどうか。」

ルイズは知らないが話に出たシュペー卿、幾度か不良品を卸して返金騒ぎを起こしている。

「それに『うらん鉱石』?そんな聞いたこともないものを錬金なんて、できないわよ。」

「ハルケギニアには無いんかね?まぁ、見つかっちょらんだけかんしれんけど、そん口ぶりやと『知らんもんは錬金できない』っちゅうこと?」

寧夢の質問にルイズは首肯して答える。

「『知る』っちゅうのはどっから?」

「どこからって?」

「名前を知っちょったらええん?それとも見たことないとあかん?または手に取ったことないとあかんと?」

ルイズは思案し、さらに今まで得た知識から答えを探すが、思い当たらない。

実は今、寧夢が言ったことはハルケギニアのどこのアカデミーでも実験したことすらなく、一般論として『知らないものは錬金できない』とされているだけなのだ。

ルイズは半信半疑だが今、狙ってでないにしても知らない物を錬金した。

そもそもメイジとて人間だ、知らない物質など探せば何かしら出てくるのに、誰も『知らない物質の錬金』ということを考えたことすらなかったのだ。

「そういえばどこからかって聞いたことないわね。」

「それどこか、知らんもんは作れんっちゅうの、通説やない?」

ルイズも特に言及していなかったことを寧夢は言い当て、ルイズは驚きながら首肯した。

「何でわかったの?」

「よくあることなんよ、誰も調べとらんのに『そうに違いない』っちゅうのが当たり前になって、間違いがそのままになるっちゃね。

 とにかく、その辺りも含めて今、取ったデータ調べるわ。」

寧夢はそう言ってルイズから取った心拍、脳波、Pip-Boyのデータ等を精査し始めた。

 

「うん、出力は高いけんど波長、周波数はホロテープにあった『原子変換』と酷似。

 ルイズはんの『錬金』は同一と見てええわ。」

精査を終えた寧夢はそう結論付ける。

「でも、どうして金以外が錬金されてたの?量も減ってたし。」

「多分、金の錬金に必要な力をオーバーした余剰分の逃げ場になったんやろうと思う。

 銀や銅、白金にウラン、それでもカバーでけんかったやつが残り半分を爆発させたんやろうね。」

この実験によってルイズは魔法を初めて使うことができ、『B-rim-Lの研究を追うこと』と『かつて会った少年がハルケギニアに来た方法を調べる』という今後の方向性も決まったが、あまり嬉しくは思えなかった。

「結局のとこ、始祖ブリミルが生物兵器『B-rim-L』で間違いないのよね?」

「まあ、そうやけど、どしたん?」

「それってさ、わたしもデスクローの類いってことでしょ?

 ハルケギニアではさ、メイジ・・・魔法が使えるってのはブリミルの祝福って言われてたのに、実際はあんなバケモノの同類って思うとね・・・」

「そりゃ違うわ。」

寧夢はルイズの言うことをバッサリと否定した。

「ルイズはん、人間にできてデスクローやらマイアラークにでけんこと、何やかわかる?」

ルイズは首を横に振る。

「我慢することや。ルイズはんの『魔法』、自分はそれ使うて、たとえば今、ウチや早苗をどうこうして、この家のモン盗んで行こうとか考える?」

そう尋ねられたルイズは首を大きく横に振って答える。

「とんでもないわ、そんなこと!」

「どうして?」

「だってネムもサナエもいい子だし、酷いことなんてできないわよ。」

「やったらさ、ウチやなくて、とんでもないレイダー・・・盗賊やったら?

 それも悪いことやったら全部やってるような、百辺くらい生きたまま三枚おろしにしたってもまだ釣りが来るような大悪党やったらどう?」

そのように質問を変えられるとルイズは少し考えたがやはり首を横に振る。

「やり返されるのが怖いけん?」

「違うわ、いくら悪人だとしても、何をしてもいい理由にはならないもの。」

ルイズの答えに寧夢は微笑んで話す。

「そこまで言えるんやったらルイズはんはデスクローなんぞとは違う、ただ、他の人にでけんことができる、普通の人や。」

人が二人以上集まると、多かれ少なかれ軋轢は生まれる。

それを我慢し、ちょうどいいところで手打ちすることによって人間は家族、村、町、国、社会といった集団を作ることができるのだ。

「解りやすいトコやと、水や食料、『殺してでもブン捕る、誰が分けてやるか』言うのを我慢して分け合う、他の物と交換する、ダメなら自分で狩って来るなり浄水器作る。これも我慢や。」

狩猟採集農耕牧畜で得た資源の分配、交換。

古代から存在する商売、経済活動、これこそ先述した我慢、手打ちだ。

これをせずに誰かが一人占めしたり、分配に度を越えた不平不満ばかりを募らせたり、交換という手続きを拒否し、奪い取ることばかりにあけくれていれば、人類という種は早々に地球から退場となったであろう。

この我慢は時代が変わり、社会が複雑化しても形を変えて続いてきた。

 

「自分がいらない物を欲しがってる人に渡して、代わりに欲しい物と交換してもらうってのも我慢なの?」

原始時代の物々交換から州においては最終戦争直前の通貨による商取引まで、あらゆる経済の基礎が『交換』であることはルイズも知識として知っている。

「そりゃね、人間一番望むんは『欲しいモンがタダで手に入る』ことやけん。

 当然、そんなワガママ許されへんけど、下手に力があるヤツっちゅうのはまず、ルイズはんみたいに高潔な考え方せぇへん。

 そげなヤツらから命守るんは、最低限自分で、それでどうにもならんのやったらバット隊やミブロウ団に頼る。

 バット隊もミブロウ団も維持の経費がいるけぇ、ミブロウ団は謝礼貰って、バット隊っちゅうか城郭街は物の出入り、中での交換に手数料取って維持に当てちょる。

 商売しよんとどげんしてもレイダー共に目ぇつけられてまうけん、身を守るんにもその手数料や謝礼っちゅう我慢が必要や。」

城郭街の手数料は、ハルケギニアや最終戦争以前は『関税、消費税、売上税』と言われた税である。

そのため、城郭街での交換は相場が他地域に比べて割高だ。

寧夢は言及していないが、人が多くなればそれだけ大きな経済活動が必要となり、それを専門職とする『商人』が現れ、そういった者達の往来が多くなれば流通網、すなわち交通インフラや電話のような通信インフラの整備も必要になる。

インフラ整備となると日曜大工でどうにかなるものではない、専門の大工、作業員が必要だ。

さらにそのような大きな経済活動をしていれば無法者達からすれば鴨が葱背負って歩いているに等しい。

無法者達から良民の資源を守るにはやはり専門職、警察や軍隊が必要となる。

このような専門職を使用するとなると、租税を徴収して国家のように運営する以外にない。

我慢我慢ばかりでがんじがらめにされているようだがそうではない。

たとえ話だが一人でできる我慢によって生まれる余力が1として100人でできる我慢から生まれる余力が100とする。

1の力でできることなど知れているが、100の力で100人が使うものを作れば得られるものは計り知れない。

「そんな我慢をせんなった結果が200年前の戦争や。

 エライさんはゼイタク三昧、しわ寄せ食ろうたパンピーは『これ以上は死ぬ』思うて、み~んな我慢はイヤや言い出して、奪り合い殺し合いの行き着いた先は核戦争、ご先祖さま方が積み上げた我慢の結晶ひっくり返して望み通りの世界が出来上がり。」

我慢とは不自由不平等の耐忍であり、それをやめ無制限の自由と平等を求めた結果を、寧夢は皮肉を込めてそう言った。

先のたとえ話に則れば最終戦争というのは『1人が1万の余力のために、99人に我慢を見返りも無しに強いた結果、99人は限界を迎え解放を望み、1人も他の集団にいる1人からさらに奪おうとした』結果起こったものだ。

1人は自分の自由と99人が平等に奴隷になることを望み、99人は文字通り自らの解放、すなわち自由と平等を求めた結果、最も自由で最も平等な世界となった。

ある意味では無法の荒野こそが最も自由で最も平等な世界だ。

弱肉強食、適者生存という生物として最も自由で平等な世界、しかし実際にそうなると人間は不自由不平等を求め始める。

『力こそ正義、弱者は生きることそのものが罪科』などという考え方では人間は集団を作ることができないからだ。

仮にデスクローを素手で殴り殺す人間でも体が一つしかない以上、生きるのに必要な資源を一人で集めることは不可能であり、無防備になる休息中の安全を確保することも難しい、子孫を残すことも不可能だ。

「まぁ、何が言いたいかっちゅうと、ルイズはんは我慢ができるんやから、デスクローやらとはちゃう。むしろウチら州の連中や、戦争んころの人間よりよっぽど人間として出来とるかもしれんってことよ。」

寧夢にそう言われたルイズは気持ちが楽になると同時に考える。

今、寧夢が話した『戦争の頃の人間』とハルケギニアの人間にどれほどの差があるのだろうかと。

ルイズはかつて州で起こった戦争を、異世界で起こったハルケギニアとは関係ない、そして起こり得ないこととしか考えていなかったが、寧夢が話したことなど、ハルケギニアでも十分に起こりうることなのだ。

むしろ、今現在進行形で起こっているかもしれない。

そうだとしてもかつてのルイズであれば『平民はメイジには敵わない』と考えたことであろうが、州がある世界を焼き尽くして200年も残る猛毒をばらまいたのはメイジがいない以上、平民だ。

そして始祖ブリミルすら尻尾を巻いて逃げるしかできなかったのである。

先ほど寧夢は州でやっていることは、条件が揃えばハルケギニアでもできると言っていた、言い方を変えればハルケギニアの平民にも同じことができるのだ。

これまで6000年続いたハルケギニアのメイジによる支配体制だが、6000年続いたからと言ってもう6000年続く保証などどこにもない。




今回ルイズに使ってもらったのはゼロ魔二次創作では人気の魔法『錬金』です。
やっぱり結果が残る方が観測するとなるとやりやすいかと思いまして。
しかしルイズ、寧夢からいろいろもらいすぎじゃないかとは思います。
服3着に下着、スナイパーライフルにマシンピストル、そして多機能時計。
『ご主人さまも初めてのご友人に舞い上がっているのです』
(早苗談)

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