リリカルなのは×BLAZBLUE 無印編   作:シャケ@シャム猫亭

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何だかんだ先生

「………か……ずか……すずか…起きて、すずか!」

「……ん」

 

 

 

 すずかはアリサの呼ぶ声で、ゆっくりと意識を浮上させる。

 

 

 

 いつの間に寝てしまったのだろう。

 さっきまでアリサちゃんとお出かけしてて……途中でラグナさんに会って……倒れていた所まで案内して…それから……それから………そうだ、変な車が……っ!

 

 

 

「アリサちゃん!」

「すずか! よかった、目を覚ました」

 

 

 

 すずかの後ろからアリサの声がした。

 すずかは振り向こうとして、気がついた。

 今、アリサとすずかは手足を縛られ、背中合わせに拘束されている。

 

 

 

「すずか、怪我はない?」

「うん、私は大丈夫。アリサちゃんは?」

「アタシも平気よ」

 

 

 

 二人がお互いの無事を確認している所に、男の声が割り込んだ。

 

 

 

「おや、目を覚ましたのか」

「っ誰!?」

「おやおや、金髪のお嬢ちゃんは元気いっぱいだね」

 

 

 

 そこに立っていたのは真っ白なスーツに身を包んだ男だった。

 隣には表情が無く、まるで人形のようなメイドを一人連れている。

 顔立ちは良く間違いなく美男子なのだが、まるで粘りつくような視線にアリサは嫌悪感を抱いた。

 

 

 

「アンタ、こんなことしてタダで済むと思ってるの!?」

「思っているよ。人間の一人や二人、消したって何も問題はない」

「そんな……アンタ、何様のつもりよ!」

「何様、ね。その答えは月村すずかに聞いたらいい」

 

 

 

 その言葉に、アリサはすずかを見る。

 背中合わせだから、決して顔は見れないが、それでも限界まですずかを視界に収める。

 

 

 

「すずか、アイツあんたの知り合いなの?」

「氷村の……叔父様」

「……親戚なのね。アンタも不憫ね、あんな叔父を持って」

「黙れ、下等生物が。身の程をわきまえろ」

「あら、人間に上も下もないって習わなかったのかしら?」

「貴様、それ以上僕を愚弄するのなら…………まてよ」

 

 

 

 そこで氷村は何やら考え込んだ。

 そして、すぐに答えが出たのか、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。

 

 

 

「月村すずか、お前はお友達に秘密にしてたんだな?」

「すずかが、秘密?」

 

 

 

 その言葉を聞き、すずかがビクリと震える。

 

 

 

「そうかそうか。ならば僕が親切にも教えてあげよう」

「嫌……止めて……」

 

 

 

 すずかが弱々しく静止を求めるが、それは返って氷村の笑みを深くするだけだった。

 

 

 

「そこに居る月村すずかはな、僕と同じ「夜の一族」なのさ」

「夜の……一族?」

「聞き覚えが無いか、ならば言い変えよう。僕らは吸血鬼、つまりは「化物」だ!!」

 

 

 

 その言葉を聞いた途端、アリサの背ですずかが声を押し殺して泣いた。

 アリサは氷村の言葉が信じられず、聞き返す。

 

 

 

「……吸血鬼? あの?」

「ああ、そうさ! 人間を遥かに凌ぐ強靭な肉体、頭脳! そして何より人を狩り、血を啜ることが許された種族! それが人間の上位種たる「夜の一族」だ!!」

 

 

 

 氷村はまるで舞台に立っているかのように大仰に、両手を広げて演説する。

 それこそ、自己に酔ったかのように。

 だが、一方ですずかは認めたくないとでもいうように涙を流し、頭を振る。

 

 

 

「そこの月村の一族は、上位種たる僕を差し置いて夜の一族を統べる当主の座に着いたのいうのに、下等生物と馴れ合っている」

「……嫌…」

「全く、相応しくない。本気で下等生物と友情を築けると思っていたのかい? いや、思っていたんだな? 秘密を隠し通すことが出来れば友達になれると」

「……やめ、て」

 

 

 

 月村の懇願を聞き、氷村はますます笑みを深める。

 そして、アリサに向かって言った。

 

 

 

「残念だったな、下等生物。貴様の友人は「化物」だ!」

「………………」

 

 

 

 それを聞いて、アリサは目を伏せた。

 氷村の高笑いが廃墟に響き渡る。

 

 

 

「………ごめん……なさい………」

「……………すずか」

「………ごめんなさいアリサちゃん……」

「……すずか」

「……ごめ」

「すずか!!」

 

 

 

 アリサが大声ですずかを呼び、すずかの泣き声が止む。

 それに合わせて、ゆっくりと頭を下げたアリサは、

 

 

 

「ふん!!」

 

 

 

 後方にヘッドバッドを繰り出した。

 ゴチリッと音がして、二人の頭がぶつかる。

 

 

 

「―ッ!! 痛いよアリサちゃん!」

「アタシだって痛いわよ!!」

「じゃあ、何で頭突きなんて!?」

「すずかが馬鹿なこと言ってるからよ! 化物だから友達になれない? ふざけんじゃないわよ! 力が強いって言っても体育で得するくらいじゃない! 頭が良いって言ったって、テストじゃ私が勝ってるじゃない! 血なんてステーキをレアで焼けばアタシも食べるわよ!」

「アリサ……ちゃん」

「そんな、そんな下らないことでアタシの「親友」を止められると思ったら大間違いよ!!」

 

 

 

 アリサは廃墟の外まで届く大声で、そう言い切った。

 廃墟に静寂が落ちる。

 すずかの頬を伝う涙の川は、止まっていた。

 

 

 

「いやはや、素晴らしいね。ここまで言う下等生物が居るとは思わなかったよ」

 

 

 

 思わずというように、氷村は拍手をする。

 その様子に、アリサはキッと睨む。

 

 

 

「本当は連れて帰って玩具にでもしようと思ってたんだけど、予定変更だ」

 

 

 

 氷村は脇に控えていたメイドに命令する。

 

 

 

「命令だ、金髪を殺s」

 

 

 

 その直前、氷村が持っていた通信機が鳴った。

 氷村は舌打ちをした後、通信機を手に取る。

 

 

 

「なんだ、下らないことなら殺すぞ」

『ボ、ボス! しゅ、襲撃です! さっき小娘を攫ったときに居た白髪の男に襲撃されています!』

「あのクズ、失敗したのか。まあいい、さっさと殺せ」

『ダメです! 強すぎて歯が立ちまs』

 

 

 

 そこで唐突に通信が切れる。

 

 

 

「っち、だが、こちらには人質もいる。おい、もうすぐやって来る男を迎え撃て」

 

 

 

 氷村はメイドに与える命令を変更する。

 氷村の傍に控えていたこのメイドは、自動人形(オートマトン)だ。

 その戦闘力は一個中隊にも匹敵する。

 個人がどうにかできるようなものではない。

 

 

 コツ、コツ、コツ

 

 

 

 階段を上がってくる音がする。

 すると、メイドがその背に持っていた刀を抜き、扉に向けて構えた。

 足音が扉の前で止まる。

 開いたら即座に切りかかれるように、メイドは腰を落とす。

 だが、その予想は外れた。

 バカンッという音と共に、扉が吹き飛んだ。

 メイドは飛んできた扉を一刀のもと、切り裂いて攻撃を防ぐ。

 そして氷村は見た。

 部屋の向こうには、蹴りの体勢から戻る白髪の男。

 体長は180センチを超え、真紅のコート。

 右腕は無く、腰には大剣を下げている。

 

 

 

「誰だ貴様は!?」

「あん? 通りすがりの賞金首だよ」

 

 

 

 ラグナが、この場に現れた。

 

 


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