ワンサマ達はアンチのままで行きます。
救済的な事は機会があれば番外編的な物で少しやろうかなと考えています。
身勝手な変更、失礼しました。
これからも応援、お願い致します。
刹那サイド
目を覚ました僕は会長と夕食を摂ってから部屋でトーナメント戦用の機体を考える。トーナメントではラファールか白鋼のどちらかしか使えない。悩んでいると、頭の中に声が響いた。
----じゃんけん!
----ぽん!
----あ、ラファールの勝ちですね。
----頑張る!
----それで良いのか。
どうやら悩む必要は皆無だった様だ。丁度良いから追加された形態《メタルフォーゼ》を試す良い機会だもんね。
明日になったら織斑先生に報告しなきゃ・・・明日、気が重いな。なんとなく胃の痛みを感じていると、部屋を誰かがノックした。僕が出ようとしたが、会長が出てくれる。なんとなく聞き耳を立てていると、今日の迷惑者が入室して来た。会長の制止の声を完全無視で。
「不動刹那」
「・・・なんだい、ボーデヴィッヒさん」
「数日後のトーナメント、私と組め」
「なんで?」
「専用機を持つ者で最も優れた戦績が貴様だったからだ。軍人として情報を逃していたとは、情けない」
「悪いけど他を当たってくれるかな」
ボーデヴィッヒさんに対して僕の答えはNOだ。まず間違いなくこの子と組めば織斑やセシリア達の反感を買うし、僕も話を聞かない問題児と一緒に戦うのは嫌だ。フレンドリーファイアとか普通にしそうだし・・・。
「何故だ」
「何故だも何もありません。さあ、子供は寝なさい」
「待て!私を子供扱いするな!」
ボーデヴィッヒさんの首根っこを掴んで振り回しながらドアを開けて廊下に置く。なにやら口元を押さえていたけど、気にしない。
「さ、寝ましょうか」
「アッハイ」
ベッドに入って、目を閉じる。再び僕の意識は沈んで行った・・・。
~数日後~
アリーナの一室で、僕はラファールの最終調整を進める。遂にトーナメントの日がやって来た。ディスプレイを閉じて一息吐くと、僕の前に織斑達がやって来た。
「刹那、今日はお互いに頑張ろうね」
「そうだね(色々と、ね)」
「・・・早く行こうぜ、シャルル」
そう言って織斑はデュノアさんの腕を掴んで何処か行こうとした時、ディスプレイに試合の対戦表が表示された。動きを止めて自分の対戦を見る。そこにはこう記されていた。
[第一試合:織斑一夏、シャルル・デュノアVSラウラ・ボーデヴィッヒ、不動刹那]
まさか抽選であの子と当たるとは・・・。僕は思わず頭を抱える。
「あ、あはは・・・刹那、ドンマイ」
「・・・織斑殺ス」
「何でだ!?」
織斑に殺気を飛ばしながらピットへと向かう。そこには既にISを纏ったボーデヴィッヒさんが居た。
「来たか」
「まさかこうなるとは・・・」
「織斑一夏は私が潰す。貴様はもう一人をやれ」
「はいはい。こっちが終わったら援護するからね。暇だし」
「邪魔にならないのなら構わん」
ボーデヴィッヒさんに並んで僕もラファールを展開する。
----モード、《メタルフォーゼ》
----うん。
展開される新たな形態にボーデヴィッヒさんが目を見開く。僕は苦笑しながらピットから出撃した。
空中ではなく地上スレスレで浮遊している織斑達の前に降り立つ。すると織斑達は勿論、会場中の全員の視線が僕に突き刺さる。
「せ、刹那・・・それ、IS?」
「そうだけど何か?」
「な、何で車に乗ってんだよ!?」
織斑はそう言って、僕のISである"巨大な四輪車"を指差す。これこそがラファールの新形態である《メタルフォーゼ》だ。
最低限の装甲と武器だけを装着して、後はバイクや車等の乗り物系を使って戦う陸戦を想定された形態っである。現在の形態は《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》と呼ばれる四輪車を使った形態だ。
まあ、宇宙で月の上とか走ろうと思って造った形態なんですけどね。織斑は空中戦苦手だし、丁度良いと思ったので使う。
「ただの車と思ったら痛い目見るよ?」
「・・・お前の卑怯な戦い方に負けて堪るかよ」
「卑怯、ね。ああ、ボーデヴィッヒさんが戦うんだったね。どうぞ」
「ふん・・・」
僕は織斑からデュノアさんに視線を移す。目が合った瞬間、デュノアさんが冷や汗を流し始めた。
「ま、まさか・・・その攻撃力高そうな装甲で」
「うん。踏み潰す♪」
「いやあぁぁっ!い、一夏!降参しない?流石に僕もプレスされたくないって言うか・・・」
「何言ってるんだよシャルル?俺達ならこんな奴らに負けないって!俺を信じろ!」
「(信じられる要素が一つも無いよぉ)」
涙目でデュノアさんは織斑を睨む。ドンマイ(愉悦)
そして織斑とボーデヴィッヒさんが何やら話し出した。
「最初から貴様と当たるとはな・・・」
「ああ。でもコレで今までの決着を付けられるぜ」
「それに関しては私も同意見だな」
「へえ・・・以心伝心で何よりだ」
織斑がそう言った瞬間、試合開始のブザーが鳴り響いた。
「うおおおおおおっ!」
「無駄だ!」
「しまっ・・・!」
開幕早々織斑の攻撃がボーデヴィッヒさんに迫るが直ぐに停止結界で止められる。
停止結界。正式名称、《
僕も出来ない事は無いが、面倒だから組み込まないししない。それに展開範囲にも限りがあるし、大きな物体が相手になると一つにしか搾り込めないからアウト。
実はビーム兵器を防ぐのも少し苦手なシステムで、セシリアの時は彼女のISが限界であった事と、ボーデヴィッヒさんの努力の賜物だろう。
そして織斑に至近距離からのレールキャノンが向けられた時、ボーデヴィッヒさんへ銃弾が撃ち込まれた事で弾丸は織斑の横へ逸れる。
「一夏、下がって!」
「お、おう!」
「おい!そちらは貴様の仕事だろう!?」
「はいはい。やります、よっと!」
「うわっ!」
直ぐにデュノアさんへ接近して、武器の斧を振り回す。見事にデュノアさんの手に持っていた55口径アサルトライフル《ヴェント》を切り裂いて爆散させた。デュノアさんは顔を顰めながら距離を取るが、僕はバイクからワイヤーを発射して彼女の腕と足を縛りつけた。これで飛ばれる事も無いし一定の距離で戦える。
「くっ・・・この!」
「それは零落白夜みたいなレベルの武器じゃないと切れないよ」
「ま、負けないよ!」
「それはどうかな?」
「えっ!?」
デュノアさんから[カン☆コーン]なんて感じの音声が聞こえた気がしたけど、気にせずバイクを走らせる。デュノアさんは今、バイクから発射されたワイヤーによって繋がれている状態だ。そんな状態で走り出したらどうなる?しかもゴルドライバーは甲龍のパワーを軽々と越える。つまりは・・・
「引き摺り回しの刑だ・・・!」
「お、お母さん助けてー!」
後はもう彼女のISのSEが切れるまで走り回す。所々で壁に突っ込んだりしながらも僕の後ろを着いて来る。残りのSEが少なくなった辺りでデュノアさんがブースターを使って、空中に浮いて僕に突っ込んで来たけど急ブレーキを掛ける。するとデュノアさんは僕の横を通り過ぎて行く。
方向転換して走り出すと、ちょっとの抵抗と[グエッ!?]と女子が出してはいけない声が耳に入る。そのまま僕のライディングテクニック(無免許)を披露して、デュノアさんの脱落を告げる放送が鳴った。
「いやあ、良いストレス発散になったよ。ありがとう」
「八つ当たりに巻き込まれた僕はストレスしかないけどね・・・」
「まあまあ。この後が君のストレス発散になるんだから」
「そうだけど・・・分かったよ」
苦笑するデュノアさんに笑い掛けてから織斑の所へと向かう。すると何故かボーデヴィッヒさんが押されていた。どうやら停止結界の弱点を突かれたらしい。織斑はボーデヴィッヒさんが停止結界を展開した瞬間、雪片を当たる直前で収納。そして横に回り込んでから展開し直して攻撃を繰り返す。
白式のG並な速度だからこそできる戦法だね。
「くっ・・・何故だ!?何故そこまで喰い付く!?」
「そんなの、お前がムカつくからだ!それ以外は全部飾りだ!」
「なんだと?」
「俺はお前が気にいらねえ!だから倒す!」
「そんな幼稚な理由で・・・!」
「これで終わりだ!」
「こんな所で・・・私は!」
ボーデヴィッヒさんを助けようとした瞬間、彼女のISに変化が訪れる。プラズマを発しながらその装甲を泥の様に溶解させて、ボーデヴィッヒさんを取り込む。
そしてスライムの様に蠢きだしたソレは人型へと姿を変えた。
「あれは・・・《暮桜》?」
見覚えのあるその形は、ISの世界大会《モンドグロッソ》の優勝者である織斑千冬の使用していた機体である暮桜にそっくりだった。と言うよりもそのままだ。
目の前の光景に頭の中で前に束から聞いた話を思い出す。
「ラファール、アレって・・・」
----うん、《
----そんな物積んでたの!?
VTシステムはモンドグロッソ優勝者の機体のステータスをコピーした物で、一応は禁止されているシステムの筈。束曰く、お粗末にも程があるクソシステムなんだそうだ。
それにあのシステムはパイロットの命を削り取る呪いの装備に近しい物だ。直ぐに救出しないとボーデヴィッヒさんが危ない。
ラファールを違う形態へ変えようとしたその時、近くに居た馬鹿が何も考えずに突っ込んだ。
「あの野郎!」
「なにしとんじゃぁ!?」
バイクからワイヤーを発射して織斑をこっちへと持って来る。グルグルにされた織斑が僕に喚く。
「離せ!」
「考えも無しに突っ込まないでくれるかい!?」
「うるせえ!アレは千冬姉の剣だ!そんなの許せるかよ!俺がやらなきゃ駄目なんだ!」
「君の剣で斬ったらボーデヴィッヒさんの命が無いんだよ!」
「そんなのやってみなくちゃ分かんねえだろ!?」
「一か八かで人の命を任せられるか!そこで待ってろ!」
ワイヤーをバイクから切り離してグルグルの織斑を放り投げる。どうやら相手は一定の範囲内に行かない限り、攻撃はして来ない様だ。現に織斑が範囲に入った時は反応していたが、今は何もしない。
僕は大きく周ってデュノアさんに近付いてラファールのSEを分ける。
「君は織斑を連れて撤退して」
「刹那はどうするの!?」
「僕は、ボーデヴィッヒさんをあの悪趣味極まりないISから切り離す」
「・・・信じて良いんだね?」
「任せて。この類はラファールの得意分野なんだ」
デュノアさんを行かせてから僕は織斑先生に通信を入れる。
「織斑先生、そちらの状況は?」
『観客の避難は完了した。そちらに今、3年生の鎮圧部隊を向かわせた。5分後に到着する』
「それじゃあ遅いです」
『・・・どう言う事だ』
「あのIS、ボーデヴィッヒさんの体なんてお構い無しですからあと3分もあれば死にますよ彼女」
『なんだと!?』
「だから僕がやります。良いですね?」
『・・・頼む。アイツを助けてくれ』
「分かりました」
通信を切って、ラファールに言う。
「さあラファール。アレを使うよ」
『うん!』
「モード、《スターダスト》!」
僕の声にラファールが答え、その姿を大きく変えた。白い装甲の所々に散りばめられた蒼い水晶の様なパーツ。そして光り輝く大きな翼から発される光の粒子はまるで星屑の様な煌きであった。
そして僕の尻部には白い尻尾の様な武装が装着され、両腕にはクローが展開される。後は収納されたレールガン《シューティング・ソニック》が搭載されている。
これが束達にISキラーと呼ばれた形態、スターダストだ。
純白の翼を羽ばたかせて、ボーデヴィッヒさんへと接近する。そしてボーデヴィッヒさんのISが反応して手に持ったブレード《雪片》で斬りかかる。その瞬間、僕はスターダストのワンオフアビリティーを発動させた。
「《ヴィクテム・サンクチュアリ》!」
その言葉をトリガーにラファールが眩い光を放ち、その光でボーデヴィッヒごとISを包み込む。そしてラファールはジャンク・ウォリアーの状態になった。
この形態のワンオフアビリティーはスターダストの形態を一定時間、解除する事で相手の発動したワンオフアビリティーを無効にして破壊する能力だ。
現在の相手を解析した所、機体のデータが書き変わっていた。システムの影響なのか、ワンオフアビリティがVTシステムの発動となっており、常時発動していたのだ。これならVTシステムのみを破壊出来る。
相手のパイロットに負担を与えないシステムが同時に投入されるので、ボーデヴィッヒさんのバイタルも安定した状態で取り出す事も可能だ。光が止むと、不快極まりない泥細工の様なISは完全に融解してボーデヴィッヒさんだけをその場に残した。
力無く倒れるボーデヴィッヒさんを受け止めて、状態を確認する。これなら暫く寝てれば大丈夫だ。眼帯が外れ、綺麗な金色の目を晒したボーデヴィッヒさんが薄く目を開けて僕を見る。その瞬間、
『・・・此処は?』
真っ白な何も無い空間に居た。心地の良い浮遊感に揺られながら辺りを見回す。すると少し先にボーデヴィッヒさんが居た。彼女はまるで怯えた猫の様に体を丸めて僕を見ていた。
『私は、弱いのか・・・?』
『正直に言えば弱い。織斑に苦戦を強いられるってドン引きレベル』
『なら、どうすれば強くなれる?』
『仮に強くなるとして、君はどんな強さを望むの?』
『力だ。何者も寄せ付けない圧倒的な力だ』
『何処のラスボスだよ君は。そんなのだから弱いんだろうに・・・』
僕の言葉にボーデヴィッヒさんが首を傾げる。普段の刺々しさが消えている所為か少し可愛いと思ってしまった。余計な思考を振り払って、話を続ける。
『幾ら力が強くなったとしてもそれを使いこなさなければ意味が無いんだよ。身の丈以上の力は何時か自分の身どころか周りも滅ぼす火種にしかなりえない。心・技・体とか知らない?知らないか・・・』
『それを知らなかった、考えようともしなかった結果が、今の状況と言った所か・・・』
『物分かりが良くてなによりだ』
『・・・なぜ』
『ん?』
『何故、お前はそんなにも強い。代表候補生を何人も倒しただけでなく、暮桜・・・教官そのものになった私をもこうして無力化して助けた。私はお前に対してあの様な態度で接していた上に、その友にすら手を掛けたんだぞ?』
そう言って僕を見つめるボーデヴィッヒさんの真剣な眼差しに苦笑しながら答える。
『自分が強いと思った事は無いんだけど・・・まあ、セシリア達の事には思う事もあるけど結局は大怪我って訳でもないし、目の前の命を見捨てて良い理由にもならない』
確かにボーデヴィッヒさんがセシリア達にした行為は許された事では無い。危うく命の危険に晒す所でもあったし。でも、セシリア達の傷は後が残ったりする訳でもないし、聞けばセシリアも煽ったらしいじゃないか。後で互いに謝れば済む話だ。
『あと、君を無力化したのは僕の仲間達の協力があったからさ』
『仲間・・・?』
『そうだよ。あのワンオフアビリティーは僕とISが心を一つにしたからこそ発動出来たんだ。ISには意思がある。決して心の無い機械なんかじゃないんだよ』
『えへへ・・・嬉しいなぁ』
『うわっ!?ラファール?』
『だ、誰だ?』
『僕のラファールのコア人格』
『・・・は?』
僕の言葉にラウラはポカンとなる。何時の間にか僕を正面から抱きしめて来たラファールの頭を撫でながらボーデヴィッヒさんの反応を見て思わず笑う。
うん、まあそうなるよね。
『ま、まるで意味が分からんぞ!?』
『でも実際こうして居る訳だし・・・と言うか此処何処?』
『ん?IS同士による共鳴現象で創り出された空間だよ。マスターが寝てる時に来る和室の亜種版かな?』
『なるほど・・・じゃあ、いるんでしょ?シュバルツェア・レーゲンのコア人格さん?』
『・・・はい』
僕の声に反応してボーデヴィッヒさんの横から白鋼の様な黒髪の軍服に身を包んだ女性が姿を現した。なんというか、如何にも幸薄そうな方だ。
『初めまして、隊長。私が、シュバルツェア・レーゲンのコア人格です』
『こ、こんな事が・・・』
挨拶して来たコア人格に信じられない光景を見ているかの様な表情になるボーデヴィッヒさん。ああ、僕もあの空間に初めて行った時は流石に驚いたな・・・。
『マスター、もっと撫でて・・・』
『はいはい・・・そういえばセシア達は?』
『此処は私とあの子の共鳴現象で出来た空間だから関係無い二人は強制的に弾き出されちゃった』
『なるほどね。あ、今思ったけど珍しく人見知りしないね』
『あの子とは、度々会ってたから』
『そうなの?』
ラファールの言葉に僕は首を傾げる。だってあの空間では合わなかった?デュノアさんのISもだけど。
『あの子、私と同じで人見知りなの。でも最初に襲って来た日に菓子折りを持って謝りに来てくれたんだ』
『そ、それはまたご丁寧に・・・何かお返しってあげた方が良いの?』
『この前、カ○ピスギフト渡したから大丈夫だよ』
『どうやって仕入れてるのそれ!?』
僕達が会話している間にも、向こうの話は進んでいた。
『つまり、今までずっとあのシステムを押さえこんでいたのか?』
『はい。でなければ織斑一夏に大きな憎悪を持った貴方はすぐにでもシステムに取り込まれてしまいます。それで今日までの間、なんとか食い止めてはいたのですが・・・』
『先程の試合で私の力を求める思いが許容量を超えたのか』
『・・・申し訳ございません』
『いや、謝るのは私の方だ。自分の機体の事も把握せず、己の欲望に溺れるなどと・・・』
『真に悪いのはドイツ政府だけどね』
僕の言葉に二人が視線を向けて来る。ラファールに外の事を聞いた。今の僕達は意識がこの世界ある事で気絶状態にあるらしい。その間にドイツのVTシステムを開発、そして積んだ連中は揃って雲隠れ。今、束がお忍びでお仕置きに向かっているらしい。
多分、数日しない内に街中で下着だけの状態に落書きされて吊るされてるんだろうな・・・。
束は昔の様に他人を軽く見る事はなくなった。それどころかこの前は社員の人が落とした書類を率先して拾っていた上に気を付けて、など笑い掛けたのだ。前は躊躇いもなく人を殺していたそうな。といってもISを最悪な方向で使おうとする連中にだけだが。
『さて、そろそろお開きの時間だ。僕にも用事があるんでね』
『なら最後に答えてくれ!お前達はどうしてそんなにも深い何かで結ばれている!?それが強さの理由なのか!?』
『そうだね。僕達は時にぶつかり合ったり、力を合わせたりして様々な困難を乗り越えて来た。それによって強く結ばれた関係、それを絆って言うんだよ』
『絆・・・』
『本当ならもうちょっと話していたいけど、限界みたいだ』
『そうか、ありがとう。できれば今度、聞かせてほしい』
『僕なんかの話しで良ければ、幾らでも』
段々と僕達の意識が遠くなって行く。そして最後に見えたのは、ボーデヴィッヒさんが、自身の相棒と手を繋いで笑い合っている姿だった。なんだ、そんな表情、出せるんじゃないか・・・。
「・・・此処は」
「刹那、大丈夫?」
「デュノアさん・・・今の時間は?」
「立ち直り早いね。まだ大丈夫だよ、今は応接室で待ってる」
「それじゃあ、行こうか」
「・・・うん」
未だに隣のベッドで眠っているボーデヴィッヒさんを一瞥してから僕は保健室を抜けだした・・・。
~IS学園[応接室]~
「遅れて、申し訳ございません」
「いや、君には命を助けてもらっているんだ。これ位はどうって事ない。そちらこそ、体はもう良いのかね?」
「はい」
僕に対して初老の男性が笑い掛ける。彼はデュノアさんの国であるフランスの大統領だ。今回のトーナメントでは、各国のISに関する企業や国家のVIP達も観戦に来る。当然各国の大統領なんて大物も何人かは来る。今回はフランスとアメリカだけだったけどね。
彼らの目的は一年生の才能を品定め、二年生の成長ぶりをチェック、三年生をスカウトに、と言った感じだろう。実は今日、家の会社からも人が来ている。と言うか父さんだけど。
父さんはさっきから大統領の横で無言で座ったままだ。しかも楽しそうな目でこっちを見てる。
それは兎も角、ボーデヴィッヒさんの件で会場は大パニック。でも僕が鎮圧部隊より早く事態を収めた事で何も起きなかった。デュノアさんに歩きながら話を聞いたが、各国で僕の株が鰻登りらしい。嬉しくないけど・・・。
「それで、デュノア社とイリアステル社の御曹司達が私に護衛を下げてまで話とは、なにかな?」
「はい。それはボクから話をさせていただきます」
そう言ってデュノアさんは前に出る。そして制服の中に手を入れて、胸を押さえていた布を取る。すると胸の膨らみが露わになった事で大統領の表情が大きく変わった。
デュノアさんは布をポケットに仕舞ってから大統領にこう言った。
「ボクは男ではありません。本当の名前はシャルロット・デュノア。デュノア社社長の愛人の間に出来た娘です」
「な、なんと!?では君は・・・!」
「はい。デュノア社の情報はまったくの嘘です」
「これは国際問題だぞ!」
「分かっています。だからこそ私は貴方にこの話を持ち掛けました」
「話?」
デュノアさんの言葉に大統領は聞き返す。デュノアさんは一度深呼吸をしてからその内容を口にした。
「ボクは正直、この話を公にしたくありません」
「それは私も同じだ」
「なので。ボクと取引をしていただけませんか?」
「取引・・・ははは!馬鹿を言っちゃいけない。君の様な人間一人、こちらですぐに始末出来るんだぞ?」
「っ!」
大統領の冷たい声音にデュノアさんは一瞬怯む。だが、すぐに持ち直して再び大統領を見つめた。二人の視線がぶつかり合って数秒ほど、大統領が笑い出した。
「いや、失礼。此処で諦めないのは大したものだ。大抵の人は諦めてしまうからね。それにドイツのアレを止めてくれた不動君の頼みでもあるならばその取引、聞くだけ聞こうじゃないか」
「ありがとうございます!」
「さあ、言ってくれたまえ。私の気が変わらない内にね」
そう言って大統領は豪快に笑う。この人、どっちかと言うとアメリカンな感じだな。デュノアさんは礼を終えてから取引の内容を話した。
「デュノア社の情報を全て提供します。後ろめたい事も全て」
「・・・仮にも父親の会社だろう?それでデュノア社が潰れたら我が国のIS産業は絶望的だ」
「それに関しては、貴方達の方が詳しいのではありませんか?」
「ふっ、流石は代表候補生と言ったところだな」
そう言って父さんは静かに笑った。大統領もそれに釣られる様に笑って答える。
「その通り。私は、どうであれデュノア社に見切りを付けるつもりだったんだよ」
「えっ」
「どうやら彼等は君を使って一山当てようとしていたみたいだが、既に汚職を隠蔽していたデータがわんさかと出て来てね。いやぁ、君は実にタイミングが良い。これで、三年間は安全などと思ってたら自国からの援助は無くなり、君はすぐに国へ強制送還だ。どの道その男装はバレていただろうね」
「・・・」
「(織斑、君の案はやっぱり愚策だった様だ)」
その言葉にデュノアさんは顔を青くする。本当に間に合って良かった。色々と・・・。
デュノアさんは何度か深呼吸をくりかえしてから話を続ける。
「・・・そのデュノア社を潰すに当たって、ボクからの要求があるんです」
「なにかな?」
「シャルル・デュノアではなく、シャルロット・デュノアとして改めてこの学園に通わせてください」
「だが、君はもうフランスの代表候補生としてはやっていけない」
「はい。なので、」
デュノアさんは僕と父さんに視線を一瞬向ける。それだけで大統領は何か察した様だ。
「ボクをイリアステルフランス支部のテストパイロットとして通わせてほしいんです」
「なるほど・・・実に面白い!代表候補生ではなく、テストパイロットか!自分の会社を裏切って、国外の会社の支部に就くと・・・だがそれは何も知らない周りからすればただの裏切り者になる事を分かって言っているのかね?」
「はい。ボクは、もうこれ以上誰かの操り人形は嫌なんです。最初はあんな人でも血の繋がった家族なんだ。そう思って生きて来ました。でも、ボクはただの扱いやすい道具にすぎなかった・・・」
「・・・君の気持とは分かった。だが、学園のイベントでは少なからず各国のVIP達が出席する。そこで男子だった君が女子としていたらどう説明するんだい?」
「それは・・・」
大統領の疑問に彼女は言葉を詰まらせる。僕はデュノアさんの隣に立って、口を開いた。
「僕から、提案があります」
「ほう?イリアステルの次期社長の提案、是非お聞かせ願いたい」
「この件、全てデュノア社に押し付けませんか?」
僕の言葉にその場の全員がポカンとする。いや、父さんは何となく予想出来ていたって顔か。
「これはまた、凄い事を考える」
「どうせ埃しか出て来ないのなら、コッソリ埃を捨てても良いと思いませんか?」
「そ、それは大丈夫なの?」
「僕の先輩が昔言ってたよ、[バレなきゃ犯罪じゃない]って」
「その先輩とは縁を切った方が良いと思うよ」
「そ、それで?どんな内容にするのかね?」
笑いを堪えながら大統領が僕に問いかける。僕は簡単に説明した。
「単純に、国には男子と報告して連絡させました。でもそれが今日、大統領の前でバレてデュノア社のエージェントが口封じの為にデュノアもろとも大統領まで巻き込もうとしました。でもデュノアが自分の身を顧みずに大統領を庇ってエージェントを抑える。それに感動した大統領がせめてこの子だけでもと措置を取ってくれた。後はデュノアさんの過去でも適当に言っておけば大抵の人達は涙物ですよ」
「それはつまり、私に演技をしろと?」
「はい。どうです?」
「最高じゃないか!是非やろう!」
「えぇっ!?」
目を輝かせて立ち上がる大統領にデュノアさんが驚く。
「いや、これでも私は若い頃演劇をやっていてね。そう言った事には自身があるのだよ」
「お気に召していただけてなによりです」
「一人の少女の自由を得る為の三文芝居。やらない手は無い!デュノア君、君の条件は飲もうじゃないか」
「本当ですか!?」
「ああ。不動博士も問題はないね?」
「ええ。自分もこう言った事は嫌いではないので」
父さんと大統領は熱い握手を交わす。でっち上げる準備も既に整った所で大統領が聞いて来る。
「ところで、そのエージェントはどうするのかね?」
「きっとまだこの学園の周辺にいる筈です。デュノアさんに嘘の電話を掛けてもらって、来た所をやってしまいましょう」
「それじゃあ、頼むよデュノア君」
「は、はい」
僕達は息を潜めてデュノアさんを見守る。デュノアさんが携帯を使って電話を掛けた。数コールしてからデュノアさんがスピーカーモードにして会話をする。
「シャルロットです・・・」
『用件は何だ?』
「その、ボクが女だと見つかってしまって」
『なに?それでそうしたんだ?』
「見つけた人が大統領なんです。それで、応接室に来いと」
『そうか。今周辺で待機している社員を向かわせる。先に大統領に話をしておけ。・・・この役立たずが』
「・・・ごめんなさい」
そして電話は切れた。それと同時に大統領と父さんもキレた。これは確かにキレるよね。イリアステルや僕があまり関係していないのであれば見捨てただろうけど、彼女は自分の意思で変わろうとしてるんだ。協力しない訳がない。
「さて、僕と父さんは隠れてるよ」
「二人共、お願いします」
「任せたまえ」
「はい・・・!」
----白鋼、《ミラージュコロイドステルス》起動。
----任せろ。
白鋼に搭載された迷彩装置で僕と父さんの姿を隠す。しかもこれ、レーダーとかサーモグラフィーにも引っ掛からない優れもの。ぶっちゃけISのハイパーセンサーでも拾えない。
暫くするとドアをノックする音が響く。大統領が声を掛けると黒服でサングラスをした男性が入って来るなり銃を向けて来た。すぐにデュノアさんがISを展開してシールドで銃弾を防ぐ。
「な、なんだね君は!?だ、誰か!」
「くっ・・・死ね!」
「させない!大統領、ボクの後ろに!」
「あ、ああ・・・」
無駄に演技力の高い大統領に笑いそうになる。この人自分の命の危険が迫ってるのに楽しんでるよ。暫くすると、黒服は舌打ちをして走り出す。どうやら逃走を図ろうとしているらしい。でも此処はIS学園だ。こんな所で走ろうものなら・・・
「あら?どちら様ですか?IDを見せて・・・」
「黙れ!丁度良い、こっちに来い!」
そう言って廊下を歩いていた女子生徒に銃を突き付ける。ああ、終わったな。銃を向ける相手を間違えたよ。だって相手は・・・、
「せいっ!」
「がはっ!?」
生徒会長なのだから・・・。
なんとも綺麗な背負い投げを喰らった黒服は気絶した。これ以上、追手が居ないか確認してから迷彩を解除して会長へ声を掛ける。
「会長、ナイスです!」
「不動君?と、不動博士!?・・・フランスの大統領まで!どうなってるの!?」
丁度良い。会長にはこの件の証人になってもらおう(ゲス顔)
僕の真意を察してくれたのか父さんが斬り込んで行った。
「君が、更識楯無だな。妻から話は聞いている」
「あ、あはは・・・」
「そこの男は大統領の命を狙いに来たエージェントなんだ」
「なんですって!?」
父さんの言葉に会長は驚愕する。そして全て(大嘘)を説明して会長に証人になってもらいたい事を言う。これが大統領の命とデュノアさんの自由の両方を得るチャンスであると。会長はすぐに合意してくれた。
「そう言う事であれば協力させていただきます」
「ありがとう」
「い、いえ!不動君のお父様!」
「君にお父様と言われる覚えはないがな」
----あれ?なんかこれ見た事あるぞ。
----似た者夫婦だな。
----やっぱりあの会長、社会的に殺っときません?
----せ、セシア・・・落ち着いて~!
溜息を吐いて大統領の方を見る。自分の護衛を呼んで、通信機を切った所だった。それから僕達とデュノアさんに小声で言った。
「後の事は私に任せなさい。デュノア君、君は今から自由だ。この学園での時間を謳歌しなさい」
「・・・はい」
「不動君、久しぶりに刺激的な時間を過ごす事が出来たよ。大統領なんて職業をやっているとなにかと不自由でね。本当にありがとう」
「いえ、ではこれからもよろしくお願いします」
「君達といれば退屈しなさそうだ。こちらこそ、よろしく頼むよ」
握手を交わした後、大統領は護衛に囲まれてIS学園の職員に連れて行かれた。それから軽い事情聴取を終えた僕達は解散となった。父さんは少しやる事があると言って、何処かへ行ってしまったが・・・。
それから僕達は食堂へと向かう。そこでは織斑が何故か篠ノ之さんにボコられていた。不機嫌そうに去っていく篠ノ之さんと視線を会わせない様にしてから織斑の所へ行く。
「・・・生きてたら三回周ってワン」
「む、無理・・・死ぬ」
「よし、生きてるな」
「い、一夏。何があったの?」
デュノアさんの言葉に織斑が話し始めた。トーナメントが始まる数日前、篠ノ之さんに[トーナメントで私が優勝したら、付き合ってもらう]と言われたらしい。そして織斑は先程篠ノ之さんに付き合って良いと言った。[本当か!?]と喜んだ篠ノ之さんに対して[良いぞ、何処にだ?]と質問。そしてフルボッコへ・・・。
「さて、今夜は何を食べようかな~」
「私、サバ味噌定食」
「ボクはどうしようかな・・・」
床に転がってる肉塊は無視して食事を摂る事にした。そんな中、山田先生が僕達に声を掛けて来る。
「あ、不動君達!丁度良かった・・・って織斑君!?」
「せ、せんせ・・・」
「山田先生、織斑にスカート覗かれてますよ」
「きゃっ!?」
「ち、違います!俺そういうのに興味とか無いですから!」
「えっ、織斑ってホモ?」
「だから違えよ!?」
暫くワチャワチャしてから山田先生が本題を口にした。
「本日から、大浴場が解禁になりましたー!」
「おお!本当ですか!?」
「へえ」
「そ、そうなんですか・・・」
「どうしたんだよシャルル!風呂に入れるんだぜ!?」
この馬鹿は・・・デュノアさんの事忘れたのか?視線を向けると織斑は思わず口を押さえた。・・・全く。
それから織斑をハブにして食事を摂った僕達は部屋に戻った。すると会長がベッドに寝転がりながら言う。
「不動君、大浴場行って来たら?」
「別にそこまで興味があるわけでも無いですし、今日は良いですよ。あ、制服アイロン掛けときましたから。それと、靴下に穴が空いていたので新しいの買っておきました。サイズあってますよね?」
「ええ、ありがとう。ごめんなさいね、靴下なんて買いに行かせちゃって」
「お気になさらず。この容姿の所為か、他の方々が下着まで僕に勧めてくるので元から手遅れです」
「・・・御苦労様です」
土下座された。
結局僕は着替えとタオル、ボディソープ等を持って大浴場へと向かった。道中で知り合いに会ったので声を掛ける。
「藤原さん」
「あら、坊や。中々会えなくて寂しかった」
「クラスが違うからね(本当は避けてたんだけど)」
「今度こそ、戦ってもらうわよ」
「何時でも受けるよ。ただし、セクハラ紛いな事は止めてね?」
藤原さんと別れて大浴場へ向かう。暖簾を潜って、中へ入ると銭湯を彷彿とさせる空間が広がっており、何処か懐かしさを感じさせる造りだった。籠に着替えを入れていると、織斑が浴場から出て来た。
「おお!刹那も来たのか!」
「・・・まあね」
「なんだよ、一緒に入れば良かったのにさ」
「気持ち悪い事を言わないでくれるかな」
だからホモと間違われるんだよ、君は。あとあれだけ人に言っておきながら馴れ馴れしい。僕は溜息を吐きながら服を脱ぐ。今日は一日疲れた。さっさと入ってさっさと寝よう。
「・・・ん?どうかした?」
「い、いや!なんでもねえ!(な、なんで刹那が服脱ぐのでドキドキしてんだ俺!?)」
「顔赤いよ?逆上せた?」
「そ、そうかもな!だから部屋戻るわ!」
織斑の反応に疑問を感じながら顔を見ると、さっきよりも顔を紅くして出て行ってしまった。10秒も経たずに体を拭いて着替えた・・・だと・・・。
服を脱ぎ終え、浴場へ向かう。体と頭を洗ってから誰も居ない貸し切り状態の湯に浸かる。天井を見上げながらボーッとしていると、浴場のドアが開かれる音がカラカラと響いた。なんだ?織斑は二度風呂か?早いな・・・逆上せてたのに。
「刹那・・・隣、良いかな?」
「でゅ、デュノアさん!?」
予想外の声に僕は驚く。慌てて声のした方に背を向けて見ない様に配慮する。
「は、入っても・・・良い?」
「か、体と頭は洗った?」
「えっ・・・まだだけど」
「取り敢えず洗ってから入るのがマナーだから」
「分かった。ちょっと待っててね」
そう言ってデュノアさんは洗い場の方へと歩いていった。た、助かった・・・危うく性犯罪者の汚名を着せられる所だった。それにして何故彼女が此処に・・・?
「時間、ミスったn「うわぁ!?」デュノアさん!?」
「し、シャンプーが目に・・・!」
「ああもう!子供か君は!」
僕はタオルを腰に巻いてデュノアさんの後ろに椅子を持って来て座る。そして彼女の髪を洗い始た。
「やって上げるから取り敢えず目を洗いな」
「うん・・・ごめん」
「ん・・・はい、後は自分でやって」
「体は洗ってくれないの?」
「や り ま せ ん !」
湯船に浸かって一息吐く僕の隣にチャポンと水音が鳴る。それからすぐに僕の肩に温かく、程良い重みを感じた。チラッと視線を向けるとデュノアさんが頭を僕の肩へ乗せていた。
「刹那、ありがとう」
「礼を言われる覚えは無いよ。君はただ、自分の意思で未来を切り拓いただけだ」
「それでも、僕に踏み出す勇気をくれたのは刹那だよ」
「ああでもしないと自覚しないからね」
「うん、その通りだ」
思わず二人で笑う。その後は大統領の話し等をしていた。現在進行形でデュノア社に政府がカチコミしたらしい。後はもう面白い様に事が運ぶだろう。あの大統領の大爆笑する顔が浮かぶ。
「なんとも豪快な人だった・・・」
「ふふっ・・・ねえ、刹那」
「なにかな?」
「僕の事、名前で呼んで?」
「あーまあ、良いよ」
「本当!?」
最早僕達は共犯の仲だ。今更他人行儀な呼び方も、ねえ。同僚になる訳だし。
「でも逐一長いのはアレだし・・・《シャロ》って呼ぶのは駄目かな?」
「シャロ・・・うん!良いよ!凄く良い!」
「お、おう・・・」
まさかそこまで喰いつきが良いとは思ってもいなかった。
「刹那、もう一度シャロって呼んで」
「・・・シャロ」
「~~っ!もう一回!」
「シャロ」
「ワンモア!」
「よろっと勘弁してくれませんかねぇ!?」
恥ずかしさがマックスに達した僕は思わず叫ぶ。その後、二人して上がったけど度々ずっと[シャロ・・・シャロ・・・えへへ♡]とか独り言が聞こえて来て凄い死にたくなった。恥ずか死にしそう。
部屋に戻るまでの間、ずっとニコニコ笑ってて可愛いと思った僕は悪くないと思う・・・。
~翌日[教室]~
「え、えっと・・・」
朝のSHR。山田先生の困惑した声が教室に響く。それもその筈。なにせ皆が男子だと思っていた人間が"女子の制服"で壇上に立っているのだから。その原因たる人物は、黒板の代わりに置いてある大型ディスプレイに自分の名前を映し出して挨拶した。
「《シャルロット・デュノア》です。よろしくお願いします♪」
「え、ええ~!?」
「デュノア君って女だったの!?」
「て言うか織斑君達気付かなかったの!?」
「そう言えば昨日、男子の浴場開放日だったよね?」
女子達の声に僕は一瞬体感温度が下がった気がした。そして唐突に教室のドアが破壊され、甲龍を展開した鳳さんが入って来た。
「一夏ぁ!」
「ま、待ってくれ!死ぬ!それは本当に死ぬ!」
織斑に向けられた龍砲。あの、その射線上に僕も入ってるんですけど。ラファールを展開しようとした瞬間、僕達の前に人影が割って入り、龍砲を打ち消した。こんな芸当出来るのは一人しか居ない。
「怪我は無いか?」
「ラウラ!」
ISを纏ったボーデヴィッヒさんに織斑が声を掛ける。さっすが!あんな事があったのに名前で気楽に呼べる織斑パナい!馴れ馴れしい!
そんな織斑の横を華麗にスルーしたボーデヴィッヒさんは僕の前に立って、顔を近付けて来た。そして僕の唇に柔らかい感触が触れた。
「お、お前は私の嫁にする!」
「・・・はい?」
父さん、母さん、女子ってどうしてこう唐突なんですかね(遠い目)
刹那サイド終了