if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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第6話

刹那サイド

 

 

あれから数日、織斑先生達による事情聴取が終わった僕達にはあの日の事に関して何も言うなと言われた。残念。もうイリアステルには報告済みです。

今日も何事もなく授業を終えた僕は物を入れた袋を手に寮を歩く。鳳さんから聞いた話だと・・・此処か。僕は目的の部屋をノックする。

 

 

「は~い・・・ふ、不動君!?」

 

「突然の訪問、申し訳ありません。これを藤原さんに」

 

「あ、うん」

 

「それでは失礼します。お大事に」

 

 

そう。決闘を申し込んで来た藤原さんへの見舞いの品を渡しに来たのだ。

本当なら、織斑と鳳さんの戦闘の数日前に戦う筈だったのだが、藤原さんがまさかの風邪を引いた事により中止となった。でも予約していたアリーナを僕名義に変えて使わせてくれた事はありがたかった。

それのお礼も兼ねて見舞いの品を持って行ったのだ。そのまま僕は若干重い足取りでアリーナへと向かう。ラファールを展開して出ると、織斑と篠ノ之さん、そして鳳さんとセシリアが既に練習を始めていた。

 

 

「遅くなった」

 

「お、来たな。何やってたんだ?」

 

「君には関係ない」

 

 

織斑を無視してセシリアに話し掛ける。

 

 

「それで、模擬戦の結果は?」

 

「一夏さんの全敗ですわ」

 

「あ、やっぱり?」

 

「やっぱりって何だよ!?俺だって前よりは強くなったぞ」

 

「それだったら篠ノ之さんの一人や二人倒してから言いなよ」

 

「それはどう言う意味だ?」

 

 

篠ノ之さんの殺気を受け流す。て言うか量産機に乗ってる相手を専用機を使って倒せないってどうなのさ?スペック的にまず負けないでしょ。

溜息を吐いていると鳳さんに声を掛けられた。

 

 

「不動、ちょっと私と戦いなさいよ」

 

「良いよ。織斑と戦うよりはマシだ」

 

「言っておくけど、私強いからね」

 

「うん、知ってる」

 

 

空中へ飛んで滞空する。鳳さんも後を追う様に飛行して来た。そして自分の武器である双天牙月を振り回してから自分の肩に乗せた。

 

 

「さってと。それじゃあ行くわよ」

 

「何時でも」

 

 

僕はジャンク・ウォリアーの状態で構える。そして僕と鳳さんにセシリアから通信が入る。

 

 

『それでは・・・始め!』

 

 

その言葉で僕達は動き出した。パワー特化の甲龍は重い分スピードが落ちる。だから初手に関しては僕に分があるのだ。真っ先に飛び込んでスクラップ・フィストを叩き付ける。

 

 

「こ、拳で殴るとか何考えてんのよ!?」

 

「コレがこの形態の特徴なんでね!」

 

「チッ・・・喰らいなさい!」

 

 

至近距離で龍砲を撃たれそうになった所で一旦後退してから瞬時加速で躱す。そして小声でとあるシステムの起動を開始する。

 

 

(トラップ)セット・・・」

 

 

----任せて。

 

 

ラファールの声に口角を吊り上げる。すると僕の周りに5つのエネルギー球が浮かび出した。それを鳳さんは訝しげな目で見る。

 

 

「なによ、ソレ」

 

「さあ?なんでしょう?」

 

「だったら・・・無理やり聞きだすだけよ!」

 

 

叫びながら連続発射して来る鳳さんの龍砲を躱す。

 

 

「なんで全て避けられるのよ!?」

 

「バレバレだよっ!」

 

「うぐっ!?」

 

 

右腕で殴り掛かり、甲龍のSEを着実に削る。そして右ストレートを当てようとした所で鳳さんが瞬時加速を使って回避する。空振った僕に向けて龍砲が構えられた時、僕は叫んだ。そして周りを飛んでいたエネルギー球から何かが飛び出す。

 

 

「罠発動!《くず鉄のかかし》!」

 

「ファッ!?」

 

 

突如として僕と鳳さんの前に出現する鉄屑によって組み立てられた案山子に龍砲が直撃すると、衝撃すら起きる事なく消滅した。実体のない砲弾に消滅とは可笑しいが。

案山子は再び球体となり、僕の周りを飛び始める。

 

 

「・・・何したの、今?」

 

「今開発中のシステムでね。最大5個まで特殊能力を持ったエネルギー球を展開して戦う事が出来るんだ。基本は1回きりの使い捨てなんだけど、このくず鉄のかかしは発動した後にもう一度セット出来るんだよ」

 

「そ、それじゃあまだ4つも残ってるの!?そんなシステムが!?」

 

「その通り」

 

「インチキ性能もいい加減にしなさいよっ!?」

 

 

そう言って青筋を浮かべた鳳さんが双天牙月を投げ付けて来る。スクラップ・フィストで弾いて双天牙月を地面へと刺した。それを見て鳳さんはしかめっ面になる。なんともやっちまった感の強い表情だ事。鳳さんは自棄になって龍砲を僕に向けた。

 

 

「ぶっとべこのチート機体!」

 

「罠発動!《魔法の筒(マジック・シリンダー)》!」

 

 

次の瞬間、僕の前に大きな筒が出現して龍砲の砲撃を受ける。そして筒から見えない衝撃が発射され、鳳さんの機体が大きく吹っ飛んだ。そして地上に落下して、甲龍のSEが尽きた事を伝える通信が入る。

魔法の筒は相手の攻撃を一度だけそのままそっくり返す罠だ。その効果に満足した僕はゆっくりと着地してから鳳さんの元へと向かう。

 

 

「大丈夫?軽くオーバーキル入りそうだったけど」

 

「誰の所為よ誰の」

 

「あはは・・・ごめん」

 

 

ジト目で睨まれたので視線を逸らす。そして僕に何か言いたげな織斑達がいたので、適当に理由を付けてアリーナを出る。もう二度とコイツ等と戦うもんか。

さっさと着替えた僕はアリーナの外へと歩き出した。

 

 

~整備室~

 

 

「・・・って事があってさ」

 

「・・・そのシステムすごく気になるんだけど」

 

「残念ながら機密事項だよ」

 

 

二人でコンソールを弄りながらISの調整をする簪は自分を機体を熱心に造っていた。なんでも彼女は日本の代表候補生らしく、自分の機体が貰える筈だったらしい。

だが、織斑が男性操縦者として登場し、その専用機を急遽造り上げる事になった。当然あのブリュンヒルデの弟の専用機だ。全力で当たらなければどうなるか分かったものではない。結局簪の機体は途中で投げ出される事となり、更に会長に言われた一言で色々とブチ切れた彼女は自力で造っているのだ。

あの馬鹿は本当に面倒事しか起こせないのか?

 

 

「あ、此処の配列はこっちの方が良いと思うよ」

 

「分かった。やってみる」

 

 

僕も自分の機体を整備しながら簪と話す。そして下校時刻となった僕達は片付けをしてから整備室を出る。部屋まで向かう僕の隣には簪がいた。その目は怒りに染まっている。それはもう、僕も震えるレベルで。

遂に到着した僕の部屋。互いに頷きあって部屋のドアを開ける。その先には・・・。

 

 

「ふ、不動君のシャツ・・・着るべきか履くべきか・・・お姉さん迷っちゃう♡」

 

「「ギルティ」」

 

「げっ!?不動君!・・・と簪ちゃん!?何故簪ちゃんが此処に!」

 

「お姉ちゃん、正座」

 

「アッハイ」

 

 

絶対零度と言っても過言ではないレベルの声に会長は素直に従った。シャツは無事でよかった・・・もう時間無くても置いておかない事にしよう。

制服を片づけながら二人の会話を見守る。

 

 

「そうやってお姉ちゃんは周りの事考えないで・・・私の事だって」

 

「違うわ簪ちゃん!私は貴女の事を思って!」

 

「だったらちゃんと言ってよ!あの言葉で私がどれだけ傷ついたと思ってるの!?」

 

「そ、それは・・・」

 

「今日の事は《虚》さんに全て話すから」

 

「勘弁してください!そんな事されたらお姉ちゃん死んじゃう!」

 

 

会長の威厳など既に無く、涙と鼻水で顔をビチョビチョにした女子がその妹の足に縋り付いていた。うっわ、流石に引く。

 

 

----撮影したんでSNSに上げましょう。

 

----動画サイトにも流すか。

 

----そんな事しちゃダメだよ~!

 

----やめたげてよぉ!

 

 

もう止めて皆!会長のライフはもうゼロよ!

そんな会長を見て簪は溜息を吐いて言った。

 

 

「分かったよお姉ちゃん。今日は許してあげる。でも刹那には二度と迷惑を掛けない事」

 

「わ、分かりました・・・いたた。正座して痺れちゃった」

 

 

そう言って会長が正座を崩した瞬間、何かがハラリとそのポケットから零れ落ちた。

 

 

「あ・・・失くしたと思ってた靴下」

 

「・・・(汗」

 

「もしもし?虚さん?」

 

「しまったァーーー!?」

 

 

この日、会長は連れて行かれたまま戻らず、翌朝になって泣きべそ掻いて戻って来たのでシカトした。

後で色々聞いたが、何でも簪との姉妹仲が大変悪かったらしく、今回の説教を経て何時の間にか和解。昔の様な仲良しに戻ったそうだ。お礼を言われたけど、僕はシャツを勝手に取られそうになった上に靴下までパクられそうになっただけなんですがねぇ・・・。

そしてこの日は何事もなく、織斑とも関わらない様に努力して終わった。明日からはGWだ。研究所に戻って色々しないと・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~休日[イリアステル研究所前]~

 

 

「ありがとうございました」

 

 

乗せられた車から降りてイリアステルの施設へと入る。僕と織斑は重要人物な為に外出する際は護衛を付けなければ正直危ない。何時何処にヤバい人達が潜んでいるのかも分からない。僕は護衛の方々に研究所前まで送ってもらった。

織斑は護衛なんていらないと楽観視して一人で実家へと戻ったらしい。とことん馬鹿だねあの子。まあ、どうなろうが知ったこっちゃないが。

そんな事を考えながら施設内を歩き、研究所の受付へと向かう。

 

 

「すみません」

 

「刹那お坊ちゃま。お久しぶりでございます」

 

「お久しぶりです。父さんに来たと連絡をしていただけますか?」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 

そう言って受付の人は内線を使って父さんへと連絡を取る。父さんが来るまで近くのソファで座っていると足音が響いた。視線を向けると白衣に身を包んだ僕の父、不動遊星がこちらへ向かって来ていた。僕も立ち上がって歩く。

 

 

「久しぶり、父さん」

 

「ああ。元気だったか」

 

「色々あったけど、元気ではあるよ」

 

「そうか。暫くは滞在するんだろう?夜はアキも連れて食事でも行こう」

 

「うん。取り敢えずデータを渡すよ」

 

「分かった。それじゃあ行こう」

 

 

父さんの後に着いて、束とブルーノさんが居る研究室へ向かう。エレベーターへ入り、父さんがコードを打ち込むと下降を始める。やがてその動きが止まり、ドアが開いた。そこから出て道なりに歩く。最後に大きなドアを開けると、中には巨大な研究施設が広がっていた。

コンソールが並べられた部屋とガラスで隔てたその先にISを動かす為の訓練施設まで完備された地下空間だ。コンソールの部屋ではこちらに背を向けてディスプレイを見つめたままの二人に声を掛ける。

 

 

「おーい!」

 

「あ、せっちゃん!」

 

「やあ、刹那君!来たんだね!」

 

「はい。この連休中に色々と研究に関わりたいので」

 

 

ひっ付いて来る束を撫でながらブルーノさんに言う。そして僕はふと気になった事を束に聞いた。

 

 

「束、《倉持技研》って知ってる?」

 

「どしたの急に?あれでしょ。代表候補生の機体造ってたのにいっくんのIS優先して職務放棄した烏合の衆」

 

「てっきり束が白式渡したからだと思ってたんだけど」

 

「私は白式のコアと雪片を造った後はIS委員会の方に渡したんだよ。せっちゃんとの研究に没頭したかったし、流石にその辺は真面目にやってくれると思ってたから。でもダメだったね。上の奴らも倉持技研の方も白式ばかりやって完全に向こうの方見向きもしないんだもん。代表候補生の子に申し訳ないよ」

 

「ほう。篠ノ之から申し訳ないなんて言葉が出るとはな」

 

「どう言う意味かなそれ?」

 

 

笑いを堪える父さんに束がジト目を向ける。僕は束に簪の事を伝えた。すると束は何かを考え始め、頷くと父さん達に聞いた。

 

 

「ゆー君、ぶっ君。その子の機体、この会社で造ったらダメかな?」

 

「俺は別に構わない。それなら表に出てるIS部門を宣伝出来るからな。それに、刹那の友達の悩み事だ。出来るだけ力になってやりたい」

 

「僕も良いよ!代表候補生の機体かぁ・・・カッコいいんだろうなぁ」

 

「またぶっ君がトリップしたよ・・・」

 

 

恍惚の表情を浮かべるブルーノさんに束がヤレヤレと首を振る。彼は周りがドン引きするレベルの機械オタクで、腕は確かなのだが時々行き過ぎた行動を取ってしまう。

父さんが言うには見た目が気に食わないと言う理由でジャックおじちゃんのバイクを勝手に改造したらしい。しかも性能が何倍も上がってる分性質が悪い。

 

 

「と、取り敢えずOKなんだね。簪に伝えておくよ」

 

「ああ。その子に、遠慮せずに来て欲しいと言っておいてくれ」

 

「うん。あ、これIS学園での戦闘データね。相手が弱くて話にならなかったけど」

 

「はいは~い!それじゃ早速解析♪」

 

 

そう言って束が高速でコンソールを操作して父さん達とデータを閲覧して行く。

 

 

「なんだ、まだ白鋼の方はエクシアしか使ってないのか」

 

「そっちの方がオーバーテクノロジーだからね」

 

「これがあの無人機か。私達は仮称で《ゴーレム》って呼ぶ事にしたけどね」

 

「取り敢えずは刹那君のデータを整理してからにしよう。あ、遊星。その前にお昼食べても良いかな?お腹空いちゃって」

 

「束さんもお腹ペコペコ~。今日の日替わりは何かな?」

 

「それなら今日はハンバーグだ」

 

「待ってました!」

 

 

取り敢えず僕達は昼食を摂る事にして上の食堂へと向かう事にした。此処の食堂のご飯は本当に美味しかったです。

食べ終わった僕はコンソールを弄る束達の横で電話を掛ける。相手は学園で作業しているであろう簪だった。

 

 

『もしもし?』

 

「あ、簪。僕だけど」

 

『どうしたの刹那?』

 

「簪の機体の事なんだけど・・・」

 

『刹那が手伝ってくれる話の事?』

 

「うん。それがね」

 

 

僕は簪にイリアステルが協力する事を話す。すると電話の向こうで簪が転ぶ音が聞こえた。それから震えた声で聞いて来る。

 

 

『ほ、本当に良いの?刹那の機体を造った所に協力してもらうなんて』

 

「気にしないでよ。家も良い宣伝になるし、ギブ&テイクさ」

 

『それなら、お言葉に甘えようかな。もう見栄を張る必要もなくなったし、正直な所行き詰ってて作業が進んでないから』

 

「分かった。詳しい事は戻ってから伝えるよ」

 

『うん。本当にありがとう』

 

「気にしないでよ。それじゃあね」

 

 

僕は電話を切る。さてと、簪の機体か・・・魔改造される予感しかしないな。

ポケットに端末を仕舞って束達の作業に加わる。今日は研究するぞー!織斑が居ないんだから羽を伸ばせるしね!

作業を続けていると、何時の間にか夕方になっていた。そしてドアが開いて父さんと母さんが来た。

 

 

「刹那、そろそろ行こう」

 

「貴方の好きなバイキングよ。束さん達も一緒に行きましょ。皆で食べた方が美味しいもの」

 

「ひゃっほう!あーちゃんゴチになりま~す♪」

 

「それは嬉しいね。是非ご一緒させてもらうよ」

 

 

こうして僕達は外へ出てバイキングを楽しんでから帰宅した。束?ちゃんと変装させましたが何か?

その夜は父さんや母さんと最近あった事を話して、家族の時間を過ごした。その後も研究所と家を行ったり来たりして充実したGWを過ごす事が出来た・・・。

 

 

~連休後[IS学園]~

 

 

「刹那さん、お久しぶりですわ」

 

「久しぶり、セシリア。そっちはイギリスに戻ったんだっけ?」

 

「はい。家に顔を出して来ましたの」

 

「僕も会社と家に行けたから良かったよ」

 

「お互い、休日を満喫出来て何よりですわ」

 

「そうだね」

 

 

セシリアと話していると、織斑先生達が来たので席に着く。そう言えば織斑が話し掛けて来た気がしたけど、知りません。

号令を終えると山田先生が嬉しそうに言った。

 

 

「今日はですね!皆さんに転校生を紹介します!」

 

 

そう言った山田先生の隣に居た人物は、僕達を見て挨拶をする。金髪の髪をしたその人物は確かに"男子用の制服"を着ていた。

 

 

「《シャルル・デュノア》です。フランスから来ました。この学園に僕と同じ境遇の方が居ると聞いて、転入を・・・」

 

「おっと、コレはマズい」

 

 

なんとなく予感が出来た僕は両耳を塞ぐ。すると予想通り女子達が騒ぎ出した。

 

 

「キャーーーーっ!三人目の男子よ!」

 

「しかも金髪!王子様系!」

 

「織斑君みたいな守って欲しい系男子とか不動君みたいな嫁に来て欲しい系男子とは違う守ってあげたい系男子よ!」

 

「お母さん、産んでくれてありがとう!」

 

 

耳を塞いでても嫌に聞こえて来る。何だ嫁に来て欲しい系って。この前のほほんさんの取れ掛けてたボタン縫った事かな?ソーイングセットの携帯とか学生として普通でしょうに。

 

 

「静かにしろ。一限からはISの実習だ。織斑、不動はデュノアを案内してやれ」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

「では解散!」

 

 

織斑先生の声を聞いた瞬間、僕と織斑は立ち上がる。それに合わせてデュノア君も寄って来た。

 

 

「えっと、織斑君に不動君だよね?僕は・・・」

 

「話は後だ。急がないと着替える時間が無くなっちまう」

 

「織斑。今ならDルートが最適だ。一気に行くぞ」

 

「分かった。こっちだシャルル!」

 

「う、うん!」

 

 

セシアによって導き出されたルートを走る。物珍しさに集まって来る女子生徒が多くて進めなくなるのだ。何度織斑を犠牲にして遅刻を免れた事か・・・。

誰も居ない廊下を走り抜ける。本来はいけない事なんだけど、織斑先生が許可くれて助かったよ。走ると言うよりは競歩の感覚だね・・・。

更衣室まで着いた僕達はさっさと着替える。此処は女子校だ。男子更衣室なんて物はない。僕達は女子達が来る前に更衣室の隅でさっさと着替えるしかない。

僕は制服の下にISスーツを着込んでいるのですぐに終わった。

 

 

「刹那もう終わったのかよ」

 

「下に着てるから。最初からそうすれば良いでしょ」

 

「俺もそうするか・・・なあ、シャルルは」

 

「あはは・・・」

 

「もう着終わったのか?」

 

「う、うん」

 

「そのISスーツ着やすそうで良いな。ほら、急ぐと引っ掛かるし」

 

「ひ、ひっか!?」

 

「下ネタを振るな。デュノア君、コレは放っておいて行こう。遅れる」

 

「待ってくれよ!」

 

 

そう言って急ぐ織斑を尻目にデュノア君を連れてグラウンドへ向かう。僕とデュノア君は余裕で間に合った。それからギリギリに織斑が走り込みでセーフを決める。どうやったら着替えにそこまで手こずるんだ?

そう言えば今日は2組と合同だっけ?道理で人の数が多い訳だ。すると織斑先生が声を掛ける。

 

 

「それではISの実習を開始する。まずはオルコット、鳳!お前達に模擬戦をしてもらう」

 

「えー・・・なんで私が」

 

「私も・・・」

 

「・・・あの二人に良い所を見せるチャンスだぞ」

 

「し、しょうがないわね!私の実力を見せるいい機会よね!」

 

「それはこちらの台詞ですわ!オルコット家当主として全力を尽くします!」

 

 

織斑先生に何かを言われた瞬間、二人は掌を返した様に気合を入れる。

 

 

「それで、相手は鈴さんでよろしいのですか?」

 

「待て。対戦相手h「きゃああああっ!ど、どいてくださーーーーい!」・・・」

 

 

織斑先生の声を遮って上空から聞きなれた頼りない声が響く。その正体はラファールを装着した山田先生だった。泣きながら此方へ突進して来る。僕は無言でラファールをジャンク・デストロイヤーで展開してから飛びあがり、四本の腕で山田先生をキャッチする。

 

 

「大丈夫ですか、山田先生?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「良かった。先生に何かあったら大変ですから」

 

「不動君のお陰ですよ」

 

「それはどうも。それじゃあ、下ろします」

 

 

着地してから山田先生を下ろす。それを見て織斑先生が頭を押さえて溜息を吐いた。それからセシリアと鳳さんに言う。

 

 

「お前達の相手は山田先生だ」

 

「えっと、二対一って言うのは・・・」

 

「危ないんじゃ・・・」

 

「安心しろ。お前達程度、負ける事はありえん」

 

 

その言葉にムッとなった二人はISを展開して構える。まさかこの二人知らないのか・・・?

山田先生は学生時代、日本の"代表候補生"だったんだよ?

 

 

刹那サイド終了

 

 

 

 


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