if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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第11話

刹那サイド

 

 

翌日、僕とシャロはIS学園と本土を繋ぐ唯一の移動手段であるモノレールを使い、停車駅に隣接する大型ショッピングモールへと向かった。後ろの護衛の人達を確認しながら歩く。

 

 

「わっ!?」

 

「大丈夫?」

 

「う、うん・・・」

 

「人通りが多いから気を付けないとね」

 

 

人混みにぶつかってシャロがバランスを崩したのでそれを支える。シャロが態勢を整えると、またモジモジしながら聞いて来た。

 

 

「手、繋いでも良いかな?」

 

「良いよ」

 

「(もうちょっと意識してくれても良いと思うんだけどなぁ・・・)」

 

 

何故か不満そうな表情のシャロと手を繋いで道を進む。ある程度買い揃えた所でシャロに手を引かれ、水着売り場へと入る。思わず僕は強張った。此処へは行きたくなかった。"二重の意味"で・・・。

 

 

「それじゃあ、僕は自分の選んで来るから」

 

「・・・選んでくれないの?」

 

「お願いのレベルが高いんですけど!?」

 

「お願い刹那!お昼に此処のランチバイキング奢るから!」

 

「任せて。最高の水着を選んで見せるよ」

 

 

そう言ってサムズアップをする。食べ放題には勝てなかったよ・・・。

こうしてシャロの水着を選別する事になった僕はシャロと共に水着を選別する。ああだこうだと言い始めてから30分程で一番良いと思った水着をシャロに渡す。

 

 

「これが良いと思う」

 

「じゃあ、試着するから待ってて」

 

「え、此処で?」

 

「うん。此処で」

 

「シャロさんや。流石にそれh「バイキング」よっし!何時間でもバッチ来い!」

 

 

満足そうな顔で試着室のカーテンを閉めたシャロに僕は深い溜息を吐いた。それから数分して、カーテンが開かれる。そこには水着を着たシャロが立っている。

 

 

「どうかな?似合ってる?」

 

「・・・綺麗だ」

 

「ふへっ!?」

 

 

思わず声を漏らす。ハッキリ言ってシャロは美少女だ。歩いてる時もシャロを見る人の視線が多かった。そんな彼女はスタイルも抜群と来た。これ以上の言葉は必要ない。良いね?

 

 

「うん、それが良いと思うよ」

 

「そっかぁ。それじゃあ買って来るね」

 

 

シャロは水着を持って、レジへと向かった。僕も引っ張られて着いて行く。会計をしていると、水着の値段が表示される。その金額に僕は驚愕した。

えっ・・・女子の水着ってこんなに高いの?僕は財布を出そうとするシャロを止めて自分の財布を出す。

 

 

「これで足りますか」

 

「はい。彼氏さんのお支払ですね♪」

 

「か、彼氏だなんて・・・♡」

 

 

店員さんとシャロが何か言っているが、僕はそんな事頭に入っていなかった。頭の中に浮かんでいたのは、不用意に支払わせようとした高額な代金への罪悪感だけだった。支払いを済ませて今度は男性用の水着を買いに向かう。

 

 

「刹那、ありがとう」

 

「いや、良いんだ、うん。こっちこそごめん」

 

「?」

 

 

首を傾げるシャロに苦笑しながら自分の水着を選ぶ。するとシャロが水着を一つ差し出して来た。

 

 

「これなんてどうかな?」

 

「男の水着なんてどれも変わらない気がするけど・・・」

 

「結構印象変わると思うよ」

 

「そうなのかな?じゃあ、これにするよ」

 

 

さっさと会計を済ませて店を出る。すると、見知らぬ女性が話し掛けて来た。

 

 

「ちょっとそこのアナタ」

 

「はい?」

 

「これ、片付けておきなさいよ」

 

「はあ・・・」

 

「なによ。その服、アンタ男なんでしょ?だったら私の言う事聞きなさいよ」

 

「分かりました」

 

 

そう言って水着を差し出す女性。厚化粧と強い香水の匂いに思わず顔を顰めそうになるのを抑えて水着を受け取る。今日の僕はIS学園の制服だ。基本的にIS学園の生徒は長期の外出でない限り、制服でいなければならない。それ故に僕を男子と受け取ったのだろう。でなければ間違えられる筈だと過去の経験から分かる。

目の前の女性は恐らくIS学園の生徒だと言う事を知らないのだろう。世の中にはIS自体には興味を示さずに女性が優位と言う立場だけを利用する方々がいるのだ。

まあ、正確には女性が強いのではなくてISも使える一部の女性と言った所だが。でもISに乗る前に銃か何かで攻撃されたら意味がないが・・・。

シャロも面倒事だと分かっているのか何も言わないで僕に着いて来る。さて、このまま何も起きずに終わる・・・

 

 

「いや、自分で取った物なんだから自分でなんとかしろよ」

 

「私の言う事に文句でもあるの?」

 

 

なんで空気読まずに割り込んで来るかなコイツは・・・!

 

 

「文句も何も自分で出して戻すなんて子供でも出来る事だろ。それくらい自分でやったらどうだ?」

 

「そう、私に逆らうのね・・・警備員さーん!」

 

「ほら面倒な事になった・・・」

 

 

大声を上げる女性に僕とシャルは溜息を吐く。どうせ女尊男卑の風潮を良い事に冤罪でも掛けようとしてるのだろう。今の社会ではそう言った理由で男性が理不尽なリストラを受けたり、痴漢の冤罪に掛けられたりしている。

前にイリアステルの研究所でそう言ったニュースを見た束が虚ろな目でひたすら謝っていたのを覚えている。

 

 

「アンタ達もこれで終わりよ・・・私が乱暴されたって言えば学校は退学。もうまともに生きられないわね」

 

「何言ってんだ?」

 

「女に逆らうからこうなるのよ!ざまあ見なs「ほい。犯人確保」・・・はぁ?」

 

 

ゲラゲラと笑いながら叫ぶ女性の腕に手錠が掛けられた。それは警察の制服を着た男性によるものであった。女性は何が起こったのか分からない表情をした後に再び騒ぎ出す。

 

 

「何してるのよ!逮捕するのはあっち!早く私を離しなさい!」

 

「いや、間違いなくお前だよ。女性だからなんて言って食い逃げに万引き。おまけに男に暴力振るって病院送り。完全に逮捕もんだぜ」

 

「それの何が悪いって言うの!?男なんかがやってる店で食事したり商品を見てやったのよ!?無料にするのが当たり前じゃない!それに蹴り飛ばしたあの男だってあんあ冴えない見た目して彼女持ちだったからに決まってるじゃない!何が悪いのよ!」

 

「全部だよ」

 

「ひっ!?」

 

 

激昂する女性を男性の冷たい声が遮る。それに女性は小さく悲鳴を上げて何も言わなくなる。その後、女性は警察官に引き取られて行った。男性は僕達に向かって先程とは違う、優しい笑みを浮かべた。

 

 

「大丈夫か、お前等。この辺はああ言うのが多いから気を付けろよ」

 

「うん。ありがとう、《クロウ兄》」

 

「おうよ。久しぶりだな、刹那」

 

 

そう言って親指を立てる男性は父さんの同級生で現在警察官をしている《クロウ・ホーガン》だった。

 

 

「久しぶりクロウ兄!此処の交番の勤務だったの?」

 

「ああ。此処は広いからなにかと問題事が多いからって最近新しく出来たんだ。それで俺がそこの所属になったって訳だぜ」

 

「なるほど。あ、そういえば・・・彼女さんとはどう?」

 

「ぶっ!な、なんて事聞きやがる!?」

 

「またまた~。この前手紙に書いてたじゃないか。で、どうなのさ?」

 

「お、おう!順調だぜ!」

 

「良かった。彼女さんはどんな方なの?」

 

「刹那も会った事あるだろ?《シェリー》だよ」

 

「シェリーってあの《シェリー・ルブラン》の事!?」

 

 

クロウの口からでた名前にシャルが驚愕する。まあそれもそうだろう。フランスでは超有名人だからね。その言葉にクロウは嬉しそうに言う。

 

 

「おう!お前の想像通りだぜ」

 

「なあ、そのシェリーって人は誰なんだ」

 

「ニュースも見ない織斑は黙ってようね~」

 

「一夏、ちょっと黙ってて。ていうか帰って」

 

「二人して酷くないか!?」

 

 

何も知らない織斑に僕とシャロは軽く舌打ちをして教える。

 

 

「シェリー・ルブランはフランスの国家代表だよ」

 

「専用機の《フルルード・シュバリエ》を駆るその姿は正に騎士の如くってフランスでは常識だよ。ニュースでもよく特集してるし」

 

「でもシェリーさんってブルーノさんの事が・・・」

 

「ブルーノは機械にしか興味ねえから振られたんだよ」

 

「そこを空かさず狙ったと・・・やるねえ」

 

「う、うるせえ!」

 

 

ニヤニヤする僕にクロウが怒る。もう、可愛いなあこの人は!僕の兄貴分の様な存在だったこの人は実はかなりの初心で、恋愛事に関しては絶対に触れない人だった。

そう言った話が一つも無かった為に一時期はホモなのでは無いかと父さんとジャックおじちゃんが心配したレベルで。

そんなクロウ兄が遂に彼女持ち。しかもあのシェリーさんだ。

シェリーさんは父さんの知り合いで、元々はフランスからの留学生だった。そしてブルーノさんに恋をしていたのだが、留学中に告白する事は出来ずに母国へ戻ってしまった。その後は、フランスの代表となった。まさか振られていたとは・・・。

 

 

「うおやっべ!《牛尾》の旦那にどやされちまう!じゃあな!」

 

「うん、またね」

 

 

時間を確認したクロウ兄は交番へと走って行った。

久しぶりに会えた僕は満足した気分でシャロと歩き出す。

 

 

「なあ、この後飯でも食べに行こうぜ」

 

「・・・なんで着いて来るのかな?」

 

「良いじゃないか。友達だろ?」

 

 

散々人の事を卑怯者だとか罵ったり、殴って来た挙句、部屋から放り出したりした癖にそんな事が言えるんだこの子は?

 

 

「一夏、ボクは刹那と二人で居たいんだ。だから帰ってくれるかな?」

 

「酷いぜシャロ。別に良いだろ?皆で居た方が楽しいし」

 

「ボクは楽しくないの!あとシャロって呼ばないで!この名前で呼んで良い男は刹那だけなんだ!」

 

 

シャロは織斑にそう怒鳴る。この子が織斑に対して此処まで感情的になるのは初めてだ。織斑と一緒にポカンとなる僕の腕を掴んでシャロは歩き出す。織斑も目の前の状況を飲み込めないまま、その場に立ち尽くしていた・・・。

暫く歩いた僕達は近くのベンチに腰掛けた。僕は自販機で飲み物を買ってシャロに渡す。

 

 

「・・・ごめんね、刹那。感情的になっちゃって」

 

「いや、それは構わないよ。でもシャロが織斑に対してあそこまで怒るの初めてだなって」

 

「だって・・・シャロって呼んだから」

 

「君って渾名に拘る人だっけ?」

 

「そうじゃないけど。でもシャロって呼ばれるのは特別なんだ」

 

 

シャロは俯いて空になった缶を強く握る。缶の軋む音が人混みから聞こえる音にかき消された。

 

 

「この渾名は、僕に未来をくれた刹那が付けてくれた大切なものだから」

 

「僕は何もしてないよ。その未来は紛れもない君の意思で、君の手で切り拓いたんだ」

 

「だとしても、刹那が言ってくれなかったら僕は人形(シャルル・デュノア)のままで人生を終えていたと思う。何もせずに、流されるがままに」

 

 

人形。デュノア社の社長の愛人の子として生まれたシャロは良い様に扱われ、IS学園へと送られて来た。そんな彼女は正に人形そのものだ。

でも彼女は動いた。仮にも実の父親の経営する会社を潰す事で、自由を手に入れた。それは確かに彼女が掴み取った新たな未来だ。

 

 

「だから、本当に刹那には感謝してるんだ。何回言っても足りない位だよ」

 

「な、なんか恥ずかしくなって来たんだけど・・・」

 

「ボクも・・・」

 

「「・・・」」

 

 

二人の間に気まずい空気が流れる。僕は手を叩いて無理やりこの空気を終わらせた。

 

 

「はい、この話は終わり。そろそろご飯食べに行こうよ。奢ってくれるんだよね?」

 

「う、うん!」

 

「出禁になる位たべるぞ~」

 

「それはちょっと止めてほしいかな・・・」

 

 

苦笑いを浮かべるシャロの手を引っ張って、僕達は歩き出した・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

刹那達が歩く少し後ろを数人の人影が着けていた。私服に身を包んだ彼等はどこも可笑しくは無い。ただし、髪に隠れた通信用のイヤホン以外は。彼等は刹那の護衛に付けられた国のエージェント達だ。

 

 

「・・・彼が移動を開始した」

 

『了解』

 

『了解』

 

 

刹那達に一番近い位置を歩く男性が小声で離すと、耳に仲間からの返事が聞こえる。そして刹那達の後ろを再び歩き出した。

 

 

「やはり、あの少年も青春しているんだな」

 

『そりゃそうっすよ先輩。高校生なんだから恋愛の一つや二つありますって』

 

『私はその子も気になったけど、護衛も付けずにフラフラしてるもう一人の子の方が心配だけどね。なんだっけ?織斑千冬の弟の・・・』

 

「織斑一夏だ。いい加減人の名前を覚えろ」

 

『すみませんでした~』

 

 

通信機の向こうから聞こえる若い男女の部下の声に溜息を吐く彼は先輩と呼ばれていた。

 

 

「彼は自分の立場を理解していないのだろう。この前、彼の護衛に付いた奴らから話は聞いたか?」

 

『聞きましたよ。嫌がって護衛を拒否した上に姉に言い付けるとか言い出したんでしょ?』

 

『うっわ、何それ』

 

『しかもその後、移動中に走り出して護衛を巻いたから』

 

『一回攫われないと分からないんじゃない』

 

『ところがどっこい。彼は一度誘拐されてるのさ』

 

『それマジ?』

 

「おい。一応その話は国家機密だぞ」

 

『隠し事ってのはバレる為にあるんすよ』

 

『なにそれ私聞きたい』

 

「・・・仕方ない」

 

 

先輩は後輩たちのお喋りを許した。この先輩も色々と織斑一夏やIS委員会に思う所もあり、色々と鬱憤が溜まっているのだ。本来許される事では無い。だが、彼はその誘惑に負けてしまった。

 

 

『織斑千冬が二回目のモンド・グロッソ優勝を逃したのは知ってる?』

 

『それ位はね。テレビとかだと体調不良って聞いたけど』

 

『あれ真っ赤な嘘。実は織斑一夏が誘拐されて人質に取られたからなんだよ。大会を降りろって言う脅迫付きで』

 

『あの鉄面皮にも家族に対する情があるのね』

 

『そんで、ドイツから居場所の情報を提供してもらって大会捨てて助けに行ったんだよ。それから礼としてドイツに1年位ISの指導に行ってたみたいだけど』

 

『ふ~ん。それなのに何も学んでないんだあの子』

 

「・・・そろそろ仕事に戻るぞ」

 

『『は~い』』

 

 

その言葉に二人は私語を止める。刹那達が食事をする為に入店したのを確認して、自分達もそこへ向かった。

 

 

『それにしても、なんで水着売り場の時に何もしなかったの?』

 

『あの警官が近づいて来てるのが分かったからな。俺達の出番はいらないと判断した』

 

『織斑一夏がまた騒ぎ出しても困るっすからね』

 

『そう言う事ね。よっし!経費で食べ放題~♪』

 

「・・・仕事だということを忘れるなよ」

 

 

部下に釘を刺してから、刹那達の後を追う様に店内へと向かった。

 

 

三人称サイド終了

 

 

刹那サイド

 

 

シャロと食事を済ませてから、店を出る。すると、セシリアとラウラの二人に出会い、目が合った。

 

 

「せ、刹那さん。それとシャロさんも、奇遇ですわね」

 

「セシリア達も買い物?」

 

「そうですわ!私達m「いや、刹那がシャルロットと二人で出掛けたから尾行していた」ラウラさん!?」

 

「あはは・・・(来ると思った)」

 

 

数分間程シャロ達は睨み合い、何故か全員で行動する事になった。そしてラウラの要望で僕達はあるコーナーへと向かう。そこはゲームコーナーだった。数々のゲームから音が鳴り響く。お嬢様育ちなセシリアや軍人のラウラ、あまり自由の無かったシャロの三人は未知の光景に目を輝かせていた。

 

 

「それでラウラ。どんなゲームをやってみたい?」

 

「ああ!このゲームだ!」

 

 

そう言ってラウラはチラシを見せて来る。そこには今日から並ぶクレーンゲームの景品が載っていたいた。ラウラの指はその中の黒い兎のぬいぐるみを指していた。

 

 

「私はこれが欲しい」

 

「それじゃあ、こっちだね・・・セシリア?」

 

「はいっ!?別にあのゲームが気になってなどありませんわ!」

 

「分かり易いな君は。後でやろうか」

 

 

セシリアが見つけたのはISのカードゲームの台。ISとパイロットのカードを組み合わせて戦うゲームだ。何故か僕と織斑の機体が出ていたけど、見なかった事にした。

クレーンゲームのコーナーへ向かい、ラウラの目的の物が置いてある台の前に着いた。

 

 

「ほら、此処だよ」

 

「・・・どうすれば良い?」

 

「そこから!?・・・ちょっと見てて」

 

 

試しに100円を入れてゲームを開始する。ラウラ達がおお!と新鮮な反応を見せてくれる中、アームを動かす。

 

 

「こうやってアームを動かして取るんだ・・・あ、取れた」

 

「なにっ!?」

 

「行けるものだね。はい、ラウラ」

 

「い、良いのか?これはもうアレだぞ?返さないぞ」

 

「言わないから。あと抱き締めすぎて兎が可愛そうな事になってる」

 

「いかん!危うく刹那トークンを潰してしまう所だった」

 

「変な名前付けないで!?」

 

「ふふふ・・・お前は今日から私の部下だぞ、刹那!」

 

「一番嫌な所残っちゃった!?」

 

 

嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめるラウラを見ながら僕達はほっこりとした気分になった。

 

 

「さて、次はセシリアの見てたゲームやろうか」

 

「「ボク(私)の刹那トークン・・・」」

 

「分かったよ分かりました!貢がせていただきます!」

 

 

結局二人と更識姉妹、のほほんさん用に取ってから行きました・・・。

気を取り直して向かった先はセシリアが興味を示していたゲーム台。所謂カードダスと言う物だ。

 

 

「100円で1プレイらしいよ」

 

「小銭を持った事がありませんわ・・・」

 

「貸すから後で返しなさい」

 

「ありがとうございます。では、行きます!」

 

 

緊張した面持ちで椅子に座って100円を入れるセシリア。するとカードが出て来た。キラキラと光っている辺り、レアカードなのだろう。セシリア運良いな~。

 

 

「ねえ、誰が出たの?」

 

「せ、せ・・・」

 

「せ?」

 

「刹那さんが出ましたわーーーっ!」

 

「ファッ!?」

 

「刹那!?」

 

「刹那だと!?」

 

「名前を連呼しないで!?」

 

 

セシリアが今までにないテンションで僕が描かれたカードを振り回す。その声に周りの視線が集中して恥ずかしい。すると小学生位の男女がセシリアに寄って来た。

 

 

「すっげー!姉ちゃん刹那さんのカード当てたの!?」

 

「それ一番のレアなんだよ!」

 

「私の千冬様と交換して!」

 

「だ、駄目ですわ!刹那さんは私の物です!」

 

「どさくさに紛れて何言ってるのかなセシリアは」

 

「よろしい。ならば戦争(クリーク)だ」

 

「ああもう、めちゃくちゃだよ」

 

 

セシリアの隣の台に座って僕も試しにやってみる。すると僕もカードが出て来た。しかもレアカード。

 

 

「山田先生・・・何してるんですか」

 

 

そこに描かれていたのは山田先生が描かれたカードだった。しかも最高レアリティの。

後々調べたらカード価格が5000円を超えていた。

 

 

「こっちもレアだ」

 

「もしかしてこの人って不動刹那!?」

 

「本物だー!」

 

 

児童達の声に全員の視線が僕に向いた。騒ぎ出しそうだったので、軽く足を地面に叩きつけて音を出す。予想以上に響いた音に対し、全員がシンとなる。僕は笑顔で指を唇へ持って行き、静かにとサインをする。

 

 

「できれば僕の事は黙っててね。皆が遊べなくなっちゃうから」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「こっちこそごめんね。良かったら僕達に遊び方を教えてくれないかな?」

 

「うん!」

 

「ありがとう」

 

「はわ・・・♡」

 

「(落ちましたわね)」

 

「(落ちたね)」

 

「(落ちたな)」

 

 

こうしてやり方を教わりながら僕達はカードゲームをプレイした。結果、全員がドハマりして、一人の平均散財額が3000円を超えたのは言うまでも無い。500円でデータを保存できるカードとか、買うしかない。

あの後、子ども達のカードにサインを書いたりした。まさかサインを書く日が来るとは・・・。

遊び尽くした僕達は帰りのモノレールに乗って、学園のある人工島へと戻る。下車した僕は車内で寝落ちしたラウラを背負ってセシリア達と学園へと歩き出した。

 

 

「楽しかったね、今日は」

 

「そうだね。またあのゲームやりたいな」

 

「私も今度は刹那さんの機体を手に入れますわ」

 

「自分がカード化されるって結構恥ずかしい」

 

「刹那はレアカードを一枚あの子に上げてたけど、良かったの?」

 

 

シャロは聞いて来た。それは僕が当てたあるレアカードを男子の一人が欲しがっていたから上げた。別にそこまで欲しい物ではないし。

 

 

「良いんだ。織斑のカードだから」

 

「あっ・・・(察し」

 

 

こうして僕達は買い物を終え、臨海学校へ向けての準備を開始した・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

~イリアステル[研究所]~

 

 

「・・・これでよし」

 

 

薄暗い部屋で束はあるISの整備を終えた。それは紅に染まったISだった。それを見つめる束は覚悟を決めた表情で一人呟いた。

 

 

「あの子がこれを使うに相応しいかどうか。・・・私自身で見極める」

 

 

再会の日は近い・・・。

 

 

三人称サイド終了




~買い物後~


刹那「はい、お土産」

楯無「刹那トークンね!」

簪「刹那トークン・・・可愛い」

本音「せっちゃんトークンだ~」

刹那「その名前は確定!?」

ハロ『セツナ!カワイイ!セツナ!カワイイ!』


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