if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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第10話

刹那サイド

 

 

「・・・で、何であんな事を?」

 

「何がだ?」

 

 

あの後、昼休みになった僕達は食堂で昼食を摂っていた。そして隣でハンバーグを食べるボーデヴィッヒさんに朝の奇行について聞いた。本当は早く聞きたかったけど、思考がさっきまで完全にフリーズしていた。

僕の疑問にボーデヴィッヒさんは首を傾げる。あれ?これ僕が間違ってるの?

 

 

「いや、何故公衆の面前でキス?しかも嫁にするって意味が分からないんだけど」

 

「部下に聞いた。好きな男にはキスをする事で愛情表現するものであると」

 

「普通は人前でキスなんてしま・・・なんでもない」

 

「(ご両親ですわね・・・)」

 

「(両親だね・・・)」

 

 

セシリアとシャロに温かい目で見られる。目を逸らしながら話を続けた。

 

 

「大体さ、僕は君に好かれる事をした覚えは無いんだけど」

 

「いや、嫁の行動は確かに私の心を撃ち抜いた。言っておくがこれは吊り橋効果とやらでもなんでもない私の意思だ。たとえ嫁でもこの思いを否定するのは許さん」

 

「そ、そうですか・・・」

 

「そうだ。よって、お前は私の嫁だ」

 

「だからなんで嫁?」

 

「む?そう言う文化なのだろうこの国は?」

 

 

ボーデヴィッヒさんの言葉に僕は重い溜息を吐く。誰だこの子に変な知識植え付けたのは・・・。

 

 

「ボーデヴィッヒさん。嫁と言うのは女の人の事を言うんだよ。男の場合は婿って言うんだ」

 

「何!?日本では好きな相手全般を嫁と言うのではないのか!?」

 

「あ、でも好きなアニメキャラとかを嫁って言う人は居るね」

 

「そうなのか・・・日本の文化は奥が深いな」

 

 

そう言ってボーデヴィッヒさんは一人ブツブツと呟き始めた。その隙に僕はシャロ達に声を掛ける。

 

 

「御二人さん、助けてください」

 

「そ、そう言われましても・・・私達も此処まで正直な方を前にするのは初めてなもので・・・」

 

「そうだよ。しかもあんな可愛い見た目で・・・反則だよぉ」

 

「何でシャロは泣いてるのさ?」

 

 

確かにボーデヴィッヒさんは可愛いと思う。小動物を彷彿とさせる可愛さだ。まあ、シャロも十分可愛いと思う。というかこの学園って美少女比率は高いよね。中学の時のクラスメイトと見比べたとしても断然にレベルが高い。

ただ、それに伴って性格に難があるけど。

 

 

「それはそうとしてだ、嫁よ」

 

「嫁って言うな。せめて名前で呼んで」

 

「では刹那。私の事もラウラで良い。夫婦は互いに遠慮はいらないとも聞いたぞ」

 

「今度その知識を教えた人、紹介してね。小一時間位説教するから」

 

「それならイリアステルの本社に居る」

 

「「は?」」

 

 

イリアステル。その名が出た事で僕とシャロが同時に声を上げる。それからボーデヴィッヒさん改めラウラは自分の端末を操作してある画面を僕達に見せた。そこにはラウラのデータが記載されたイリアステルのIDだった。

ま、まさか・・・。

 

 

「私、ラウラ・ボーデヴィッヒは今日からイリアステルのテストパイロットを務める事になった。宜しく頼む」

 

「「はぁ!?」」

 

 

再び同時に叫ぶ。セシリアの方も理解が追い付かない様で、ポカンと口を開けていた。

 

 

「何時そんな話が出たのさ!?」

 

「昨夜、不動博士が訪ねて来たんだ。イリアステルに来ないか、と」

 

「だから途中で何処かに行ったのか。でもドイツは・・・ああ、納得」

 

「察しが良いな。流石だ」

 

「ど、どう言う事ですの?」

 

「ラウラは多分、ドイツ軍・・・いや、ドイツ自体から抹消されてるんだ」

 

 

僕の言葉にセシリアとシャロは驚愕して、ラウラは無表情で頷いた。考えれば簡単な事だ。違法なシステムを積んでいた事がバレたドイツのお偉い方は少しでも自分達の罪を軽くする為にラウラの存在自体を無かった事にしたのだろう。

あんな騒ぎがあった後だから下手にラウラの回収と始末は出来なかったけど、戸籍はもう消されている筈だ。それを見越して父さんが話しかけたと言う事だ。

 

 

「ドイツ軍人であった私は死んだ。今の私は日本国籍のイリアステル所属のラウラ・ボーデヴィッヒと言う事になる」

 

「腐った上の連中の考えそうな事だね。それで、君の部隊の方々もイリアステルに?」

 

「そうだ。今は不動博士やその周辺人物のボディーガードをしている」

 

「なんて恐ろしいセコムだ」

 

 

元軍人で構成されたボディーガードとか、怖すぎる。でも父さん達の安全は保障されたと考えて良いからこれはこれでアリか。

 

 

「だがシュバルツェア・レーゲンはドイツに回収されてしまった。明日にはイリアステルから新たな専用機が届くらしい」

 

「分かった。それなら、今日からよろしく」

 

「此方こそ」

 

「一緒に頑張ろうね」

 

「ああ」

 

 

僕とシャロはラウラに握手する。まあ、上の学年には一つの企業からテストパイロットで出てる人が5人位居る所もあるし大丈夫でしょ。ウチも表向きはIS産業に手を出したばかりって設定だし多少人員が多くても疑われる事は無い。

考え事をする僕の視界にはラウラとセシリアが握手を交わす所が見えた。うんうん、中が良くて何よりだ。

こうして、ドッキリとしか思えない一日が幕を閉じた・・・。

 

 

~放課後~

 

 

整備室で僕は簪と例の専用機に積む援護システムの制作を行っていた。内部の機械やデータの入力が終了し、ISと同素材を使用した外装を取り付けて作業を終了させる。

 

 

「よし、出来た」

 

「これが援護システム・・・」

 

「その名も《ハロ》。AIを積んであるからいっぱいお喋りしてあげてね」

 

「こ、高性能・・・!」

 

「よし、起動」

 

 

苦笑する簪に笑い掛けながらハロを起動させる。白を主体とした丸いボディの所々に水色のラインが入った手の平サイズのソレは目をチカチカと光らせながら体を揺らして声を出した。

 

 

『ハロ!ハロ!カンザシ、マスター!』

 

「よろしくね、ハロ」

 

『ヨロシク!ヨロシク!』

 

「ふふっ♪」

 

 

簪は嬉しそうにハロを手に乗せて撫でる。見た目こそ可愛いが、ハロの性能はISに匹敵するレベルの情報処理能力がある。ハロをISに接続する事で全性能がかなり上がる。

簪のハロは狙撃性能をメインにチューニングしてある為、基本的には百発百中になるだろう。後は簪の操縦次第だ・・・。

 

 

「今日はもう終わりにしようか。ご飯食べに行こうよ。お腹空いちゃった」

 

「そう言ってさっきも購買のコロッケパン食べてなかった?」

 

「あれは遅めのおやつだから」

 

 

僕は簪と食堂に向かう。その隣をハロがポンポンと跳ねながら着いて来る。食堂に着くと、簪はハロを肩に乗せる。器用にコロコロしながらバランスを保つハロに苦笑しながら特盛りの料理を食べる。

 

 

「あら、せっちゃん!今日もまた別嬪さん連れて!昔の家の旦那みたい!」

 

「や、止めてくださいよ」

 

「べ、べっぴん・・・!」

 

「ほらほら!今日はケーキ付けとくから、二人で食べなさい!」

 

「ありがとうございます」

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

チョコレートケーキをサービスしてもらった僕と簪は席に座って食事を摂る。やっぱり此処の料理は美味しいな。うどんを食べる簪と雑談しながら楽しく食事を終えた。

今日は織斑がずっと篠ノ之さんと鳳さんに絡まれてたから今日は平和だった。シャロと大浴場に入っていたと思われている様で今回は正直助かった。

君にはスケープゴート(笑)になってもらおう。食べ終わった僕達は廊下で別れる。

 

 

「それじゃあ、また明日」

 

「うん。また明日」

 

『セツナ!マタアシタ!マタアシタ!』

 

「ん。ハロもまた明日」

 

 

簪と別れて部屋に戻ると会長がベッドに寝転んで疲れた顔をしていた。しかも下着姿で。こちらに気付いていない様で、さっさとシャワーと歯磨きを済ませてから声を掛ける。

 

 

「ただいま戻りました」

 

「おかえり~・・・不動君、疲れた~!」

 

「お疲れ様です。制服は・・・聞くまでもないですね」

 

「どう?お姉さんの下着、ドキドキするでしょ?」

 

「・・・ソーンw「調子乗ってすみませんでした!」素直でよろしい」

 

 

土下座する会長に溜息を吐いて彼女の衣装入れからパジャマを取り出して着せる。この人は今の様に糸が切れた状態になる時が存在する。そうなるとあらゆる事に対してやる気が出なくなるのだ。その為、僕が必然的に会長の世話をする事になる。

思春期の少年に体を洗わせるのって何考えてるのさ。

 

 

「仕方ない・・・ほら、おいで」

 

「ママーッ!」

 

 

この状態の会長は寝かせるに限る。ベッドに寝転がって腕を広げると会長が飛び着いて来る。こうでもしないと会長の愚痴が一晩中続く。奇声を上げて飛びこんで来た会長の頭を撫でながら耳元で囁く。

これぞ、セシアから教えてもらった秘技[せっちゃんおやすみボイス(仮)]!

今の所、束と両親、会長には効果抜群の効き目を誇っている。

 

 

「今日も一日頑張ったね・・・よしよし」

 

「くぅ~ん♡」

 

「(うわぁ・・・)ゆっくり眠って、休もうね」

 

「うん・・・」

 

「おやすみ、楯無ちゃん♪」

 

「・・・すぅ・・・すぅ」

 

 

会長は適当に言っておけばなんか落ちる。会長が寝た事を確認すると、僕はディスプレイを開いてメールを確認する。こうなった会長は明日の朝まで目を覚まさない。

撫でる手を止めずにメールを開く。父さんからラウラとその部隊に関しての情報と彼女用の新たな専用機に関してだった。

 

 

----やっぱり"あの子"のコアですか。

 

----あの兎も偶には良い事するじゃないか。

 

----これでまたあの子と遊べるね。

 

----今度電話しようかな。

 

 

ラウラの新たな専用機は、名前こそ違うけどそのコアは紛れもなくシュバルツェア・レーゲンの物だった。メールの内容では、束がドイツ軍に潜入してコアをこっそり交換。取り替えた方のコアは、コアとは名ばかりの真っ赤な偽物。

どうせ馬鹿には分からない、と文字が書かれた彼女の写真が添付されていた。

それに苦笑しながらラウラの専用機のスペックを確認する。これ、絶対カラーリングで選んだだろ。

 

 

「《ゴールドフレーム・天ミナ》か・・・」

 

 

シュバルツェア・レーゲンの新たな姿を確認して、僕も意識を沈めた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ところがギッチョン!まだ終わりません!』

 

『今日は部屋の内装を変えたぞ』

 

『マスター・・・ごめんね?』

 

『うん、知ってた』

 

 

和室からフローリングの洋室へと模様替えされた部屋のソファーに座っていた僕はセシア達を細目で睨む。ラファールがビビる中、セシアと白鋼が口笛を吹いて視線を逸らす。

 

 

『・・・まあ、それは良いや。君達、"彼女"が戻って来る事知ってたでしょ』

 

『はい。でもマスターが疲れていたんで、メール貰ってからでも良いかなと』

 

『何となくは予想出来てたけど、まさか翌日とは思わなかったよ』

 

『ですよね~』

 

『ヤッホー!甲龍ちゃん再び参上!』

 

『・・・また面倒なのが』

 

 

騒がしいのがダイナミックエントリーして来た所為で空気がカオスな事になった。取り敢えず甲龍を落ち着かせて、話しに戻る。

 

 

『で、何故に僕の膝を枕にしてるんだい?』

 

『ん?だって刹那の膝枕好きなんだもん!良い匂いだし!』

 

『はいはい』

 

『おい、そこのトカゲ。何ちゃっかり人のマスターにひっ付いてるんですか。織斑の夢にでも介入すれば良いでしょう』

 

『あれを好きなのは鈴ちゃんだし、私は刹那の方が良い~♪』

 

 

にゃ~、と言ってすりすりして来る甲龍を撫でる。結局、セシア達によるキャットファイトが開始され、ティアーズさんが止めに来るまで続いた。

僕は部屋の隅でラファールを撫でながら紅茶を飲んでましたが、何か?

 

 

~翌日~

 

 

この日のIS実習は僕とラウラによる模擬戦だった。それと同時にラウラの新たな機体のお披露目にもなる。

 

 

「それではISを展開しろ」

 

「「はい」」

 

 

僕とラウラはISを展開する。今日は白鋼を纏う。

 

 

----モード、《レッドフレーム》で行くよ。

 

----了解した。

 

 

白鋼の装甲は白と赤を主体とした装甲に、フライトユニットとビームライフルにシールド。そして左腰には日本刀型ブレード《ガーベラストレート》が装備される。この刀、ビームを切断できる特別性である。

ラウラの方を見ると、向こうも準備が整っていた。

金と黒の装甲と背中に搭載された特殊兵装《マガノイクタチ》が大きな存在感を放つ。そして両腕には主兵装となる《トリケロス改》と《オキツノカガミ》が取り付けられていた。

 

 

「ふむ・・・流石イリアステルのメカニック達だ。装備がこんなにも大きく変わっていると言うのに不思議なまでに体に馴染む」

 

「気に入ってもらえた様で、なによりだ」

 

「では早速この機体の性能を試させてもらおう」

 

 

その言葉で僕達は上空へと飛んで構える。そして織斑先生が口を開き・・・、

 

 

「では、始め!」

 

 

僕達はぶつかり合った。左腰のガーベラストレートと、相手のトリケロス改に装備された実体剣から火花が上がる。束達が弄っただけあって、パワーが桁違いだ。白鋼の装甲からギギギと軋む様な音が響く。

 

 

「くっ・・・てやぁ!」

 

「何と言う性能だ・・・これならば!」

 

「うぁっ!?」

 

 

再び実体剣が叩きつけられ仰け反った僕に左腕に装着された槍《オキツノカガミ》が迫る。シールドを斜めに構えて衝撃を受け流すも、一発で砕け散る。ビームライフルを連射して距離を取ってから態勢を立て直す。

完全に油断した・・・。まさか此処まで使いこなすとは思ってもなかったよ。

 

 

「ラウラ、行くよ!」

 

「ああ!加減は無しだ!」

 

「その性能相手に加減なんて出来るわけないでしょうが!?」

 

 

ラウラの放つビームを斬りながら接近してトリケロス改を斬り落とす。まずは邪魔な装備を取っ払う。パワー負けしてるとはいえ、天ミナはその装備さえ減らしてしまえば問題は無い。レッドフレームには"奥の手"もある。

 

 

「このまま左も貰うよ!」

 

「させるかっ!」

 

 

オキツノカガミを振るうラウラに僕は口の端を吊り上げながらガーベラストレートを振るう。パーツの間接部分に刃を入れて斬る。細かい作業は得意分野なんでね!装備をほぼ破壊されたラウラは舌打ちをしながら両腰のサーベル《トツカノツルギ》を握って僕を睨む。

 

 

「自分なりにはどうだい?」

 

「高性能な分私が機体に着いて行けていないのが現状だな。加減して戦っている刹那には敵わない。父上殿から聞いているぞ。その機体、もう《二次移行(セカンドシフト)》を終わらせているにも関わらず、一次移行の形態で止めているのだろう?」

 

「バレた?流石に手の内を全て晒す気は無いしね」

 

「こちらは本気で行かないと負ける。だからこの機体のワンオフアビリティを使わせてもらうとしよう」

 

「また陰湿な戦い方を・・・!」

 

「卑怯とでも罵るか?」

 

「まさか!卑怯結構!正面から斬り伏せる!」

 

 

僕の言葉にラウラは笑って、ワンオフアビリティを発動させる。ゴールドフレーム天ミナのワンオフアビリティは《ミラージュコロイド・システム》。レーダーや熱源にも反応しないステルスシステムである。

僕がこの前父さんと隠れた時に使った物と同じだ。ISのレーダーからもラウラの反応は完全に途絶えた。僕は目を閉じてガーベラストレートを構えてその場に滞空する。

そして、不意に上へとガーベラを振るう。すると見えないナニカと衝突した。その衝撃でミラージュコロイドが解除され、左腕に搭載されたクロウ《ツムハノタチ》で攻撃するラウラが目に入った。

 

 

「なにっ!?」

 

「よいしょ!」

 

「クソッ・・・何故私が此処に居ると分かった!?」

 

「直感」

 

「なん・・・だと・・・」

 

 

即答する僕にラウラが精いっぱいに頬を引き攣らせる。どうやら納得がいかなかったらしい。いや、あんな殺気をバンバンぶつけられたら分かっちゃうって。

 

 

----だが、主殿の直感は確かだ。

 

----そうかな?

 

----昔、なんとなく嫌だからと別の道で登校した事があっただろう。

 

----あった?

 

----あった。その日、何時もの道でトラックの事故があったんだ。

 

----事故位あるって。

 

----私の数える限り、似た様な事が10件はあったぞ。

 

----やだ、僕の周りトラブル多すぎ!?

 

 

白鋼の言葉に唖然となっていると、ラウラも僕と似た様な表情をしていた。この子まさか・・・!

 

 

----ラウラ、聞こえる?

 

----あ、ああ・・・。

 

----君もISの声が聞こえる様になったんだね。

 

----恐らくはあの時の影響だろう。

 

----その通りです、総統閣下。

 

----レーゲン!また会えたな。

 

----お久しぶりです。

 

 

ドイツ軍の人達、逃がした魚は大きいどころかもう一生手に入らないレベルだぞ。ISの声が聞こえるのは多分僕達だけだし。ラウラ達は何時の間にか話を終えた様で、僕に向かって来ていた。こちらも反応して斬り返す。

 

 

「隙を狙っても動じないか」

 

「それだけの距離があれば対応は可能だよ」

 

「やはりか!ならばこれでどうだ!」

 

 

クロウを切断した瞬間、ラウラの背部に装備されたマガノイクタチがハサミの様に可動して僕を両側から押し潰す。尋常ではない力に装甲が悲鳴を上げる。僕は皹が入り始める装甲を気にせず両手で押し返す。ほんの少ししか動かなかったが、十分だ。

 

 

「《パワードレッド》!」

 

 

次の瞬間、レッドフレームの腕部が専用の新アームへと変わる。巨大な腕へと変わったレッドフレームは軽々とマガノイクタチを握り潰した。ラウラはその光景に目を見開き、動きを止める。そこを逃さず、ラウラの腹部にボディブローを叩き込んだ。

ラウラは苦悶を表情で呻く。そのままSEが0となり、僕の勝利に終わった。ラウラを担いで着地する。

 

 

「大丈夫?結構強めにやっちゃったから」

 

「大丈夫だ・・・夢でシャルロットにパイルバンカーで腹に穴を開けられた時に比べれば・・・」

 

「なにその夢。怖い」

 

 

その後、回復したラウラと一緒に織斑先生の前に立つ。二人揃ってポン、と出席簿で軽く叩かれた。

 

 

「誰がそこまで本気で戦えと言った。もう授業が終わるぞ」

 

「す、すみません・・・」

 

「やりすぎました・・・」

 

「だが此方も良い戦いを見せてもらったのでな。強くは叩かない事にしてやった」

 

「「ありがとうございますっ!」」

 

 

叩かれたら意識飛ぶかも・・・。

こうして、ISの実習も終了して何もなく一日が終わった。そして放課後、シャロに話しかけられた。

 

 

「刹那、明日って時間あるかな?」

 

「特には無いけどどうしたの?」

 

「よかったら・・・一緒に臨海学校の道具を買いに行かない?」

 

 

そう言ってシャロはモジモジしながら聞いて来る。なんかこっちまで恥ずかしくなって来た。別に断る理由も無いのでオーケーする。

 

 

「構わないよ。それじゃあ、何時に待ち合わせしようか」

 

「良いの!?それじゃあ、後で連絡するね!」

 

「え、うん・・・」

 

 

シャロはそう言ってスキップしながら帰って行った。僕も外出届と護衛のお願いしとかなくちゃ・・・。書類の提出をする為に鞄を持って廊下を歩きだした・・・。

 

 

刹那サイド終了


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