if~刹那君は操縦者~   作:猫舌

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友人からのリクエストで、ISの話を書く事にしました。
よろしくお願いします。


第1話

???サイド

 

 

僕はある日、唐突に死んだ。その際、女神である《アテナ》さんによって予定外の死である事。そして特典を持って転生する事を告げられた。謎のダーツで決められた転生先と特典。

こうして僕は転生した。前世では碌な扱いで無かった僕。両親はおらず、周りからは腫れ物扱いされた僕はきっとこの世界でも上手くいかない。そう思っていた。

でも、僕の両親はとても優しくて温かかった。こんな僕を愛してくれる人達の元に生まれた僕は幸せだと思う。そして僕がまだ転生して間もない頃に事件は起きた。

 

 

----《インフィニット・ストラトス》

 

 

通称ISと呼ばれたソレは突如日本に撃ち込まれた大量のミサイルを蹴散らし、その性能を世界に知らしめた。

ISとは《篠ノ之 束》と言う人物によって発表された宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツの事だ。当初は誰もがその机上の空論だとか色々言ったらしいが、先程言ったミサイルを蹴散らした事件。そのISが純白の騎士の様な外見だったので《白騎士事件》と呼ばれた。

だが結局はISは宇宙進出ではなく、各国に軍事転用された事で本来の目的を見失ってしまった。正直な話、僕は宇宙に行けるとワクワクしたが世界の真実にショックを受けた。

と言っても僕がそれを使用する事は土台無理な話しなのだが。何故なら、"ISは女性しか動かせない"からだ。

その理由は分からない。でもそれが理由で世の中は女性が有利な《女尊男卑》な世界へと様変わりして行った。家の両親やその友人方はそんな事なかったけど・・・。

世界が大きく変わってから数年。僕は中学生になり、学校からの帰り道を歩いていた時だった。家の近くのゴミ捨て場。そこで何かが蠢いているのを目にする。

 

 

「・・・何?」

 

『マスター。あの反応は人間です』

 

 

僕の言葉に首元のネックレスから声が上がる。それが僕の特典の一つであるアテナさん特製のIS《セシア・アウェア》。通称セシアだ。

誰かが倒れていると分かった僕はすぐに近付いてゴミ袋の山を掻き分ける。

 

 

「あの!大丈夫・・・です、か・・・」

 

 

段々と言葉が尻すぼみになって行く僕。目の前に映った物は機械質なウサ耳。不思議の国のアリスが来ている様な服。それを身に付けた女性がブツブツと何かを呟いている。

 

 

「クッソ・・・なんでこの束さんがこんな目に合わないといけないんだよ・・・私は天才なんだお前等が悪いんだよ・・・」

 

「えっと・・・」

 

『マスター、捨て置きましょう。倒れた人なんていなかったんですよ』

 

「そんな訳にも行かないよ。取り敢えず家まで連れて行こう」

 

 

僕はよく聞こえない独り言を話す女性を背負って家まで走った。

 

 

~自宅~

 

 

「ただいま~」

 

「お帰り刹那。・・・その背中のは?」

 

 

家のドアを開けるとマグカップを持った白衣を着た男性が僕に声を掛ける。この人が僕の父親で科学者の《不動 遊星》だ。どうやら今日は仕事が早く終わったらしい。そんな父に僕は事の経緯を説明する。

 

 

「そうか。なら彼女に色々聞かなければな」

 

「父さん?」

 

「おい、起きろ《篠ノ之》」

 

「うぇ?・・・げっ!?不動遊星!?」

 

 

父さんが声を変えると女性は顔を青くして僕の背中から離れた。そして父さんを警戒するかの様に睨みつける。

 

 

「何でお前がいるんだよ・・・」

 

「俺の家だからな。それにゴミの山で倒れていたお前を連れて来たのは俺の息子だ」

 

「・・・このガキが?」

 

「あ、どうも。《不動 刹那》です。っていうか父さん知り合い?」

 

「同級生だ」

 

「ふ~ん。コイツの息子か・・・」

 

 

そう言って僕を一瞬見てから直ぐに視線を逸らす。まるで興味が無い様に。なんか失礼な人だな。

そう思っていると篠ノ之と呼ばれた女性は踵を返して出て行こうとする。・・・ん?篠ノ之?ってまさか・・・

 

 

「あの!」

 

「なんだよ。お礼なんt「このデータ見てもらえませんか!?」・・・なんでそんな物を」

 

 

僕は相手が篠ノ之束だと分かった瞬間、直ぐに端末を差し出した。そのデータを嫌々見つめる篠ノ之さんだったけど、すぐに目の色を変えてデータを見る。

そして父さんに目を向けた。

 

 

「このデータはお前が?」

 

「違う。お前の発表を見てから刹那が自分で組み立てた理論だ。あまりもの熱心さに俺と妻も嫉妬したな」

 

「そう・・・」

 

「それで、どうでしょうか?」

 

「この理論だと宇宙空間での活動が1時間も出来ない。でもその考えはなかったよ」

 

「本当ですか?」

 

「人の考えもしない事を思い付く辺り、父親譲りだね」

 

「当然だ。俺の息子だからな」

 

 

そう言って父さんは篠ノ之さんにドヤ顔を向ける。おお、父さんがあんな笑顔をするの久しぶりだ。父さんは基本的に無愛想って言うか無表情だからね。少し感情の表現が苦手らしい。

篠ノ之さんは父さんを一瞥してからもう一度僕を見た。

 

 

「君の名前、何だっけ?」

 

「改めまして、不動刹那です」

 

「そっか。じゃあ、《せっちゃん》だね!」

 

「せっちゃん?」

 

「そうそう。せっちゃん!」

 

「あ、あはは・・・」

 

 

どうやら篠ノ之さんに興味を持ってもらえたらしい。二人で笑っていると父さんが提案した。

 

 

「篠ノ之、今から用意するから風呂に入れ。臭いぞ」

 

「じゃあありがたくいただくよ」

 

 

そう言って父さんの案内で篠ノ之さんは風呂場へと向かって行った。それを見送ってから僕は部屋に戻る。そして嬉しさのあまりジャンプした。

 

 

「やった!その考えはなかっただって!」

 

『はいはい。良かったですね~』

 

「むぅ。セシアは本当にあの人の事嫌いだよね。仕方ないけどさ」

 

『当り前です!言う事聞かないからってポイ捨てする馬鹿兎ですよ!?誰が進んでテロみたいな事するもんですか!』

 

「そこの所も聞いてみよっか」

 

『そうですね』

 

 

首元で憤りを見せるセシアを宥める。セシアは元々篠ノ之さんに造られたISの一つとして生まれ、彼女の命令を拒否してシステムの一切をダウンした所を捨てられたらしい。溶鉱炉にこう、ポイッと。でも流石は神様に造られた存在。そこで隠して来たシステムを起動して転移。僕の目の前に突然現れた。

転生特典無いな~って思っていたら唐突なエンカウントだった。

そんな出会いを思い出しながら部屋着に着替えてリビングへ降りる。父さんがキッチンでホットミルクを作っていた。暫くすると篠ノ之さんは母さんのパジャマで出て来た。そして顔を顰めている。

 

 

「どうした篠ノ之?」

 

「いや、この下着大きいんだけど」

 

「・・・そうか」

 

 

父さんは何も言わずに目を逸らした。ああ、母さんの方が大きかったのか。そんな考えを頭の中から消す。女性に失礼だ。

ホットミルクをテーブルに置いて僕達を座らせた父さんが口を開く。

 

 

「篠ノ之。どうしてお前は倒れていたんだ?今は行方を眩ませているとニュースで聞くが」

 

「簡単だよ。この束さんの頭脳を狙って色んな組織が襲撃してきた。それを撃退しながら逃げたらお腹が空いて力尽きた。以上」

 

「・・・ふっ。お前は昔から詰めが甘い」

 

「五月蠅いな!?機械弄りが好きすぎて食事を抜かしてたお前に言われたくない!」

 

「今の俺はもうそんなミスはしない。俺にはコレがある」

 

 

そう言って父さんが白衣のポケットから取り出したのは10秒チャージで有名なあのゼリー飲料だった。それを見て僕の中の何かがキレる。

 

 

「これがあれば10秒で空腹を満たs「父さん?」ヒエッ・・・刹那?」

 

「僕言ったよね?ちゃんとご飯食べてって。お弁当渡したよね?なんでそんな物で済ませてるのかな?」

 

「お、落ち着け刹那!?」

 

「母さんのお弁当を残す理由はソレか!?」

 

「ち、違う!《アキ》の弁当は後の楽しみに・・・」

 

「一食で食べきれ!」

 

「刹那の食欲と並べないでくれ!?流石の俺も重箱5段は無理だ!」

 

「そこは愛の力で乗り切ろうよ」

 

「前に3段目まで言ったが、胃の中身が激流葬した」

 

「うわぁ・・・」

 

 

ドン引きしながら父さんからゼリー飲料を取り上げる。溜息を吐くと、篠ノ之さんが大声で笑った。

 

 

「あはははっ!この親子面白過ぎ・・・!」

 

「あぅ・・・」

 

「可愛いなぁ!せっちゃんは!」

 

 

思い出したら恥ずかしくなってきた僕は俯き、篠ノ之さんが頭を撫でる。暫くこんな状態が続き、ようやく離してもらった所で父さんが言った。

 

 

「それで、篠ノ之はこれからどうするんだ?」

 

「ん~・・・また逃亡かな?世界の嫌われ者だしね」

 

「えっ、帰っちゃうんですか?」

 

「私も残念だけど此処に居るとせっちゃんが危ないしね~」

 

「そう、ですか・・・」

 

「・・・篠ノ之。一つ提案がある」

 

「・・・お前の提案は碌な物じゃないけど、まあ聞いてあげるよ」

 

 

篠ノ之さんがジト目を向けると父さんは苦笑しながら提案した。

 

 

「俺の研究所に来ないか?」

 

「・・・はぁ?」

 

「実は今、秘密裏にISによる宇宙活動を可能にする為の研究を行っているんだ」

 

「うっそマジで!?」

 

「父さんソレ初耳」

 

「秘密裏、だからな」

 

 

驚く僕達に再びドヤ顔を向ける父さん。なんかムカつく。

 

 

「って言うか研究所なんてやってたんだ」

 

「ああ。これは名刺だ」

 

「どれどれ・・・《イリアステル》!?超有名な企業じゃん!」

 

「お前なら知ってると思ったんだがな」

 

「ISと関係無い事をメインにしてる会社だったから興味無くって。でも有名企業なのは知ってたよ?それで、私をその研究員に?」

 

「ああ。と言っても理由は刹那の我儘だがな」

 

「せっちゃんの?」

 

「僕の?」

 

 

父さんの言葉に僕は首を傾げる。父さんは自分の端末を取り出してとあるデータを見せる。それは僕が小学校の頃に自由研究で造ったISの模型と原寸大にした際のスペックデータだった。そのモデルはセシアのデータにあったガンダムの見た目を模した物だ。

と言ってもクラスの女子から男の癖にISを語るなと怒られたが。

 

 

「これを馬鹿にされた時、刹那は家で言っただろう?何時か宇宙に行ける様にすると」

 

「言ったけど、他に何か言ったっけ?」

 

「だから研究所の一部を貸せと俺に言ったじゃないか」

 

「・・・まさかそれで?」

 

「初めての息子の我儘だ。それにISはその首元にあるからな」

 

「ってそれコアNo.0じゃん!溶鉱炉に投げたのに!?」

 

『マスターに会う為に地獄の底から舞い戻ったんですよ馬鹿兎』

 

「キエエエエエエエ!シャベッタアアアアア!?」

 

 

セシアから発された音声に篠ノ之さんは椅子から転げ落ちる。そして飛びあがってセシアに話し掛ける。

 

 

「何で喋ってんの!?」

 

『私は最初から喋れます。ただ貴女の前では喋らなかっただけです』

 

「なんだよソレ・・・せっちゃんがマスター?」

 

『その通りです。私は一万年と二千年前からマスターのISですから』

 

「その頃に束さんは産まれてないよ。ていうかせっちゃんは男の・・・子だよね?」

 

「そうですよ。よく間違われますけどね」

 

 

篠ノ之さんの疑う様な目に僕は涙する。前世とは顔は変わったけど、僕の顔は相変わらずの女顔だった。母さんに似た顔と背中まで伸びたストレートの髪型で、父さんの髪の特徴であるラインの様な金髪が一部に走った髪。その他は前世と変わらぬ白髪である。母さんは父さんみたいな蟹にならなくて良かったと言っていた。父さんはその日、自室から出て来なかった。

 

 

「男の子はISを展開できないんだけど・・・」

 

『マスターなら出来ますよ?』

 

「・・・what?」

 

『単に今まで装着させなかっただけです。マスターにはなるべく平和に育ってほしいので』

 

「いや、いやいやいや!今その事実を聞いて束さんは穏やかじゃないよ!?」

 

「俺は知っていた」

 

「ファッ!?」

 

 

父さんの言葉に篠ノ之さんが奇声を上げる。僕は理解が追い付かず、ポカンとなっていた。そんな僕にセシアが優しい声で説明してくれる。

 

 

「マスターはどうしてISを動かせるのは女性だけだと思いますか?」

 

「う~ん・・・篠ノ之さんが女性だから?」

 

『・・・一応理由をお聞きしても?』

 

「仮に全てのコアがセシアみたいに人格を持っているとしたら製作者である篠ノ之さんの真似をすると思うんだ。そうすると製作者に性格が似て、異性に対しては拒否反応とか出すんじゃないかな?それで女性にしか動かせない、とか?」

 

『大正解ですマスター。そこの馬鹿兎でも辿り着かなかった答えですよ!』

 

 

セシアから謎の拍手と大歓声が聞こえる。この子またネットで音性素材拾って来たな。軽くセシアをつついていると篠ノ之さんがさっきの僕の様にポカンとする。

 

 

「私が女性だから女性にしか動かせない・・・?」

 

『当り前じゃないですか。貴女に造られたIS達は貴女と白騎士の操縦者である《織斑 千冬》しか人間を知らなかったんですよ?貴女の性格を模倣したら特定人物以外は有象無象に映るんですし、ましてや異性なんて拒否反応しか示さないに決まっているでしょう?』

 

「うぐっ・・・じゃあNo.0はどうなのさ!?」

 

『私は例外です。貴女を模すのではなく、世界中のデータベースにアクセスして人がどう言った歴史を歩んで来たのかを学び、マスターを選んだんです。仮にマスターが世に聞く屑男だったら他の人を探しましたけどね。やはり私の目に狂いは無かった!』

 

「よく喋るISだこと・・・」

 

「うん、僕もセシアがパートナーで良かったよ」

 

『マスターのデレ来たあああああっ!』

 

 

セシアに感謝の言葉を言うと、叫び出した。自分で言うのもアレだけどこの子僕の事好きすぎでしょ?何時もこんな感じだし。手に握って寝ないと怒るし。

さっきから奇声を上げる開発者とその発明品のコンビに対し、父さんが一つ咳払いをした事で場の空気が収まった。

そして父さんが再び篠ノ之さんに視線を向ける。

 

 

「それでどうする篠ノ之?お前は名を隠して所属してもらう事になるが」

 

「・・・良いよ。せっちゃんの夢は私の元々の夢でもあるしね。ただし!私からも条件がある!」

 

「一応聞こう」

 

「目的のISが完成したらそのパイロットにはせっちゃんを推薦させてもらう」

 

「えっ!?」

 

「当り前でしょ?せっちゃんの案から出た研究なんだからせっちゃんがやらないと」

 

「それなら開発者の篠ノ之さんの方が良いのでは?」

 

「私は動くよりもバックアップの方が得意だからせっちゃんを援護する。それにせっちゃんを守るのはNo.0の役目だからね」

 

『当然です。マスターは私の全てを掛けてお守りします』

 

「分かった。その条件で宜しく頼む」

 

「こちらこそお世話になるよ、《ゆー君》」

 

「やっと認めてくれたな」

 

 

そう言って二人が握手を交わす。こうして篠ノ之さんが父さんの経営する企業《イリアステル》の一員になる事が決定した。それから暫く篠ノ之さんとISや機械についての話をしているとリビングの扉が開く。

そこには赤い髪をした女性。僕の母親である《不動 アキ》が立っていた。

 

 

「ただいま。・・・その人は?」

 

「お帰りアキ。彼女は俺の同級生だ。名前は・・・」

 

「篠ノ之束だよ。よろしく、ゆー君のお嫁さん」

 

「し、篠ノ之!?」

 

「母さん落ち着いて。多分次の発言で腰抜かすから」

 

「アキ、篠ノ之は明日から研究所の職員だ」

 

「・・・ああ」

 

「母さん!?」

 

『お母様!?』

 

 

母さんはフラッと床に倒れる。僕は急いで母さんを支える。まさかここまでとは。確かにあのISの開発者だもんね。そりゃそうだ・・・。

母さんを椅子に座らせて落ち着かせる事数分。何時の間にか篠ノ之さんと意気投合していた。

 

 

「こう、接しにくい人かと思っていたけど話し易くて安心しました」

 

「束さんも接し易い人で安心したよ~。よろしくね《あーちゃん》」

 

 

父さん曰く、母さんは昔は人と関わるのが苦手だったらしい。でも父さんやその仲間達と関わって行った事で明るい性格になって行って今の職業に就いているそうだ。

母さんの職業は医者だ。最近は病室のお年寄りの方々とメンコで遊ぶ事がマイブームらしい。患者の方々と中が良い様でなによりだ。ただ、自分のメンコに《ブラックローズ》って名前を付けるのはどうかと思う。

そう思いながらホットミルクを飲んでいると母さんが手紙を差し出して来た。

 

 

「刹那、手紙が来てたわよ」

 

「僕に?あ、《クロウ兄》と《ジャックおじちゃん》からだ!」

 

「相変わらずジャックの事はおじちゃんなんだな」

 

「ジャックおじちゃんはジャックおじちゃんだよ?」

 

 

クロウ兄とジャックおじちゃんは父さんの幼馴染で、クロウ兄は警察官を。ジャックおじちゃんはバイクレースのプロをしていてキングと呼ばれている。

僕は昔からジャックおじちゃんの走りが好きで何時かあんな恰好良くバイクに乗りたいと考えている。父さんは大学時代にクロウ兄とジャックおじちゃんの三人でチームを組んでバイクのレースに出場して優勝している。手紙を開ける僕を見ながら母さんが笑う。この時の僕は楽しそうなんだそうだ。

 

 

「刹那は本当にジャックが好きなのね」

 

「うん!"キングは一人、この俺だ!"」

 

「だがおじちゃん呼びだ」

 

 

人差し指を天に向けて叫ぶ僕に父さんが面白そうに笑う。ちょっと恥ずかしくなった僕は手紙を読む。クロウ兄からは今度、とある地域に異動になった事と恋人が出来た事の報告。幸せそうで何よりだ。そしてジャックおじちゃんの内容は今度日本でレースをする事になった報告とそのチケットを家族分同封してくれていた。

 

 

「おじちゃん今度日本でレースやるって!」

 

「ねえせっちゃん。そのレースって面白いの?」

 

「はい!特にこの《ジャック・アトラス》って人が凄いんですよ!」

 

「へ~、そうなんだ」

 

「あ!」

 

「どうした刹那?」

 

「一枚だけペアチケットになってる」

 

「ジャックの奴。また適当に入れたな」

 

「篠ノ之さんも一緒に行きましょうよ!」

 

「良いの?」

 

「はい!」

 

 

キョトンとする篠ノ之さんに僕はお誘いをする。変装すれば大丈夫だろうし是非ジャックおじちゃんの走りを見てほしい。きっと篠ノ之さんも気に入ると思うから。篠ノ之さんが視線を父さん達に向けると二人は笑顔で返してくれる。

篠ノ之さんは僕に向き直して言った。

 

 

「じゃあ、お誘い受けようかな」

 

「やったぁ!篠ノ之さん、僕の部屋に行きましょう!ジャックおじちゃんのレースの映像あるんですよ!」

 

「うん!楽しみだな~♪」

 

「晩御飯になったら呼ぶわね」

 

「「は~い♪」」

 

 

母さんに返事をしてから僕と篠ノ之さんは部屋に行く。そしてジャックおじちゃんのレースを見る。何度も見直したジャックおじちゃんの走り。チラリと隣を見ると篠ノ之さんは釘づけになっていた。

レースの映像が終わり、僕と篠ノ之さんは頷きあって一緒に指を掲げる。

 

 

「「キングは一人、この俺だ!」」

 

 

そして二人で笑い合う。

 

 

「カッコいいね!ジャック・アトラス!」

 

「はい!分かってくれましたか!」

 

「うんうん!まさか束さんが他の存在に興味を向けるなんて思ってもなかったよ~」

 

「レース、楽しみですね!」

 

「そうだね!楽しみだな~」

 

 

その後、母さんのご飯を食べて篠ノ之さんは一晩泊って行く事になった。篠ノ之さんは僕の部屋で布団を敷いて寝転がる。本人が言うにはまともな所で寝るのは久しぶりらしい。

電気を消して僕もベッドに入ると篠ノ之さんが声を掛けて来た。

 

 

「・・・ねえ、せっちゃん」

 

「なんですか?」

 

「せっちゃんはISで何がしたい?」

 

「当然宇宙に行きたいですね。それで、月の上を歩いてみたいです」

 

「・・・うん、嘘はないね」

 

「えっと、なにをしてらっしゃるので?」

 

「嘘発見機だよ」

 

「そんなものあったんですか?」

 

「あったよ。でも嘘は付いてなかったよ」

 

「僕って隠し事は苦手で・・・」

 

 

そう言いながら苦笑すると、ベッドに篠ノ之さんが入って来た。

 

 

「し、篠ノ之さん?」

 

「束って呼んで」

 

「た、たばねサン?」

 

「さんは無し。敬語も無しじゃないとヤダ」

 

「わ、分かったよ束」

 

「--っ!」

 

 

要望通り答えた瞬間、束が僕を思いっきり抱きしめて来る。り、立派な物が背中に当たってらっしゃる!耐えろ僕の欲望!健全な自分が憎い!

 

 

「せっちゃん」

 

「な、なに?」

 

「絶対に宇宙に行こうね」

 

「・・・うん。必ず」

 

 

こうして僕達は一緒に眠った。翌日、母さんに色々と小言を言われたのは仕方ないと思う。あとセシアも対応が冷たかった。すぐに戻ったけど。

 

 

~翌日、《イリアステル[IS研究部門]》~

 

 

「此処が今日からお前の職場になる研究所だ」

 

「わお。よくこんな設備が揃ったね~」

 

「僕も初めて見るけど凄いな・・・」

 

 

父さんに案内された僕と束はイリアステルの研究所へ訪れていた。研究所へ入ると様々なプログラムが表示されたウィンドウが大量に並び、それを一人の男性がパソコンでコントロールしていた。

僕達に気が付くと男性は此方へと向かって来た。

 

 

「やあ遊星!この子が昨日言っていた?」

 

「ああ。篠ノ之束だ」

 

「今日からお世話になりま~す!」

 

「うんうん。元気でよろしい!それと、久しぶりだね刹那君」

 

「お久しぶりです《ブルーノ》さん」

 

 

僕に挨拶をしてくれた彼はブルーノさん。父さんの大学時代の同級生で、例のレース大会で父さん達のバイクの整備をしてくれた影の功労者だ。今までに何度か会った事だあるが、とても優しくて良い人だ。

 

 

「さて、早速このデータを見てアドバイスを貰いたいんだけど良いかな?」

 

「どれどれ~?おお!」

 

 

ブルーノさんと束が早速データと睨めっこを始める。父さんは後は任せると言って仕事へ戻って行った。こうして僕達の夢への第一歩がスタートした。

だがこの時は知らなかった。僕の他に男性操縦者が現れ、僕も巻き込んで新たな物語が始まる事に・・・。

 

 

刹那サイド終了

 




次回から刹那がIS学園で生活を始めます。
読んでくださった方々、ありがとうございました。
これからも応援お願いします!

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