それでは、どうぞ。
妖夢「あなたの名前は…『白楼神奈』です。」
少女は頭を垂れ微動だにせずにいたが、しばらくすると顔をあげて口を開いた。
神奈「…ありがとうございます。今後『白楼神奈』を名乗らせていただきます。」
妖夢「良かった〜。変な名前とか言われたらどうしようかと…」
妖夢は緊張して返答を待っていたが、特に何も言われなかったので取り敢えず安心した。
霊夢「意外に良いじゃない。安易だけど。」
妖夢「そ、そこは…大目に見ていただけると…」
神奈「安易なのは少し思う所もありますけど、それを差し引いてもいい名前だと思います。気に入りました。」
妖夢「なら、良かったです。」
霊夢「名前も決めたことだし、次は能力ね。何かあったりする?」
神奈「いや、自分では何もわかりませんけども…」
幻想郷の人外は能力を持っていることが多い。ものによっては危険な能力もあるため霊夢は聞いたのである。
妖夢「何かありませんか?能力判定札的なもの。」
霊夢「見た事はないわ。うーん、どうすれば…あっ、そうだ!」
神奈「何か思いつきましたか?」
霊夢「紫なら、何か知ってるかもと思ったのよ。」
妖夢「紫様ですか…確かに何かしら知ってそうですね。」
神奈「紫様というと、あの金髪紫のドレスに傘の方ですよね?」
妖夢「なんで知って…って、そうだ。記憶はあったんでしたね。」
霊夢「うーん、やっぱりわかんないわね。仕方ない。"あれ"をやるしかないか…」
霊夢は面倒そうな顔をしながら言った。
神奈「どうしたんですか?」
霊夢「いや、あいつっていつどこに居るのかわかんないのよね。」
妖夢「確かに。どうする気なんですか?」
霊夢「だから、呼び寄せようかと思って。外に出るわよ。」
妖夢・神奈「「?」」
〜少女移動中〜
妖夢「で、どうするんですか?」
霊夢「まぁ、見てればわかるわ。」
妖夢・神奈「「?」」
そう言うと霊夢は、構えをとって目を瞑り何かを始めた。二人が首を傾げていると、段々目の前の空間が歪み始めた。
妖夢・神奈「「!!」」
すると突然、歪み始めた空間の横に線が一本走り、縦に割れた。二人がびっくりしていると、中から少し怒った様子の紫が出てきた。
紫「ちょっと、霊夢!!勝手に結界を緩めるのはやめてって何度も言ってるでしょ!!幻想郷が崩壊したらどうするのよ!!」
そう、霊夢は結界を緩めたのだ。詳しい説明は省くが、幻想郷は2枚の特別な結界で覆われていてそれによって外と隔離されているのだ。この結界が崩壊すると、幻想郷は外の世界のある山に出てきてしまい、妖怪たちは存在を否定されて消えてしまうのだ。幻想郷の管理者である紫は結界の緩んだところの修理もしているので気付いて飛んできたのだ。
霊夢「あ、来た。」
紫「『あ、来た。』じゃないわよ、まったく…で、要件は?」
霊夢「あの子の能力を知りたいんだけど、何かない?」
紫「ん?初めて見る顔だけど、誰かしら…?ああ、そういうことね。わかったわ。」
紫は神奈を凝視していたがしばらくすると納得したような満足そうな顔をした後承諾した。
霊夢「話が早くて助かるわ。で、どうするの?」
霊夢がそう言うと紫は神奈に歩み寄り、優雅にお辞儀をした。
紫「改めて、八雲紫と申します。よろしくお願いしますわ。」
神奈は突然のことに狼狽えそうになったが、なんとかこらえて自己紹介した。
神奈「先程ご主人から名前をいただきました。白楼神奈といいます。よろしくお願いします。」
神奈と紫は妖夢の方を向き、クスクスと笑った。
妖夢「ゆ、紫様?どうなさったんですか?」
紫「ふふふ、いや、あなたがご主人と呼ばれているのが可笑しくってつい、ね?」
紫がそう言うと妖夢は顔を真っ赤にしてしまった。
妖夢「わ、笑わないでくださいよぉ!!」
紫「あんなに小さかった子が、もうご主人に…」
妖夢「うわあああああ!!」
霊夢「フフフ、や、やめて、やりなさいよ、ふふ、アハハハ!!」
紫の弄りに真面目に反応する妖夢に霊夢もつい笑ってしまい、それを見た妖夢が涙目になってしまった。
〜少女謝罪中〜
紫「それで、能力だったわね。」
霊夢「そういえばそうだったわね。」
霊夢はすっかり忘れていたが、能力のことを聞くために紫は呼ばれたのである。
妖夢「本題忘れてるじゃないですか!!」
霊夢「だって、あれは、よ、妖夢が、フフフ」
紫「霊夢、もうよしなさい妖夢がまた、な、泣いちゃうわよ、ふふふ」
妖夢「もうやめてください!!ほんとに!!」
せっかく落ち着いて来た妖夢はまた顔を真っ赤にして叫んだ。
紫「ふふふ、わかったわよ。で、能力のこと教えようと思ったんだけど…」
霊夢「思ったんだけど、何なのよ。」
紫はニコリとして言い放った。
紫「やめたわ。」
霊夢「は?ちょっとあんた…」
霊夢の言葉を遮って紫は妖夢に向き直った。
紫「だって妖夢、あなたの師匠は修行のとき、何かを教えたかしら?。」
妖夢「!!」
妖夢は自らの剣の師である祖父、妖忌との修行を思い出した。
妖夢「…そうでしたね。確かにお師匠様は技は見て盗むものだと言ってました。」
霊夢「どういうこと?」
妖夢「つまり紫様は自分達で探し当ててみろと仰るのですね?」
紫「わかってるじゃない。じゃあ、私はもう帰るわね。」
霊夢「ちょっと紫!妖夢もいいの?」
妖夢「はい。神奈もいいですよね?」
神奈「はい。ご主人がいいのなら。」
霊夢「はぁ…。ちょっと気になるんだけど…仕方ない。で、この後どうするの?」
妖夢「あれ?今って何時くらいでしたっけ?」
霊夢「もうそろそろお昼の頃だけど。」
それを聞いた瞬間、妖夢は固まった。
霊夢「妖夢?どうしたの?」
神奈「ご主人?どうかしましたか?」
二人が尋ねた次の瞬間、
妖夢「幽々子様のご飯がーーー!!というより白玉楼の食料庫がーーー!!」
妖夢は大声で叫んだ。何を隠そうこの半人半霊、あろうことか自分の主のことをすっかり忘れていたのである。主の朝・昼食も。
そうすると何が起こるか。
幽々子は大食いだ。それもフードファイターが可愛く見えるレベルで、その胃袋たるや、どこぞのピンクの悪魔に並ぶとされる程である。
普段は「妖夢の作ったご飯が食べたい」と食料庫を漁ったりすることはないが妖夢が居ないうえに二食も抜かれるとなると話は別で、幽々子は空腹に耐えられなくなり、食料庫の中身をすべて平らげてしまうのだ。過去にも何度か経験のあった妖夢は今回もそうなってしまうことが簡単に想像出来た。そうなると大量の食料を買わなければならなくなり、白玉楼の財政が苦しくなってしまうのだ。
霊夢「あぁ…頑張れ。」
幽々子の大食いは宴会でも発揮されていたので周知の事実となっていたのだ。なので霊夢は憐れむような目で妖夢を見ていた。
妖夢「れれれ霊夢さん!!あ、ありがとうございました!!お礼はまた後日させていただきます!!ではっ!!」
妖夢はそう言うと凄まじい勢いで白玉楼へと飛んでいった。二人はしばらくぽかんとしていたが、霊夢はふと気づいて慌てだした。
霊夢「あの
その時霊夢は、そこに修羅を見た。
神奈「フフフフフフ、私を置いて行くとはいい度胸じゃないですか。後でたっぷりと
霊夢「妖夢…明日生きてるかしら?」
明日の妖夢の生存が気になる霊夢であった。
いかがだったでしょうか?タイトルは妖夢のことでした。白玉楼の財政事情や、いかに!
紫は能力を教えてくれませんでした。妖夢と神奈は果たして能力の正体にたどり着けるのでしょうか?それより明日まで生きてるのでしょうか?
では、また次回。