アマツさんの大冒険   作:死神 零@8928

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今回はすぐにパッと思いついたネタがあるので書いてみることにしました。


第十六話 とある渓流の一日

渓流

 

そこは雪山、砂漠、火山とは違い、比較的環境が安定しておりどのモンスターが生息しやすいフィールドの一つである。

 

それ故かハンター達が知る危険なモンスターばかり生息する。

 

例えをあげるなら迅速の身のこなしを持ち、相手を暗殺するような動きを見せる【迅竜 ナルガクルガ】。

 

強靭な四肢を使って大地を駆け巡り、狙った獲物を息絶えるまで狩り続ける無双の狩人【雷狼竜 ジンオウガ】。

 

かつて太陽と月とも呼ばれた幻の飛竜【銀火竜 リオレウス希少種】に【金火竜 リオレイア希少種】。

 

最近ではかの海の王【海竜 ラギアクルス】や全てを喰らう【恐暴竜 イビルジョー】、妖艶なる舞【泡狐竜 タマミツネ】まで確認されるようになった。

 

美しいフィールドであるものの危険区域に変わりないこの場所で…一人の白髪の少女がいた。

 

…いや、いたと言うよりも…何故か体を丸くして寝ている。

 

何故こんな危険な場所に少女がいるのか、誰に聞いても返ってくる返事は「分からない」だろう。

 

 

ー誰だこいつ?

 

 

その少女の近くにジャギィとジャギノスを連れた【狗竜 ドスジャギィ】は威嚇をしながら少女を見る。

 

それに連れ、他のジャギィとジャギノスもギャアギャアと騒がしく少女に威嚇する。

 

 

ーむくっ

 

 

と、ここで少女は目を覚まし体を上げて辺りを見渡した。

 

腰辺りまで届くボサボサの髪で頭頂部にアホ毛が一本、目の色は水色で顔付きは美しいというより可愛らしいと言った方がいいだろう。

 

身長は約155cm辺りだろうか、やや小柄で白いワンピースを纏っている。

 

その少女は目の前にいるドスジャギィとジャギィ、ジャギノスの群れを見て…

 

 

「?」

 

 

…怯えることもなく、泣き叫ぶこともなく、驚くこともなく、ただただ可愛らしく首をコテンと傾げる。

 

…どうやらこの少女、言葉を発せない…というより言葉を知らないらしい。

 

 

ーな、なんだってんだいお前!!

 

 

しかしその様子が気に入らないのかドスジャギィはより低い姿勢で相手を睨み付け、威嚇を続ける。

 

だが少女は無言でドスジャギィを見つめる…というわけではなく、キョロキョロと辺りを見渡した。

 

そして次に自分の手や足を見る。

 

これには少し驚いたのか目を見開いていた。

 

となればこの少女、有り得ない話かもしれないが元々【モンスターだった】のではないのだろうか?

 

とは言え…ドスジャギィ、いやその連れであるジャギィとジャギノス達に視界が入ってないらしい。

 

むしろ興味が無い御様子。

 

それを知らずにドスジャギィはまだ威嚇を続ける。

 

 

ートットットットットッ。

 

 

それとは別に少女は立ち上がり、裸足でありながらも流れる川に足を突っ込みながら元気よく走る。

 

体の件についてはよく分かってないが、どうやらこの場所に見覚えがあるらしい。

 

 

ーえー…。

 

 

一方のドスジャギィ御一行はただそれをポカンと口を開けて眺める。

 

少女に全く相手にされない…哀れなり、ドスジャギィ御一行よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってエリア7。

 

ここは水が多く、タマミツネやガノトトス、ロアルドロスなどと言った水を好むモンスターがよく集まる場所。

 

エリアには現在体を丸めて気持ちよく寝てるタマミツネが。

 

そのタマミツネの近くに釣りを終えたのか大量の魚を抱えてご機嫌に帰るアイルー三匹。

 

内一匹が宙に舞う泡が気になって立ち止まると後ろにいた二匹が足を滑らせて転倒。

 

気がつけば足元には泡が展開され、摩擦が無いため三匹は前へ無様に流される。

 

…ここで異変を感じたタマミツネが起き上がった。

 

彼(一応雄)は自分の縄張りに近付いてきた外敵を追い払うため、グルグルと周囲を回っては振り向いて特大の泡を放つ。

 

その泡は三匹纏めて包み込み、ポヨンッと優しく割れた。

 

だが三匹は予期せぬ自体にパニクって魚を放置して無我夢中にタマミツネから逃げ出した。

 

追い払ったタマミツネは追跡せず、再び体を丸くして睡眠の姿勢へ…

 

 

 

…だが、眠れなかった。

 

 

 

何せ、目の前にはアイルー達が取っていた魚をむしゃむしゃと食べる白い少女がいるのだから。

 

ハンターがこんがり肉を食らうかのように両手で魚を持ち、腹を思い切り食らっている。

 

…しかも生で。

 

腹を壊さないのだろうか?

 

 

ー…やれやれ、仕方ない。

 

 

それを見たタマミツネは、やや呆れつつ再び泡を纏って少女に威嚇。

 

やや呆れつつ、と言っても所詮は竜。

 

人から見れば殺意があるようにしか見えない。

 

 

「?」

 

 

だが案の定と言うべきかなんと言うか。

 

少女はタマミツネを見るなり首を傾げている。

 

一見可愛らしいが口周りが血塗れなので普通にホラーである。

 

 

ー………。

 

 

対してタマミツネは背を低くして威嚇の体勢。

 

無駄な殺生を起こしたくないのか、彼の考えはアイルー達と同じように泡で追い返してやろうと思っている。

 

そんなタマミツネを見た少女は…。

 

 

「…?」

 

 

…近くにあった魚を手に取り、タマミツネに差し出した。

 

この少女は言葉を発せないどころか言葉を知らないため首を傾げるしかない。

 

だが意味は通用するだろう、人間の言葉で言うなら「これ食べる?」とでも言っているに違いない。

 

 

ーなんだ、この少女は…?

 

 

けれどタマミツネに動きはない。

 

何せ野生に生きるモンスターだ、人間が差し出すものには信用出来ない…。

 

 

 

 

ーキュルルルルゥ…

 

 

 

 

…途端、腹を空かせたような音が聞こえた。

 

その音の持ち主はタマミツネ。

 

寝起き故か空腹らしい。

 

 

ーあっ…。

 

「!」

 

 

タマミツネは自分の空腹に少し動揺し威嚇の体勢が崩れる。

 

対して少女はその反応が面白かったのか腕をバタバタと上下に振って笑っている…ような気がした。

 

言い忘れていたが、この少女は言葉も知らなければ表情も知らない。

 

常にポーカーフェイスだ。

 

だが真顔だったとしても十人中十人、否十二人がこちらに振り返るんだろうというぐらい可愛い顔付きをしている。

 

…少し話が逸れたが、タマミツネは渋々少女が持つ魚に近付いてスンスンと匂いを嗅いだ。

 

そして毒物が入ってないことを確認して口を開き、魚を食らった。

 

いや、食らったというより飲み込んだ。

 

タマミツネは歯が短く小さいため噛み砕くことが出来ないが喉が特化されてる為喉詰まりの問題は無い。

 

そしてタマミツネはお気に召されたのか別の魚にも口を開き、飲み込んだ。

 

少女も負けじと魚を持ってはガツガツと食らう。

 

いつの間にか周りには【水獣 ロアルドロス】や【水竜 ガノトトス】、挙句の果てには【恐暴竜 イビルジョー】まで集まってきたが、決して交わることのない一人と一頭の異様な光景をただただ見つめるだけで動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてしばらくして。

 

イビルジョーがガノトトスを喰らい尽くして去っていった頃、大量にあった魚を一匹残さず喰らい尽くした。

 

…元はアイルー達の物だが戻ってくる気配がないため問題は無い、多分。

 

それで少女はと言うと…

 

 

「zzz…」

 

 

…寝ている。

 

しかも寝方が仰向けになって寝る、という訳でもなく体を丸めて寝ている。

 

それはさながら海竜骨格のモンスターが睡眠を取る時と同じような姿勢だ。

 

 

ー………。

 

 

対してタマミツネはそっと少女に近付くと少女を取り囲む形で自分の体を丸めて睡眠を取る。

 

魚をくれた恩返しなのだろうか、どちらにせよ何やら和むような光景だ。

 

少女はタマミツネが持つ毛を抱きしめ、気持ちよく睡眠を…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーはっ!?

 

 

…ここである者が目を覚ました。

 

そのある者は今まで見たことがない夢を見て驚いてるのか目を見開いてキョロキョロと激しく辺りを見渡す。

 

そこは辺り一面銀世界で空には夜空が広がっている。

 

そして自分の下にはゆっくりと前進するガムート。

 

次に自分の腕を見る。

 

黒い堅殼に白い上鰭、水と風を纏った感覚。

 

ある者【アマツマガツチ】は現実に戻ってきた事を実感して安心したらしい。

 

まさか自分が人間になる夢を見るとは思いもしなかったのだろう。

 

そしてアマツマガツチが次にとった行動は…またも睡眠。

 

下の方ではギャアギャアとドスギアノス御一行とガムートが争っている。

 

それでもアマツマガツチは睡眠、しかも別な夢を見ているのかヨダレを垂らしている。

 

 

 

 

…そのマイペースさは相変わらずである。




アマツマガツチさん、まさかの擬人化。

しかしそれは夢の中であって現実にはならない。

人は人、モンスターはモンスター。

その種族の壁は通り来せないのだ…。


…的なことを考えて書いてみましたが如何でしょうか?

擬人化の話で当初はドキドキノコやらそういうのが原因で擬人化してユクモ村に迷い込んで祭りに巻き込まれる、という設定にしようかと思いましたがそれだったらなんか違うと思い始め、行き着いたのがアマツマガツチさんの夢の中のお話という事になりました。

もし好評でしたらこういうパートが続いたり、擬人化した時のイラストを貼ろうかなと思ったり…かも知れません。

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