※最近投稿ペースが遅くなり申し訳ありません。
後擬人化の件ですが時間がありましたら番外編でやろうかと思いますのでご了承ください。
訂正・2017/02/03 07:41:12
古龍。
読んで字の如く、太古から生きる龍。
それは生物の枠組みの外にある存在、と言っても過言ではない。
最大の理由としては古龍には【災い】があるからだ。
時に山の如き巨体を持ち、歩くだけで災害を齎す者。
時にあらゆる生物を喰らい尽くし、遺骨を我が武器とする者。
時に嵐を呼び起こし、縦横無尽に破壊し尽くす者。
……などがいる。
当然、アマツマガツチは古龍なので【嵐の災い】を持つ。
……一部除いては。
ーzzz…。
森丘に住み着いたアマツマガツチは絶賛お昼寝中。
古龍だって眠たい時は眠いもの。
だが、そのアマツマガツチの身体にも変化がある。
より体格が大きくなった。
これは成長の過程としては共通している。
だが、異なる点がある。
風だけではなく、【水】を纏うようになったのだ。
全身から風と水が渦巻いている。
原因は不明。
食事の影響というわけでも無ければ環境適応の影響というわけでも無い。
唯一有力な仮説を立てるとしたら【生まれつき特別な体質だった】としか言えない。
その証拠としてはこのアマツマガツチ、生まれた時点で目の色が水色なのである。
それと関係しているのかは……それも不明である。
ーzzz……。
そんな彼女は自分の変化に気付かずにお昼寝中。
マイペースの性格も未だ安定してる。
だが、そんな彼女を他所に森丘で異変が起き始めている。
……一言で言えば全エリアに【霧】が立ち込められている。
その霧は深く、視界で僅か数メートル先しか見えないぐらい深い霧だ。
先に思うであろうが森丘の天候の影響ではないか?とあるが、それは全く持って違う。
森丘の天候は極めて安定している。
昼も夜も合わせて快晴、一度も曇ったことがないという。
ではこの霧はなんなのか?
……それは【古龍】である。
それも全エリアに霧を覆わせる程の強者だろう。
ーん?
そこで彼女は起きて周りを確認。
だが霧のせいで良く見えていない。
ー……zzz。
だがそれがどうしたと言わんばかり二度寝。
霧には一切興味が無いらしい。
そんな寝ている彼女の傍、半透明な何かが横切る。
独特な動き、歩き方から見ればカメレオンだと思わせる。
赤の他人から見ればそこには何もいない。だが何かがいる。
そしてその者は姿を現す。
鼻先から伸びた立派な一本角に大きく平らな顔、左右には目玉がギョロリと開き、四足歩行の龍がそこにいた。
名を霞龍【オオナズチ】。
古龍の一種であり、この霧を発生させた張本人である。
オオナズチはその左右に分かれた目……いや、目玉をクルクルと回し、辺りを見渡す。
霧を出した張本人であるが故、霧の中でも視力は落ちていないようだ。
辺りを見渡すと巣穴から顔を覗かせ、怯えているドスランポスとその子分達。
モスとファンゴはすぐさま地中へ潜り、ランゴスタはどこか飛び去っていった。
対してオオナズチは満足そうに目をグルグル回す。
だが、一頭だけオオナズチを気にしてない奴がいた。
そう、我らがアマツマガツチである。
ースヤァ……。
ー…………。
今日もまたいい夢を見てるのだろうか笑顔で寝ているアマツマガツチ。
……ヨダレが垂れてるのは最早定番である。
オオナズチは「なんだこいつ」と言いたげそうな顔でアマツマガツチをマジマジと見つめる。
そして自慢の長い舌でベチベチとアマツマガツチの頭を叩いてみる。
ーんー……。
あろう事かアマツマガツチが起き出したではないか。
あのアマツマガツチがだ。
アマツマガツチを起こしたのはオオナズチが初めてであった。
ー………………。
のんびりとしてるアマツマガツチをまたガン見するオオナズチ。
決して交わることのない古龍二頭が見つめている(ただし、オオナズチのみ)。
そして起こされたアマツマガツチは……。
ージーッ…
見つめていた、水辺の魚を。
食事をしたいのだろうか?
目の前にオオナズチという古龍がいると知らずに魚を見つめるアマツマガツチ……。
この光景をシュールと言える他ないだろう。
そしてアマツマガツチは狙いを定め、大きめのマグロ目掛けて口を開き……!!
ーシュッ!!!
食べる……と思いきや横からピンクの舌が伸び、狙っていたマグロを取られてしまう。
アマツマガツチはややビックリしながら舌の伸びた方向へ振り向く。
……だが、そこには何もいない。
ー?
アマツマガツチは首を傾げて再度魚を見る。
今度は大食いマグロを狙うようだ。
そして再び口を……!!
ーシュッ!!!
……開こうとした瞬間に今度は目の前から舌が伸び、マグロを捉えていた。
そして再び取られてしまう。
アマツマガツチはすぐに正面へと目を向けるが……やはりいない。
だが、何かがいるのはわかる。
わかるのだが、生憎どこにいるのかが分からない。
ーフッ……。
キョロキョロと探すアマツマガツチを見て少し笑うオオナズチ。
勿論、アマツマガツチの食事を妨害してるのもこいつである。
ー……イラッ
ここでアマツさん、初めて怒る。
あのマイペースで知られてるアマツさんがだ。
さて、ここで少し古龍について追記させておこう。
古龍の感情が高まると環境が変化するケースが多い。
目の前にいるオオナズチも感情が高まる……怒り状態になるとより濃い霧で覆うことがある。
そしてこのアマツマガツチもそうである。
普通のアマツマガツチだと嵐が激しさを増し、あらゆるものを破壊する。
……だが、それはあくまで【通常個体】の話である。
ー出て来いいぃぃぃぃっ!!!!
と叫ぶように甲高い咆哮を上げる。
すると変化が起きた。
雨が降り出したのだ。
だが、それは嵐などに起こる暴風や暴雨でもなければ鋼龍が出す雨でもない。
ただ、静かな雨が降り出したのだ。
強すぎず、また弱すぎず……。
雨音が周囲を引き立て、ポタポタと落ち、霧をかき消した。
それにアマツマガツチの方も変化している。
本来通常個体なら赤の模様が浮かぶがこのアマツマガツチの個体だと水色の線模様が浮かび、目の色が濃い青に変わる。
人は今いないがもし居れば皆が口を合わせてこういうだろう。
ー世界で一番綺麗な古龍だ、と。
そしてその雨の影響か半透明なオオナズチが浮かび上がった。
ー!?
こんな事予想してないのか驚きを隠せないオオナズチ。
…対してアマツマガツチはというと。
ーえ?なにこれ?
初めて自分の出せる力に驚いてるのかポカンと口を開く。
……相も変わらずマイペースである。
だが、そんなのは後だとして再び前へと振り返る。
バレてしまったオオナズチは姿を現し、こちらを凝視して威嚇する。
オオナズチとして、この姿をバレる感覚はハンターが【ランダムボール】と呼ばれるアイテムを投げつけられた以来の驚きだろう。
ーチッ、バレたか。
ー良くも私のマグロちゃんをぉ……!!
二頭の間からそんな雰囲気が漂う中、互いを睨み合っている。
……それにしてもやっとである。
アマツマガツチが怒りを覚え、ガチな戦いを繰り広げるのは初めてである。
食べ物の恨みとは自然界にでも通用するとは……怖いものだ。
ーお覚悟ぉ!!
そして先に動いたのはアマツマガツチ。
口に充分なほど水エネルギーを溜め込み、一気に放出。
だが出されたのは見た目に反してやけに小さく、細い水ブレスである。
ー!!
それをオオナズチが避ける。
野生の勘が働いたのだろう、【避ける】選択をした。
そして避け終えた後、水ブレスはオオナズチの後ろにあった巨木に風穴が空いた。
その風穴から充分な威力を物語っている。
恐らく、直撃していたら頭が吹き飛んでいただろう。
だが、それで退くオオナズチではなかった。
古龍の名の故か、また森丘の支配者故か、どちらかはわからないがプライドが高かったらしく、退く選択などない。
寧ろ【反撃】の選択を選んだ。
無我夢中に水ブレスを放つアマツマガツチに対し、オオナズチはそれを冷静に避けつつ、背後に回る。
そしてそこから口に毒を溜め込む。
ーっ!!
そこでアマツマガツチと目が合ってしまう。
だがここまで来たのなら放つしかない……!!
そして毒ブレスを放…
ーヒュー…ゴスンッ!!
…つ直前に上から何かが落ちてきた。
その何かがオオナズチの頭に直撃し、そのままぐでり。
オオナズチも当たりどころか悪かったのかその場に崩れ落ちる。
ー?
何が起きたのかわからないアマツマガツチは頭上に?マークを浮かばせ、首を傾げる。
そのせいで怒りを忘れ、雨が止み、霧が晴れ、快晴に戻る。
快晴になった途端、オオナズチを沈めた正体が見えた。
ピンクの甲殻と鱗で身を包み、空のような翼膜を持ちいり、大きな耳とクチバシが特徴的な鳥竜種…イャンクックである。
だが当の本人も目を回してぐでってる。
……何があったか説明すると、アマツマガツチが怒りの際に発した甲高い咆哮により、たまたま上空を飛んでいたイャンクックがその音量にビビり、そのまま墜落。
そしてたまたまオオナズチの頭に直撃した、とのこと。
…これはアマツマガツチの持つ【運】……とでも言えるのだろうか?
ー!
アマツマガツチが疑問を抱えてるとイャンクックが起き上がった。
……オオナズチは未だにぐでっている。
対してイャンクックは首をキョロキョロと見渡し、状況を整理。
……そこへアマツマガツチは近付き、こう言う。
ー…先生って呼んでいいですか?
ークェ?クエェェェェェッ!!?
言った(ような雰囲気であったが)のはいいが、イャンクックは目の前にいる奴がアマツマガツチとオオナズチだとわかった途端、パニックダッシュで逃げていった。
ーあ…。
それを見たアマツマガツチはショボンとする。
……さっきの怒りはどこへやら。
そして次に彼女が取った行動はイャンクックの跡を追う……ではなく、オオナズチにとどめを刺す……のではなく、巨木の上で寝始めた。
やはり、眠かったんだろう。
仕方がない。
以後、森丘の天候変化により、ギルドからハンターを派遣させた結果、オオナズチと遭遇し、討伐したとのこと。
だが、理由はわからないが通常個体のオオナズチとは異なり、何やらフラつきながら…いや、目眩を起こしながら戦っていたため、楽に狩れたという。
……もし、あのイャンクックがいなかったら森丘は一生霧に覆われてたのかもしれない。
アマツマガツチは相も変わらず寝ていた。
ー続くー
まさかの先生登場です。
いや、アマツさんも頑張ったから良しとしよう(自己解釈