お詫びあちらの前書きも変更しましたが、大変嬉しいことに最終話、多くの感想をいただくことが出来ました。がしかし、多すぎて一件一件感想を返すのが……すみません諦めさせてください。感想返信すると言っておいて、大変もうしわけありません。
何でもするんで許して下さい。
ソイツは何時もと同じく急にやって来た。何時もの朝、カルデアにあてがわれた自室にて机に座り、本を読んでいた時の事、ソイツは何時ものようにノックもせず、扉を壊さんばかりの勢いで開けた。
――バンっ!
何かの恨みが扉にあるのかどうかは俺には分からないが、結構な勢いで開けられた扉はダヴィンチちゃん特製の最高度の強度を誇るよく分からない材質で出来ていなければ数回も立たずに壊れそうな勢いがあった。
「朝よ!おはよう!」
ソイツ――ジャンヌオルタは何時もより妙に高いテンションで俺の部屋に入ってくる。勿論、家主の俺の許可何て取るはずもない。勝手知ったる人の家と言った感じだ。こう言う所は姿が変わっても昔のままだった。
ちなみにだ、ジャンヌが入って来た扉は俺の部屋にある正規の扉ではない。俺と部屋が隣同士のジャンヌオルタが自らの部屋の壁をぶち抜き俺の部屋に乱入してくるいう事が何回かあった後に、腹にすえかかねたダヴィンチちゃんによって壁の代わりに作られた扉だ。
俺とジャンヌオルタの部屋は廊下を行き来しなくても、扉一つで文字通り行き来出来るようになってしまっていた。
ついでに言えば、そのジャンヌオルタ専用の扉の反対側には白い方のジャンヌ、ジャンヌダルクの部屋に続く扉がある。オルタだけ、ズルいとジャンヌが抗議した結果ダヴィンチちゃんとマスターの判断の下設置された扉だった。
つまり、俺の部屋には何故か扉が三つもあるというよく分からん状況であり、ジャンヌオルタの部屋、俺の部屋、ジャンヌダルクの部屋と言った具合に行き来できる状況の訳だ。
一応鍵と言う物もあるのだが、サーヴァント相手にそんなものは有ってないようなものだ。ダヴィンチの最高強度を誇る鍵と扉であっても『吼え立てよ、我が憤怒(ラグロントメントデュヘイン)』の前にはあっけなく破壊される。さすが宝具ランクA+だ。俺のただの西洋剣とはわけが違う。
よって鍵なんて言うものは時間稼ぎしかならないため、掛けないようにした。毎回毎回、壁を修理する羽目になるダヴィンチちゃんも可哀想だし、部屋を毎回焦がされては俺もたまらない。
しかし、そうなるとプライベートなんて物がないにも等しくなる。そこで、ある決まりをマスター監修の下に決めた。「夜の八時から、朝の八時までの十二時間、この扉の使用を禁ずる」と言ったものだ。
もちろん、この扉と言うのは俺の部屋の左右に後付けされたそれの事であり、正規の扉の方は使用可能だ。もちろん、正規の扉を使う場合でもお互いに許可がないと入れないことになっている。
ちなみに破ると、令呪による強制部屋替えだ。
そんな罰で二人が約束を守るか心配だったが効果は覿面のようで、この決まりが破られることはなかった。
ちなみに、今ジャンヌオルタが俺の部屋に突入してきた時間は朝の八時を二三秒回った状態であり、ルール的にはセーフだ。
「おはよう、今日はやけに元気だな」
このカルデアには二人のジャンヌがいる。今俺の部屋にいる黒いジャンヌ、元竜の魔女のジャンヌオルタと救国の聖処女、ジャンヌダルクだ。二人の要望もあり、俺は黒い方のジャンヌをオルタと呼び、白い方のジャンヌを普通にジャンヌと呼ぶようにしている。
「えぇ、何と言っても今日の午前中はあの白い忌まわしい聖女様がレイシフトでいないんですもん! これを喜ばずして何を喜ぶと言うのです!」
まるで今にもスキップしそうな勢いでオルタは何時もの定位置の俺のベッドに腰を掛ける。
「お前ら、本当に仲が悪いな……」
呆れたように言うと、
「何を言っているのです! 当たり前ではないですか……誰があんな聖処女と仲良くなんか……」
オルタは考えるだけでも忌々しいと思ったのか、顔を苦くしかめると、
「スンスン……この匂いは……。昨日の夜、私がレイシフトしている間に誰かこの部屋に……それに、お酒の匂い?」
そう鼻を鳴らし、辺りを窺いながら言う。その顔は怪訝そうだ。
「あぁ、それか……。昨日デオンが訪ねて来てね、二人でこの部屋で飲んだんだよ」
このカルデアには様々なサーヴァントがいる。それなりに長い間ここで暮らしていると仲の良くなったサーヴァントも出来てくる。特にデオンの場合は色々と縁があったものだから、このカルデアに来てからも仲良くさせて貰っている。
「あの泥棒猫め……! 私と白いのがいない時を狙って……!」
オルタはブツブツと何か言ったかと思うと、急に顔を上げ、
「よし! 今日という今日は我慢できないわ! あの、男女(おとこおんな)を憎悪の炎で包んで、灰にしてやるわ! いや、灰すらも残さずに……! 我が憎悪に磨かれた魂の咆哮はこの日のために……!」
などといきなりとんでもなく物騒なことを口走り始めた。
「何を言っているんだ。そんな物騒なことは止めろ」
「で、でも……」
「でもも、何もない。止めるんだ。それに、今日はデオンは聖女と一緒にレイシフトしているよ」
「くっ……逃したか」
彼女はそう言うと、何を思ったのか、
「じゃあ、私も飲むわ!」
と、口に出した。
「――は?」
「は、じゃないわ! あの男女と飲んだんだから私とも飲むべきよ! ええ、そうよ! 私も一緒に飲めばいいのよ!」
「飲むって、何を?」
「何をって、お酒以外に何があるって言うの! さぁ、飲むわよ、準備しなさい」
「いやでも、まだ朝だぞ」
「朝から飲んではダメな法はないわ! 私は今日はレイシフトの予定はないし、一日休み、それに食堂に行けば朝から飲んでいる奴は、ゴロゴロいるわよ」
「た、確かにその通りだが、でも、この時間からはさすがに……」
「うるさい! この私が飲むって言ったら飲むの!」
「分かった分かった! だから、そうベッドをバンバンと叩かないでくれ!」
「分かればいいのよ、分かれば!」
渋々と言った形で備え付けの冷蔵庫を開ける。中にはワインと、ラム、そして缶ビールと缶酎ハイが入っていた。
――うーん、とりあえず俺はビールとしてオルタはどうする……。
とりあえず、缶酎ハイでも渡しておくか? それともフランス的にワイン?
昔のことを考えるとこっちだな。
「はいよ、これでいいか? そもそも、お前飲めるようになったのか? あのドンレミの村の時は……」
昔、ドンレミの村の収穫祭にて、大人ぶってワインを一口飲んだジャンヌは、顔を赤くさせ目をくるくる回し気を失うように寝ていたことを思い出す。ちなみに次の年の収穫祭では、ぺろりと一口舐めただけで顔を真っ赤に染めて直ぐに寝ていた。
「あの村娘のちっこい私とは違うのよ! サーヴァント化した今ならワインの一本や二本余裕よ!」
どこからそんな自信が湧いてくるのか知らんが彼女は大きく胸を張る。
そして、俺が渡したものを見ると、
「何よ、チューハイって! 度数も三パーセントしかないじゃない!」
「まずは軽くそれを飲んで、次にもっと度数が強い奴を飲めばいいだろ? それに俺もビールだし度数は変わらん」
「むぅ……もたもたしているとあの白いのが帰ってきそうだし、いいわ、分かったわ! でも、これを飲み終わったら、ワインやラム酒を飲ませるのよ」
「はいはい、分かった分かった。とりあえず、乾杯」
「ええ、乾杯」
お互いに缶を掲げる。
しかし、勢いとはいえ、朝から酒を飲むって完全にダメな人間だよなぁ……。
冷えたビールは美味しかった。
「うぅー! 聞いているの! だから、アナタは他のサーヴァントに構い過ぎなの!」
それから、十数分後、缶酎ハイ一本で酔っぱらったオルタがいた。見事にフラグを回収したわけだ。
サーヴァント化したから酒が強くなったという言い分はどこに行ったのか知らないが、彼女は顔を真っ赤に染め、酎ハイをチビチビと舐めるように飲みながら、俺に絡んで来る。
まぁ、寝ることがなくなったため、強くなったとは言えるのだが、流石にこうなるとは思わなかった。
「あの……もうそろそろ、飲むのは止めた方が……」
「何言ってるの! 私は今日は飲むの! 飲む日なの!」
彼女は顔を真っ赤にしつつもその手から缶を離すつもりはないらしい。ちなみに、その缶にはまだ半分は酎ハイが残っているようだった。
「分かった分かった」
「分かればいいのよ! 分かれば! むぅ、アナタが飲んでいる方も美味しそうね、一口貰うわ!」
オルタは赤く染まった顔をグイッと横に座る俺に近づけると、空いていた左手で俺の缶ビールを奪い取り、一口。
「――あっ」
止める暇はなかった。
ちなみに、なぜ俺がオルタの横に移動しているのかと言えば、酔っぱらった彼女が横に来い、横に来いとうるさかったからだ。
「――に、苦いじゃないの! これ!」
やっぱりと言うべきかビールはオルタには早かったらしく、顔を思いっきりしかめる。
「お前が勝手に飲むからだろ、それにこれはその苦みがいいんだ」
「私にはよく分からないわ……。それよりも絶対に私が飲んでいる方が美味しいんだから、ほら! 飲んでみなさいよ」
「分かった! 分かったから! そんなに暴れるな! 零れるだろ!」
無理やり俺の口に缶酎ハイを近づけて飲ませようとしてくるオルタから缶を受け取り、飲む。
柑橘系の甘い普通の酎ハイだ。度数的にもただのジュースを飲んでいる感覚に等しい。
俺的にはビールの方が断然好みなのだが、正直に言うとオルタが絶対にめんどくさい。
なので、ここは
「あぁ、美味いな! 俺もそっちの方が好きだよ」
と言っておく。嘘も方便というしたまには良いだろ。
「当たり前でしょ! 何といってもこの私、オルタ様が選んだのだから!」
どうやら、彼女の中ではいつの間にか、俺が適当に冷蔵庫に転がってあった酎ハイを渡した事実がなくなり、自分自身で選んだことになっているようだった。
これは相当酔ってるな、こりゃ。
「もういい加減、止めた方がいいぞ。相当酔ってるみたいだし」
「私が酔ってる? そんな筈ないわ! だって、こんなに気分が良いんだもん! こんな酎ハイ一気飲み出来るわ! ――ごくごくごく!」
オルタは俺の手から酎ハイを奪い返すと、一気に煽る。
――あぁあ、こりゃもうだめだ。
「ほら、みなさい! 酔ってなんかないでしょ! そして、何度も言うように、アナタは最近、他のサーヴァントに構い過ぎなの! もっと、私を――ふきゅぅ……!」
一気に回って来たのか、彼女はそこまで言うとそのままベッドに倒れ込んだ。
――すぅ、すぅ。
聞こえてくるのは穏やかな寝息。どうやら、寝たようだ。
「ったく、無駄に世話を焼かせやがって」
缶ビールを一気に煽ると缶をゴミ箱に投げ入れ、オルタをしっかりとベッドに寝かせる。出来ればオルタの部屋まで連れて帰りたいのだが、女の子の部屋に許可なく入るのは気が引けるので、悪いが俺の部屋で我慢してもらおう。
「まぁ、最近はレイシフトやらで忙しいもんな。たまにある休日くらいゆっくり休みな」
風邪を引かないように布団をかぶせ、短くなった髪を撫でる。
力のない俺とは違い強いオルタはレイシフトに欠かせない存在になりつつある。ストレスが溜まるのも分かる。つかの間の休日くらい好きにさせてストレスを発散させて、ゆっくり休んで欲しいものだ。
さて、あまり女子の寝顔を見るのも悪いし、食堂でもいくか……。
「すぅすぅ――お兄ちゃん、また会えたね――」
家主のいない部屋に響いたその寝言を聞く人物は誰もいなかった。
――そして、レイシフトから帰って来たジャンヌが俺のベッドで寝ているオルタを発見して一悶着あるのは、また別の話で、翌日二日酔いが治ったオルタが昨日のことを思い出し、あたふたと部屋で暴れる羽目になるのも、また別の話だ。
おまけ
ある日のレイシフトにて
「しかし、マスターこのメンツってどんな組み合わせだ?」
「どんなって言われてもくじ引きで決まったとしかいいようが……」
「確かにくじ引きで決めたからしょうがないと言えばしょうがないが、悪意のある組み合わせだよな、これ絶対」
「そう言えば、悪魔の軍の隊長さんは久し振りだっけ、レイシフト?」
「最近はさっぱりだったから、いつ振りだろう……。レイシフトした回数も指で足りるんじゃないかな」
「まぁ、旦那はあれだから、敵を殺すには向いてないからしょうがない。でもまぁ、このメンツはなぁ……」
アーラシュ、悪魔の軍隊長、フレンド アーラシュ。以上。
「いくらフレンドを含め、全てくじ引きで決めたとはいえ、どこかの陰謀を感じらずにはいられないメンバーだな」
「まぁ、でも今日は種火集めだし、すぐに終わりますよ!」
「そうなればいいけどな、マスター。っととりあえず、敵が出て来たか。悪魔の隊長さんは久しぶりの実戦だろうし、ゆっくり様子見てくれよ! まずは俺たちから逝くからよ」
「え? なんか今、いくと言う字が違うくなかったですか?」
「気にするな、マスター」
「陽のいと聖なる主よあらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ」
「ちょっと待って、アーラシュさんいきなりそれは――」
「さあ、月と星を創りしものよ我が行い、我が最期、我が成しうる聖なる献身(スプンタ・アールマティ)を見よ────『流星一条(ステラ)!!』」
「おうおう、見事にいったな。じゃあ次は俺の番だな」
(以下略)────『流星一条(ステラ)!!』
「なるほど、これは即ちそういう事か」
「え? 隊長さん何を言っているんですか?」
「立香、後は頼んだ。――――『必死必殺』」
――そして、誰もいなくなった。
「って、隊長さんの宝具対象一人だから、いるってまだいるって! あと二体敵はいるって! え? え? これ本当にどうするのよぉぉぉぉおおおお!!」
基本的におまけはおふざけ100パーセントです。
ちなみにこの作品の主人公の能力全く考えていないんですが、実際のところどのくらいなんだろ……。