異世界から捻デレさんも来るそうですよ!?   作:ユキ擬き

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毎度毎度遅れてしまい申し訳ないです。
受験勉強の合間にやっているので短くなってしまうので
お許しください。
それでは第六話です。どうぞ!



第六話

白夜叉が四人に問いた瞬間に四人の視覚は意味を無くした。

 

──黄金色の穂波が揺れる草原。

 

 

──白い地平線を覗く丘。

 

 

──森林の湖畔。

 

様々な場所が流転を繰り返し、足元から四人を呑み込んでいく。

四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔──そして水平に太陽が

廻る世界だった。

 

「・・・なっ・・!?」

目の前の異常な光景に八幡達は一斉に息を呑んだ。

箱庭に招待された時とはまるで違うその感覚は、もはや言葉で表せるものでは無かった。

遠く薄明の空にある星は只一つ。緩やかに世界を水平に廻る、白き太陽のみ。

 

まるで、星を一つ、否、世界を一つ創り出したかのような、奇跡の顕現。

絶句する四人に改めて白夜叉は問いかける。

今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”────────太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬような凄みに、再度息を飲む三人。

八幡はすぐに気を持ち直し白夜叉の正体を考えつつ三人の返答を伺っている。

星霊”とは惑星以上の星に存在する主精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり同時に、ギフトを“与える側”の存在でもある。

十六夜は背中に心地よい冷や汗を流しながら、白夜叉を睨んで笑う。

 

「水平に廻る太陽と……そうか、『白夜』と『夜叉』。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の1つだ。」

「これだけの土地がただのゲーム盤・・・・!?」

 

四人はまた絶句する。

そんな四人を見て白夜叉はまた問いかける。

 

「如何にも、して、おんしらの返答は?“挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。───だがしかし、“決闘”を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか。」

 

「……………………っ」

 

飛鳥と耀、そして自信家の十六夜でさえも即答できずに、返事を躊躇った。

白夜叉と決闘をしても此処まで強力な力を持っている白夜叉に勝てないのは明らかだった。

しかし、自分たちが売った喧嘩をこのような形で取り下げるにはプライドが邪魔した。

しばらくの静寂───十六夜がゆっくりと挙手をし、

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉。アンタには資格がある。今回は黙って試されてやるよ。」

「それは試練を受けるという事かの?して、他の童たちも同じか?」

「ええ、私も試されてあげてもいいわ。」

「右に同じ。」

「アホ毛の小僧も良いんじゃな?」

「しつこいぞ。面倒いと言っただろう」

「おんしの無気力はどうにかならんかのお・・」

「これが俺の基本スタンスだ」

 

この二人の会話を聞き張りつめていた空気が和やかな雰囲気になる。

そしてほっとした黒ウサギは問題児達に大声を上げる。

「それにしても御三人様は何をしているのですか!白夜叉様に決闘しようだなんて!

八幡さんも白夜叉様が言う様に少しはやる気をだしてください!それに白夜叉様が

魔王だったのは何年も前のことじゃ無いですか!」

ゼェゼェと肩で息をしながら黒ウサギはつっこんだ。

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

「はてさてどうじゃったかな?」

ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと

三人。八幡は欠伸をしながら会話を聞いていた。

そのとき彼方の山脈から甲高い雄叫びが響き渡り、それに逸早く反応したのは

春日部耀だった。

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

「ふむ…………あやつか。おんしらを試すのに打ってつけかもしれんの」

 

湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、白夜叉はチョイチョイと手招きをする。

すると体長5mはあろうかと言う巨大な獣が翼を広げて風の如く現れた。

「グリフォン……………嘘、本物!?」

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力” “知恵” “勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

白夜叉がもう一度手招きする。グリフォンは彼女の元へ降り立ち、深く頭を下げた。

「さて、肝心の試練だがの。おんしら三人とこのグリフォンで“力” “知恵” “勇気”の何れかを比べ合い、背にまたがって湖畔を舞うことができればクリア、ということにしようかの」

「おい白夜叉俺の名前が無いんだが」

「おんしには別の試練を用意する」

白夜叉は双女神の紋章が刻まれたカードを取り出す。すると、虚空から”主催者権限“にのみ

許された光り輝く羊皮紙が現れ、白夜叉はそれに指で記述する。

 

『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

 

 ・クリア条件 グリフォンの背に跨がり、湖畔を舞う

 ・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる

 

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

            “サウザンドアイズ”印』

「私がやる」

それを見た瞬間、ビシ!と指先まで綺麗に挙手をしたのは耀だった。

おとなしめの彼女にしては珍しい行動だがその目には明らかな闘志が宿ていた。

『お、お嬢……大丈夫か?なんや獅子の旦那よりデカいし怖いけど・・』

「大丈夫、問題ない」

「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我ではすまんぞ?」

「大丈夫、問題ない」

耀はまっすぐにグリフォンを見つめながる。

キラキラと光る顔には探していたものを見つけた子供の様に輝いていた。

その隣で呆れていた様に苦笑いを漏らす三人。

「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

「気を付けてね、春日部さん」

 

「信じてるからな、耀。後、肌も凍っちゃ駄目だろうからこれ着てけ。

いらなかったら捨てていい」

そう言って八幡は耀に学ランを渡す。

「うん。ありがとう八幡///」

「お、おう///」

その横で十六夜と飛鳥がヒソヒソと話をする。

「ねえ、十六夜君。あれを見てるとイライラするんだけど」

「そういうときはこう言うんだぜ」

その言葉を飛鳥に伝える十六夜。

「じゃあ行くぜ、お嬢様。せーのっ」

 

「「リア充爆発しろ!!」」

 

「何言ってんだよお前ら」

「・・・・////」

呆れる八幡と照れる耀であった。

 

そして痺れを切らした白夜叉が耀を急かす。

「話は終わったかの、それでは小娘はよ行ってこい」

「う、うん」

そうしてグリフォンに近づく耀にグリフォンは威嚇する様に

翼を広げる。

それに臆する事無く耀は近づき話しかける。

「えーと、初めまして春日部耀です」

『!?』

ビクッ!とグリフォンが跳ねた。その瞳からは警戒心が薄れ、戸惑いの色が

見えた。

「私を貴方の背に乗せ・・・誇りを賭けて勝負しませんか?」

『何だと・・・?』

誇り高い彼らに対してこのような発言は最も効果的な挑発だ。

それを気にせず耀は交渉を続ける。

「この地平を時計回りに大きく迂回して此処に戻ってくる間に背に乗った私を振るい落せば貴方の勝ち

 落とせなければ私の勝ち・・・どうかな?」

『娘よ。貴様は私に”誇りを賭けろ”と言った。確かに娘一人振るい落せないならば私の名誉は失墜するだろう。ならば貴様は何を賭ける?』

「命を賭けます」

即答だった。

突拍子もない耀の発言に黒ウサギと飛鳥から驚きの声が上がる。

「か、春日部さん、本気なの!?」

「だ、駄目です!!」

「貴方は誇りを賭ける。私は命を賭ける。

 もし、転落して生きていても私は貴方の晩御飯になります。

 それじゃ駄目かな?」

『・・・・ふむ・・・・』

耀の提案に余計慌てる黒ウサギと飛鳥。

しかし二人は白夜叉と十六夜、八幡に止められた。

「双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

「ああ。無粋なことはやめとけ」

三人の言葉に納得し二人は下がる。

 耀は、グリフォンに跨り手綱を握っていた。

「始める前に一言だけ・・・・・・・私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ。」

『――――――そうか』

 

そして耀がグリフォンと飛び立った後十六夜はふと気づいた様に

八幡に話しかける。

「なあ、八幡。お前なんであんなに耀の事気に掛けてんだ?

もしかして惚れたのか?」

ケラケラ笑ってからかう十六夜の問いに八幡は早口で捲し立てた。

「そ、そんな分けねえだろ。耀はコミニュティの仲間だからな。

信用しなきゃダメだろ?」

「そうかい。まあそういう事にしとくぜ」

また十六夜はケラケラと笑う。

「お、春日部のやつ戻ってきたぞ」

十六夜がそう言うと湖畔の向こう側からグリフォンに跨がった耀

が戻ってきていた。

「耀さんが戻ってきました!」

「後もう少しね・・・頑張って耀さん」

そしてついにゴールした瞬間耀がグリフォンから落ちた。

『何!?』

「耀さん!!」

「大変だわ!耀さんが!」

助けに行こうとする二人を十六夜と八幡が止める。

「まだだ!まだ終わってない!」

「ああ、今は行くべきじゃない。」

そして耀は周囲の事を忘れ、ある事を考えていた。

(四肢で・・・・風を絡め、大気を踏みしめる様に・・・!)

「なっ・・・・」

その場の全員が絶句した。

先ほどまでそんな素振りを見せなかった耀湖畔の上で浮いて

居たのだから。

その後八幡達のそばで降り立った。

そして最初に口を開いたのは十六夜だった。

「やっぱりオマエのギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 十六夜が笑みを浮かべながら耀に言う。

 軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。

「・・・・・・違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

「ただの推測。

 お前、黒ウサギと出会った時に“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。

 そんな芸当は人間にはできない。

 だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、

 他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか・・・・・・と推察したんだが、

 それだけじゃなさそうだな。

 あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」

そこでグリフォンが耀に話しかける。

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』

「うん。大事にする」

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。・・・・・・ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

「木彫り?」

 首を傾げる白夜叉に三毛猫が説明する。

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや』

「ほほう・・・・・・彫刻家の父か。

 よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉に差し出す。

 白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。

 十六夜と飛鳥、八幡もその隣から木彫りを覗き込む。

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

「・・・・・・これは」

 木彫りは中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

 白夜叉だけでなく、十六夜、黒ウサギも鑑定に参加する。

 表と裏を何度も見直し、表面にある幾何学線を指でなぞる。

 黒ウサギは首を傾げて耀に問う。

「材質は楠の神木・・・・・・? 神格は残っていないようですが・・・・・・この中心を目指す幾何学線・・・・・・そして中心に円状の空白・・・・・・もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

「うん。私の母さんがそうだった」

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

「おそらくの・・・・・・ならこの図形はこうで・・・・・・この円形が収束するのは・・・・・・いや、これは・・・・・・これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 

 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! 

 まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ? 

 でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。

 この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。

 再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、

 すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。

 中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、

 それともこの作品そのものが未完成の作品だからか」

白夜叉はどんどん目をキラキラさせている。

「うぬぬ、凄い。凄いぞ。

 久しく想像力が刺激されとるぞ! 実にアーティスティックだ!

 おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

「ダメ。」

白夜叉の手から耀がペンダントを奪い取る。白夜叉はおもちゃを取り上げられた子供のような顔をしていた。

そこで耀黒ウサギと飛鳥に向き直る。

「二人とも心配させてごめんね?あと応援してくれて

ありがとう」

「いえいえ、コミュニティの仲間ですから!」

「私もと、友達だから心配するのは当然よ」

 

耀の正直な感謝の気持ちに照れる二人。そして最後に八幡の

方に向かって

「八幡、上着ありがと。暖かかったよ///・・でも上着カチコチに

なっちゃった」

しょんぼりする耀に八幡は頭を撫でながら言う。

「そんなもん後で他の買えるから良いよ。耀の無事が一番だ」

「あ、ありがとう///」

甘々な雰囲気になる前に十六夜が遮る。

「はーい、お二人さんそこまでだ。八幡も次が試練だろ」

「おっと、そうだったな。白夜叉、俺の試練は何だ」

「ああ、おんしにはやる気を出してもらおうと思って一人だけの

試練にしたのじゃ。この契約書類(ギアスロール)をみてみよ」

その羊皮紙に書かれていた内容は

 

『ギフトゲーム名”白夜叉のおやつ”

                  

  ・プレイヤー名

   ・比企谷八幡

 

    ・ルール

     ・用意された食材しか使ってはいけない

     ・決まった範囲から出てはいけない

     

    ・クリア条件

     ・白夜叉の満足するお菓子を出す

 

    ・敗北条件

     ・プレイヤーがお菓子を作れなくなる 

 

 

   宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

      “サウザンドアイズ”印』

八幡はこれを見て「はあ?」と言った。

「おい白夜叉お前お菓子食いてえだけだろ!」

「さっき金髪の小僧がおんしのバームクーヘンを最近食べてないと言っていたのでちょうどいいなと

思ってちょっと、な?」

「な?じゃねえよ!まあ、いいや。わかった作るよ」

「本当か!よし、ならばこの店にあるもの何でも使っていいから作るのじゃ!」

 

そして八幡がお菓子を作っている間十六夜達は談笑していた。

「それにしてもあの小僧手際良すぎではないかの」

「あいつはこっちくる前は専業主夫になりたいって言ってたから

家事全般何でも出来るんだよ」

「それはすごいわね・・」

「うん・・今度何か作ってもらおう」

「何か節約する方法を知ってたら良いのデスが・・」

そんな話をしている途中に飛鳥が思い出した様に耀に聞いた。

「そういえば耀さん。聞きたいことがあるのだけれど」

「うん?何を聞きたいの?あ、あと飛鳥もうめんどくさいから耀って

呼び捨てでいいよ。年下だし」

「わかったわ耀。それじゃあ聞くけどあなた八幡君の事どう思ってるの?」

「ふぇっ!それは・・その・・」

そこに他の三人も混ざってくる。

「それはぜひ聞きたいな」

「YES!黒ウサギも興味があるのですよ!」

「わしもそれは気になるのお」

全員が耀にゲス顔で迫ってくる。

「えっと・・・あの・・その///」

耀は照れてしまって何も言えなくなる。

そこにお菓子を完成させた八幡がやってくる。

「お前らなにゲス顔で女の子に迫ってんだ」

「ほっ・・・良かった」

 

「ちっ、八幡相変わらずタイミング悪いな」

「ええ、全くよ」

「今回は黒ウサギも同意ですかね」

「なんか興ざめじゃの」

 

「え、何これ。新手のいじめ?何それつらい。てか作って

来たぞ。お菓子」

 

「何!それではいただくとしよう!お前らも食って良いぞ!」

「まじか!そんじゃ遠慮なく」

 

「ええ、いただくわ!」

 

「いただきます!」

 

「美味しそう・・・」

みんなが一斉に食べ始めすぐに食べきった。

「お前ら食うの早すぎだろ」

 

「まあ、でも美味しかったぜ。さすが八幡だぜ」

 

「そりゃどうも」

 

「で、でも結構カロリー高そうでしたよ?たくさん食べちゃいましたけど」

黒ウサギの言葉に女子たちはうっ、と言った表情だが八幡がフォローする。

「安心しろ今作ったのは限りなくカロリーを減らした俺特性のスイーツだからな」

八幡の言葉に女子達は胸を撫で下ろした。

「そんじゃあ、白夜叉俺はクリアで良いか?」

 

「ああ、もちろんじゃ。それで黒ウサギ全員の試練が終わったが、何の用事で

来たんじゃ?」

「ああ、そうでした!今日はギフトの鑑定を御願いしようと思いまして」

ゲッ、と気まずそうに顔を背ける白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。本来なら専門外どころか無関係もいいとこなんじゃがの。」

 そういって困った様に白髪を搔き上げ、着物の裾を引きずり

ながら四人の顔を両手で包んで見つめる

「どれどれ・・ふむふむ・・・ 四人ともに素養が高いのは分かる しかしこれでは何とも言えんな おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「こいつらと同じ感じ」

十六夜、飛鳥、耀、八幡の順で言う

「うおおおおい?いやまあ仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるがそれじゃ話が進まんだろうに」

「別に鑑定なんていらねえよ 人に名札張られるのは趣味じゃない」

 十六夜が言い切る。他の三人もうんうんと頷いている。

「ふむ、何にせよ試練をクリアしたおんしらにはギフトを与えねばならん」

そういって白夜叉が柏手を叩くと四人の前に光り輝く四枚のカードが

現れた。 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の樹(ゲノム・ツリー)”“ノーフォーマー”

 

ダークスレートブルーのカードに比企谷八幡・ギフトネーム”重力(グラビティ)””記憶図書館(メモリー・ライブラリ)” ”専業主夫” ”対話の首飾り”

四人がまじまじとみていると黒ウサギが声を上げて驚く。

「ギフトカード!」

「お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「クレジットカード?」

「ち、違います!

 というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです!?

 このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!

 八幡さんの首飾りや、耀さんの生命の目録だって収納できて、しかも好きな時に顕現できるのですよ!」

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

どんどん投げやりになって行く黒ウサギだった。

 

「へえ・・・・・・もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 十六夜は黒ウサギの持つ水樹にカードを向ける。

 すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

 見ると十六夜のカードは溢れるほどの水を生み出す樹の絵が差し込まれ、

 ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。

「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティのために使ってください!」

 チッ、とつまらなそうに舌打ちする十六夜。

 黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。

「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。

 そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった”恩恵”の名称。

 鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 十六夜のカードには“正体不明”の文字。

 白夜叉は驚きヤハハと笑う十六夜のギフトカードを取り上げる。

 

「いいやありえん、全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど。」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 十六夜が白夜叉からカードを取り上げる。

 だが、白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。

 

「おい、白夜叉これ意味分からないんだが」

 

「ん?どれどれ」

八幡が指を指すとそこには”専業主夫”の文字があった。

「ん〜、わしもよくわからん。しかし悪いものでもなかろう・・・多分」

 

「最後ですげえ不安になったけどまあいいや」

 

一通り会話が終わった所でコミュニティに向かう事になった。

六人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀は一礼した。

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」

 

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 

「いやもう良くね?」

 

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。そやつのそのスタンスは

なおらんかったの。………ところで」

 

白夜叉は微笑を浮かべるがスっと真剣な表情で俺達を見てくる。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」

 

「ああ、名前と旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

「なら、“魔王”と戦う事が避けられん事もか?」

 

「聞いてるわよ」

 

「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

黒ウサギはドキリとした顔で視線を逸らし、同時に思う。

もしコミュニティの現状を話さないなんて不義理な真似をしたらかけがえのない

友人を失っていたかもしれない。

 

「“カッコいい”で済む話ではないのだがの………全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

予言するように断言された耀と飛鳥は言い返そうとするが、元魔王の白夜叉の威圧感に黙ってしまう。

 

「そう……肝に銘じておくわ。次は貴女の本気に挑戦するから覚悟しなさい」

 

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

 

「嫌です!」

即答する黒ウサギに、白夜叉は口を尖らす。

「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」

 

「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」

怒る黒ウサギに笑う白夜叉。そのまま八幡達は無愛想な女性店員に見送られながら“サウザンドアイズ”二一〇五三八〇外門支店を後にした。

 




はいどうもユキ擬きです!
初めてオリジナルのギフトゲームを作ったので変かもしれませんが御許しください。
やっとこさ白夜叉の試練も終わって良かったです。
それに久しぶりに長い文章を書いたので疲れました。(汗)
まだまだ拙い箇所もありますが暖かい目でご覧ください!
それではまた次の話で!

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