とある傭兵と脚本家   作:子藤貝

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今回は早めに投稿できました。
いやー、モチベがあると手が進む進む。
いつもこれぐらいを維持できたらいいのになー・・・。


第十話 修行ともう一人の師(前編)

「踏み込みが甘い」

 

「うるさい! あんた避けるの早すぎよ!」

 

「この程度を早いなどと言っていれば戦場では死ぬぞ」

 

「ああもう! 死ね!」

 

ダァン!

 

「銃で狙うなら頭ではなく心臓だと教えたはずだぞ」

 

「この至近距離で銃弾をよけんなこの化物!」

 

「教えを活かさなかった罰だ、吹き飛べ」

 

ブォン!

 

「ぐえっ!」

 

とても女性の口から飛び出たものとは思えない、

蛙が潰れたような声を上げるミーナ。

無理もない。アーサーの殺人的な速度と重さの蹴りを、

水月にもろに食らったのだ。普通なら更に

吐瀉物を吐き出しているだろう。

しかしミーナはかろうじて意識を保ちつつ、

襲い来る吐き気を気合で抑えつける。

 

「ほう、耐えられるようになったか」

 

「お陰様でね、このクソ外道!」

 

既にアーサーに連れられ旅を続け、3ヶ月が経つ。

旅の中では、暇さえあれば組手を行いひたすらボコボコにされ、

銃器の扱いや世間一般の世情の情報を得るように指導された。

最初のうちは急所ばかり狙ってくるアーサーのせいで

一瞬で意識が飛んだり、吐瀉物をぶちまけたり。

銃器の扱いも、しょっちゅう暴発させたり分解したものの

組み立て方が分からずに夕食を抜かされたり。

少しでも情報を得ることを疎かにしていれば、

酒場に連行して屈強な男どもから特定の情報を

聞き出せという無茶振りをし、挙句喧嘩に発展し。

勝ちはしたが穏便に済ませられなかったことと

情報を抜き出すこと事態を忘れた事を叱られ、

その日はいつもの倍以上の鍛錬を積まされた。

 

(お陰で強くはなったけど・・・ねっ!)

 

痛みをこらえつつ、迫り来るアーサーに向けて牽制の

拳を放つ。アーサーはそれを片手で軽くいなし、

ミーナの顔面に容赦なく拳を振るう。

ミーナはそれを驚異的な反射能力で屈んで躱し、

そのまま懐に潜りこみつつアッパーを放つ。

しかし。

 

「防御が甘いぞ阿呆が」

 

「ぐあっ!」

 

アーサーは懐に潜り込んだミーナの顎に向けて、

膝蹴りを放ち、攻撃中だったミーナは防御が間に合わず、

もろに食らってしまう。普通なら顎が割れるような蹴りだが、

何とか食らった直後に頭を後ろに逸らし、衝撃を少しだけ流す

ことに成功し、最悪の事態は免れる。が、ダメージはそのままなため

意識が朦朧とする。

そこに止めの裏拳が飛んでくる。ミーナは意識がはっきりせず、

視界もぼやけていたため視認できず、喉にそれを受けると同時に

気管の空気をすべて吐き出させられ、酸素の供給が停止。

そのまま夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

「起きろ、飯はもうできているぞ」

 

「ゲホゲホ、の、喉がイガイガする」

 

「あの程度も躱せんからだ、馬鹿者」

 

「うっさい死ねくたばれ」

 

目覚めてみれば、今現在泊まっているホテルにいた。

アーサーは静かに新聞を黙読しつつ、紅茶を飲んでいる。

 

「いっつも思うけどさ、あんたコーヒーとか飲まないの?」

 

「吾輩は英国人だぞ? あんな泥水など誰が飲むか」

 

「はっ、好き嫌いなんかしてたらママに笑われるわよ?」

 

「その前にまずお前の好き嫌いから治すべきだな」

 

「・・・冗談よ、じょーだん」

 

「晩飯は人参のソテーにするか」

 

「ふざけんな! 誰があんなクソマズイもん食べるかっての!」

 

なんとも気の抜ける会話だが、互いに利用し合い、殺しあう関係である。

アーサーは油断なき佇まいで、ミーナは隙あらばバターナイフで

殺してやろうと様子をうかがっている。

たったの1月で、すでにミーナはアーサーが求める最低ラインの

技能を手に入れている。アーサーも才能があるからこそ彼女を

助手として鍛えたが、これほどの飲み込みの良さは想定外だった。

食事を終えたミーナに、アーサーはバスタオルを投げ渡す。

 

「シャワーを浴びて汗でも流せ。午後は交渉における鉄則と、

言語を学ばせるぞ。言葉がわかるだけで、交渉事は

随分と有利になるからな」

 

「あ、そう」

 

そんな会話の流れでバスルームに向かおうとしたミーナは、

 

「死にさらせっ!」

 

いつの間に手元に握っていたのか、バターナイフをアーサーに向けて

投擲する。アーサーは再び新聞に目を向けており、バターナイフには

目を向けていない。しかし、そっと手を虚空へ向けたかと思えば、

迫り来るバターナイフを指だけで止める。

そして指で少し弄んだ後、バターナイフをミーナに向けて投擲し返す。

ミーナは慌ててしゃがみ込む。そして数瞬遅れてバターナイフが

彼女の頭上をかすめてゆき、部屋の入口のドアに突き刺さった。

 

「チッ、やっぱダメか」

 

「無駄だと分かっているなら初めからするな。足掻くのは

いいことだが諦めの入ったような足掻きなど愚図のやることだ」

 

「フンッ!」

 

アーサーにそう言われ、ミーナは不機嫌に鼻息を一つ漏らすと、

改めてバスルームへと入った。

アーサーは新聞を折りたたみ、紅茶の入ったカップを持ち上げ。

 

「まずまず、か。そろそろ師匠に鍛えてもらったほうがいいな」

 

そんな言葉を漏らし、カップに口をつけた。

 

 

 

 

 

「明日、インドを出るぞ」

 

午後の勉強も終わり、一息ついていたところで

アーサーが唐突にそんなことを言った。

 

「ふぅん? 随分と急ね?」

 

「むしろ遅いぐらいだ。お前を鍛えるために3ヶ月も

浪費したのだからな」

 

「あんたの教え方が下手なだけじゃない?」

 

「口だけは達者だな、ダメ助手」

 

「うるさい、この外道」

 

悪態をつきつつ、夕食のために外へと出る二人。

宿泊しているホテルは周辺の中では割高だが、

その分外より数段も設備や部屋が充実している。

ホテル経営者の趣味なのかは分からないが、

あまり広くもない娯楽室にはなぜか卓球台が。

そんな一見すればまあまあいいところのホテルだが、

スラムがあるこの近辺では高級ホテルもいいところであり、

むしろ周辺の汚いホテルのほうが標準レベルなのだ。

そんなホテルに宿泊しているとなれば、

当然、それを狙う輩もいるわけで。

 

「おいお二人さん、俺ら明日をも知れない人間なんだ」

 

「だからよぉ、そんな俺らにお恵みくれない?」

 

「あ、別に身ぐるみ全部置いてけってわけじゃないぜ?

財布の中身全部くれるんなら俺らも満足するからさぁ・・・」

 

ホテルを出てから数分。スラムの近辺を歩いていると、

アーサーたちを数人の少年が取り囲む。

どうやらアーサーたちの財布が目当てらしく、

手に持った錆びたノコギリやら切れ味の悪そうな飛び出しナイフを

これみよがしに見せつつアーサーたちに話しかけてくる。

そんな少年たちを見て、ミーナの抱いた感想は、

 

「はぁ・・・例え殺したいほど憎い奴がいても、さすがにここまで

落ちぶれたくはないわね」

 

「んだとこのガキが!」

 

「おまけに単細胞だし。そんないかにも過ぎるものこれ見よがしに見せて

粋がってるなんて、あんた達少しはプライドってもんがないの?」

 

「ははは、傑作だぜ! プライドがどうのこうのだってよ!」

 

「プライドだけで飯が食えるかよ、おら金出せや」

 

「まあ待てよ、この女よく見たら結構別嬪じゃねぇか?」

 

男の一人がそんなことを言うと、男たちがミーナを値踏みするかのように、

あるいは舐め回すかのように下衆な視線を向ける。

此処で彼女の容姿に触れるが、顔自体は中々に

整い、日焼けした肌が眩しいエキゾチックな美人である。

が、アーサーにさんざんボコボコにされたせいで顔には細かい傷を

負い、右頬には大きなガーゼがあてられている。

元々は長くサラサラとした髪は戦闘の邪魔になると考えて自ら切り、

セミロングの髪型となっているが、髪質は損なわれていない。

体も見えないところに傷を負っており、先日折れた肋骨はまだ

治りきっていない。

尤も、彼女はアーサーに対する復讐しか頭にないため、

お洒落やら容姿に全く無頓着である。これはアーサーに

父を殺される以前からそういう傾向であったのだが、

復讐を誓ってからはそれが顕著になったのだ。

原因は、紛れもなく同じく服装にむとんちゃくなアーサーである。

きちんとした格好をすれば100人中97人が振り返る程であろうが、

結局のところ本人が一番の問題であるため、彼女の口の悪さが

決定的にイメージを破壊し尽くすだけだろう。

そんなミーナでも、男たちの下卑た視線にはさすがに嫌悪を抱く。

いくら男勝りな性格でも、性別からくる生理的嫌悪は

拭うことはできない。

 

「ヘヘッ、マジだ。暗くてよく分かんなかったがいい面してんじゃん」

 

「適当に男の方ボコしたら俺らで楽しもうぜ」

 

「おっ、それ賛成!」

 

そんなやりとりをした後、彼らはアーサーの方へと向かう。

高身長であるアーサーに多少すくむが、人数はこっちのほうが上だと

判断して、

 

「恨むんなら連れの嬢ちゃんにすんだな!」

 

アーサーに殴りかかる。しかし。

 

「あれ?」

 

アーサーにその攻撃は届いておらず、男の後ろにいた。

 

「うわあああああああ! な、何だこりゃあ!?」

 

続いて男の悲鳴。見れば男の手首の関節が全く逆に向いていた。

殴りかかってきた男の拳をいなしつつ関節を外して背後に移動したのだ。

流れるような動きであったため、男は思考が追いつかなかったのだ。

 

「て、てめぇ!」

 

他の男がアーサーにナイフで切りかかろうとするが、

 

「余所見してんじゃないわよ」

 

ミーナの強烈な蹴り。しかもただ蹴ったのではなく、

 

「うげえええええ!!?」

 

男の両足の付け根。股関節の真下である。

男にとって最大級の急所を蹴られたその男は、

あまりの痛みで悶絶している。

 

「な、なんて女だ・・・」

 

「ち、畜生!」

 

二人の悲鳴と惨状で戦意を喪失した他の少年たちは、

負傷した二人を連れて、闇へと消えていった。

 

「フンッ、あの程度で怯むなんて雑魚もいいとこね」

 

「無駄に手間を食ったな、さっさと行くぞ」

 

「あー、運動したせいで余計お腹が減ってきたわ。

カロリー高いもの頼んでやる」

 

その後、行った先の店で一番カロリーの高い料理を頼んだ

ミーナだったが、肉厚な鶏肉のソテーと一緒に、

ゴロッとした大きな人参のソテーがついてきて辟易し、

残そうとするもアーサーに食わないなら無理やり口に押し込むと

言われ、渋々チャイで流し込みつつ、人参を処理したのだった。

因みに、アーサーは食べ物を残すことをよしとしない

性格だというのもあるが、ミーナが頼んだ料理は店で一番高い料理でもあり、

アーサーがミーナに完食を強要した最大の理由がそれであった。

 

 

 

 

翌日、インドからの飛行機に乗り、中国は上海へと到着する。

ミーナのパスポートは、ミーナ自身に確保できるように

アーサーが仕込んだおかげで、自力で成り代わりのパスポートを

所持している。元の持ち主は、既に自身の身分に関することを

抹消されているため、ミーナには与り知らぬところである。

尤も、アーサーはその身分証明を売買している組織と

繋がりがあるとだけ、此処に記述しておく。

 

「此処が中国・・・何か騒がしいところね」

 

「だろうな、今は国内の治安がうまく統率できていない。

お陰で少しずつだが反日運動に紛れて政府に対する抵抗運動が起こっているようだ」

 

「・・・どうせ政府が軍隊出して鎮圧してお終いでしょ。

この国の人間の命は軽いって聞いてるし」

 

「だろうな。まあ、中華系マフィアが一枚噛んでいる可能性もある」

 

「それ絶対可能性じゃなくて確実ね」

 

そんなことを話しつつ、ミーナが本題に触れる。

 

「で? こんな情緒不安定な国に来たってことは理由があるんでしょ?

稼ぎ? それとも関係づくり?」

 

「それは既にしている。国外で度々中華系マフィアと遭遇するのでな、

なかなかいい取引ができている」

 

「・・・一方的に不利な要求だしてるのが目に浮かぶわ」

 

「奴らはプロだからな、下手に出れば余計に吹っ掛けられる。

むしろ多少上から見下すぐらいがちょうどいい。その方が

立場の違い(・・・・・)というものを理解させられるからな」

 

「搾取される側とする側の違いでしょそれ」

 

「さて、話が逸れたな。今回の目的は吾輩のもう一人の師匠に会うためだ」

 

「あー、前に言ってたわね。中東の方に一人と、この国に一人だっけ?」

 

アーサーは首肯する。

 

「戦いの心得を学んだとはいえ、吾輩は技術そのものはまだ未熟だ。

だからこそ、師匠に会って己を磨く」

 

「これ以上強くなるってこと? ますます殺す機会がないじゃない」

 

「そうでもない。お前には基礎的な戦い方を叩き込んだが応用や

技術はまだだ。だからこそ、吾輩の師匠に師事すれば、吾輩を

殺す手段も機会も、むしろぐんと増える」

 

「そ。ならさっさと行きましょ。そして強くなってあんたを殺してやるわ」

 

「おお、こわいこわい」

 

 

 

 

 

「いつに・・・ゼイ・・・なったら・・・着くのよ・・・!」

 

「なんだ、もうバテたのか。おぶってやるか?」

 

「冗談・・・! あんたなんかに・・・ゼイ・・・、

頼ってたまるか・・・!」

 

「ならさっさと登れ。目的地まで後3kmだ」

 

現在二人が歩いているのは、チベット自治区の北部、

海抜6000m級の山々が200峰以上も連なる大山脈、崑崙山脈の付近だ。

近隣は岩肌が露出し、緑は少ない。おまけに傾斜が厳しく、

砂や小石が多くて滑りやすい。人が住むには向かない、

むしろ死ぬにはちょうどいい場所とも言える。

二人は現地で移動用の頑丈な乗用車を確保し、

青海省へと向かった。その後、現地のガイドを雇い、

崑崙山脈にある目的地を割り出し、ガイドの案内されつつ

山脈付近にて車を降り、ひたすら歩き始めて既に3時間。

ガイドは車に乗って付近の集落へと戻っており、

帰りの時に集落へ寄って車を返して貰う予定になっている。

アーサーは普段と同じトレンチコートにカウボーイハット。

動きづらい服装のはずだというのに全く疲れを見せていない。

一方ミーナは動きやすい女性用のデニムジーンズ、

厚手長袖の緑のジャケットといった出で立ちだ。

前方を行くアーサーのせいで、視界が若干塞がれるのに

苛つきを覚える。アーサーは現在身長190cm以上の高身長であり、

150cmちょっとの彼女とは実に40cmもの身長差だ。

因みにミーナは14歳、ちょうど火織と同年齢であり、

アーサーはその4歳年上である。

 

 

登山開始から6時間後・・・。

 

 

 

「見えたぞ、あれが師匠の屋敷だ」

 

前方に年月を経た木材で組まれた大きな屋敷が見える。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ようやく着いたのね・・・」

 

「情けないぞ、この程度でへばるとは」

 

そうは言っても、急斜面を6時間かけて歩き、しかも

山脈の中腹付近に目的地があるせいでどんどん寒くなるのだ。

いくらアーサーに鍛えられたミーナでも無理がある。

アーサーはへばっているミーナを一瞥しつつ、

簡素な作りの山門へと向かう。

 

「此処に来るのも久々だな・・・」

 

山門に掲げられている文字はただ4文字のみ。

 

『一 撃 必 殺』

 

「なにこれ、なんて書いてあんの?」

 

「そういえばまだ漢字は教えていなかったな。

いずれ教えるからいいが、これは『一撃必殺』。

即ち"一"の"撃"、一発の攻撃で以って"必ず殺す"という意味だ」

 

「そんなどこぞのヒーローみたいなことが出来れば殺しなんて

苦労しないわよ」

 

「そうだ。人間とは元来弱い生き物のようではあれどそう簡単に

死なぬほどの生命力がある。それを一撃で仕留めるなど

非常に困難だ」

 

「ただでさえ銃で即死しない時だってあるのよ? 実戦で

それをするなんて無理を通り越して無謀よ」

 

そんな会話をしていると、

 

「フォフォ、それができちまうんじゃよ」

 

「ひぁっ!?」

 

突如、ミーナの尻を撫でる感触と、後ろからの声。

 

「おや、大分場馴れした風じゃったから反応には期待せんかったんじゃが、

中々どうして可愛らしい声をしよる」

 

振り返ってみれば、そこにはミーナより少し高い程度の身長、

白い顎髭を蓄え、それに反比例するように頭髪が寂しい老人の姿が。

 

「ホッホ、なかなかよい感触じゃったぞ。安産型じゃな」

 

「このエロジジイ!」

 

ミーナが老人相手には致命傷になりかねないような暴力的な蹴りを放つ。

だが。

 

「呵呵、それでは儂には当たらんよ」

 

「んなっ!?」

 

その蹴りを年齢相応の弱々しい腕の動きだけでいなす。

そのままミーナの無防備な軸足を蹴る老人。

重力に逆らえず、ミーナは尻餅をつくこととなった。

 

「クソッ! 一体何者よあんた!」

 

「フォフォ。なに、ただのしがない拳法家じゃよ」

 

「拳法家って・・・まさか此処に住んでるの?」

 

そんなやり取りをしていると、静観していたアーサーが

ゆっくりと老人へと近づき。

 

「ムッ!」

 

先ほどのミーナの遥か上を行く威力の拳を放つ。

すると老人は先程とは打って変わり、とても

老人とは思えないほどの機敏な動きでアーサーの拳を飛んで回避する。

そしてそのままアーサーの腕の上に乗り。

 

「なんじゃ、随分荒っぽい再会の挨拶じゃのぅ」

 

「よ、避けたぁ!? ってか大道芸!?」

 

「・・・お久しぶりです、師匠」

 

驚愕して思わず叫ぶミーナを無視して、アーサーは

老人に挨拶をする。

 

「は、え? 師匠? このエロジジイがこのクソ外道の師匠!?」

 

早すぎる展開について行けず、混乱しっぱなしのミーナだった。

 

 

 

 

 

「ほー、旅か。通りで毎年此処に来てるはずのお前が来んわけじゃ」

 

「もう一人の師の下で、戦場における戦いを学んでおりました」

 

「なーるほど、通りで火薬と血の臭いばっかするわけじゃのぅ・・・。

目も、前以上に人殺しをしたせいできつくなっとるわ」

 

屋敷に案内された二人は、屋敷の中で最も広い道場にて話をしていた。

道場の外からは数人の若者の声が聞こえる。

アーサーの師匠、王月林(おうげつりん)はこの辺境の地にて拳法を教えており、

彼らはその門下生だ。この老人がこんな辺鄙な場所に

住んでいるのは、生半可な気概で道場の門を叩いてほしくないから。

人付き合いが面倒だという理由もあるが。

 

「んで? そのめんこい娘っ子はお前の伴侶か何かか?」

 

「はっ、冗談はよして欲しいわ。こいつは私の復讐の対象。

それ以外の何者でもないわ」

 

「・・・何じゃお主、何やらやらかしたんか?」

 

「・・・まあ、色々と」

 

「そうか」

 

そう短く切ると、月林はそれ以上詮索はしなかった。

弟子のことは弟子のこと。深く関わる必要はないという、

師匠である彼なりの気遣いだった。

 

「んで? ここに来たっちゅうことは修行か?」

 

「ええ。最近はこいつの指導もあって鍛錬の時間が減りましたから。

鈍らないように徹底的に鍛えていただきたく」

 

「悪かったわね、お荷物で!」

 

「気の強い娘っ子じゃのう・・・。どうじゃ、お主も学んでみぬか?」

 

「ええ、そのためにコイツについてきたんだし」

 

「呵呵、そうかそうか」

 

こうして、アーサーとミーナの修行が始まった。

・・・ミーナは知らない。彼の修行は地獄の淵を

垣間見るほどの恐ろしさであることを・・・。




アーサー「最近ニッケルとしての喋りばかりですが、
     本来の私はこんな喋りです」

子藤貝「一応心の中での喋りはアーサー時の口調ですが、
    しばらくはニッケル時の口調ばかりになります」

ミーナ「私がこんな口悪くなったのも理由とかあんの?
    このクソ外道のせいで性格歪んだとか」

子「残念だったな、元からだよ」

ミ「野郎ぶっ殺してやる!」

子「え、ちょミーナさんそのガバメントは一体どこから
  やめ、それマジで洒落にならないから!」

ミ「うるさい死ねゴミ作者」

子「前々から思ってたけど私の扱い酷いなおい! お助けえええええ!?」

ア「ではまた次回お会いしましょう」

子「何気に初の前後編だったのに碌なこと喋ってねぇや!」

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