艦隊これくしょん外伝 壊れた懐中時計   作:焼き鳥タレ派

8 / 18
*本筋に絡まない、読まなくても全く問題ないくだらねえ話です。


第Σ話:多分何百万回と繰り返された歴史

執務室は異様な雰囲気に包まれていた。決して広くない執務室に

大勢の艦娘達がすし詰め状態となり、緊張した面持ちでデスクに着いた提督を見守っている。

誰か一人遅れて入室してきたが長門は気にせず、

 

「提督、当鎮守府の第58回人気投票の中間結果が発表されました。

トップは相変わらずの島風が独走。2位は頼れるお姉さんキャラの加賀。

3位は個性的な片言キャラが受けた金剛が占めており、

提督は最下位を這いつくばっております。」

 

デスクに広げられた折れ線グラフに長門が指を滑らせる。だが俺は諦めない。

 

「“焼き鳥タレ派”だ。“焼き鳥タレ派”さえ見せ場を書いてくれれば、

トップ10には入れるはずだ」

 

三日月が何か言いたげに長門を見る。

 

「提督……残念ですが……」

 

長門が口火を切り、

 

「あいつの力量では提督どころかみんな共倒れになります」

 

龍驤が続く。

 

「ここで読者に謝って打ち切りにするべきやと……」

 

……俺は震える手で軍帽を脱ぐ

 

「4人だけ残れ。三日月、長門、龍驤、伊58。このアンポンタン」

 

他の者がぞろぞろと出ていき、バタンと扉が閉じられる。

 

「書けと言ったはずだ!“焼き鳥タレ派”に俺のカッコよさを伝えろと!」

 

“第一!最初から読み返してみたが俺が活躍したとこ全然ねえじゃねえか!

天龍にはボコられ、タイムスリップでゴミ箱にゲロする始末!”

 

大声が廊下まで漏れ聞こえる。それに聞き入る退室したメンバー。中には泣き出す者も。

 

「俺はバック・トゥ・ザ・フューチャーのSFアクションに、

戦国自衛隊みたいな“ガタッ”あ痛た!シリアス要素をミックスして欲しかったのに

そんなの書かないやつ大っ嫌いだ!」

 

「あいつにそんなんできるわけないって最初からわかってたやん!」

 

龍驤が提督の激昂を止めようとする。

 

「それを可能にしてくれるのがハーメルンだろうが!それすらできんのかタレ派のバーカ!」

「提督、書き手のせいにするのはあまりにも横暴です!」

「なぜこれほど使いやすいサイトがありながらヨイショのひとつもできない!」

 

俺は色鉛筆を叩きつける。

 

「畜生め!!」

 

「よくよく考えてみればあいつには以前から思うところがあった。

単調な文章運びに“ウォッ”と思うような意表を突く展開もなし!」

 

陸奥が廊下に駆け込んでくる。なおも大声は廊下に響く。

 

“艦これという数百の魅力的なキャラが登場するオイシイ素材を活かしきれず、

その時々でストーリーに噛み合うキャラをおろおろ探し回る始末!”

 

「“焼き鳥タレ派”に素材を料理する技量が足らんかった!

奴がソビエト軍の将校だったら不敬罪で粛清されていただろう、スターリンに!!」

 

興奮しすぎた俺は椅子に腰掛ける。

 

「はぁ、はぁ、これでも俺は必死に頑張ってきたんだ。

第7話では皆に手料理まで振る舞った。腱鞘炎になるほど中華鍋振ってな」

 

俺は胸を叩きながら全身で訴える。長門は“手の施しようがない”という目で宙を見る。

 

「このへんで例の言葉が出るんだろうがな、全員にボコられるから

“お”で始まるフレーズはやめとくわ、ぷるんぷるん!」

 

「……どんなに尽くしても票には結びつかない。しかし俺は諦めん。

そして最終結果発表の時に皆は思い知るだろう、決してミニスカが全てではないと!」

 

“ううっ……”

“あなたなんでいつも泣いてるの?”

 

廊下で夕雲が秋雲を慰める。

 

打ちひしがれた俺は椅子の上でうなだれながらつぶやく。

 

「有権者には見た目だけでなく中身を見てほしい。

特にこんな活字でしかアピールできない二次小説ではな」

 

三日月が“お腹すいた”と腹を押さえる。

 

「今年の優勝は、諦めるしか無い……だが来年こそは目にもの見せてくれる。

ヒラヒラスカートばかり追いかけてる野郎連中に……方策はないが」

 

 




*やめませんよ?やめませんからね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。