インフェクションIF   作:フリードg

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更新速度どん亀な上に文字数も少ないです。


1話

 

 

 

 夜が去り 太陽が今日も顔を出して辺り一面を暖かく照らしているいつもと変わらない日常。今日も部隊では特別な収集や事故等による要請が無い時には通常通りの勤務。

 

 朝に夜勤勤務者からの申し送りを終えた後、車両を含む各種備品のチェックを行う。

 その後は連絡事項の整理、書類等の確認を終えた後に出動に備えて待機する。(この間に、身体をほぐし体力強化に努める為に体力錬成を行う)

 

 その他に分刻みで色々と行う事は山積みだから 説明を割愛するが 基本的に一般人と比べて非常に大変だという事は言っておこう。

 

 何より此処仙台市消防平岡出張所は他と比べても抜きんでている。

 何故なら、統括するトップが色んな意味で変人だからだ。

 

 普通では 勤める事が出来ない年齢の者も素質、資質、素養があるからと簡単に受け入れ その力を存分に発揮させていたりして、人を見る眼は確かに凄い物があると言えるのだが、訓練の内容と量が一段と激しい事でも有名だった。

 明らかに業務外であろうと思えるが、もしも日本に敵国が攻めてきた時の対処法を事前に備えさせていたり、果ては なんと 宇宙人が攻めてきた時の対処法までもマニュアル化させて それに備えさせていたりしていた。

 

 はっきり言って『馬鹿じゃない?』と言えるのだが、基本的に全く表情を変えずに指示を出してくるし、冗談を言った事が無い為 上の指示に従うしかなく、結果として軍隊顔負けの体力を保持した消防隊員が集ったのだ。

 

 その中できらりと輝く原石がいた。まだまだ 粗削りだが磨けば磨くほど輝きを増し、誰よりも光を放つであろう人材が。

 

 その者は消防平岡出張所始まって以来最年少の隊員。

 

 今日も任務の為に、まだ成人にもなっていない身で働き続ける少年は……大欠伸をしていた。

 

「………ねぇ、テツ先輩。何でオレ こんなトコにいんの?」

 

 大欠伸をした後に心底うんざりしている様な表情で聞く。その姿はやっぱり幼さが残るのだが、可愛げは全くない と感じるのは所内の先輩共通の認識だった。

 

「判ってるだろ? 龍。黙って従え。これも任務だ」

「判ってるつもりだよ? でもさ、どう考えても絶対場違いだと思うんだよオレ。こんな騒がしい場所」

 

 くいっ、と首を動かして向けた視線の先には。

 

 

 

『わぁー しょーぼーしさんだーー!』

『うわーーすげーーー、でっけー しょーぼーしゃ!』

『あそこから、みずがばしゃーーーっ ってでるんだよーー。ぼく、みたことあるもんっ!』

『わたしもみた! それに おけがしちゃった おおきなおとこのひとをだっこしてたすけてくれたとこ、みたよ! すっごくかっこよかったよー!』

 

 

 

 きゃっきゃと 笑顔と活気で溢れる子供達が無数にいた。

 無数に並ぶ子供達。そして 消火器などを含む備品の色んなセット。

 

 

 場所は 一言で言えば小学校、そして運動場である。龍たちがいる場所はその直ぐ傍の校舎の控室にさせてもらっている一室である。

 

 

 今日は現役消防士による火災予防と上級生を対象としたちょっとした消火訓練。消火剤の代わりに、水を詰め込み 火を付けてそれを消す訓練の講演を行っていた。

 避難する時は煙を吸わない様に~などの説明もあり、消防士の防火服を着ての講習だから、更に目を輝かせている子供達が沢山いて非常に騒がしい……もとい賑やかだ。

 

「龍もついこの間まではあの子らに混ざってたんだ。懐かしいだろ?」

「……ぁぁ、否定はしないけど。でも もうずいぶん昔に感じる」

「ボスの計らいだ。お前が持ってるのは年相応の力じゃない。どうなってんのかは正直判らんが、その未成熟な身体ン中にとてつもない力を持ってて、有り余してる状態だ。んなモンをずっと飼い慣らし続けると 精神も疲れちまうだろ? こういう場所で子供達を相手に心身ともにリフレッシュをだな」

「余計に精神とやらが疲れる。精神やられたら身体にも疲れがどんどん溜まる。だから眠い。つまり寝る」

 

 テツ先輩、と呼ばれた消防士の熱弁をサラリとスルーした後に、もう一度大欠伸をして眠りに入ろうとする彼の両肩をがしっ! と掴むテツ先輩。

 

「に・ん・む だ! 従え!! ったく、そろそろ敬語が出来てきたか? と思ったオレがバカだった。ちったー先輩を敬え! 神城以上だ。ある意味お前は!」

「……くぁぁ~、むにゃ」

「訊けぇぇぇ!」

 

 涙が溜まった目元を拭ってゆっくりとした動きでテツ先輩の方を向く龍。

 

「それ前にも言われたけど、 それ ボスも大隊長も不問にしてるよ? 先輩方もまぁ最初の頃はアレだったけど今は大丈夫みたいだし、ほら 神城とかもさ。んー……でも にんむ、任務かぁ」

 

 暫く考え込んだ後に、両頬を軽く両手で挟む様に叩くと。

 

「ガンバリマス。ヨロシクオ願イシマス」

「棒読みで言われると非常にイラっ とくるがまぁ良い。さっさと来い。龍が実演役だ」

 

 返事から見るに、明らかにやる気が皆無な気がする龍だったが、それでも任務と名の付くものであれば しっかりと務めている(当然だと思うけど)。

 お目付役であるテツ先輩もそこまでは心配はしていないのだった。

 

「あのー、そろそろ準備よろしいでしょうか?」

 

 どうやら時間が回ってきたのだろう。小学校の先生らしい女性が控室へと入ってきた。

 

 1人の生徒を連れて―――。

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして。私は6年3組の天宮香理です。6年生代表として挨拶に来ました。宜しくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 大きなくりっとした瞳をいっぱいに開かせて 弾けんばかりの笑顔を向けて 頭を下げる少女。

 

 この出会いが……始まりでもあったのだった。 


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