「……リベレーション」
小さく声に出し、意を固める。
瞬間。
白と黒が螺旋状になって、天高くに柱を作った。
栞の霊力に加え、オレの霊力もがリベレーションで纏われる。
全開の霊力は溢れる。
それは、栓を失ったように。
「おぉおぉおお!」
全力で、駆ける。
不知火と俺の間は瞬く間に詰められ、互いの刀はぶつかり合う。
今度は折れる心配もない。
霊力でできているのだから、もし折れたとしても修復可能。
「少しは、楽しめるようだな。特に、天とは」
「俺だけに期待するのはお門違いってもんだ。仲間あっての俺だからな」
「ふっ、そういうものはあまり好きではなかったのだが、考えを変えようか」
忌避すべきは、仲間の全滅。
即ち、幻想郷改変。
俺達が、俺達自身で未来を繋ぎ合わせるための戦い。
「そう言われても、戦いはやめる気はない。本気で殺しにかかるぞ」
「むしろそちらの方がよい。俺も、この戦闘に全力を尽くすとしよう」
不知火の一旦の退きに合わせ、さらに距離を詰める。
休む間もなく刀は競合を繰り返し、金属音を響かせていく。
時折に飛んでくるナイフや、御札。
的確に狙わえたそれらは、足元から不知火そのものまである。
が、当たる気配が全くしない。
俺の攻撃を合わせてもまだ、足りないというのか。
「私のマスタースパークが直接攻撃だけだと思うのかしら! 彗星『ブレイジングスター』!」
箒の乗り上げた魔理沙が、後ろに八角形の箱――ミニ八卦炉というらしい――を構え、マスタースパーク。
突如として加速を始めるそれは、勢い良く不知火に突っ込んでいく。
その寸前、魔理沙の不敵な笑みと、こちらへのアイコンタクト。
何を考えているのか、考えるんじゃない。
感じ取れ、直感で。全てじゃなくてもいい、大まかなことを感じ取れ……!
「くっ……」
魔理沙のブレイジングスターを避けるため、不知火は退かざるを得ない。
苦の表情を僅かに浮かべ、飛び退いた。
そして俺は――
避けられたブレイジングスターは、そのまま不知火の前を、砂埃を巻き上げながら高速で通過。
すれ違いざまに、空いた左手で箒を、しっかりと。
魔理沙を見るが、より不敵な笑みが浮かんでいる。
どうやら、正解だったようだ。
「な……! 天は、どこにっ……!」
さっき、砂埃と魔理沙、さらに箒で不知火の俺への視線を遮った。
加え、高速通過だったため、目に留まることもなく俺は上空へ。
「ここだ、よっ!」
ある程度の高度へ到達して、箒を手放す。
押し寄せる重力に逆らわず、自由落下。
夜桜を両手で握り締め、振りかぶる。
、
「そこか――なっ、くっ……!」
俺の声に気付き、上空を見上げる不知火。
しかし、咄嗟に自分の視界を手で塞いだ。何故か。
不知火も、例に漏れず人間だ。
俺らと同じ人間のそれならば、急な明暗の切り替わりには対応しきれないはずだ。
「煉獄業火の、閃……!」
黒刀に纏われるは、煌めく炎。
自分の中の霊力も上乗せして、瞬間火力を最大に。
かかった重力すらも夜桜に乗せ、振り抜く。
「は……あぁぁあ!」
「く、そっ、ぐっ……!」
胴体を狙って、一閃。
しかし、光を遮るために掲げられた腕に、受け止められる。
さらに、不知火の後退も相まって、腕にも少しの傷跡のみ。
さすが、と敵ながらに思ってしまう。
腕を犠牲にしなければ、そのまま夜桜は止まらず、胴体を捉えていたはずだった。
ダメージを最小限にするために、自分の他の場所を犠牲にする。
本物の熟練戦闘員のような、その考え。
死なないためとはいえ、それを咄嗟の事態に実行することは、到底かなわない。
「行ったぞ、翔!」
「おーけー、親友! 青龍の波紋!」
俺の煉獄業火の閃とは違い、青く煌めくセルリアン・ムーン。
翔自身の霊力も上乗せされて、鮮烈な青煌を放っている。
「……
不知火の炎帝にも、光。
ただし、先程までとは違い、明細な赤色ではなくなった。
炎のような色では、なくなった。
血塗られた薔薇のような、赤黒い色。
或いは、血そのもののような、冥い赤色。
「――な~んちゃって! 妖夢ちゃん、ごー!」
「貴方も行くんですよ、相模君!」
「え~? ま、いいけどさぁ、出番ないと思うよ?」
突然に消えたセルリアン・ムーンの淡い青。
その横から、最高速で踏み切る妖夢。
二本の刀をしっかりと手にとって、構える。
「……人鬼『未来永劫斬』」
やはり、その洗練された剣技は、美しかった。
短距離の幻想郷最速が放つ一閃は、完全に人智を超えていた。
目を奪われるほどの美しさは、最早剣技の域を超えていた。
一種の芸術が、そこにあったのだ。
動きを、体の運びを、刀の抜き方を、目に焼き付ける。
いずれは、これと同等にならなければならないのだ。
そうしなければ、隣に立つなど笑止。
「……甘い。何もかも、甘い。それを、貴方に教えてあげますよ!」
そうして、穿たれる刃。
数々の鮮血の跡を残しながら、まだも斬撃は続く。
不知火も弾いてはいるが、間に合っていない。
ようやく、一撃。
確かな一撃が、入った。
「ぐ……っと、そろそろ始めないとまずいか」
そう、言って。
「おい、特に天。よく見ておけ。俺の
「……なん、だって?」
まだ、本気ではないと。
この先の領域があると、そういうのだろうか。
「くっくく……お前の絶望に満ちる顔が、本当によく見えるよ……!」
嘲笑うかのように、ケタケタと。
その笑いには底が見えない余裕があった。
「まぁ、栞はいないし、俺の中にある門が解放されるだけなんだがな」
恐怖にも似た何かが走った、その直後。
「――
……信じたくは、なかった。
「まだ、まだだ……!」
俺の、いや、本当に、どうして――
「――
「「「なっ……!」」」
俺はもう、声すらも出なかった。
黒一色の炎のような霊力が、渦巻いている。
そして、咄嗟に悟った。
これは、早くに決着をつけなければ、負けてしまうと。
その考えに至った瞬間、俺はしまってある『あれ』へと手を伸ばす。
口に放り込み、水なしでそれを飲み込んで、叫ぶ。
「――アンリミテッド!」
今ここに、二つの『
ありがとうございました!
実のところ、不知火は本来リベレーションとアンリミテッドを使わなかったのです。
その、書いてて、これいいんじゃね? っていう安直な考えが。
こういうことがあるから、後々自分の首を締めるのにねぇ(´・ω・`)
しかし、盛り上げていきたいね!(*´ω`*)
ではでは!