東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

久しぶりぃ!(*´ω`*)
風邪やらテスト期間やらで忙しかったんです(言い訳)

今日はもうテスト二日目なんですが、投稿しちゃうぜ~!

では、本編どうぞ!


第74話 年末年始、最後の日常

 程よい肌寒さを感じる十二月末。

 寒さに慣れただけかもしれないが、地球温暖化の影は、ここ幻想郷には微塵もない。

 思えば、環境としては優しいわけだ。

 

 心地よさを感じる昼下がり。

 つい笑顔を漏らしてしまう今日、十二月三十一日。

 四人総出で、白玉楼の大掃除。

 

 異様なほどに広い白玉楼。

 朝から掃除を開始しているのだが、丸一日かかりそうだ。

 さすがに応援を呼ぶわけにもいかない。

 

 雑巾を水に浸けて絞る度、寒さが針になって手を刺される。

 顔を顰めながらも、自らを叱咤するように雑巾で廊下を拭き上げる。

 

「こっちは終わりましたよ~!」

「わかった、こっちが終わったら行くよ!」

 

 妖夢の報告に、長い廊下に向かって声を張り上げて、手を動かす。

 気持ち早めに動かして、早々に切り上げ、別場所へ。

 それを幾度も繰り返して、全員で幽々子の部屋で休憩を数度。

 

 あと何回これを繰り返せばいいのか、見当もつかない。

 見当がついたところで、果てしない先を見ることは約束されているのだが。

 

「翔、調子はどうだ?」

「こっちはオッケー、幽々子さんも、中々に頑張ってくれているお陰でね」

「えぇ、途中で作り置きされていたお菓子を、ちょっと食べただけよ? 褒めて褒めて」

 

 いやおかしい。騙されるな。

 食べることはむしろ褒められるものでもない。

 

「天君、騙されてはいけませんよ。お菓子、ちょっとどころじゃなく減ってますから」

「――とのことだが、幽々子。弁解は?」

「え、えぇっと……き、気のせいよ、気のせい」

 

 いや嘘かよ。吐いちゃうのかよ。

 せめて正直に話せばいいものを。嘘の必要性皆無なんだが。

 

 はぁっ、と密かな溜め息は胸中に留める。

 吐き出す息に使う予定だったエネルギーを原動力に、畳から立ち上がる。

 

「さて、もうそろそろ再開するぞ~。このペースじゃ、日と年が変わってしまう」

「えぇ、わかりました。もうひと頑張り、ですね」

「りょーかい。本当に間に合わなくなりそうだから怖い」

「は~い。お菓子お菓子~」

 

 一人だけ休憩モードのままですが。

 ちょっと問題ありませんかねぇ? 本当に終わらんよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「終わったあ~!」」」

 

 随分と時計の針は進み、ようやく終わりは訪れた。

 元々薄暗い白玉楼も、完全に自然光は落ちた。

 俺達を照らすは、灯りのみ。

 

 今日一日で溜まった疲れを全面に出して、四人が四人、円になって畳に仰向けに。

 大の字になって、声を投げかける。

 

「……で、今何時だ?」

「……十一時過ぎ」

 

 あと、一時間もない、かぁ……

 どうやら、休む暇もなさそうだ。

 

 こんなことなら、もう少し前から大掃除は進めておくべきだった。

 

「よっし、年越しそば用意してくる。妖夢は休んでていいから」

「そ、そうさせてもらいますぅ~」

 

 かなりお疲れのご様子の妖夢ちゃんでございます。

 そんなうちの彼女を背に、一人、廊下を通って台所へ向かう。

 

 ……え? まだ早すぎるんじゃないか、だって?

 やだなぁ、うちには胃の中ブラックホールの亡霊お嬢さんがいますやん。

 

 

 

「皆、いるな~?」

「心の準備もいいですよね~?」

 

 俺と妖夢の呼びかけに、皆で笑って返す。

 年越しそばも作り終わって、幽々子の部屋に戻ってきた。

 年が明けるまでも、あと残すところ数分となって――

 

「あ、天、私のそばがないわ~」

「ふざけんな。最初からなかったみたいな言い方すんなよ」

 

 まぁ、こんな予想もついていたので、大鍋ごと持ってきたんだけどね。

 幽々子の丼型の器を手に取り、結構な量を盛って渡す。

 

 ……そんなに笑顔になられると、こっちも嬉しいというかなんというか。

 

「っと、もうカウントダウンも始まりそうだな」

「私のそばのカウントダウンは、もう終わっちゃったわ」

「ふざけんなおい」

 

 えぇ本当に、吸引力が凄いですねぇ。

 どこかの掃除機並に定評がありそうだなぁ。

 

 もう箸をつけないように、と釘を刺しておかわりを渡す。

 どこか不満そうながらも、箸を置いてじっと待つ。その時を。

 

「「「――三、二、一! あけまして、おめでとう~!」」」

「おかわりぃ~!」

「飛ばしすぎだろうが!」

 

 かくして、一風変わった大晦日を迎えた白玉楼。

 

 

 

 

 ――ということで、数時間後。

 四人でやってきました、神社。

 

 まずは博麗神社に来て、お参り。

 時間としても、場所としても、最高の初日の出がバック。

 

「あら、本当に来るとは思わなかったわよ、天」

「心外だぞ、霊夢」

 

 ……少し、多めにお賽銭入れてやるか。

 おみくじも引いて、絵馬も書こう。

 

 

 

 ――そしてまた神社。

 四人でやってきました守矢神社。

 

 同じように、お参り賽銭におみくじ、絵馬。

 

「お、おぉぉ……! 天君、二回大吉ですよ……!」

「えっすげぇ。俺二回とも中吉だわ」

 

 普通にも程があるね。うん。

 あ、翔は中吉・吉。幽々子は、末吉に凶らしいね。

 亡霊の幽々子に関しては、運勢が通じるのかどうかは、定かでないのだが。

 

「そ、天く~ん、私、もうねみゅいですぅ~……」

 

 突然に、ふらふらとしだした彼女。

 いや、さっき大吉二回目ってはしゃいでたじゃん。……嘘か。

 

「はいはい、おんぶね~。……よっと」

「えへへぇ……はふぅ~」

 

 心地よさそうでなによりですはい。

 嘘とはいえども、気持ちがよさそうだ。

 

 朝焼けに微笑みを返して、四人で白玉楼へと帰宅。

 

「……んんぅ」

「あ? あぁ……ホントに、寝ちゃったのね」

 

 背中からは、安らかな寝息。

 か細くも可愛らしいそれは、聞くだけでもかなりの癒やしだ。

 

 さらに深みを増した笑みを携えて、ゆっくりと浮遊。

 遊覧するように、穏やかに。

 

 

 

 

 

 

 

 ――平和。

 

 

 ――自由。

 

 ――希望、未来、尊重、恐怖。

 

 

 ――全てが、塗り替えられた。

 

 

 

 一時(いっとき)の平穏は、奪われる。

 

 目を疑うような、絶望。

 耳を疑うような、破裂音。

 自分の認識さえも、騙されそうになる。

 

 そんな、大変遷(だいへんせん)

 (いかずち)のように駆け、伝播する非日常。

 

 ……それは、四ヶ月後。

 桜舞う季節。丁度、檮杌戦と同じような時期に。

 

 『絶望』は、桜と同じくして、舞い降りる。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

「……そろそろか」

 

 刀を取り、幻想郷へ。

 ――『()()』を、魅せてやるよ。




ありがとうございました!

今回はいつもの半分くらいの長さ。
反省の色が見られない(´・ω・`)

次回から、ついに不知火は動き出します。

それにあたり、一話あたりの文字数が少なくなるかもです。
引きをよくしたいので。かもですが。

ではでは!

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