東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

今回、文字数が少なくなってます。
1000字ほど少なくなり、4000字です。すみません。

さらに、前回の前書き通り、出かけた天君と妖夢ちゃんの間、
幽々子と翔が何をしていたかを書いています。
そこまで具体的ではありませんが。

では、本編どうぞ!


第62話 甘いお茶―休暇 幽々子、翔side

 昨日の夜に、天の部屋の前を通りかかった。

 そうしたら、部屋の中から水音と二人の喘ぎ声が聞こえてくるんだもの!

 いや~、もうこれは、いじるしかないよね?

 

「いや違うんだよ妖夢。俺達は全てを間違えているんだよ」

「へぇぇぇ、へえええ、そうなのですか。参考までに聞かせてもらいましょうか、天君?」

「そうよ! 私と妖夢、どっちを選ぶのかはっきりさせなさいよ!」

「おい幽々子、お前はもう黙ってくれ。話が余計にこじれるだけだ、俺にはわかる」

 

 天に怒られちゃった。これが修羅場、というやつなのだろうか?

 修羅場って、中々面白いものなのね♪

 見ている分に関しては、楽しいことこの上ない。やめられない止まらない、というやつだ。

 

 その後、私、妖夢、天、そして私が翔を呼んで、それぞれで正座。

 私と妖夢が隣同士、天と翔が隣同士で、私達と向かい合って天と翔が。

 こちらの二人は、しっかりと向かいの天ただ一人に視線を合わせる。

 

「……なぁ、なんで翔がいるんだ?」

「ん? 幽々子さんに、ね。天が浮気したって言うから、見逃せないしね」

「見逃していい。むしろ聞くな。世の中、そういうこともあるもんなんだ」

 

 隣で妖夢が、思い切り笑顔を引きつらせている。

 例え私と言えども、浮気は許せないし、悔しいらしい。

 可愛いわね。可愛い上に一途って、罪よね~……。

 

「では、被告人、新藤 天は――有罪、死刑!」

「おい幽々子。だから黙れと言っているんだ! それに何の言い訳もさせてくれないって、それもう刑じゃなくてただの暴力だわ!」

 

 この反応とツッコミ、やっぱり天は面白い。

 毎日の出来事に、一風変わった面白みを持たせてくれる。

 だから、もっと私もボケたくなってしまう。単純に面白いから。

 

「でも……私は、天が私を選んでくれるって、信じてるからね……?」

「その微妙な上目遣いやめい。そんな顔しても選ばんぞ」

「うわあぁぁん! 天が私を捨てたあぁぁぁ! ふぇぇぇぇええん!」

「……嘘泣きもやめろ。そして捨てるどころか最初から持ってない。あと、地味に可愛いからやめてくれ」

 

 可愛い、だなんて。惚れてしまいそうにならないけれど、一応嬉しい。

 そして、天の隣で翔が話についていけてない。

 ぽかーん、としている。あそこだけ平和そうだ。お茶をすすってたら、本当に平和になるだろう。

 

 ……あ、翔がホントにお茶を淹れ始めた。静かに、しれっと。

 後で私にも淹れてもらお~うっと。

 

「そぉ~ら~く~ん~? 浮気はダメって、言ったばかりですよね?」

「だから違うんだって。俺は幽々子に――」

「私は天に押し倒されました! そして天は私の胸を凝視して揉みしだこうと――」

「してないからな!? してないよね!? ちょっと見た気はするけど、揉みしだこうとはしてないからね!?」

 

 えっ、うそ、本当に見てたの? うわっ。

 いやまぁ、男の子だから仕方がない部分も多少はあるけれど……彼女持ちよね、貴方?

 妖夢が嫉妬の塊になるのも、案外近いわよ、このままだと。

 それも、彼女さんの目の前で話し始めるんだもの。

 

 ……あ、始めたのは私か。

 

「……やっぱり、天君は大きい方がいいんですよね。いいんですよ、私は小さいですから……はぁっ」

 

 隣で妖夢が、悲しそうな表情をしながら、自分の胸を撫で下ろしていた。

 そして、私は視線を自分のそれらに向けて、思った。

 えっと、その……なんか、ごめんなさいね?

 

「い、いや、そんなことはないぞ! 俺は妖夢が大好きだし、そもそも昨日見た限りじゃあ、普通くらいだっただろ」

「「……え?」」

 

 私と、蚊帳の外でお茶をすすっていた翔が、素っ頓狂な声をあげて天を見る。

 昨日の夜の水音と喘ぎ。さらには、妖夢の胸を見たってことは、つまり――!

 

「やっぱり妖夢とヤってるんじゃない! 翔! 天は妖夢ちゃんと昨日の夜にセッ――」

「してねぇぇえよぉぉおお! してないから! してないからなあ!?」

 

 さて、妖夢の反応は……あら、恥ずかしすぎて俯いたままになっている。

 正座の状態で、膝の上で握りこぶしを作り、羞恥に耐えている。

 口を一切開かず、羞耻心でいっぱいになっているようだ。

 そのあたり、純粋な妖夢らしい反応ではある。恋愛にどっぷりハマるのも、無理もない。

 

 さらに、天も若干顔を赤らめている気がする。

 この二人は、どこまでも純粋なのか。似た者同士なんだと、私は今更ながら感じる。

 

「じゃ、じゃあ俺は妖夢と一緒にどっかに出かけてくるよ。じゃあな!」

「あら、どこに行くの? 年齢的には行けるけど、もしかしてラブ――」

「歩く十八禁かよ!? どうしてそうエロの方面ばっか持っていきたがるんだよ! 違うに決まってんだろうが!」

 

 妖夢の手を引いて、天は足早に部屋を出て行く。

 さすがに歩く十八禁呼ばわりはひどいと思うが、面白いから聞かずにはいられない。

 くすっと笑いながら、二人を見送る。翔は、依然としてお茶をすすっている。

 それにしても、とても美味しそうに飲むものだ。自分も飲みたくなってくる。……じゅるり。

 

「……さて、私達は将棋しましょうか?」

「はい、わかりました。用意してきますね~っと……」

 

 静かに立ち上がり、湯呑みを卓に置いて、将棋盤と駒の準備を進める。

 駒と将棋盤の当たる木製独特のカタッ、という接触音がやけに心地いい。

 静かな場所で、静かに将棋というのも、また一興だろう。

 

 丁度良い温度の十月、障子を開け放って風の進路を確保する。

 中庭から吹き付ける涼風が、反対側の障子へと吹き抜けていく。

 その感覚に心地よさを感じていると、すぐに将棋の準備をしてくれた。

 

「じゃあ、始めましょうか。先手はどうします?」

「そちらからどうぞ? 先手後手は入れ替えるから、あまり影響はないわ」

 

 そう言い終わって、翔の右手が歩を前に動かし、か細い木音を弾かせる。

 それに呼応するように、私の腕も歩も前に進ませる。

 

 天と何度か将棋をやったが、あの人間は強すぎるにもほどがあるだろう。

 私も結構な自信があったのだけれど、数回勝負を交えて、勝てないとわかった。

 ありとあらゆる手段で陥れ、操り、さらに誘導していることを悟らせない。

 静かに罠を張って、時に安全に辛抱強く待ち、時に身を危険に冒しつつも、相手を確実に操る。

 

 巧みな戦術の前に為す術もなく、戦術が多量なため、対応も難しい。

 二番煎じの技は使わない上、悪知恵が働くというか、頭の回転が恐ろしく速い。

 私が追い詰めようとしても、別の作戦で形勢逆転。追い詰められるのも計算の内かと思ってしまう。

 

 翔と将棋は初めてだが、『冷静』の能力を持っている翔のことだ。

 何か奇妙な策でも講じるつもりなのだろう。あの時の模擬戦のように。

 

 暫く進めていて。

 

「……はいっと」

「あ、それ、二歩(にふ)よ?」

「あ、あ~……すみません、幽々子さん」

「いいのよ。ま、初戦は私の勝ちかしらね?」

 

 二歩(にふ)。それは、将棋において最も起こしやすいと言っても過言ではない、禁じ手の一つ。要は、反則だ。

 同じ筋――縦列のこと――に歩を二枚置くこと。ただし、これに“と金”――成った歩のこと――は含まれない、というもの。

 手練の棋士の間でも、頻繁に起こりうる禁じ手の一つだ。

 

「翔は将棋、初めてなの?」

「あ、わかっちゃいました? そうなんですよね~」

 

 翔はいつものおちゃらけた様子で言う。

 まぁ、少しだけ手を抜いて交えるとしようか。ルールも教えつつ。

 

 

 

 

 

 

 

 ――それから、数戦後。先手後手入れ替えを、十回以上繰り返したあたりで。

 

「――はい、詰みです。俺の勝ちですね、幽々子さん」

「……っ!」

 

 ……私は翔に一切、勝てなくなった。

 手を抜いているわけじゃない。本気でやっていた。

 なのに、どうしても勝てない。天と負ける感覚と、似ていて非なる感覚。

 

 天が罠師だとしたら、翔は知略家だろうか。最初から勝ち筋が見えているような目をしている。

 目の前にまで来ているのに、どれだけ迎撃しても戦況が一向に逆転する気配がない。

 何をやっても、先を見通したかのように最善手ばかりを打ってくる。

 

「……貴方、本当に初めてなの? どう考えてもそうとは思えないのよね~」

「えぇ、お言葉は嬉しいですが、初めてですよ。あれです、あの……『闇に舞い降りた天才』、ですかね? まぁ、闇でもなければ、麻雀(マージャン)でもないんですがね?」

「……これは貴方にも、勝てそうにないわね」

 

 この二人に勝つなんて、どうやっても想像がつかない。

 勝ち目もないだろう。今度、妖夢と二人を戦わせてみたい。

 どんな反応をするのだろうか。少し気になるところでもある。

 

 爽やかな風が頬を撫でていることに気付いた時には、もう昼。

 もうすぐで、昼食の時間だ。

 

「じゃ、俺は昼食作りますね――っと、その必要もないみたいですね」

「「ただいま~!」」

 

 二人の聞き慣れた男女の帰宅を知らせる声が、玄関側から重なって聞こえる。

 廊下に伝わる二人分の足音が、微弱な涼風と共に運ばれ、段々と大きくなってくる。

 

 姿が見えた時には、腕を組んだ状態でさらに手を繋いでいるという、何ともラブラブなカップルぶりを見せていた。

 二人の笑顔が、さらにそれを加速させている。見ただけで仲睦まじいとわかってしまう。

 ……本当にどこに行っていたのかしら? 本当に行ってない、わよね?

 

「あぁ、もうすぐ昼食か。妖夢、一緒に作るか」

「そ~ですね~。そら~♪」

 

 なんだろう、この甘々な雰囲気は。

 見ているこっちが恥ずかしくなってしまいそうになる。

 砂糖をそのまま噛んでいるような、口の中に妙なザラザラとした感覚が残っている。

 

 こんな笑顔を浮かべる妖夢は、天が来る前は殆ど見なかった。

 そう考えると、天が幻想郷に来てくれたことに、最大級の感謝をすべきなのだろう。

 でも、天のことだから、「俺もここに来られてよかった~」、とか言うんだろうが。

 

 二人が一緒になって台所に行ったのを見送って、将棋中に翔が淹れてくれたお茶をすする。

 翔と隣同士で並んで、座って平和な一時を過ごす。

 

 

 ……普段苦いお茶が、どことなく甘く感じたのは、気のせいではないのだろう。




ありがとうございました!

そろそろ、時雨と接触させたいです。
そうなると、日常話が取り敢えず中断なわけです。

……今回の日常、エロばっかだな。

16日――この話を投稿する前日になりますかね?
その日に、日間ランキングにのりました。10位です。
最初は12位でしたが、その後更新されて10位に。……。(´゚д゚`)
……今まで、オリジナル二作に押し潰されかけてた魂恋録が、生き返りそうです。

ありがとうございます!

ではでは!

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