前回、色々な意味でヤらかしました。色んな意味で。
今回は、エロ要素は、紳士の方々にとっては残念なことに、ありません。
悶える……かどうかはわかりませんが、個人的には甘い話を用意できたと思います。
では、本編どうぞ!
朝の日差しを眩しく思いつつ、起床する。
隣には、俺の天使がいる。うん、天使。この優しそうな自然な笑顔とかたまらない。
俺も微笑みながら、妖夢の頭を撫でる。
「ふぁ……」
声を漏らしながら、身を少しだけよじる。可愛い。
不意に、昨日の夜のことがフラッシュバックした。
『んぁっ! もう、らめれしゅ! あ、きて――んあぁぁぁああぁ!』
『しょらぁ……だいしゅきぃ……』
心臓が跳ねる。血液の循環が早まる。
あの惚けた顔、幸せに満ちた顔、ひどく淫らになっている顔。
その……あまりいい表現ではないが……雌の顔になっていたと思う。
彼女の表情に、最高の興奮を覚える自分は、異常なのだろうか?
あの顔をもっと見たいと、そう思う俺は、異常なのだろうか?
「ん、ぁ……天君。私は、あぁ、あの後……そっか……」
妖夢が起きて、俺に抱きついて、俺の胸に顔を押し付ける。
ふんわりと爽やかな匂いが、俺の鼻腔を刺激する。
それだけでも、若干の興奮が。
「……え、っと、その……気持ち良かったですよ」
「そ、そうか。俺も、まぁ、気持ち良かった……」
「そ、その! 誰にしてもらっても気持ち良いというわけではなくてですね……
うぁ……その上目遣いと言葉に、俺の頭がぐちゃぐちゃにされそうになる。
朝だというのに、盛ってしまいそうになる。
俺もその、まぁ? 健全な思春期男子の一人だし? ……ん? 今、俺いくつだ?
「あ、あぁ、俺もだよ、妖夢。妖夢だからこそ、気持ち良かった」
「その、言いにくいのですが……また今度、お願いできますか……?」
んん? まさか――
――妖夢って、意外に性欲強いのか?
朝食を食べている途中、幽々子に、
「今日は、修行は休みなさい。二人で人里でゆっくりしてきていいわよ?」
と、すごく優しそうな笑顔で言われた。すごく、優しそうに。
明らかに何かがある。そもそも、今まで妖夢に休暇はなかったらしいし。大丈夫なのか、心配になる。
で、今はそのことについて問い詰めようとしている真っ最中。
「おい、幽々子。これはどういうことだ」
「んえ? いやいや、私からの気遣い、っていうことよ? 翔も了承してくれてるわ。大丈夫、翔と私は将棋して待ってるから」
将棋なのか。翔、かなり強そうだけど。
あいつの能力で、最善手ばっかり打ってきそうだけどな。
それはどうでもいいとして、気遣いというワードが気になる。
「これのどこが気遣いだよ。どう考えても――」
「いやぁ~……だって、ねぇ?」
いや、ねぇ? ってこっちを向かれても。
反応に困るのだが。
俺がわけが分からないで座っていると、こほん、とわざとらしく咳をして、こう言う。
それも、声を低くして。まるで――
「……結局妖夢も、抵抗してねぇじゃねぇかよ。気持ちいいのか……?」
瞬間、俺の腕が閃いた。
「きゃっ……!」
幽々子を後ろに倒し、妖夢の時と同じように拘束する。
笑顔が引きつるのを感じながら、言う。
「お、おおいい幽々子ぉ~……何を言っているんだよ~」
「へ、へぇ、こうやって押し倒して、何を聞くつもりなのかしらね?」
どうしよう、幽々子のこの微笑が今、途轍もなく腹が立つのだが。
完全に、おちょくられている。
あの時はあんな状況だったし、障子の奥に隠れた人物に気付かなかった、ということもありえる。
今の言葉を知っている、ということは……確実に聞いている。
「だってあれ、完全にヤっちゃってるじゃない! もっとはっきり言ったら、セッ――」
「違ぁぁぁあう! そこまでやってない! 確かにそんな感じにはなってたけど、断じて違う!」
「完全に喘いでいたじゃないの! 妖夢に至っては、ぜっち――」
「おいぃぃぃい! 自重しろ!」
なんだよ、この歩く十八禁。
ド変態なのは、まさかの幽々子。今朝を見ると、妖夢も中々だが。
ふと、幽々子の顔が笑顔になった。
――ただし、意地悪な方の笑顔に。
幽々子の腕が俺の腕を掴み、お互いに動けない状態になる。
そして、幽々子がすぅ~……と、息を大きく吸って。
「……妖夢~! 天が浮気してるわよ~!」
「口を縫い合わせてやろうかぁぁぁぁあ!」
そしてすぐ、ドタドタと廊下を走る音が聞こえる。
腕は掴まれて動けない、今の状況は幽々子を押し倒している。
……あっ。
「浮気!? 天君、何、して……」
数秒後、妖夢が部屋の障子を開け放った。タァン! と音を部屋に鳴り響かせて。
この状況が目に飛び出してきて、目を見開く。
ですよね~……はぁっ。
妖夢はペタン、とその場に座り込んだ。
「ぅぇ、天君が、幽々子様に~……ぇ、ぅ」
「あ~あ。彼女泣かせた~。天君は何して――」
「お前が言うな」
幽々子の手は離されていて、俺は妖夢に近づく。
妖夢は目元に手をやって、泣いている。
「あ、あ~……そのこれには訳が――」
「はい、捕まえました」
そう言って、妖夢は俺の腕を掴んだ。
……ゑ?
「私がこれくらいで泣くと思いましたか? ふふふふ……じっくりと、言い訳を聞かせてくださいね?」
「いや違うんだよ妖夢。俺達は全てを間違えているんだよ」
そこから小一時間、妖夢にお説教みたいな何かをされたことは、言うまでもない。
お説教みたいな何かを終えた後、俺と妖夢は人里に遊びに行った。
俺が姿を現すと、皆からの心配の声が上がった。
霊夢が昨日、伝えてくれたのだろう。
今は、妖夢とどこに行こうか決めている最中。
事前に決めていないのが悔やまれるが、なにせいきなりだったから、決められなかった。
「ん~……どうしようか」
「ん~……あ、あそこに行きたいです! えっと、ええと……あまみしょ?」
「あ、あまみしょ?」
なんだろうか。この可愛い感じは。素で言っている表情がたまらない。
惜しい。惜しいのだが、かすってるのだが。
いや、もう大半が当たっているのだが。
「甘味処か。行くか」
「そうです、多分そこです! ……天君。あれはですね、普段行かないですし、読み方があれなんですよ」
目を逸らしながら、頬を掻く妖夢も可愛い。
暫く甘味処へ歩いていると、彼女から手を繋がれる。
しっかりと指を絡ませて繋ぎ、彼女の顔を見る。
彼女は、とても嬉しそうに笑って、俺と彼女の繋がれた手を見つめていた。
……あのさぁ、甘味処、もうここにあるんじゃねぇかな?
もう既に甘い味が口の中に広がっているのですが。
甘味処に入って、若い女性の店員さんが出迎えでくれる。
「いらっしゃいませ~……ふふふ、熱々ですね?」
手を思い切り繋いだところを見られ、二人で恥ずかしがる。
けれど、手は離さない。
「あ……す、すみません」
「いえいえ、見ていて目の保養になりますし、むしろもっと見せてほしいですね~。こちらのお席にどうぞ?」
て、店員さん、こういうの好きなのか……
まぁでも、俺はこういう軽い感じの店員さんの方が、話しやすい。
接客云々がどうこう、とかは別に。俺はこっちの方がいい。
妖夢を左側、俺が右側に座り、メニューを開く。
俺は白玉栗あんみつを、妖夢は白玉クリームあんみつを注文する。
先程の店員さんがメニューを取り、奥へ。
それと同時に、左側から肩に軽い重みが。
ふとそちらを見ると、彼女が頭を預けて、気持ち良さそうに笑っている。
「ごめんなさい。これ、すっごく落ち着くんです。はわぁ~……」
なんだろう、これ。
俺も落ち着くんだが。やっぱり天使は妖夢だったんだな。
手を恋人繋ぎで繋いだままなので、さらに密着度が上がる。
あっという間にあんみつが運ばれてくる。
途中、あの店員さんにニヤニヤされてこっちを見られていた気もするが、気のせいだろう。
小豆にアイスクリーム、白玉に、栗とクリーム。
スプーンにそれらを掬い、食べる。
幻想郷にも、スプーンはあるんだな。
基本和食しか食べないので、あまりわからなかったが。
「ん~! おいひいれふ~!」
おぉ、彼女が頬に手を当てて喜んでいる。隣の半霊も嬉々としてふよふよしている。可愛い。
「ん、こっちも美味しいぞ。……ほら」
スプーンで掬い、妖夢に差し出す。
「あ……こ、これ、間接……はむ」
一瞬彼女が呆けて、スプーンにかぷっと。
「んくっ……美味しいですね。……はい、え、と……あ~ん?」
「がはぁっ!」
「そ、天君!?」
俺には、耐えられなかった。愛くるしいにもほどがある。
なんだ、この可愛すぎる生き物は。あ、俺の彼女じゃん。幸せだな、俺。
この、スプーンを差し出して、疑問形の如く首を傾げるあたり、超かわいい。
瀕死になりながらも、食いつく。
甘い味が広がっていく。ただ、ひたすらに甘かった。
妖夢も甘い。うん、甘いな。
「……妖夢も食べちゃいたいくらい可愛いな」
「ふぇっ!? え、えっと、食べ、たべ……る……」
顔を紅潮させて、恥ずかしがっている。
あたふたしていて、小動物をさらに庇護欲を増幅させた生き物みたいになっている。
自分の中で膨れ上がる庇護欲に負けて、妖夢の頭をくしゃっと撫でる。
「ふぁ……えへへ……うみゅぅ……」
可愛らしさ溢れる声をあげて、俺の胸に抱きつく。
こんなに可愛らしい生き物がいたとは。
「……天君の匂い、いい匂いです~……はあ~……」
……うん、もう、何かな。
耐えられないよね、これ。耐えろって言う方が無理だよ。
姿勢を戻して、再び食べ初めた。
暫く食べて、妖夢の口元にクリームがついているのが見えた。
……ふむう。ここは、紙か何かで拭き取るのがいいのだろう。
が、しかし。ここでカウンターをしないわけにはいかない。何に対してのだよ。
「ここ、クリームついてる……んっ、うん、美味しい」
「あ、え、や、それ……!」
クリームを指で拭き取り、クリームを舐める。
当の彼女は顔を赤くして、口を忙しなく動かしている。
どうやら、成功のようだ。……けれど、その様子でまた俺がやられる。意味ないな、これ。
……ちょっと、妖夢さん?
自分でわざとクリームつけてませんか?
付け終わったら付け終わったで、こちらをちらちら見ている。
……あ~かわいい。
さっきと同じようにして、クリームを味わう。
妖夢自身がクリームみたいなところもあるな。だったら、半霊は白玉か。頭大丈夫か、俺。
まぁでも、味は……気になる。
「妖夢、その半霊ちょっとこっちに来れない?」
「えぇ、いいですけど……どうするんですか?」
ふわふわと、俺の目の前にやってくる。
取り敢えず、最初に抱きしめるとしよう。
おぉ、やわらかい。マシュマロみたい。
「わぁ~……やっぱり天君は暖かいですね……ふひゅぅ~」
「……へぇ、感覚が繋がっているのか」
「えぇ、そうですよ。ちなみに、半霊から弾幕も出せます」
そりゃすごい。近接攻撃しながら、半霊の遠距離バックアップもできるのか。
さて、味の方は……舌を出し、ペロリっと。
「わひゃあ! い、いきなりどうしたんですか!」
「ん? 味が知りたかった。無味なんだな、これ」
残念。でも、食感は……やめておこう。
噛んだりしたら、その感覚が妖夢に伝わるわけだしな。
……店員さんが、血を吐いて倒れてない? あれ大丈夫なの?
「「ご馳走様でした」」
二人で手を合わせて、勘定に。先程の若い女性が受けてくれる。
「……はい、こちらがお釣りとなります。いやぁ~、いいものを見せてもらいました、ありがとうございました!」
「い、いいものって……はぁ、それは良かったです……?」
良かった、と言うべきなのか、これは?
「優しいんですね、天さんは」
「いや、そんなことはないですよ……」
「いえいえ、それこそ謙遜ですよ。いつも私達を守っていただき、ありがとうございます」
……そう、か。
俺は、いつも守られる側の声を聞いていなかったんだな。
ありがとうございます、か。それを聞いて、自然と笑みが浮かぶ。
「ホント、優しいですよね。……私も、惚れてしまいそうになりますね」
「あ、あはは……え? い、いや、惚れそうって――」
「そのままの意味ですよ~。魅力溢れる若人ですからね~」
「……!」
満面の笑顔を浮かべた店員さん。それに対して、戸惑いしか見せられない俺。
初対面の人から、いきなりこんなことを言われるとは、思わなかった。
まぁ、この人のふざけた柔らかい笑みのことだから、本気ではないんだろう。
そんなことを思っていると、隣の妖夢に腕を引かれる。
引かれた俺の腕は、抱き枕のように抱かれる。
「……ん!」
頬を膨らませて、真っ直ぐと店員さんを見つめている。
まるで、自分のものだと言わんばかりに。不機嫌だと言わんばかりに。
……可愛すぎる。
「あらあら、妖夢ちゃんには勝てないわね~。とったりしないから、大丈夫よ?」
「……ん。んむゅ……」
腕に頬ずりしてきた。なにこの生き物。可愛さ溢れすぎだろ。
俺の精神がゴリゴリ削られるんだが。
「じゃ、じゃあ、ありがとうございました。また来ます」
「えぇ、またのお越しを、お待ちしております」
妖夢と腕を組んだまま、外に出る。
「……浮気はダメですよ。今日で二回目ですからね」
「いやあれはノーカウントだろ。あれは幽々子が――」
「じゃあさっきのはカウントなんですね?」
「んなわけないだろ。俺は妖夢一筋だ。妖夢が大好きなんだ」
「え、あ、あぅ……」
ふふふ、俺が妖夢の弱点を知らないわけがないだろう。
不意の告白。これが弱い。今までの経験だ。
しかし、これは諸刃の剣だ。
恥ずかしがったり、照れたりする妖夢のカウンターに耐えられるかどうか。
「がはぁっ!」
「そ、天君!?」
……耐えられるわけないじゃないですかやだー!
ありがとうございました!
妖夢ちゃんこそ甘味である。
今回、天・妖夢sideとタイトルにありますが、
次回は幽々子・翔sideプラスαです。
αが何になるかわかりませんが。
ではでは!