東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

投稿が大分遅れてしまいました。すみません。


ちゅーい! ちゅーい!

今回、多少いつもよりも過激な描写が含まれます。
過激というのは、えっちぃやつです。一応警告を。
最後の方だけで、前半はそうじゃありません。

では、本編どうぞ!


第59話 妖夢のお願い

「……ねぇ、不知火。叢雲が戻ってこないよ。多分だけど……」

「あぁ、死んでるか、捕縛されたかだな。まぁ、そいつのことは()()()()()()

 

 あ~あ。また始まったよ。不知火のこの性格。

 人の生き死にに、何の感情も持たない、この狂気じみた性格が。

 

 ――()()()もそうだったな~。実験が失敗しても、ケロッとしてるんだもの。

 

 そりゃあ、自分の命じゃないし? どうなってもいいってうのは、まぁわからないでもない。

 けども、不知火の場合は違う。

 

 駒としか思っていない。壁だとしか思っていない。

 使い捨てであることを前提に、物事を進めている。どんな犠牲も悲しまない。

 

「その感覚、もうちょっとどうにもならない? カバーするこっちの身にもなってよね?」

「別にいいだろう。悲しめ、とでも言うのか? 無理な話だな。悲しむなんて、それほど無駄な行為はない」

「それもわからないでもないよ? 次、俺なんでしょ? 勝手にしてもいい?」

「構わん。捕らえようが、殺そうが、生かす以外はどうとでもしてくれ。その方が、俺も楽だ」

 

 まぁ、不知火もこう言っていることだし。

 こっちもこっちで、やらせてもらうとするかな?

 

 俺は部屋を出て、俺の準備を進める。

 

 ――()()()()の準備を。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

「で、どうしたの、急に」

 

 座っている私の前で、同じく座っている相模君。

 私は、あることを聞きに、夕食後に相模君の部屋を訪れた。

 

 どうしても、わからないことがあった。

 相模君もわからないかもしれないけれど、わかる可能性はある。

 

「あの……少し、聞きたいことが」

「へぇ、何だい? 答えられることなら、何でも答えるよ」

 

 ん? 今何でもって……聞こえた。

 それなら、相模君の言う通り、思い切って質問してみよう。

 少し恥ずかしいけれども、聞きたいのだ。

 

「あの――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――男の人って、どうやったら欲情するんですか?」

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 俺は、唖然としていた。

 無理もない。目の前の女の子に、男を欲情させるには、どうすればいいかを聞かれているのだから。

 

「……は?」

 

 これ以外に声が出なかった。出せるはずもない。

 唐突すぎる。いくら『冷静』の能力でも、考えが元から削ぎ落とされれば、関係ない。

 

 その削ぎ落とされる質問に、どう答えようか迷っていた。

 

「い、一応、理由だけ聞いておこうか。大体見当はつくけど」

「は、はい……天君が、どうしたら欲情するかな、って……」

 

 やはりか。だって、それ以外に答えがないもの。

 感情性の迷宮で、わざわざ迷う必要もない。

 しかし、俺が言いたいのはそうじゃない。そうじゃ、ないんだよ。

 

「どうしてそうなったし」

「その、天君ともっと関わりたい、と言いますか……気を、引きたいのです」

 

 妖夢ちゃんが、もじもじとしながら言う。

 可愛い。非常に可愛いのだが、呆れてしまう。

 

 ……どんだけ好きなんだよ。いくらなんでも好きすぎだろ。

 

「いや、どう考えても必要ないでしょ。天も、それはそれは妖夢ちゃんに夢中だよ?」

「それは、その……わかっている、というのも変ですが、そうでありたいとも言いますか……」

 

 もじもじが一層ひどくなって、目が妖夢ちゃんから見て右下に逸らされる。

 可愛い。非常に可愛い。しかし、何というか……見ているこっちがじれったい。

 

「で、結局のところ、どうしてそう思ったの?」

「……天君が、一歩引いているような感じがするのです。距離を置いている、と言うか……」

 

 距離を置く、ねぇ。

 俺から言わせてみれば、この二人程ゼロ距離なカップルはいない。

 ラブラブを極めた形です、と言わんばかりだ。

 

「あれじゃない? 妖夢ちゃんの勘違い」

「そうだといいんですけど、それはそれで気を引きたいんですよ」

 

 ふむ、中々見かけと性格によらず、恋になったら傲慢なのか。

 強欲で、独占的。貪婪(どんらん)って言うのかな? 天のことを、本当に好きなのだろう。

 

「そう。それで気を引きたいから、手っ取り早い性の方面で攻めようと」

「……お恥ずかしながら」

「う~ん……まだ早いんじゃない? 妖夢ちゃんがもっと仲良くなろうと接すれば、それなりに関係は深まると思うよ? 天も嫌がってるわけないんだしさ」

 

 恋愛相談は初めてだが、これだけは言える……とは思う。

 まだ時期も時期だし、天は妖夢ちゃんを好きなんだし。

 

 ……まぁ、それなりに協力というか、案を提供したい。

 

「ゆ~かりさ~ん。起きてます~?」

「起きてるけれども、そのコアラが食べる植物みたいに呼ばないでね?」

 

 俺が紫さんを呼ぶと、スキマから現れて出た。

 さて、紫さんを呼んだ理由なんだけれども……

 ある物を取ってきて――いや、取り出してもらうため、かな?

 

「すいませんね。白エプロンを、明日の朝までに用意できますか」

「あ、それなら……っと、はい、これでいい?」

 

 紫さんがスキマに一瞬戻り、白エプロンを手にして戻ってきた。

 丈は……おぉ、中々これは、際どいが。

 まぁ、妖夢ちゃんの希望だし、天にならいいでしょ。

 

「ありがとうございます。よし、じゃあ妖夢ちゃん。これをね――」

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 夜。周りは殆ど闇に包まれている中、一つのことを考えていた。

 

 ――リベレーション。

 

 それは、自分の体の表面に霊力を纏い、身体能力を上げるというもの。

 霊力限界を高めれば高めるほど、その効果は増幅する。

 

 ……俺は、不審に思っていた。

 

(なぁ、栞)

(ん? どうしたの?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。違うか?)

(…………)

 

 栞は、答えない。

 コレも、単なる予想でしかない。もしかしたら、これからの戦いを考えての、個人的な願望かもしれない。

 けれど、どこかが引っかかるのだ。

 

(……ない、よ)

(そうか。わかった)

 

 やはり、そうも上手くはいかない、か。

 まぁ、これからも努力は欠かすな、っていう神のお告げなのかもな。

 

 ……やはり、あるんだな。

 

 ――リベレーションの、その先が。

 

 声色でわかる。栞が、嘘を言っていることくらい。

 どれだけの間、一緒に生死の狭間を行ったり来たりしたと思っている。

 

 それは恐らく、栞もわかっている。

 ということは――()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということだ。

 

 生きていれば、誰しも一つや二つ、隠し事とかあるよな。

 生きて、いれば――

 

(――なぁ、今気になったんだが、栞って生きてるのか? それとも、死んでるのか?)

(私は魂だけど、生きてるね。多分。……体の方も、どこかにあるのかもね)

 

 ふむ、栞の今までの話を聞く限りでは、ここ最近魂になった、というわけではないと思うが。

 さすがにこれ以上詮索すると、嫌になるよな。

 

 それに、少し眠くなってきた。

 

(よし、このへんにしとくか)

(そだね~。にしても、目覚めた初日だってのに、頑張るねぇ)

(まぁな。三ヶ月分を取り返さないといけないから、休むに休めん)

 

 今まで休んだ分のツケがあるからな。溜めたくて溜めたんじゃないんだがな。

 それに、妖夢に迷惑までかけてしまった。それも、かなりの症状が出たとのこと。

 罪悪感でいっぱいになりつつ、俺の部屋に向かう。

 

 

 障子を開くと、布団には彼女が入っていた。

 もうこの光景が久しぶりなはずなのに、見慣れてしまったような感覚だ。

 こうやって、彼女が待ってくれていることに、心から嬉しく感じてしまう。

 

「お疲れ様です。今日起きたばかりなのに、大丈夫なんですか?」

「あぁ。大丈夫、大丈夫じゃないじゃなくて、取り返さないといけないからな」

「……無理、しないでくださいね?」

 

 布団から寂しそうな、思案顔を覗かせる。そして、再び自覚する。

 これ以上、俺は彼女に心配をかけることが、許されるのだろうか。いや、違うと。

 学習せず、人のことを――大好きな恋人のことさえ考えられない奴に、何かを掬う。

 ――そんなこと、できるはずがない。そんな権利もない。

 

「……ごめん」

 

 反省の色を含めた笑顔で、彼女に返す。

 彼女も思案顔を引っ込め、純粋な優しい笑顔を送ってくれる。

 

 ――この笑顔がまた見られて、よかった。

 

 俺は布団に入った瞬間、彼女を抱き締める。

 

「お、おぉ……! 天君からとは、珍しいですね。嬉しいですよ?」

「……ホントに、ごめんな」

「……天君?」

 

 純粋な笑顔を送ってくれる彼女に、俺は何ができただろうか。

 もしも立場が逆で、妖夢が眠っていたとして、俺は何をしてやれただろうか。

 自分を見失い、おかしくなるほど心配できただろうか。

 

「……ごめん。ごめんな、妖夢」

「ちょ、ちょっと、どうしました?」

 

 妖夢に顔を覗かれる。

 今の俺の顔には、罪悪感に塗られているだろう。

 それは、どこまでも醜悪で、みっともないことだろう。

 

「……ごめん」

「天君。一つ、いいですか?」

 

 妖夢の顔は笑顔になっていて、その眩しさに目がくらむ。

 俺にこの笑顔が、勿体無いような気がする。

 

「何度も『ごめん』って言われるより、一言『ありがとう』って言われる方が、彼女としては嬉しいのですよ? 知ってましたか?」

 

 一言、ありがとう、か……

 

「……ありがとう、妖夢」

「いえいえ。わかればいいんですよ。それで、私はご褒美が欲しいのです。加えて、いつどれだけでも甘えてもいいとも言いました」

 

 ふふん、といった顔をしながら、妖夢が珍しく頼み事。

 可愛い。こんな妖夢も、また可愛い。

 

「あぁ、言ったな。で、何をご所望で?」

「えっとですね~……頭を撫でて~、抱き合って~、キスして~、一緒に抱き合ったまま寝てください!」

 

 彼女の満面の笑みが、俺の心をくすぐる。

 理性が少しずつ削られそうになりながらも、実行に移る。

 

 まず、頭を――

 

「ふわあぁぁぁ~……はふぅ〜、きもひいいれふ~……」

 

 何ともふわふわとした声。

 さらに、小動物のような甘い顔。

 猫の顎の下を撫でる、とかいうのでは勝てないような、気持ちよさそうな顔。

 い、いや、ダメだ。我慢我慢……!

 

 次に、抱き合う。

 まず、俺が先に抱き締める。

 

「あわ~……あったか~い……」

 

 ま、まずいぞ。こんなに蕩けたような声は……!

 すんでのところで耐えながら、次に。

 

 彼女の後頭部を持ちつつ、優しく口元に引き寄せる。

 二十秒ほども続いて、ようやく唇を離す。

 

「あ……」

 

 彼女は切なそうな声を上げる。

 目はトロトロとしていて、口は半開き。目も閉じかけている。

 何かを求めるような、そんな顔。

 

 そんな顔をされたら、俺は我慢ができないのですが。

 性欲が爆発しそうなんだけれど。

 

「……あ! そうでした! あともう一ついいですか?」

 

 彼女が正気に戻った顔をして、目をキラキラさせている。

 そんなにもしてほしいことがあるならと、俺は首を縦に振る。

 が、これ以上は俺も限界点かもしれない。

 

 彼女がかけ布団から起き上がって、二人で向かい合って座る形になった。

 

「その……卑猥な意味ではなく、言葉の通りに、()()()()()()()()()()()のです!」

 

 顔を赤くしながら、興味津々といった表情で言う。

 

 あ~、なるほど。はいはい。押し倒すのね。わかるわか――わからねぇよ。

 わかるとでも? これ以上は俺は耐えませんよ? ねえ妖夢さん?

 

「あ~……その、あのな、よう――」

「ダメ……ですか?」

 

 上目遣いで、今度は目をうるうるとさせながら、言われる。

 あ~もうこれはダメですわぁ。

 

「っ! ……どうなっても、知らないからな!」

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 小さめに彼が叫んだ瞬間、私の肩が強めに押された。

 不意の出来事に対処できず、そのまま重力に従って倒れていく。

 

 彼に私の腕や足を抑え込まれ、股の間には足を入れられる。

 私の後頭部を、彼の手をクッションとして衝撃が伝わらないようにしてくれる。

 彼も、強めに押したけれど、こういうところに優しさが出ている。それが、少し嬉しい。

 

 顔は目と鼻の先にあって、私は布団に押し倒されていた。

 お互いの荒い吐息がかかり、心拍数を格段に上げる。

 

 動こうとしても、動けない。少しも。

 この拘束感と密着感。支配されている感覚が、新鮮である。

 

 いつも彼は、私を優しく包み込んでくれていた。

 けれど、今は違う。

 飢えた獣のように激しく、私を逃すまいと押さえつけている。

 目はギラギラと光っていて、その目で見られて、過呼吸になってしまうくらいに、呼吸が荒くなる。

 普段との大きなギャップに、私はドキドキが止まらない。

 

 極めつけに、三ヶ月ぶりに味わう、お腹の奥が疼く感覚。

 キュッとしまって、切なそう。

 

 そして、声に漏らしてしまう。

 

「あ……これ、いい……!」

「……っ! んっ……」

 

 その体勢のまま、貪るようなキスをされる。

 拘束感に満ちている今、この行為を無理にされるのは、さらなる拘束感を呼び起こす。

 

 体全体がゾクゾクとして、寒気のようなものが走る。

 電流となったそれが、いつまでも体を駆け巡る。お腹の奥の疼きは、もっと大きくなる。

 

 正直言って――気持ちいい。とても、気持ちいい

 今までに味わったことがないような快感が、頭をトロトロにさせる。 

 視界も揺らめき、意識も朦朧(もうろう)としてくる。

 

 キスが終わると、さっきよりも切なくなる。

 もっとしてほしい、もっと彼がほしい。もっと強引にしてほしい。

 

 ――そして私は、この先の展開を期待している。

 このまま、彼の思うがままにされてみたい。

 『初めて』を、彼にあげたい。

 

 彼は恋愛は初めてらしいので、私も彼の『初めて』をもらうのだろう。

 私の『初めて』をあげて、彼の『初めて』をもらう。

 『初めて』の交換を、したい。

 

 本当のところは怖いけれど、彼なら大丈夫。

 きっと、優しくしてくれるだろう。

 そういう確証があった。

 

「あぁ! 危なかった……!」

 

 彼は突然に拘束をやめ、布団に大の字になって寝転がる。

 

「……ぇ?」

 

 期待してしまった私が、寂しさのあまり、声が出てしまう。

 

 …………

 

 よ、よく考えれば、まだ早いって相模君にも言われたのに!

 私は、やっぱり強欲なんだ。彼のことに関しては、どこまでも我儘(わがまま)になってしまう。

 彼には、迷惑なのかな……?

 

「そ、その……嫌、というか、迷惑、でしたか?」

「あぁ? 嫌っつ~か、迷惑っつ~か……もう少しで狼になるところだったぞ。理性が吹き飛びそうだった。自制できたのが奇跡なくらいだ。それだけ、俺は嫌じゃない。妖夢が大好きなんだよ」

 

 彼の笑顔は、私を何度も魅了する。

 だから私は、彼に依存しきってしまって、彼を求める。

 

 目の前にある幸せに、我慢ができない。

 

「……あぁ、ありがとうございました。もう、寝ましょうか、天君」

「ははっ、そうだな、妖夢」

 

 二人で抱き合って、同じ布団に入って、笑顔で。

 最後にキスをして、二人で「おやすみ」と言って、眠りについた。




ありがとうございました!

投稿が遅れた理由なのですが、体調です。

体調の悪さに異変を感じ、病院に行きました。
診察結果は、過労ぎみとのことでした。
……頑張りすぎたぜ!

大して良い出来の作品書いてないくせに、何言ってんだこいつ。

活動報告に書いた通り、これからの投稿ペースは激落ちくんです。
完結はさせたいと思っていますが、かなり長くなりそうです。

リベレーションには、さらにもう一段階先があるようですね。

ではでは!

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