前々回の後書きで、第5章が終わると書いたのにもかかわらず、
第5章のままでした。すみません。
後に、第6章として章を作りました。
そして、重ねてなのですが、今回文字数が少なくなってます。
すみません。私がそうとうきているんです。
では、本編どうぞ!
永遠亭に戻り、永琳のところに連れて行く。お姫様抱っこのままで。
扉を開けて、治療室へ。
……あ、絶対に何か言われるだろ、俺。
「あら、おかえりなさい。治療の用意はできてるわ」
「……え? いや、なんで……」
「抜け出したの、バレてないとでも思った? 怪我は完治してるから、止めなかっただけよ」
永琳さんすごいです。
こうも見透かされると、不気味な感じもする。
準備はできているとのことなので、ベッドに妖夢を寝かせる。
「ぁ……」
そう声を漏らして、こちらに両手を伸ばす彼女。
物欲しそうな顔をしている。口は半開き、目はトロンとしている。
可愛すぎて、胸が締め付けられる。
取り敢えず、両手で彼女の手を握る。
そうしたら、妖夢の顔が緩んだ。心地よさそうだ。
「はいは~い、ここは恋の病は治せませんからね~。治療するわよ~」
完全に二人の世界に入っていた俺と彼女は、一気に顔を紅潮させて、一瞬で手を戻す。
永琳が溜め息を吐きながら、妖夢の治療を始める。
塗り薬やら飲み薬やらを事前に持ち込み、服を脱がしにかかる。
雪のように白い肌が
しかし、思春期男子というものは、欲望に非常に忠実な生き物なのである。
見ていないふりをしながら、目の端で視界に入れる。
目の保養にしかならない。
そう思ったが、傷がひどかった。
沢山の刺し傷が、俺の怒りを再び沸々とさせる。
あの女は、どうにも許せそうにない。
「はい、これでよし。この塗り薬と飲み薬を毎日一回塗って飲んで頂戴」
「わかりました、ありがとうございました」
妖夢の治療が終わり、妖夢が立ち上がる。
が、ふらふらとした足取りでいる、心配になる。
「あっ……!」
俺の心配は現実となり、彼女の足がもつれて崩れる。
事態の予測がある程度できていた俺は、素早く前に入って受け止める。
「あ、ありがとう……」
「あぁ、それはいいんだ。大丈夫か?」
「はいは~い。ここでは恋の病は治せませんからね~。二度目よ~。天、貴方が運びなさい。入院するような容態じゃないから、帰っても大丈夫よ。貴方の傷も一つでしょうし、同じ薬を使えばいいわ」
あれだけ刺突の傷があって、大丈夫だったのかと驚く。
それだけ永琳の薬が効く、ということなのだろう。
自分も、思い切り一突きされて大丈夫なことに、今更ながら驚く。
妖夢をもう一度お姫様抱っこしようとした時。
「あ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
否定されました。拒絶されました。
少しだけだが、悲しくなってくる。
「あ……嫌だったか。悪かったな」
「そうじゃなくて~! その……おんぶがいいです! おんぶしてください!」
彼女がきらきらとした目でこちらを見つめてくる。
そんな妖夢も可愛い。
彼女の希望通り、背中に抱える。
そして、おんぶした時、彼女の軽さにまたも驚く。
背中から、小さく彼女の声が聞こえる。
「そ、その……重くないですか?」
「全っ然。軽すぎてびっくりなくらいだ」
「はいは~い。小声でイチャイチャしてても、聞こえてるわよ~」
どうやら、バレていたらしい。永琳、恐るべし。
しらを切るように、妖夢がわざとらしく別の話をする。
「お、おぉ~……高いですね。肩車はもっと高くなるんでしょうかね?」
「ん? やってみようか? 俺はいいぞ」
「はいは~い。怪我人は肩車より、おんぶで運ぶのがいいわよ~。イチャイチャしても傷は治らないからね~」
永琳に、呆れを前面に出した表情で見送られ、白玉楼に戻る。
三ヶ月ぶりの帰還だが、幽々子と翔はどんな顔をするのだろうか……?
―*―*―*―*―*―*―
白玉楼に戻っている途中、私は彼の背中に乗って運ばれていた。
「ひろ~い。あったか~い。そらくんだいすき~」
「そう言われると照れるだろ。恋人同士なんだから、俺も大好きだよ」
そうやって、不意の告白。こういうところは、やっぱりズルい。
彼にしかない魅力に惹かれて、本当によかった。
「いえいえ、私の天君が大好きな気持ちには負けませんよ。絶対です」
「いやいや、それこそないな。俺が妖夢を想う気持ちは、誰にも負ける気がしない」
彼はそう言っているが、絶対にない。
何故なら――
「天君が眠っている間、私はどうにかなっていましたから。あまりにも辛くて、幻聴や幻視、めまいまでしてましたから」
辛かった。もう少し帰還が遅かったら、私は本当に人形になってしまうかと思った。
涙も枯れたかと思ったあたりから、少し諦め始めていた。
けれど、天君が起きてくれた。こうして、私をおぶってくれている。
「あ~……ホントにごめんな、妖夢」
彼が悲しそうな顔をする。やっぱり、この悲しい笑顔を見ることが、一番辛いのかもしれない。
私だけが辛いならいい。けれど、この顔をする天君も同じく悲しいのだ。
そんな彼の顔は、辛い。
「そうじゃ、ないんですよ。それだけ私が、貴方を大好きだってことですよ。……察して下さい」
どうしても、顔が赤くなってしまう。
おんぶしてもらっている時点で既に赤くなっているのだが、告白はもっと恥ずかしい。
恥ずかしいのだけれど、甘酸っぱい感覚が、たまらなく好き。
そうやって、また一層と好きな人に溺れて、酔いしれる。
「そうか……俺も大好きだからな、妖夢。本当に、すまなかった」
彼はいつも、悪いと思ったらすぐに謝るし、嘘を吐かない。
私の大好きな人は、いつも誠実である!
「そうやって謝るなら、これからは三ヶ月分、甘えさせてくださいね……?」
「……そうやって耳元で囁かれるの、弱いからやめてくれ。あと、今回と言わず、三ヶ月分と言わず、いつでもどれだけでも甘えてくれ」
私の大好きな人は、いつも誠実で優しくもある!
その誠実さと優しさに、惹かれてよかった。
ふぅん……耳元、弱いのかぁ……
自分でもわかる。今の私は、とっても意地悪な笑みを浮かべている。
今まで眠っていた分のおしおき、ということにしておこう。
「へぇ……こういうの、弱いんですねぇ……?」
わざと淫猥な声で、誘うように言う。
「ぅ、ぁっ……いや、マジで弱いから止めてくれ……!」
反応が可愛い。いじりがいがある。
私の笑顔が、また一層と意地悪になるのがわかる。
「へぇぇ……かっこいい天君もいいですけど、可愛い天君も最高ですね……」
「や、やめ……今おぶってるんだぞ! こんなとこで理性飛ばそうすんな!」
あ、ちょっと怒った。怒った彼も素敵だ。
ちょっとだけで、本気で怒っているわけじゃないところが、なんとも彼らしい。
「じゃあ、甘える分はいつでもどれだけでもいいって言いましたよね!」
そう言ってすぐに、私は天君に思い切り抱きついた。
おんぶで既に抱きついているが、もっと力を入れて密着する。
「ぎゅ~!」
「え、なにそれ可愛い。俺もそれしたいんだけど」
つまりは、抱き合いたい、と。
私もそう思っているので、二人の考えは同じ。
通い合う考えって、なんだか恋人同士の証のようで、嬉しくなってしまう。
「帰ってからですね。それまで私が堪能しますよ~……ふへへぇ~……」
つい、笑顔で顔が緩み、だらしない声を漏らしてしまう。
どうやら、私には彼が必要不可欠の存在みたいだ。前々からわかってはいたのだが。
天君欠乏症になってしまうし。今思えば、本当にひどかった。
彼の成分が足りないと、幻視・幻聴、めまいの症状が起きてしまう。
「俺も妖夢を堪能したいんだが」
「ふぇっ!? た、たた、堪能……?」
ど、どんな意味の堪能なんだろうか……?
―*―*―*―*―*―*―
少しからかって言ってみた。そらの からかうこうげき! こうかは ばつぐんだ!
ただし、妖夢に限る。しかし、こちらも妖夢が弱点。
なんだ、俺と妖夢はドラゴンタイプだったのか。
どちらかというと、妖夢はゴーストな気もするな。半霊だし。
そんな下らないことを考えていると、すぐに白玉楼に着いた。
妖夢をおんぶしたまま、中に入って幽々子と翔に報告に行く。
幽々子の部屋に行くと、二人が揃ってぼーっとしていた。
「よう、二人共。ただいま」
「天! お帰り!」
「本当に、心配したわよ?」
やはり、待ってくれている人・心配してくれる人がいるというのは、嬉しいことだ。
三ヶ月も待たせて、心配させたことに、大きな罪悪感を感じる。
「ごめんな。お待たせ」
「いいのよ、それよりも、私達が聞きたいのは、後ろに背負っている妖夢よ。ねぇ~?」
「ねぇ~?」
こいつらは、いつになっても意気投合しているんだな。
変わらない様子で安心したよ。
……安心したよ。
「あぁ、妖夢をお姫様抱っこしたら、二回目を嫌がられて、『おんぶがいいです!』って言ってたからな」
「ちょっと、天君! なんで言うんですか! 幽々子様と相模君も、静かに笑わないでください! お、おろして下さい!」
俺をポカポカと叩いているが、全然痛くない。
むしろ可愛い。超可愛い。
三ヶ月眠っていた分、俺は妖夢の成分が足りないんじゃないだろうか?
今すぐにでも抱き締めたい。
意地悪しておろさない、という手もあったが、素直におろす。
おろした時に見えた顔が、真っ赤に染まっている。
妖夢は可愛い。異論は認めない。
「あ、それでだが……黒幕の一人と戦って、勝ってきた」
そう俺が告げると、二人の顔が一気に強張り、引き締まる。
それを聞く準備ができたと解釈し、事の経緯を説明する。
「まず、妖夢が一人でそいつと戦っていた。そっちのそれまでの状況は?」
「はい、まずローブを着た人に、魔法の森の奥に呼び出され、そこに行きました。そこには、叢雲という名の女がいて、私を攻撃しま、した……」
「じゃ、じゃあ――!」
「妖夢ちゃんは、既に
そう、そういうことになる。
自分が気付かぬ内に、黒幕の一人と会話したと考えると、恐ろしい。
呼び出したのは男なので、その叢雲、というあの女とは別人。
二人目であることは、確定だ。
「その叢雲との戦闘中に、俺が目覚めた。すぐにそこに向かって、叢雲に勝ったってわけだ」
「で、その叢雲って女は今どうなったの? 死んだ?」
「いや、今は紫に預かってもらっている。情報を吐かせるって言ってたな」
あの女のことだから、どうせ吐かないだろうが。
「ま、それはいいとして。二人は大丈夫なの? 妖夢が一人で戦ったのと、呼び出しを考えると、敵はあの時の妖夢一人なら勝てると踏んだんでしょう?」
「そうですよね。ということは妖夢ちゃんはかなり危なかったんじゃない?」
そう、そこまでは俺も考えが行き着いた。二人も当然気付く。二人は案外、理解が早い。
「えぇ、もう少しで死にそうでした。でも……このペンダントと、天君が救ってくれたんです」
そう言うと、妖夢がペンダントを握りしめる。
目からは涙が流れ、頬を伝っている。
「あの剣を止めてくれたのは、このペンダント。もうダメだと諦めて、死ぬ寸前だった時に助けてくれたのは、天君。天君が、二回も私を救ってくれたんです」
そう……だったのか。本当に、あの時ペンダントを買ってよかった。
俺の気持ちが妖夢を救えたと考えると、俺まで泣きそうになってくる。
「本当に、よかったよ、妖夢」
「こちらこそ、貴方が目覚めてくれて、本当によかったです。そして、私を救ってくれて、ありがとうございます!」
彼女の涙を携えた笑顔は、思わず見惚れるくらい、可愛く、綺麗なものだった。
ありがとうございました!
最近、私が肉体的にも精神的にも壊れかけています。
妖夢ちゃん可愛い。妖夢ちゃん甘くておいしい。
ではでは!