東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

今の状況は、かな~りピンチです。
それはわかるかと思います。

さて、そのピンチの活路は――?

では、本編どうぞ!


第52話 たった一つの活路

 けたたましいフェンリルの咆哮。

 それと同時に――フェンリルが()()()()

 

 俺達はまだ着地していない。高さは地上から20mはあるだろう。

 その間を、フェンリルは一瞬で詰めた。

 

 山の木々を揺らし、弱々しい葉は全て散った。

 地面の砂は刹那にして空へと飛んでいく。

 葉と砂が、上昇気流に乗って、舞う。

 まるで、竜巻が発生したかのように。

 

「危ない、妖夢!」

 

 妖夢を抱きかかえるようにして、フェンリルの攻撃を躱す。

 瞬間、ついさっきまで俺と妖夢がいた場所を、空間を、銀色に光る爪が切り裂いた。

 

 跳躍はそこで終わり、フェンリルが落下していく。

 

「す、すみません。もう大丈夫です」

 

 どう、しようか。

 このまま空で戦ってもいいが、避けられる保証はない。

 それに、フェンリルがここに留まるとも限らない。

 

 仮に空中戦を持ちかけたとしよう。

 フェンリルが人里へ、俺達で追い付けない速さで向かったら、どうなるだろうか。

 引きつけるという目的を果たせず、少しとはいえ、戦力が分断されている状態。

 

 ……気を感じた限り、絶対に勝てない。俺達がいて変わるかと言われれば、わからない。

 取り敢えず確定することは、被害が大きく拡大すること。

 

「……妖夢、危険を承知で降りる。俺に、ついてきてくれるか?」

「貴方の考えなら、どこまでも。行きますよ、天君」

 

 そう言って、妖夢が飛び出す。

 ……即答かよ。

 

「っしゃあ! 行くか!」

 

 俺も、妖夢に続いて飛び出す。フェンリルは、すぐそこに――

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 くそっ! 広範囲すぎる弾幕が使えない!

 

「ったく、どうすりゃいいんだぜ……」

 

 自慢のマスタースパークも、建物ギリギリくらいの横幅だ。

 もしかしたら、飲み込んでしまうかもしれない。

 

 数匹のオークが、私に向かってくる。

 空に逃げるが、このままだと埒が明かない。

 

「魔理沙! 敵を引きつけて! 攻撃は他に任せるから!」

 

 今回指揮役の、翔の声が私に届く。

 まぁ、私にできることは、それしかないよな。

 

「ほらほら! 私に攻撃を当ててみろ~!」

 

 箒に乗って、敵を数体蹴散らしながら進んで行く。

 これで、幻獣の攻撃が私に向きやすくなるだろう。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

 私の投擲した槍が、敵をいくつも貫いていく。

 狭い範囲で、威力があり、効率的なのは、間違いなくこの技だ。

 

 敵が大量にいる以上、重ならないことは避けられない。

 そこを、一気に串刺しにする。

 

「幻符『殺人ドール』」

 

 咲夜の出したナイフが、敵に向かって突き刺さっていく。

 大量の銀色ナイフが、建物の幅スレスレにまで広く。

 

 多くの幻獣にダメージが与えられたであろう。

 

「さすがね、咲夜」

「恐縮です、お嬢様」

「私も、頑張らなきゃ……ね!」

 

 再び、大きく鋭い、細いものが、敵をいくつも串刺しにする。

 そこに容赦など、全くもってない。

 

 ただひたすら、殺戮(さつりく)を以て殺戮(しんりゃく)を阻止する。

 あいつらの血なんて、吸いたくもない。

 ま、人間以外の血は吸ったことないから、怖くて吸えないわ。病気になったらどうしよ。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

「レミリアちゃん! できるだけ右側の敵を殺って!」

「妹紅ちゃん! 一旦下がって、体勢を整えて!」

「早苗さん! そこの人を優先して運んで! 結構命に関わるかもだから!」

 

 翔の能力については聞いていたけれど、まさかここまで……

 的確過ぎる指示。十分に安全を確保した作戦。

 さらには、避難に遅れた人々や、負傷した人々の戦線離脱。

 

 あらゆる可能性を視野に入れた指示。

 常に最善の選択とも言える作戦が、皆の余裕を生む。

 

「霊夢! 左の敵、蹴散らして!」

「了解! ……霊符『夢想封印 集』!」

 

 集中した夢想封印が、狭い範囲で放たれる。

 建物に当たらないようになったと同時に、威力も増している。

 

「次! 妹紅ちゃんと咲夜さん交代で!」

 

 これなら、いけるかもしれない……!

 この数を相手に、限りなく少ない被害で、幻獣を倒せるかもれない……!

 

 そうなると、早くこちらの戦闘は終わるだろう。

 ……だから、勝手に死ぬなんて許さないよ、妖夢、天!

 

 私は、二発目の夢想封印を繰り出して――

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

「リベレーション!」

 

 栞と自分の霊力を表面に纏い、強化。

 さっきからずっと妖夢と俺で攻撃しているが、いまいち手応えがない。

 少し早いが、ここは少しでもダメージを与えておきたい。

 

 

「あぁぁあ! 煉獄業火の閃きぃいいいい!」

 

 

 

 フェンリルの体内に刀が入り、爆発。

 檮杌に大ダメージを与えたこの攻撃だが――

 

 

 

 

 

「ガァァアアアア!」

 

 

 この鳴き声は――悲鳴じゃなく、威嚇。

 

 

 

 

 ……効いて、ない……!?

 

 

 

 

 そのまま、咆哮と共に、神速の爪が。

 

 

 

 

 俺の腹を、横に思い切り切り裂いた。

 

 

「ガ……ハァッ……! ゴフッ!」

「天君!」

「天! 大丈夫かい!?」

 

 

 妖夢の悲鳴。栞の悲鳴。

 

 

 それと同時に、俺の口から吐き出されるのは、大量の血液。

 

 

 

 

 地面が瞬時に赤く染まり、傷口からも大量の血液がこぼれて。

 

 

 

 

 でも、負けるわけには、いかな――

 

 

 

 

 

 ――鎖が、飛んできた。

 

 

 

 

 

 

「なっ――!」

「危ない、天!」

 

 

 

 当たった瞬間、鈍い音と痛み。そして、体ごと吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 全身の骨が、折れた。

 

 

 

 そのまま木に衝突し、さらに痛みが増す。

 

 

 

 

「アァァアァァァア!」

「そ、天君!」

 

 

 妖夢が、泣きそうになってこちらに来る。

 

「だめ、だ……今、来たら――」

 

 

 

 フェンリルにやられる。そう言おうとして。

 

 

 

 

 

 

 鎖が、妖夢に飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 俺に向かっている妖夢の、背後から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然、妖夢は気付かない。

 

 

 

「あ、に、にげ――」

 

 

 

 

 にぶい、おと。

 

 

 みみにのこりつづける、いやなおと。

 

 

 

 

 そして。

 

「あぁぁぁあああっ!」

 

 

 

 ようむの、ひめい。

 

 

 

 

 

「よ、よう、む……」

 

 

 ほねが、おれている。けれど、いかなきゃ。

 

 

 

 

 

 ようむの、ところに。

 

 

「あ……ごめんなさ――ガハッ!」

 

 

 

 

 そして、あかい、ドロドロの液。

 

 

「お、おい、ようむ、どうした……?」

「す、すみませ……少し、待っててください……」

 

 

 

 ヨロヨロと、立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と妖夢、同時に()()()()()()()

 

 

 

 

 また骨が砕けて。

 

 

 

 

 

 さっきから体に防御の霊力強化をしている。けど、効果が薄いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖夢と俺は、同時に木に叩きつけられる。

 

 

「だ、大丈夫か……お、おい、妖夢?」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 妖夢が、返事をしない。

 

 

 

 指一本すら、動いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺じゃ、何も守れない。

 

 

「ダメ、天! よそ見しないで!」

 

 

 

 

 

 視界の右から、再び鎖。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺じゃ、守れないなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キィィィィイイイイイン!

 

 

 

 金属音が、この山中に響き渡る。

 神憑と鎖が衝突。片腕一本で、鎖を受け止める。

 

「なっ……! ま、まさか、天……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハハハハ! 結局これかよ!? 俺はぁ!?」

 

 

 

 そう、俺じゃなく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「悪いようにはしないさ! にしても、既にボロボロじゃねえか!」

「そ、そら……くん……?」

 

 

 妖夢が起き上がって、こちらを虚ろな目で見る。

 

 オレは、思い切りフェンリルに威圧的な目を向ける。

 

「おい、お前! よくも俺と()()()()()傷をつけたなぁ? 俺に代わって、オレが叩きのめしてやるよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 今の俺なら、()()が使える。

 

 

 オレが、神憑を納刀した後。

 

 

 

 

 オレの右腕に、黒い霊力が渦を巻いて集まる。

 

 

 

 

 

 

 そして、その霊力は、やがてある()()()()となる。

 

 

 

 

 

 

 

 霊力は実体化できない。だが、それらしい形としての偽物なら、できる。

 

 それが、霊力刃の根幹である。

 

 

 それを、武器の形全体にして、形を保つ。

 

 

 

 

 

 湾曲した鋭利な刃が、内側に向いている。

 

 その刃を支えるように、長い柄がある。

 

 

 そう、それは……死神が持っているような、()()

 

 

 全ての色が黒色で染まっていて、どこか禍々しい。

 

 

 

 この武器の名は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――朧月夜」

 

 

 

 夜空に孤独に佇むその様は、まるで月。それが、刃の形となっている。

 

 

 刃の付け根には、真っ黒なエリカの花。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリカの花言葉は――()()()()()

 

 

「ハッハハ! オレそのものみたいだろ? これでお前を切り裂いてやるよ!」

「そ、天、君……わ、私も……」

 

 妖夢が刀を杖にして、立ち上がる。

 

 

 オレはそれを鎌で制止する。

 

 

「いい。オレがやる。……引っ込んでろ」

「あ……なるほど。わかりました。ちょっと休んでおきます。……頑張ってください、()()()

 

 

 

 

 妖夢が、オレに敬語で、君付け。

 

 

 

 

 

 

 ……全く、察するのが早えんだよ。妖夢も、栞も。

 

 

「さあ! やってやるよ!」

 

 

 

 オレは朧月夜を片手に、フェンリルに向かう。

 

 

 

 傷なんて、気にせずに。

 

 

 

 

 フェンリルが、爪を立てて右側から切り裂こうとする。

 

 

「ソラ、右から来るよ!」

「わかってんだよ、栞!」

 

 

 大鎌で受け流し、右前足の付け根に刃を入れる。

 

 

 

 

 

 この大鎌は、霊力の塊だ。幻獣の弱点。

 

 

 

 それは勿論、霊力強化よりも幻獣に効きやすい。

 

 

 だから。

 

 

 

 

 

 

 

 ――こうやって、簡単に足を()()()()()

 

 

 

 

 

 

「ガァァアアアアアアア!」

 

 今度は、明らかな悲鳴。

 

 

 

 切れた右前足は、残らず黒い(もや)となって消えた。

 

 

 当然、バランスを崩してろくに立てもしないだろう。

 

 

 

 

 ……今が、好機!

 

 

 

 

「はぁぁあぁあああ!」

 

 

 右腕を大きく振り下ろし、巨大な獣の胴を真っ二つにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――()()()()()()

 

 

 

 

 

 オレは気付いていなかった。その異様な光景に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっき切断したはずの右前足が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――()()()()()()()()()()()()ことに。

 

 

 

 黒い靄が腕をもう一度形成した。

 

 

 

 

 

 

 再生された右前足で朧月夜を受け止められる。

 

 

 

 

 

 

 甲高い金属音がうるさく響き渡る。

 

 

 

 

 そして、オレの驚愕の声も、響き渡る。

 

 

「な、にっ……!」

 

 

 

 

 その驚愕は、二つの意味でのものだった。

 

 

 

 

 一つは、朧月夜を受け止められたことで。

 

 

 

 

 一つは――もう片方の、左前足でオレの体を切り裂こうとしていることで。

 

 

 

 

 

 オレが回避する手立ては――残念ながら、ない。

 

 

 

 

 

 空間と共に切り裂かれたオレの腹は、二度目の鮮血を、辺りに散らしていた。

 

 

 

 

「ソラ!」

「ソラ君!」

 

 

 

 二人の悲鳴が、また聞こえる。

 

 

 

 

 取り敢えず……距離を取る。

 

「ハァ……ッ!」

 

 

 

 痛みによって、顔がどうしても歪む。

 

 

 

 それでも、立つ。立たないといけない。

 

 

 

 けれど、オレの限界が来る。

 

 

 

 

 

 元々俺の体なので、霊力の消費は普通よりも多くなる。

 

 オレの霊力が俺の体に馴染んでいない分、無駄な霊力消費が増えるのだ。

 

 そう、初めの俺が、飛行している時。あれと同じ原理だ。

 

 

 

 それに、朧月夜の保持にも莫大な霊力を使っている。

 いくらオレの霊力でも、そろそろ底をつく。

 

 どれだけ頑張っても、限界は超えられない。

 

 

 ――おい、俺。後は頼むぞ。右前足は再生されたが、ダメージは大きいはずだ。

 

     わかった。やれるだけやるよ。休んでろ。お疲れ様、オレ。

 

 ――ハハッ……やけに優しいじゃねえか。じゃ、そうさせてもらうよ。

 

 

 

 

 俺の意識が前に出る。

 

 

 刺すような痛みに顔を(しか)めながらも、対抗策を考える。

 

 

 

 妖夢との二人の連携技。ダメだ、どちらもろくに動けないだろう。

 

 スペルカードを使う。 却下だ。避けられた時はどうする。

 

 霊力刃で攻撃する。  一応アリだが、せいぜいできるのは、一瞬ひるませるくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……じゃあ、()()しかない。

 

 

(……栞。俺に霊力を渡したら、すぐに妖夢のところに移動してくれ)

(嫌だ)

 

 

 即答。俺の意志を、汲み取ってほしい。

 

 

(わかってるだろ? 俺の言いたいことが。だったら――)

()()()()()、だよ。約束、したじゃん。一緒だって)

 

 

 

 

 

 ……全く、こういうところがあるから、俺は泣きそうになっちまうんだろうが。

 

 

 

「……妖夢。大技するから、合図をしたら大きくフェンリルから下がってくれ」

「わかりました。気を付けてくださいね」

 

 

 妖夢は、気付いていない。それだけが救いだ。

 

 

 

 

 

 

 フェンリルとの間を、一気に詰める。

 

 

 

 それと同時に、左から爪と鎖。

 

 

 

 

 

 

 

 それらをすんでのところで躱す。逆方向――後ろに下がって。

 

 

 

 

 前に向かっているベクトルが、後ろに向く。

 

 

 

 

 そして、霊力刃を数発飛ばす。

 

 

 

「ァアアアア!」

 

 

 

 少し、怯んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ――今だ!

 

 

「妖夢、下がれ! ……氷結符『寒煙迷離の氷国』!」

 

 

 

 

 

 

 

 怯んだ隙に、神憑を地面に突き刺し、辺り一帯を凍らせる。

 

 

 

 

 

 これで、しばらくは動けないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――フェンリルと()()()

 

 

 

 

 

 

 

 氷は地面を走っていき、フェンリルと()()()()()凍らせ、動けないように。

 

「……え? ちょ、ちょっと、天君? どうして――」

「――ごめんな、妖夢。これしか方法がないんだよ」

 

 

 

 

 

 このまま持久戦に持ち込んだら、どちらも大量出血で死ぬ。

 

 

 

 

 だから、皆が追いつく前に、こいつは倒さないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こいつを吹き飛ばすことができるほどの威力のある技。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺だって、怖くて試したことがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――せめて、妖夢だけでも。

 

 

 

 

 

「……じゃあな、妖夢。短かったけど、恋人になれてよかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、最後に。

 

 

 

「……()()()()()()()()()()()()。」

「……! いや、そらく――」

 

 

 

 

 

 妖夢の言葉と、自分の涙を振り切って、フェンリルとの距離を詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右腕に俺の霊力と栞の霊力、()()()()()のせて、フェンリルを殴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、たった一つの活路だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラネット・バーストォォォオオオオオ!」

 

 

 

 

 

 

 

 俺の右腕とその周りが、()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――()()()()。霊力が弱点な幻獣にとって、諸刃の剣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、()()()()()()()()()()()。一番近くで、最大火力の爆発が起きるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 けれど、このままだと二人共死ぬんだ。せめて、妖夢だけでも、生きてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 栞がどうなるかもわからなかったから、妖夢に移れと言ったんだ。

 

 けれど、栞は紅魔館での約束を、守ってくれた。

 

 

 『私も逃げないよ、爆発するとしたら一緒だよ』。この、約束を。

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ごめんな、栞、妖夢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の言葉は、轟く爆発音で掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 爆発で全身が飛ばされて、すぐに意識がなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イメージが途切れたので、氷もすぐになくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――地面に突き刺されたままの神憑が、寂しく佇んでいた。




ありがとうございました!

絶望一回目です。
捨て身の一撃。これを、妖夢はどう受け止めるのでしょうか。

次の戦いは、案外早く来ると思います。
早かったら、あと2~4話後くらいに。

ではでは!

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