お待たせしましたぁぁぁあああ!
この話をこのタイミングで書くためだけに、日常話を多く書いてました。
どうしても記念の第50話で書きたかったんです。
そして、10000UAいきました! ありがとうございます!
とうとう五桁の台に登れました。よかった。
第50話までにはいきたかったので……ギリギリですが。
彼氏彼女になれるかどうか!
まだ告白だけなので、成功かどうかはわからないですからね?
では、本編どうぞ!
朝食を食べている途中、やはり俺は意識してしまう。
何もないふりをして、ちらちらと。
そして、目に入る度に嬉しくなってしまうんだ。
未だに彼女の首にかけられ続けている、ネックレスが。
つい頬が緩んでしまいそうになる。
かくいう俺も、同じくかけているのだが。
どうしても。一瞬外すのも少し躊躇ってしまう。
「あ、そうそう。三人は修行が終わったら、すぐに宴に行って頂戴。夕食はそっちで取るから大丈夫よ」
「……わかった」
宴と聞いて、さらに実感と緊張感が湧いてくる。
今日は、告白の日なんだと。人生で初めて、告白する日なんだと。
修行の時間も、気が気じゃなかった。
少しでも集中力が欠けると、すぐに上手くいかなくなる。
何度集中が途切れかけたことだろうか。
修行が終わって、すぐさま栞に言われたのだ。
(天……ちょっとそれは……)
(いや、あのな? 言いたいことはわかる。けどさぁ……どうにもならないんだよ)
本当にどうにもならないんだ。
気付いたら、彼女のことばかり気にしている。
気付いたら、彼女のことだけが頭に浮かんでくる。
……本当に、どうにもならない。
―*―*―*―*―*―*―
修行中は、私のドキドキが止まらなかった。
神憑を持った彼を見ると、どうしても目が離せなくなる。
目が引きつけられる。その視線の先には、大好きでたまらない彼。
目を逸らさないといけないのに、できない。
集中なんて、到底できるものじゃなかった。
少し早めに、修行を切り上げて人里へ。
彼が人里に降りた瞬間、皆が彼の元に集まっていった。
彼は人望もあって、優しくて、強くて、かっこよくて。
そんな魅力で溢れる彼が、私に振り向いてくれるのか、不安になる。
でも、上手くいくにもいかないにも、この想いは伝えたい。
大好きだって、彼に言いたい。
そして、お互いに好きになることを、夢に見て――
―*―*―*―*―*―*―
宴は、俺達が来て間もなく始まった。
今は夕方で少し早いが、俺達への幻獣討伐の労い・お祝いと、翔の幻想入りの歓迎の二つを込める宴なので、
少し早めに始めて、存分に騒いで楽しもうということらしい。
で、宴が始まる前に一言挨拶を。
当然、幻獣戦に関わった全員が来ているが、代表で俺が挨拶。
なんとなく予想はしていたが、まさか本当に挨拶になるとは。
「それでは、『努力の英雄』様から挨拶で~す!」
「おい霊夢。それやめい」
司会の霊夢でさえも、俺に皮肉たっぷりで二つ名をわざわざ言う。
それかっこいいけどさ、少し恥ずかしいんだよね、やっぱり。
前に出て、皆の顔を見る。
こうしていると、幻想入りした初日を思い出す。
「皆、今日はありがとう。そしてお疲れ様。これからも頑張っていこう!」
簡単に挨拶をして、後ろで待機していた翔と代わる。
緊張など縁がないとでも言うように、いつもの笑顔。
さすがに『冷静』の能力か。
「どうも、相模 翔です。どうぞよろしく~」
さ、さすがだな……この緩さが安定している。
その後も緩さバツグンの、適当かとも思う挨拶が続いた。
で、俺と翔、同時に乾杯の合図を。
「「じゃあ、乾杯!」」
「「「乾杯!!」」」
合図がかかった直後、あの日の騒がしさが再来した。
この皆で騒ぐ様は、忘れようにも忘れられない。
そして、俺のところに、よく知る吸血鬼とメイドがやってきた。
「お疲れ様、努力の英雄さん」
「それはやめてくれ、レミリア……呼ばれる側としては、嬉し恥ずかしなんだよ」
英雄とか、自分にはふさわしいのかどうか、わからなくなってくる。
それに、こうやって皮肉の様に言っていじる人もいるしね。
「あら、じゃあもっと呼んであげようかしら、執事さん?」
「相変わらずだな、咲夜。俺は執事でもいじられキャラでもないからな?」
「案外そうでもないかもしれないわよ? 幻獣を倒し終わったら、執事になってたりしてね」
いや、ないな。
俺も結構長く紅魔館にはいたけど、もう白玉楼からは出ないんじゃないかな?
「で、冗談を言いに来たのか?」
「そう思う? 違うわ。応援よ、応援」
応援とアバウトに言われても、何の応援なんだよ。
幻獣戦か?
「私、今日は貴方が妖夢に告白するの、知ってるわよ? 運命だからね」
「あ~……そうかい。ははっ」
なんかもう、苦笑いしか出ない。
もう知れ渡ってんじゃね? 皆が黙っておくのが暗黙の了解みたいな。
「頑張ってね。あ、ちなみに、バレンタインももらってることも知ってるわ」
監視カメラかよ。
全部が見透かされている気がしてならない。
「私も一応応援したげる。しっかりしなさいよ?」
「あぁ……二人共、ありがとうな」
お礼を言うと、彼女達はすぐにどこかへ行こうとする。
行こうとして、こう言ったのだ。
「上手くいくと……いいわね」
ホント、上手くいけばいいけどね。
俺が心の中でそう返すと、すぐに去っていった。
二人が去っていった後、俺はすぐさま彼女の元を探しに。
何よりも大切で、大好きな彼女の元へ――。
―*―*―*―*―*―*―
乾杯の挨拶を終えて、皆が騒ぎ始めた。
すぐに彼の元に行こうとしたけれど、止まれの声がかかった。
「妖夢さ~ん」
「あ、文じゃないですか。私に取材ですか?」
鴉天狗が飛んできた。
普段は会わないので、何かしら用事があって来たのだろう。
そう考えると、取材の線が一番濃厚だ。
「いえいえ。今日は――」
そこまで言って、周りに聞こえないように私の耳元で続ける。
「天さんに告白するんでしょう?」
「――え!? 何で知ってるんですか!」
幽々子様と相模君以外は誰も知らないはず。
……相模君? もしかして、バラした?
許せないかもしれない。この刀が閃くかも……
「想像ですよ。今夜が一番いい舞台ですからね」
「な、なるほど。それで、どうしました?」
取り敢えず、相模君は生きられるようですね。
でも、多分彼が止めるから、斬るにも斬れないだろうけど。
「上手くいくといいですね。頑張ってくださいよ~」
「あ、ちょっと――」
それだけ言って、すぐに飛び去って行った。
いつもの文なら、告白の後に取材するだろうに。
「……行こ」
一人で、静かに呟いて。
ざわつく心を胸にしまいこんで。
多少早歩きになりながら。
彼の元へ。
何よりも大切で、大好きな彼の元へ――。
彼が私を見つけると、すぐに走ってきてくれる。
「よ、妖夢。宴、一緒にいてくれないか?」
「あ……は、はい。喜んで」
私は、すごく嬉しかった。
彼が走ってきてくれたこと、彼から一緒にいようと言ってくれたこと。
期待してしまう。私のことを、好きでいてくれるんじゃないかと。
それから、夜になるのは早かった。
夜に少し近い夕方だったことも、原因の一つだろう。
けれど、私は彼と一緒にいたからだと思う。
彼ともっと一緒に過ごしたい。一緒にいるだけで楽しいから。
その楽しさが、時が早く感じさせたんだと、私は思う。
そして、霊夢の一声。
「皆~! 今から花火、あげるわよ~!」
「「「おお~!!!」」」
一層の騒がしさを見せた直後、夜空に一筋の光が尾を引いて。
数秒後、胸の中に破裂音が響いて、大輪の花を咲かせていた。
隣の彼の横顔も、その美しい光に照らされて。
私が見たら、いつも輝いて見える彼が、より輝いて、かっこよく。
その姿は、それこそ幻想的だった。
周りには、人はいない静かな場所。ここを選んで連れてきた。
告白するなら、ここだ。
「……綺麗だな」
「……そうですね」
もう、告白しないといけない。
頭ではそう考えていても、言葉が出ない。
一体、どうなってしまうんだろう……?
―*―*―*―*―*―*―
ついに、花火があがった。
胸の中に響く独特の音が、自分の心臓を早めてくる。
言葉を繋がないといけない。
告白の言葉を切り出さなければならない。
想いの丈を、伝えなければならない。
早めに踏み切らないと、後悔することになるかもしれない。
言えないまま、俺が妖夢に忘れられて、消えてしまうかもしれないから。
そう思って、口を開こうとしたその瞬間。
「天君!」
隣にいた彼女が、大きな声を出した。
そちらの方を向いてみると、妖夢が俺の瞳を真っ直ぐに、真剣に見つめていた。
―*―*―*―*―*―*―
「天君!」
私が声をあげたら、彼が私へ体を向けて見てくれる。
彼と目線がぶつかった瞬間、私の心臓は大きく跳ねた。
トクン、トクンと間隔の狭い鼓動がうるさい。
耳元でなっているんじゃないかとも錯覚させるほどに。
私のドキドキは、静まるどころか、どんどん加速して。
「あ、あの!」
意を、決して。
自分の気持ちに、正直に。
今の想いの強さを、彼に。
「わ、私! 天君のことが、大好きです! 異性として、大好きなんです!」
―*―*―*―*―*―*―
……あ?
いま、ようむが、すきって……おれを?
お、俺は、告白して、え?
い、いやでも、俺も、妖夢のことが――
「……はぁ~……」
溜め息をついて、妖夢の体が跳ねた。
なんで、だよ……
「……なんで、先に言っちゃうんだよ!」
―*―*―*―*―*―*―
彼が大きく声をあげた瞬間。
私の体が彼に引き寄せられ、抱き締められた。
少し苦しいくらいに強い。息もしづらい。
けれど、私は幸せだった。
……答えは、どうなんだろうか。
「妖夢! ……聞いてくれ!
――俺も、妖夢のことが、大好きだ!」
そう、こたえが、かえってきた。
同時に、抱き締められる力が、一層強くなった。
「あぁ……あぁぁあっ……!」
幸せで、たまらない。
全身が喜びの声を上げている。
私も、彼を目一杯抱き締めた。
自分の想いの丈を、精一杯表現する。
そして、彼が腕を離した。少し、寂しくなって、つい声を上げてしまう。
「あ――」
そして、その声がでる口が。唇が。
――
その瞬間、横では花火が大量にあがって、暗闇を照らしていく。
花火でできた私と彼の影が、口元で一つになっている。
「んっ……」
そして、私のお腹の奥が。
切なそうにキュッ、となった。
彼の唇が、離された。
「あっ……も、もう一回……んっ……」
今度は自分から求めて。
彼の後頭部に腕を回して。
彼も、私の後頭部を寄せてくれている。
それが、私を求めてくれているのだとわかって。
どうしようもなく、心も体も幸福感で満たされる。
頭の中が真っ白になる。本能で、彼を求める。
頭だけではなく、体も火照ってくる。
これ以上に幸せなことが、あっただろうか?
こんなに自分の心が満たされることが、あっただろうか?
一回目は短く、軽く。
二回目は長く、情熱的にキスをした。
そして、二人で唇を離した。
「妖夢。俺は、妖夢のことが大好きだ」
「はい……はい……!」
大好きだ、と言われる度に、お腹の奥がキュッとなる。
幸せの証、なのだろうか?
「俺と……付き合ってください」
「はい……! こちらこそ、喜んで!」
私と彼は、溢れんばかりの幸せに、身を震わせて。
あまりの幸せに涙を流して、再び強く強く抱き締め合った。
―*―*―*―*―*―*―
「あやややや……これはまた……」
隣の文さんが、少し赤面しながらカメラのシャッターボタンを押す。しかも連写。
抜かりないね。
「幽々子さん、すごく過激ですねぇ、これ」
俺もそう言いつつ、カメラのシャッターを切る。勿論連写で。
抜かりはない。
「えぇ。ただのキスなのに、どこかえっちぃわね」
『えっちぃ』って言い方もまた可愛くてえっちぃ。
今この場には、幽々子さん、文さんと俺。
そして、前に天がお世話になったらしい、紅魔館というところの、レミリアちゃんと咲夜さん。
咲夜さんは、例のタネなし手品の人らしい。実際に見せてもらったが、あれはすごかった。
時間を操るらしいから、何でもできちゃうよね。
レミリアちゃんに、ちゃん付けで呼ばないでって怒られた。
けど、幼女の見た目で可愛いから、これからもちゃん付けで呼ぼうっと。
「じゃあ、撮影も終わったし、見つからないように行こうか」
皆で頷いて、その場所を離れる。ここは草むらなので、慎重に。
天達は、仲良く腕を組んで花火を見ている。
まだまだイチャつくみたいですねぇ。
そして、事件は起こった。
パキパキパキッ。
……ん?
「……あ」
それは、レミリアちゃんが足元の木の枝をいくつも踏んだ音だった。
―*―*―*―*―*―*―
「そぉ~らくぅ~ん」
「……どうした?」
「呼んだだけで~す……えへへっ」
可愛い。
告白が成功に終わって、俺達は……恋人同士。
花火を腕を組んで見ているのだが、腕に頬をすりすりしてくるのだ。
……可愛い。可愛すぎる。
「そぉ~らぁ~」
「どうした?」
「呼んだだけだよ~……えへへぇ~」
さっきからずっとこの調子なのだ。
頬ずりしながら、ただ俺の名前を呼ぶだけ。
もう耐えられないんだけど。何この可愛らしい小動物。
もう一回抱きたいな~。
そんな欲望を沸々とさせていると。
パキパキパキッ。
隣の草むらから、あたかも人が踏みましたよ、という音が聞こえた。
彼女にもしっかりと聞こえていたようで、二人同時に草むらを振り向く。
「「……あ」」
つい、声をあげてしまう。
草むらには、幽々子、翔、咲夜、レミリア。そして、文。
瞬時に頭が回転する。
この中で一番逃してはいけない人物は誰だ? と。
「文、翔! ちょっと待て!」
霊力強化で間合いを詰めるも、時既に遅し。
幻想郷一のスピードを誇る文には、とっくに逃げられてしまった。
翔は捕まえた。逃してない。
ただ、気付いたらレミリアと咲夜が見えない。
咲夜か……時を止められたら、何も出来ない。
「さて、どういうことか、きっちり言ってもらおうか?」
残った幽々子と翔に問い詰めよう。
翔は手にカメラ持ってるし、捕まえたかった。
一番はやっぱり文だが。
「い、いや違うんだよ。見逃せるわけないじゃん。それに、踏んだのはレミリアちゃ――い、いないし……」
「そうよ。あんなこと言われて、覗かないわけにもいかないじゃない。覗けと言っているようなものよ?」
「そうかそうか。覗きを平気でするんだな。へぇ~。……何か、言い残すことは?」
そうやって問うた直後。
「「じゃあね!」」
「あ、ちょっと待て――!」
二人がすごい速さで逃げていった。
反応に遅れた俺は、到底追いつけるはずもなく。
妖夢の場所に戻って、事後報告。
「あぁ~……悪い。逃した――妖夢?」
「あ、あわ、わ……抱き、合って、キスも、して……」
顔を今までで一番赤面させて、もはや単語しか並んでいない。
俺は、ちょっと思ってしまった。
この妖夢の姿が引き換えなら、いいんじゃね? と。
「……大丈夫だよ。それとも、俺といるところを広められたくないくらい、俺が嫌い?」
そう言って頭を撫でると、俺の胸にぽすんと顔をうめて、腕が回された。
表情が見えないように、小さく首を横に振っている。顔をうめたまま。
……俺、もう耐えらんない。
彼女と同じように腕を回し、結局は抱き合う形に。
そして、その日で一番大きな花火が、俺達を明るすぎるくらいに照らした。
まるで、俺達を祝福してくれているように。
そして俺達は、同時にこう言ったのだ。
「天――」「妖夢――」
あなたのことが――
「「――大好き!!」」
ありがとうございました!
今までで一番甘々に書いたつもりです。
妖夢ちゃんは可愛い。異論は認めない。
どれくらいの人が悶てくださったでしょうか?
私は、書いている途中に恥ずかしくなってきました。
……自分の作品なのに。
これからこの作品では、恋人同士の天君と妖夢ちゃんを、よろしくお願いします!
ではでは!