告知した通り、これが投稿されるのは18日で、その明日の19日も魂恋録の投稿です。
今回は、完全に下準備回です。
つまらないと思う方も多いとは思いますが、ご了承ください。
ソラの若干の掘り返しがあります。
ホントに若干ですが、今考えているストーリーでは、かなり重要人物です。
どうか忘れないでください。
では、本編どうぞ!
今日の分の修行が終わり、天と妖夢ちゃんは二人で買い物に出かけてった。
今俺は、栞ちゃんと幽々子さんと一緒に会話をして楽しんでいるのだが。
「ねーねー、栞ちゃん。天って、妖夢ちゃんのことは好きなんでしょ?」
「もうそれはもうドロドロにね。妖夢ちゃんが本当に取られたら、どんな感じになるんだろうね?」
狂ってしまいそうだけどね。
あぁぁぁああ! って感じで。
それか、もう精神が壊れちゃって、ただただ泣くだけとか。
いずれにせよ、とても大変なことになるだろう。
「ま、取る人なんていないよ。ラブラブだし。取られるとしても、すぐ戻ってくると思う」
「あ、翔もそう思う? 妖夢も中々よ。前に、天を斬ったことがあるの。どうしても必要でね。それで、斬った後の妖夢も、心ここにあらずって感じだったわよ」
……妖夢ちゃんが、天を?
必要だった、と言っているが、斬るしかないほどのことなのだろうか?
「どうして、天を斬ったんですか?」
「あ、そっか。ソラを知らないのか。私から説明するよ。幽々子よりも詳しいだろうし」
「それについては同意よ。ずっとそばにいる栞の方が、ねぇ~?」
「あ、あんまりからかわないでよ!」
おぉ、栞ちゃんがツンデレみたいだ。
天は何度もからかわれたらしいけど、やっぱり悪戯っ子なのかな?
それから、天とは違う、ソラの存在について説明してもらった。
霊力が白と黒で別であり、意識も別。
信頼を頑なに嫌っていて、攻撃的であること。
それ故に、単純な戦闘で力が強いのは――ソラの方であること。
まぁ、最近は大人しくなってきたというか、柔らかくなったらしいけど。
「で、虚無ノ絶撃をやって……って感じ。取り込まないと、仲間も傷付けるって考えてるんだけど、ソラは柔らかくなったし、曰く、『そんな余裕があればいい』らしいけどね」
「へぇ、意外と壮大だったね。天は外の世界ではすごく辛そうだったというかなんというか……」
「えぇ。痛々しかったわ……私も天も、泣いたのよ?」
幽々子さんが少しはにかみながら言う。
幽々子さんが泣くところが想像しにくい。
それに、天が泣くのも見たことがない。それほど思い詰めていたんだろう。
「そうそう。私も泣いたな~。天は、何だかんだで優しくて、暖かいんだよね」
優しげで、どこか遠くを見ているような栞ちゃんの声が聞こえる。
……驚いた。本当にツンデレなんじゃないかと思い始めている俺がいる。
どれだけ言おうとも、二人には切っても切れない、絆みたいなものがあるんだろうね。
追い詰められていたのはわかったけど……。
「そんなに追い詰められてたの? ちょっとの余裕もないくらいに?」
「うん。そうだよ」
「だって、翔が来る直前とか、自殺しようとしたのよ?」
「は……!?」
じ、自殺……? あの、天が?
そんなに、苦しかったのか?
「妖夢ちゃんがギリギリで助けたんだよ~。私も叫んだんだけど、無視されちゃった」
「……俺は、どう接した方が天にとって楽ですかね?」
俺の想定よりもずっと悩んでいたようだ。
そんな天には、自分はどういう風に接するのが最適なのか、わからなくなってきた。
俺は天の背負っている重みを知らない。
だから、軽くものを言うこともできないし、言っていいのかもわからない。
「決まってるでしょ。いつも通りがいいに決まってるじゃない」
「そうそう。外の世界とおんなじ感じが一番接しやすいでしょ。わかりきってることだと思うよ?」
「……そう、ですね。ありがと、幽々子さん、栞ちゃん」
二人にお礼を言って、少しばかりの深呼吸。
自分はいつも通りであるべきだ。いらないことは考えなくてもいい。
そう思いながらの深呼吸は、いらない思いが胸の中から出ていくような気がした。
「ほら、噂をすれば。イチャイチャカップルが帰宅よ」
あぁ、天と妖夢ちゃんね。
あと少しで宴なのだが……
「ねえ栞ちゃん。天はいつ告白するつもりなの?」
「宴の時にするんだってさ。私から言わせてもらえば、遅すぎるね」
えっと、妖夢ちゃんも宴で告白するつもりだったはずだ。
で、天も宴で告白するらしい。ということは……同時に告白するのか。
けど……
「幽々子さん、栞ちゃん。どっちが先に告白すると思います?」
「ん~……私は天に一票かな。意外に行動力あるし。私が天に先に告白してほしい、ってのもあるかな?」
「私は妖夢に一票ね。あの子、独占欲が強すぎるのよ。あの溺れ方は尋常じゃないわ。一種の病気とか中毒ね」
どっちからでもおかしくないんだよね~。
天を好きすぎて、いつも一緒にいたがるらしい妖夢ちゃんでも。
妖夢ちゃんを好きすぎて、気が狂いそうな天でも。
案外、二人同時なんてこともあるかもね。
ロマンチックでいいんじゃない?
宴では花火が上がるらしいから、十中八九その時が勝負だろうね。
花火をバックに二人が抱き合う。そしてそれを皆で見る。
さらには写真も撮って、一生の宝物のようにしたり。
文ちゃんにも来てもらって、新聞掲載用の写真も撮ってもらおう。
それがいい、うん。
「「ただいま~」」
「お帰りなさい、二人共。私、お腹すいたわ~」
「はいはい。今から作るから、もうちょっとだけ待っててくれ」
「じゃあ、作りに行きましょうか」
そう言って、二人揃って笑顔で台所へ向かっていった。
いやいや、ホント何でまだ付き合ってないの?
「……これ、付き合ったらどうなるのかな?」
「もう公共の場でも、構わずイチャつきそうだよね」
「本当、見ているこっちがどうにかなりそうよね」
全くだ。思い詰めているかと心配すれば、すぐこうだ。
でも、それだけ妖夢ちゃんの存在が大きいんだよな。
……あいつが、妖夢ちゃんを生かすために自分が犠牲になろうとしないか、心配だ。
やりかねない。やりそうで怖い。
ないと信じたい。犠牲になろうとすることを。
「宴、上手くいくといいですよね~」
「ホントよ。私も見に行くから、成功させてほしいわね」
「いざ告白となると、どっちも勇気がなくてできなかった、とかは絶対させない」
それが一番不安な点でもある。互いに告白しないこと。
まぁ無いとは思うが、それはやっちゃダメなやつだ。
妖夢ちゃんは、意外に有言実行するから、大丈夫だろうが。
天はどうだろうか。隠れてヘタレだったりとかじゃない限りは大丈夫なはず。
親友の告白くらいは、応援して、信じてやりたいものだ。
上手くいくと。幸せになれると。
―*―*―*―*―*―*―
数日が、一瞬にして駆けていった。
宴のことを気にすれば気にするほど、日々は駆け足に、疾走になっていく。
今日は、もう宴の前日だ。
この前に彼女と一緒に買い物に行った時、本格的に宴の準備が進んでいた。
着々と、確実に。その日を迎えるために。
一日、また一日と過ぎていくにつれて、俺の彼女への意識は強くなっていった。
変に意識してしまうのだ。ちらりらと見たりとか。
初めの頃の彼女みたいな感じになってしまっている。
どうしようもなくそわそわして、胸がざわつく。
行き場のない緊張が、体中を駆け巡って止まない。
頭の中がそれだけに支配されて、普段の思考すらままならない。
(ねぇ、今日は前日だけどさ、それで大丈夫なの、天?)
(し、栞……めっちゃ緊張する助けて。初めてなんだよ、告白も……恋も)
栞の呆れ半分、心配半分な声がかかる。
俺だってどうにかしたい。けれど、どうにかしようと頑張ることすらできないんだ。
失敗したらという不安で押しつぶされて、成功したらという幸福感に満たされて。
(緊張するのはわかるけど、不安になっちゃダメだよ? 不安になったら、弱気になるから失敗しやすい)
(わ、わかった。成功することを祈るよ)
すると、またしても栞は呆れた声で言う。
こっちは真剣に悩んでいるんだが。
(違う違う。甘いよ。成功を祈るんじゃなくて、成功を
(お、おぉぉ……!)
今ほど栞が頼もしいと思ったことはない。
幻獣戦よりも上なのは思うところがあるが、頼もしい。かっこいい。
(……ありがとな。明日、頑張ってみるよ)
(はいはい。頑張りな、少年!)
そして、俺の部屋の障子が開いた。
「おはよ~、天」
「翔。どうしたんだよ、急に」
翔が朝、部屋に入るのはあの写真の一件だけだ。
まだ数日なので、これからはどうかわからないが。
「言いたいことがあるんだよ。明日、告白するんでしょ? 妖夢ちゃんに」
「なっ……! 何で、それを……」
「栞ちゃんが快く教えてくれたよ」
おい。おいおいおい。
せっかくかっこよく見えたのに。
「はぁ~……で、何が言いたい。冷やかしか?」
「ひどいね。天は俺のことを悪魔かなんかと思ってない? 純粋に応援に来たんだよ」
応援? 翔が?
「その不思議そうな顔をやめい。……明日、頑張ってよ。親友として、応援してる。それじゃね」
それだけ言って、翔が部屋から出ていく。
な、なんなんだ……。
栞と翔が、俺の背中を押してくれる。
―*―*―*―*―*―*―
ついに明日は、告白の日。
今でも気持ちが高ぶって、留まることを知らない。
好きの気持ちと、その心が爆発してしまいそうだ。
彼の顔を思い浮かべるだけで心臓は早まる。
声を思い出すだけでも、暖かみを思い出すだけでも。
私は彼の全てにおいて、完全に惚れてしまっているんだ。
そう思って、つい頬が緩んでしまう。
「えへへぇ……」
「どうしたの、妖夢? 何だか好きな人を思い浮かべてるみたいねぇ」
「ひゃぁ! ゆ、幽々子様!?」
そこには、ニヤニヤと笑う幽々子様の姿。
今は朝食を作っている最中で、まだ早いのに。
「とうとう、明日ね。応援してるわよ?」
「は、はい……ですが、ちょっと緊張してしまうのです」
告白前日にこれとは、私もどうなんだろう。
当日は、どうなってしまうのだろうか。
「あら、じゃあ告白やめちゃうの?」
「い、いえ! やめません!」
首を勢い良く横に往復で振って、否定を全面的に。
「だったら何を思っても変わらないわ。それとも、それで変わってしまうほど、貴方の彼に対する愛は冷めてるの?」
「ち、違いますよ! ……私は本気です」
彼が来ることを考えて、最後が少し小さくなる。
今日は、ちょっと早めに起きて朝食を作っている。
それは、隣で彼と一緒に料理をしていると、制御ができなくなってしまいそうになるから。
心臓が破裂して、頭が支配されて、どうにかなってしまいそうだから。
「ならいいわ。不安とかはないようだから、その気持ちを持って告白しなさい。それが、貴女ができる最高の告白よ」
「……はい。ありがとうございます、幽々子様」
お礼を言った後、やはり幽々子様は眠かったようで、、欠伸をしながら部屋に戻っていった。
そして、入れ替わりに。
「おはよ、妖夢ちゃん」
「相模君。どうしましたか、急に」
「わ~お。殆ど同じ。さすが似た者同士だね」
何を言っているかわからないが。
相模君がこの時間に私と会うのも珍しいのだ。
「俺は応援に来たの。明日の告白のね。……頑張ってよ。妖夢ちゃんの好きは、きっと天に届くと信じてるよ」
「あ……ありがとうございます。頑張りますよ」
少し笑いながら、相模君へ言葉を返す。
そう言って、相模君はすぐに台所を出ていった。
な、なんなんだろう……。
幽々子様と相模君が、私の背中を押してくれる。
―*―*―*―*―*―*―
気付いたら、今日も終わりになっていた。
もう夕食を終えて、あとは寝るだけ。
記憶も残ってない。何も覚えていない。怖いな……。
今日は、今日くらいは、早めに寝ようか。
あしたの宴は、夕方に始まって、夜になって花火が上がることになっている。
花火が上がったあとも宴は続くが、勝負は花火の時だろう。
告白するなら、そこ。
(……おやすみ、栞)
(おやすみ、天。明日は、勇気を出すんだよ)
胸の中で、返事をする。「あぁ、ありがとう」と。
緊張で眠れないかとも思ったが、あまりに精神的に疲れていて、すぐに眠ってしまった。
そして、こう聞こえた気がしたんだ。
――ま、一応な。応援しといてやるよ。頑張れよ、俺。
静かな朝を迎えた。
周りは静かだが、俺の心はざわついてばかり。
胸にざわめきを秘めたまま、用意を済ませて台所へ。
「あ、おはようございます、天君」
待っていたのは、いつもと変わらない、彼女の柔和な笑顔だった。
ありがとうございました!
私からは、もう殆ど言うことはありません。
多くは語りません。語るなら、その後。
……次回、期待しててください。