東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

告知した通り、これが投稿されるのは18日で、その明日の19日も魂恋録の投稿です。

今回は、完全に下準備回です。
つまらないと思う方も多いとは思いますが、ご了承ください。

ソラの若干の掘り返しがあります。
ホントに若干ですが、今考えているストーリーでは、かなり重要人物です。
どうか忘れないでください。

では、本編どうぞ!


第49話 待っていたのは

 今日の分の修行が終わり、天と妖夢ちゃんは二人で買い物に出かけてった。

 今俺は、栞ちゃんと幽々子さんと一緒に会話をして楽しんでいるのだが。

 

「ねーねー、栞ちゃん。天って、妖夢ちゃんのことは好きなんでしょ?」

「もうそれはもうドロドロにね。妖夢ちゃんが本当に取られたら、どんな感じになるんだろうね?」

 

 狂ってしまいそうだけどね。

 あぁぁぁああ! って感じで。

 それか、もう精神が壊れちゃって、ただただ泣くだけとか。

 

 いずれにせよ、とても大変なことになるだろう。

 

「ま、取る人なんていないよ。ラブラブだし。取られるとしても、すぐ戻ってくると思う」

「あ、翔もそう思う? 妖夢も中々よ。前に、天を斬ったことがあるの。どうしても必要でね。それで、斬った後の妖夢も、心ここにあらずって感じだったわよ」

 

 ……妖夢ちゃんが、天を?

 必要だった、と言っているが、斬るしかないほどのことなのだろうか?

 

「どうして、天を斬ったんですか?」

「あ、そっか。ソラを知らないのか。私から説明するよ。幽々子よりも詳しいだろうし」

「それについては同意よ。ずっとそばにいる栞の方が、ねぇ~?」

「あ、あんまりからかわないでよ!」

 

 おぉ、栞ちゃんがツンデレみたいだ。

 天は何度もからかわれたらしいけど、やっぱり悪戯っ子なのかな?

 

 

 

 それから、天とは違う、ソラの存在について説明してもらった。

 

 霊力が白と黒で別であり、意識も別。

 信頼を頑なに嫌っていて、攻撃的であること。

 それ故に、単純な戦闘で力が強いのは――ソラの方であること。

 

 まぁ、最近は大人しくなってきたというか、柔らかくなったらしいけど。

 

「で、虚無ノ絶撃をやって……って感じ。取り込まないと、仲間も傷付けるって考えてるんだけど、ソラは柔らかくなったし、曰く、『そんな余裕があればいい』らしいけどね」

「へぇ、意外と壮大だったね。天は外の世界ではすごく辛そうだったというかなんというか……」

「えぇ。痛々しかったわ……私も天も、泣いたのよ?」

 

 幽々子さんが少しはにかみながら言う。

 幽々子さんが泣くところが想像しにくい。

 それに、天が泣くのも見たことがない。それほど思い詰めていたんだろう。

 

「そうそう。私も泣いたな~。天は、何だかんだで優しくて、暖かいんだよね」

 

 優しげで、どこか遠くを見ているような栞ちゃんの声が聞こえる。

 ……驚いた。本当にツンデレなんじゃないかと思い始めている俺がいる。

 どれだけ言おうとも、二人には切っても切れない、絆みたいなものがあるんだろうね。

 

 追い詰められていたのはわかったけど……。

 

「そんなに追い詰められてたの? ちょっとの余裕もないくらいに?」

「うん。そうだよ」

「だって、翔が来る直前とか、自殺しようとしたのよ?」

「は……!?」

 

 じ、自殺……? あの、天が?

 そんなに、苦しかったのか?

 

「妖夢ちゃんがギリギリで助けたんだよ~。私も叫んだんだけど、無視されちゃった」

「……俺は、どう接した方が天にとって楽ですかね?」

 

 俺の想定よりもずっと悩んでいたようだ。

 そんな天には、自分はどういう風に接するのが最適なのか、わからなくなってきた。

 

 俺は天の背負っている重みを知らない。

 だから、軽くものを言うこともできないし、言っていいのかもわからない。

 

「決まってるでしょ。いつも通りがいいに決まってるじゃない」

「そうそう。外の世界とおんなじ感じが一番接しやすいでしょ。わかりきってることだと思うよ?」

「……そう、ですね。ありがと、幽々子さん、栞ちゃん」

 

 二人にお礼を言って、少しばかりの深呼吸。

 自分はいつも通りであるべきだ。いらないことは考えなくてもいい。

 そう思いながらの深呼吸は、いらない思いが胸の中から出ていくような気がした。

 

「ほら、噂をすれば。イチャイチャカップルが帰宅よ」

 

 あぁ、天と妖夢ちゃんね。

 あと少しで宴なのだが……

 

「ねえ栞ちゃん。天はいつ告白するつもりなの?」

「宴の時にするんだってさ。私から言わせてもらえば、遅すぎるね」

 

 えっと、妖夢ちゃんも宴で告白するつもりだったはずだ。

 で、天も宴で告白するらしい。ということは……同時に告白するのか。

 けど……

 

「幽々子さん、栞ちゃん。どっちが先に告白すると思います?」

「ん~……私は天に一票かな。意外に行動力あるし。私が天に先に告白してほしい、ってのもあるかな?」

「私は妖夢に一票ね。あの子、独占欲が強すぎるのよ。あの溺れ方は尋常じゃないわ。一種の病気とか中毒ね」

 

 どっちからでもおかしくないんだよね~。

 天を好きすぎて、いつも一緒にいたがるらしい妖夢ちゃんでも。

 妖夢ちゃんを好きすぎて、気が狂いそうな天でも。

 

 案外、二人同時なんてこともあるかもね。

 ロマンチックでいいんじゃない?

 

 宴では花火が上がるらしいから、十中八九その時が勝負だろうね。

 花火をバックに二人が抱き合う。そしてそれを皆で見る。

 

 さらには写真も撮って、一生の宝物のようにしたり。

 文ちゃんにも来てもらって、新聞掲載用の写真も撮ってもらおう。

 それがいい、うん。

 

「「ただいま~」」

「お帰りなさい、二人共。私、お腹すいたわ~」

「はいはい。今から作るから、もうちょっとだけ待っててくれ」

「じゃあ、作りに行きましょうか」

 

 そう言って、二人揃って笑顔で台所へ向かっていった。

 いやいや、ホント何でまだ付き合ってないの?

 

「……これ、付き合ったらどうなるのかな?」

「もう公共の場でも、構わずイチャつきそうだよね」

「本当、見ているこっちがどうにかなりそうよね」

 

 全くだ。思い詰めているかと心配すれば、すぐこうだ。

 でも、それだけ妖夢ちゃんの存在が大きいんだよな。

 

 ……あいつが、妖夢ちゃんを生かすために自分が犠牲になろうとしないか、心配だ。

 やりかねない。やりそうで怖い。

 

 ないと信じたい。犠牲になろうとすることを。

 

「宴、上手くいくといいですよね~」

「ホントよ。私も見に行くから、成功させてほしいわね」

「いざ告白となると、どっちも勇気がなくてできなかった、とかは絶対させない」

 

 それが一番不安な点でもある。互いに告白しないこと。

 まぁ無いとは思うが、それはやっちゃダメなやつだ。

 

 妖夢ちゃんは、意外に有言実行するから、大丈夫だろうが。

 天はどうだろうか。隠れてヘタレだったりとかじゃない限りは大丈夫なはず。

 親友の告白くらいは、応援して、信じてやりたいものだ。

 

 上手くいくと。幸せになれると。

 

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 数日が、一瞬にして駆けていった。

 宴のことを気にすれば気にするほど、日々は駆け足に、疾走になっていく。

 今日は、もう宴の前日だ。

 

 この前に彼女と一緒に買い物に行った時、本格的に宴の準備が進んでいた。

 着々と、確実に。その日を迎えるために。

 

 一日、また一日と過ぎていくにつれて、俺の彼女への意識は強くなっていった。

 変に意識してしまうのだ。ちらりらと見たりとか。

 初めの頃の彼女みたいな感じになってしまっている。

 

 どうしようもなくそわそわして、胸がざわつく。

 行き場のない緊張が、体中を駆け巡って止まない。

 頭の中がそれだけに支配されて、普段の思考すらままならない。

 

(ねぇ、今日は前日だけどさ、それで大丈夫なの、天?)

(し、栞……めっちゃ緊張する助けて。初めてなんだよ、告白も……恋も)

 

 栞の呆れ半分、心配半分な声がかかる。

 俺だってどうにかしたい。けれど、どうにかしようと頑張ることすらできないんだ。

 失敗したらという不安で押しつぶされて、成功したらという幸福感に満たされて。

 

(緊張するのはわかるけど、不安になっちゃダメだよ? 不安になったら、弱気になるから失敗しやすい)

(わ、わかった。成功することを祈るよ)

 

 すると、またしても栞は呆れた声で言う。

 こっちは真剣に悩んでいるんだが。

 

(違う違う。甘いよ。成功を祈るんじゃなくて、成功を()()()()のさ。自分を好きになってくれることを願うんじゃなくて、自分を好きにさせるの)

(お、おぉぉ……!)

 

 今ほど栞が頼もしいと思ったことはない。

 幻獣戦よりも上なのは思うところがあるが、頼もしい。かっこいい。

 

(……ありがとな。明日、頑張ってみるよ)

(はいはい。頑張りな、少年!)

 

 そして、俺の部屋の障子が開いた。

 

「おはよ~、天」

「翔。どうしたんだよ、急に」

 

 翔が朝、部屋に入るのはあの写真の一件だけだ。

 まだ数日なので、これからはどうかわからないが。

 

「言いたいことがあるんだよ。明日、告白するんでしょ? 妖夢ちゃんに」

「なっ……! 何で、それを……」

「栞ちゃんが快く教えてくれたよ」

 

 おい。おいおいおい。

 せっかくかっこよく見えたのに。

 

「はぁ~……で、何が言いたい。冷やかしか?」

「ひどいね。天は俺のことを悪魔かなんかと思ってない? 純粋に応援に来たんだよ」

 

 応援? 翔が?

 

「その不思議そうな顔をやめい。……明日、頑張ってよ。親友として、応援してる。それじゃね」

 

 それだけ言って、翔が部屋から出ていく。

 な、なんなんだ……。

 

 栞と翔が、俺の背中を押してくれる。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 ついに明日は、告白の日。

 今でも気持ちが高ぶって、留まることを知らない。

 好きの気持ちと、その心が爆発してしまいそうだ。

 

 彼の顔を思い浮かべるだけで心臓は早まる。

 声を思い出すだけでも、暖かみを思い出すだけでも。

 私は彼の全てにおいて、完全に惚れてしまっているんだ。

 

 そう思って、つい頬が緩んでしまう。

 

「えへへぇ……」

「どうしたの、妖夢? 何だか好きな人を思い浮かべてるみたいねぇ」

「ひゃぁ! ゆ、幽々子様!?」

 

 そこには、ニヤニヤと笑う幽々子様の姿。

 今は朝食を作っている最中で、まだ早いのに。

 

「とうとう、明日ね。応援してるわよ?」

「は、はい……ですが、ちょっと緊張してしまうのです」

 

 告白前日にこれとは、私もどうなんだろう。

 当日は、どうなってしまうのだろうか。

 

「あら、じゃあ告白やめちゃうの?」

「い、いえ! やめません!」

 

 首を勢い良く横に往復で振って、否定を全面的に。

 

「だったら何を思っても変わらないわ。それとも、それで変わってしまうほど、貴方の彼に対する愛は冷めてるの?」

「ち、違いますよ! ……私は本気です」

 

 彼が来ることを考えて、最後が少し小さくなる。

 

 今日は、ちょっと早めに起きて朝食を作っている。

 それは、隣で彼と一緒に料理をしていると、制御ができなくなってしまいそうになるから。

 心臓が破裂して、頭が支配されて、どうにかなってしまいそうだから。

 

「ならいいわ。不安とかはないようだから、その気持ちを持って告白しなさい。それが、貴女ができる最高の告白よ」

「……はい。ありがとうございます、幽々子様」

 

 お礼を言った後、やはり幽々子様は眠かったようで、、欠伸をしながら部屋に戻っていった。

 そして、入れ替わりに。

 

「おはよ、妖夢ちゃん」

「相模君。どうしましたか、急に」

「わ~お。殆ど同じ。さすが似た者同士だね」

 

 何を言っているかわからないが。

 相模君がこの時間に私と会うのも珍しいのだ。

 

「俺は応援に来たの。明日の告白のね。……頑張ってよ。妖夢ちゃんの好きは、きっと天に届くと信じてるよ」

「あ……ありがとうございます。頑張りますよ」

 

 少し笑いながら、相模君へ言葉を返す。

 そう言って、相模君はすぐに台所を出ていった。

 

 な、なんなんだろう……。

 

 幽々子様と相模君が、私の背中を押してくれる。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 気付いたら、今日も終わりになっていた。

 もう夕食を終えて、あとは寝るだけ。

 記憶も残ってない。何も覚えていない。怖いな……。

 

 今日は、今日くらいは、早めに寝ようか。

 あしたの宴は、夕方に始まって、夜になって花火が上がることになっている。

 花火が上がったあとも宴は続くが、勝負は花火の時だろう。

 告白するなら、そこ。

 

(……おやすみ、栞)

(おやすみ、天。明日は、勇気を出すんだよ)

 

 胸の中で、返事をする。「あぁ、ありがとう」と。

 

 緊張で眠れないかとも思ったが、あまりに精神的に疲れていて、すぐに眠ってしまった。

 

 そして、こう聞こえた気がしたんだ。

 

 ――ま、一応な。応援しといてやるよ。頑張れよ、俺。

 

 

 

 静かな朝を迎えた。

 周りは静かだが、俺の心はざわついてばかり。

 

 胸にざわめきを秘めたまま、用意を済ませて台所へ。

 

「あ、おはようございます、天君」

 

 待っていたのは、いつもと変わらない、彼女の柔和な笑顔だった。




ありがとうございました!

私からは、もう殆ど言うことはありません。
多くは語りません。語るなら、その後。





……次回、期待しててください。

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