タイトルがあれですが、それは最後の方です。
それまでは、日常系です。
あと数話だけ、日常系を出します。
その後すぐに、幻獣戦に入ろうかと思います。
ではでは!
翔の話が終わって、俺は外に出て、引き続き修行をしていたら。
(ねぇ、天。まだ気付かない?)
(あ? 何がだよ?)
栞の声にそう反応すると、彼女の溜め息が聞こえる。
その後、若干呆れ気味に言われる。
(……顔動かさないで。目線だけね。……今の天から三時の方向)
(はいはいっと……え?)
三時の方向とか、どこの軍隊だ、とか思ってその方向に目線だけ動かした。
その視線の先に、妖夢がいた。こっち見てる。
檮杌戦の前夜、見てるっぽい発言を聞いたが……
(妖夢だな。で、俺にどうしろと?)
(ちょっとさ、今日は部屋に帰ってすぐ寝るのやめない? 布団に入ってくるの、気になるでしょ?)
あ~……なるほど。
今まで何回か入って来たことがあったが、不定期に来てたので、対処のしようがなかった。
朝起きて、気付いたらいる。そんな感じなのだ。
(今日はちょっと早めに、今切り上げようよ)
(ん~……ま、いいけどさぁ)
栞の提案に従って、修行を切り上げる。
玄関、廊下を通って俺の部屋に向かうが、その間についてきてる気配なし。
俺の部屋に着いて障子を開き、中に入って布団へ。
目を閉じて狸寝入りをして数分したくらいだろうか。
廊下に足音が響き、障子が開く音がした。
それも、俺の部屋の。
(……来たね)
(マジかよ……妖夢から来てたのはわかってたが……)
なんか、複雑な心境になる。
むしろ、俺からしてみれば、好きな女の子に夜這いされるのも……と思ってしまうのが怖いところ。
恋って、怖いよな……。
しばらくして、布団が動かされ、中に妖夢が入ってきた。
ドキドキが止まらない。
さらに、妖夢が俺に手を回してきた。心臓が跳ね続けている。
「……やっぱり、天君は暖かいなぁ……」
な、何だろう、このくすぐったい感じは。
恥ずかしい……
(栞、俺はどうすれば――)
(抱・け・ば?)
この三文字だけで、栞が調子に乗っていることがわかる。
一つ一つが強調されているのが、これまた。
さて、栞はああ言っているが。
……欲望には、勝てないよなぁ……
彼女がしたように、俺も腕を回し、さらに自分の方に引き寄せる。
やっぱり軽い。
「……ぇ?」
ま、それは当然気付かれるわけで。
「で、何しに来たんだ、妖夢?」
「あ、えっと、その……起きてたんですね?」
目を開けると、妖夢が苦笑いのような表情をしていた。
笑って誤魔化しているつもりなのだろうか。
「あぁ、起きてた。で、何しに来た?」
「いや……ダメ、でしたか?」
俺は、妖夢のするその目に弱い。
うるうると自信なさげな上目遣い。まるで小動物のような、その眼。
「だ、ダメじゃ、ない……」
「妖夢ちゃん気を付けてね~。いきなり抱きしめる発情野郎の天は何するかわからないからね~」
「……おい。栞が抱きしめろって言ったんだろ」
栞はすぐこうだ。何かあったら俺を嵌めようとする。
抱けば、とか言ったのはどこのどなたでしょうかね?
「いやいや、私は抱けば? って言っただけ。判断は天だし、引き寄せる必要もなかったよね? つまり天は妖夢ちゃんを――」
「あー! わかった、わかったから! 俺が悪かった!」
「ほら! 妖夢ちゃん聞いた!? やっぱり天は変態なんだよ!」
どう転んでもダメじゃねぇかよ。
後で何をしてやろうか。
「で、でも……
「あ? い、今――」
「な、なんでもないです! いいならそのまま寝ますよ! おやすみなさい!」
そう言って、布団にうずくまって俺に表情を隠している。
いや、いいならそのままって、ここで寝るのかよ。
俺眠れないんだけど。
(……栞、どうすればいいと思う?)
(抱・け・ば?)
(もういい。おやすみ~。明日は覚悟しておくんだな)
(え、ちょ、ま――)
栞との会話を無理矢理に終わらせながら、寝る準備をする。
妖夢が俺の入る分を残しているあたり、妖夢らしい。
でも、このまま終わるのも、なんかあれな気がしたんだよ。
特段すごいことをやろうってわけじゃないが……
妖夢のくるまった布団の中に手を入れ、頭を撫でる。
「……おやすみ、妖夢」
「……おやすみ、なさい」
妖夢が一層くるまった姿勢になる。可愛い。
彼女の一つ一つの行動や表情に、心を惹かれてしまう。
満面の笑みなんて見た日には、その場で抱き締めたくもなってくる。
優しげな笑みを見た日には、ついつい甘えてしまいたくもなってくる。
恥じらいの表情を見たら、その愛らしさに理性さえも危うくなってくる。
何事にも一生懸命になれる姿を見ると、俺自身も頑張れる。
袖を引っ張られると、身長の差の上目遣いと合わさって、ドキッとする。
彼女がこっちに走ってくる、トテトテとした走り方にも、可愛らしさが溢れる。
今日の翔の話でも、首をかしげる動作には心を持ってかれそうになったなぁ……。
案の定眠れない俺は、そんなことをしばらく考えていた。
隣で静かに寝息が聞こえ、自分の体を起こし、布団をついめくってしまう。
安らぎのある寝顔を今見ているのは、自分だけだと考えると、それだけで満たされる。
彼女の素顔を見ているようで、新しい一面を知った気分にもなれる。
頬を優しく突くと、甘い声が出て、興奮してしまう時もある。仕方がない。
「あぁ、やっぱ可愛いな……」
(とっても可愛いのはわかるけどさ、犯罪には踏み込まないでね?)
(しねぇよ。……もし、もし俺が危なくなったら、止めてくれ)
(その発言も十分危ない気がするけどね。ま、本気でヤろうとしたら止めるよ)
ヤろうとか言うな。仮にも女の子だぞ、仮にも。
陶器のように白い肌は、柔らかく、艶がある。
突くのをやめて、頬を撫でる。
すると、妖夢の顔がふんわりと、柔らかい笑顔になった。
「ぁ……っ……!」
(ほんっと可愛いよね、妖夢ちゃん。……天? お~い、帰ってこ~い)
(あ、あぁ、ありがとう。あのままだとちょっとヤバかったかもしれない)
あの顔は反則だろ。理性が吹き飛ぶ寸前だった。
(妖夢ちゃんに惚れるのも無理ないよ。こんなに可愛らしいんだもん)
(ホントだよ。ちょっとしたことで我慢が効かなくなる)
(え、その発言はちょっと……うわっ)
おい。でも、ちょっと、ちょっとだけ、危なかった。
強めに抱き締めたくなる気持ちに駆られたけど、妖夢を起こさないようにと耐えた俺の精神を褒めてよ。
……弱めなら、いいよな?
寝る姿勢に戻り、妖夢を抱き締めて布団を二人で被る。
満たされた気分が全身に染み渡っていく。この幸福感も、恋の怖いところだ。
満たされたら、もっともっとと欲望が増してくる。
どれだけ満たされようとも、限界が訪れることがない。どれだけでも欲しがってしまう。
そう、まるで――
(病気だねぇ。恋の病。だって妖夢ちゃん大好きだもんね?)
(否定はしない。けどさぁ、病気じゃない恋ってのも、つまらないと思うんだよ)
この好きな人に溺れていく感覚。それはまるで、病気のよう。
けれど、それくらい夢中になれないと、つまらないと思う。すぐに冷めてしまうと思う。
次々に求めあえるからこそ、恋人が続けられる、相手を大好きでい続けられるんじゃないだろうか。
(で、そんな病気の天。……いつ、告白するの? そろそろ頃合いだと思うよ?)
(……宴の時にしようと思う。一週間後の。花火も上がるらしいからな)
早く告白しないと、最悪幻獣に殺されて、想いが伝えられないまま死んでいくことになるんだ。
それだけは避けたい。死ぬとしても想いくらいは、伝えてから死にたい。
(ま、いいんじゃない? 一週間でちゃんと心の準備をしとくんだよ? おやすみ)
(おやすみ、栞)
そう言って、妖夢を引き寄せて、目を閉じる。
妖夢がすぐ近くにいることでドキドキしながらも、安心できた。
なので、俺の意識が途切れるのも、そう遅くはなかった。
―*―*―*―*―*―*―
「ふわぁ~……」
欠伸をして、少し早めに起床。いつもと違う天井を見つめる。
それが、自分が白玉楼にいることを一層意識させる。
さて、洗面所に行こうとして、部屋の障子を通って廊下に出た時。
「あれ……どうやって行くんだっけ?」
昨夜、歯を磨きに皆と一緒に行ったのだが、屋敷が広すぎる。
昨日の今日で覚えきれない。天は覚えたらしいけど、俺にそんなことはできない。
部屋の近い妖夢ちゃん、天の部屋は覚えているので、道を聞くために二人の部屋に。
自分の部屋に近いのは妖夢ちゃんの部屋なので、先に彼女の部屋へ。
寝ていることも考えて、静かに障子を開けて、中の様子を確認する。が……
「……いない?」
そう、いなかった。
料理は天と妖夢ちゃんで作っているらしいので、もう台所に行った可能性もある。
しかし、台所までの道もわかるはずもない。天がまだ部屋にいることを祈るしかない。
天の部屋に着いて、同様に開けて様子を確認。
「……え?」
そこには、事後の天と妖夢ちゃんがいた。
いや、服も着てるし、どこか乱れたところもない。けれど。
「なんで、一緒の布団で寝てるの?」
それも、二人で抱き合ってるという、とんでもない現場。
二人は付き合ってないんだよね? 告白がどうとかって言ってたからね。
仮に成功が前提だとしても、まだその段階は踏んでいないはず。
「……あっ」
そうやって口からこぼれ落ちた感嘆詞。
瞬間、自分の口元が意地の悪い笑顔に塗り替わるのが感じられた。自分でもわかる。
「……紫さ~ん。いる?」
「はいは~い。いつもは寝てるけど、面白そうだから早起きしちゃった」
小さい声で、紫さんを呼ぶ。二人を起こさないように。
そして、その声を保ったまま、紫さんに頼む。口元を歪めたまま。
「あの……文ちゃんが持ってるような、カメラってわかる? それ、外の世界の俺の机にあるはずだから、取ってきてくれない?」
「あっ……なるほど、貴方も中々侮れないわね。じゃ、行ってくるわ」
紫さんも俺同様口元を歪め、スキマに消えていく。
文ちゃんとは、幻想郷に来て間もなく取材という名目で会った。
適当に答えて終わった気もするけれど、まぁ気の所為だろう。
俺が壁に寄りかかって、待つこと数分。
「はい、これであってる?」
「お、そうそう。ありがとね、紫さん」
デジタルカメラを無音撮影・フラッシュオフの設定にして、レンズを二人に向ける。
静寂の中、何枚もの写真がカメラに焼き付いていく。
記憶じゃないので、忘れることはない。一応、脳内にも焼き付けるが。
「こんな感じでどうかな?」
「中々いいと思うわ。二人の笑顔がしっかり写りながら、抱き合って寝てるのがわかるから、ベストだと思うわよ?」
二人の口元は、歪みを戻す気配すらない。むしろ、逆。
どんどんと口角が釣り上がる。上がるどころじゃなく、
「さぁてと……どれだけ遊び倒そうかな?」
なんて下衆な性格なんだろうか。
でも、それが楽しいよね。
―*―*―*―*―*―*―
「……おい。――と、オーク・餓鬼はいつ解ける?」
「えっとね……――もあと少し。二つに至っては、弱いからもう沢山解けてるよ」
よし、第二波はもうそろそろ……あと一ヶ月もしないくらいだろうか。
早かったら、一週間強から二週間くらいだろう。
「じゃあ、――が解けた時、二つはどのくらい用意できる?」
「アタシでできる分は~っと……ざっと――
――
「……くはっ」
自然と、乾いた嗤いが。
二百。この数は、でかいぞ。数の持つ意味だけじゃなく。
「……よし、叢雲。その調子で、丁度――が解けてすぐ、
「了解。できるだけ数は増やしてみるよ」
「時雨。時雨は瘴気は――の方に重点的にかけてくれ。二つにはそんなにかけなくていいから、その分――に回すんだ」
「オッケ~。ま、二つの方も限界ギリギリまでやってみるけど、意味はなさそうだけどね」
今度は、檮杌のようにはいかないぞ、天。そして、幻想郷の奴らよ。
今回は、二つの場所を攻める。
もう場所も決まっている。そして、時間もズラすことも。
俺の勝ちは、約束された勝利なんだ。勝ちが決まったも同然だ。
今は、俺は何もしていない。
けれど、俺が直接戦ったら、絶対に負けない。負ける要素が何一つないのだ。
だって俺は。俺の能力は――
――『
俺の能力に、勝てる奴なんていないんだよ。
いざとなれば、俺が出ればいい。ただ、それは本当に最終手段。
俺は極力干渉しない。闇に潜んで、獲物を狩る機会をうかがう。
足掻け。そして、絶望しろ。
――どうやっても、勝てない相手と戦うことに。
ありがとうございました!
不知火の能力が明らかに!
負ける要素がないらしいですが、天達はどう立ち回るのでしょうか。
スクフェスのAC譜面は、親指勢への死ねという通告なんですかね?
人差し指を練習中ですが、全くできません。
ではでは!