今回は、前回の最後で若干ヒントのあった者について、大々的に。
妖夢ちゃんって、超可愛い(唐突)。
では、本編どうぞ!
第44話 邂逅
幽々子に昼食を作るため、妖夢と一緒に台所へ。そういえば、昼食前だったか。すっかり忘れていた。
二人分の歩行の足音が聞こえる廊下で、栞が俺にも妖夢にも聞こえる声で言う。
「妖夢ちゃん、本当にありがとうね。天が迷ってるのを助けてくれて。ほら、天も妖夢ちゃんにしっかり言う!」
「あ、あぁ……妖夢。本当にありがとう。妖夢が来てくれなかったら、今生きることもできなかった」
俺が申し訳なさそうに、頭を下げて言う。
すると妖夢は、少々戸惑いながらも、この言葉を返してくれる。
「あ、えっと……いいんですよ。私達が天君を好きですから。幽々子様や私だけじゃなく、人里の皆も言ってます。あんな二つ名で呼ぶくらいですからね」
あ、そういえば、まだ知らないんだった。や、やばい、今になると相当気になるんだが。
恥ずかしいやつだったらどうしよう。中二病的な。
「な、なぁ妖夢。俺ってどんな二つ名で呼ばれてるんだ?」
「あ、知らないんですか。ふふっ、自分で確かめた方がいいですよ。今日は一緒に買い物に行きましょう?」
言葉を弾ませながら、少し台所へ行くスピードが早くなった。
……俺と一緒に、行きたいのだろうか。俺も行きたいのだが。
(ねえねえ。まだ謝る必要のある人がいるんじゃない? ねえn――)
(ああぁ、そうだったな栞ありがとううん)
(私の扱いひどいね!? ……戻ったし、気付けたしでよかったよ)
栞の、優しげな柔らかい声が頭に響く。
……あ~、こういうの苦手なんだよ! 特に栞には何を言われるか!
(……本当にありがとう。あの時に俺を突き放してくれなかったら、今気付けたかどうかもわからなかった)
(いいのだよ、そこまで感謝しなくても~。どうしてもというなら貢物をだね~)
やっぱり俺の気がどうにかなっていただけのようだった。
さて、昼食も食べ終わり、修行を少しした後、妖夢と一緒に人里へ。
少しドキドキする。栞には
何が貢物だよ。神様かっての。神様はいるかどうかもわからないのにな。
ようやく人里に着いた。瞬間。
人里の皆がわっと声をあげ、騒ぎ始めた。……何事?
「皆、天君と会うのを楽しみにしてたんですよ。行ってきてください」
ぽん、と背中を押されて、前に。
そのすぐ後、沢山の人に囲まれた。
「ありがとうございました! 幻獣との戦いでご活躍されたとのことで!」
「かなりのお怪我を負われたらしいですが、大丈夫だったでしょうか!?」
おお、なんというか、くすぐったい気分だ。
自然と笑みが溢れてしまう。皆に、ありがとう、とか、大丈夫、とか言っていると。
「皆~! 『
一人の青年が、里の皆に声をかける。
え、何その二つ名、かっこいい。
てか、英雄って早くない? まだ幻獣来るんだけど。
それよか、何で努力がバレてるの? ……ただの人間だったか、俺。そういえば。
「皆、ありがとう。でも、敬語は要らないんだ。あの時の宴みたいに、気軽にしてくれ!」
皆の笑顔が嬉しい。俺は、この光景を見られてよかった。
幻獣を倒せてよかった。救われた命と笑顔が、ここにあるから。
「で、皆はそんなに騒いでどうしたんだ?」
「天さんのための、宴を人里で開こうとしているんですが、天さんはご参加いただけますか?」
え、いいのかよ?
俺一人のためってのも、何だかおかしい気がするが。
「俺だけじゃなく、皆のための宴なら、参加しようかな?」
「わかりました! ありがとうございます! 夜には、花火もありますよ。日程なのですが、一週間後でもよろしいですか?」
一週間後か……
いつでも暇な俺には日程など関係ないのだが、修行がある。
「ようむ~、一週間後に宴だってさ。日程は――」
「行きましょう! ぜひ! 一週間後なら大丈夫です!」
「うわぉい!」
いきなり大声で迫られて、びっくりした。
な、何なんだろうか……。
「と、取り敢えず大丈夫らしいから、俺も参加させてもらうよ」
そう言って、皆がわっと湧き上がる。
そんなに喜んでもらえると、こちらとしても、照れる。
そして、一人の人の言葉が、またも俺を驚かせる。
「この宴は、
「なっ……! 外来人!?」
俺と同じ境遇で、紫に呼ばれたか、偶然ここに来たか。
それはわからないが、そいつには共通意識を持つ。
「今、そいつは?」
「えっと……妖怪の山の、守矢神社に預かられてますね」
妖怪の山の、守矢神社。
妖怪の山は以前聞いたことがある。が、神社には、博麗神社の方しか知らない。
同じ幻想郷に二つも神社があって大丈夫なのだろうか?
そいつのことを知りたいところだが……
「妖夢、今日は守矢神社に行けないか?」
「う~ん……買い物を済ませたら行きましょう。天君も、その人が気になるでしょうし」
おぉ、やっぱり優しい妖夢。
俺の境遇を考えてくれている。ありがたい。
皆に別れを告げて、買い物を手短に済ませた後、一旦白玉楼に帰って妖怪の山に。
妖怪の山にあるらしい守矢神社の場所はわからないので、妖夢に先導してもらっている。
ここまでしてくれるとは、本当に嬉しい。
飛行から、とある山の何かの建物の近くに着地。
ここが妖怪の山で、守矢神社の近くだろう。というか、幻想郷に山自体も少ないのだが。
むしろこれしかないレベルまである。
そして、俺達の近くには、箒で境内を掃除する巫女さん。
「……巫女さんがいるな」
「えぇ、正確には、
妖夢が声を少し大きくして呼ぶと、その風祝の少女が掃除を一旦止めて、こちらを振り返る。
特徴的で印象に残るのは、緑のロングヘアーと、頭についている白蛇と蛙のアクセサリー。
……白蛇に蛙?
青の縁取りの白い巫女服に身を包ませ、同じく青いスカート。大きい緑の瞳。
……同じような巫女の霊夢よりは、大きいだろうか。何がとは言わない。
「こんにちは、どうしましたか?」
「新しく来た外来人に会いたいのです」
「わかりました……あ、貴方が天さんですか。はじめまして。私は、
おぉ、なんと礼儀正しい清楚な感じがする。
建物を見る限り、霊夢の博麗神社よりも裕福なイメージを受ける。
し、仕方ないよ。参拝しにくいらしいから……
「はじめまして。えっと……早苗は、防衛グループで名前を呼ばれていたよな?」
「ええ。天さんも、幻獣戦闘グループに呼ばれて、大きく活躍したそうで」
「あ~、まぁ大きく活躍したかどうかはわからないが、結構頑張った方かと思うぞ?」
「またまたご謙遜を。……では、その外来人のところに連れていきますので、ついてきて下さい」
そう言って、早苗が神社の中に入っていく。妖夢と俺は彼女についていく。
……あれ、ちょっと妖夢がしおれてる。ホントにちょっとだけど。何故かはわかりません。
しおれてる妖夢も可愛い。可愛すぎる。しゅんとした儚げな感じもまたいい。
「つきました。この部屋にいますよ」
早苗がある部屋の前で止まって言う。
……誰なんだろうか。同じ外来人である以上、これから関わっていくことになるんだ。
障子を開ける。すると中にいたのは、黒髪の少年。
彼もこちらを振り返る。
中性的な顔立ちに黒髪で、輝きを持つ蒼い目。
この、容姿は……!
「か、翔!?」
「あ、天だ。やっほー☆ で、ここどこなの? 天もずっといなかったし」
そう、
もう会うことはないと思って諦めていた、大切な友人。
「「し、知り合いなんですか!?」」
早苗と妖夢が驚きを見せ、二人の声が重なる。
それはそうだろう。そもそも幻想郷に来ることが珍しいんだ。知り合い二人が幻想入りというのも、確率は低い。
「あぁ、俺の外の世界での親友だ!」
「お、嬉しいなぁ。ど〜も、同じく天が親友の相模 翔だよ、よろしゅう♪」
この楽観的な話し方も健在。同じように親友と言ってくれることに、笑顔が隠せない。嬉しい、嬉し過ぎる。
「早苗さんとは知り合いなのか?」
「知り合いもなにも、ここに置いてくれてる人。ここの幻想郷についても、色々教わった」
やはり早苗は、面倒見がいいというかなんというか。置いてくれるとは。
こう言っちゃ悪いが、霊夢に丸投げしてもいいのだし。
「で、俺的には、そこの隣でふよふよ浮かせている君に関して知りたいな」
そう言って、翔が妖夢を指差す。
確かに、半霊は気になるよなぁ。俺も最初は我慢しきれずに聞いた。今ではそんなに気にならなくなったが。
慣れって怖い。……妖夢がさっきよりしおれてる。
妖夢が一通りの説明を終えた。ついでなので俺の修行についても話した。幻獣についても。
「へぇ、色々驚いた。天が刀を使うことも。でもねぇ、一番驚いたのは……」
そう言って、いつもの笑顔を悪戯に歪めた。もう大体予想がつく。この顔は、どんな時にするか。
「……いや、やめとこう。後で直接聞くよ」
ほう、何故かは気になるが、聞かれないに越したことはない。
あの手の顔の人が、からかわないわけがない。
楽観的な彼の性格なので、こういった面白いことが、彼は何より好きなのだ。
「は~い、皆、こんにちは~」
そうどこからか聞こえ、すぐにスキマができた。あぁ、紫ね。
「おぉ、久しぶり。で、どうした?」
「翔君について、幽々子に話してきたわ。白玉楼に住まわせるって。置くにも限界があるし、だって」
……は?
翔が、白玉楼に? いや、嬉しいのは嬉しいんだが……
「翔……空、飛べるか?」
「飛べたらいいね」
ですよねー。そりゃ飛べないわな。
じゃ、引き連れていきますかね……。
翔を文字通り引き連れて、空を飛んで白玉楼へ。
もう夕方を通り越して夜になりそうだ。
途中、冥界や白玉楼、俺や妖夢、幽々子の説明もしながら。
「おぉ、大きいね、このお屋敷」
「ああ。じゃ、幽々子の部屋に行くか」
白玉楼について、幽々子の部屋に。
彼女の部屋の障子を開けて。
「どうもこんにちは、相模 翔、天の親友です、よろしく」
「あら、君が翔なのね。今日からここに住んでちょうだいね。よろしく」
「ありがとうございます。本当に俺はここで住んでも問題無いんですか?」
「えぇ、大丈夫よ。むしろ歓迎するわ。なんたって、天の親友だしね。前の世界の彼の恥ずかしいこととか……」
と、トントン拍子で話が進んでいき。
……おい幽々子。人の弱みを握ろうとするんじゃない。
何ごく自然に黒歴史を探ろうとしているんだ。
「あ、私もそれ聞きたいな~」
おい栞。ノるんじゃない。
ちなみに、栞のことについて翔に話した時、犯罪者認定されかけた。
全く、変な話だ。幼女の魂が俺の中で住んでるだけだろう?
……ホント、変な話でしたね。俺が犯罪者認定されてもおかしくないレベル。
いや、俺が悪いのか……? 違うよな?
「あ、じゃあ後でいくらでも喋ろっと。天のいいところも含めて」
その顔をやめろ、翔。
何でその悪戯顔でこっちを見るんだ。
「あ、私も聞きたいです!」
妖夢、そんなに目を輝かせないでもいいんだよ?
世の中には知らなくてもいいことがだね……
「はいはい。先に夜ご飯作ってくるから、待っててくれ」
皆の返事を待たずに、台所へ。
妖夢が追おうとするのを手で制止して。
―*―*―*―*―*―*―
天君の親友らしい、相模君が白玉楼にやってきた。
外来人同士で知り合いとは、少し珍しい。
話を聞く限りでは、天君と同じように、呼び出されたわけではないらしい。
それにしても、彼の楽観的な性格には、ある意味“すごみ”がある。
徹底的に飄々とした態度を見せて、崩さない。
「で、妖夢ちゃん……だっけ? 単刀直入に聞くよ。君は、天が好き?」
「え……えぇぇええ!?」
天君が台所へ行ったかと思えば、すぐにこれだ。
それよりも、何でバレたの……?
「そのペアネックレスだよ。天はアクセサリー類を付けたことを見たことなかったから、すぐにわかったんだよ」
な、なるほど……
にしても、天君と同じくらい、観察眼が鋭い。
天君と会わないでもう一年以上経つのに、そこに気づく相模君。
こういうことに限るかもしれないけど。
「で、どうなの? 天のこと、好き? 嫌い?」
このどこか含みのある笑顔。
飄々とした態度とセットになる笑顔だ。
「……大好き、です……」
「……幽々子さん、妖夢ちゃんって大胆で正直でめっちゃ可愛いですね」
「えぇ、そうよ? あと、幽々子でいいわよ?」
こうやってさらりと恥ずかしいことを言う。
言われるこっちとしては、信じられないのであまり恥ずかしくはない。
けれど、彼に言われるなら別。誠実さもあるしね。
「いや、さん付けがなんかしっくりくるので。にしても、惚れまくってますねぇ」
「そうなのよ。初恋で溺れまくっちゃってね~……」
「ゆ、幽々子様!」
この飄々とした態度は、どこか幽々子様と似ているのかもしれない。
ありがとうございました!
ここでまさかの相模くん。
予想できた人は、どれくらいいたのでしょうか。
まぁ、最後に登場したの、第2話ですから……
40話分空いたわけで。
ではでは!