今回で長かった第4章も最後!
ちなみに、今回は、5話以内に出すと言った、あのキャラのヒントが最後に!
もうわかっている方もいるのではないでしょうか?
いつの間にか毎日投稿復活! これからも頑張ってまいります!
それに、お気に入り数が50を超えました! 皆さん、ありがとうございます!
少なくとも、この作品を50人の方々が見てくれていると考えると、緊張しますね。
この緊張があることに、感謝感謝。
では、本編どうぞ!
「天君に、嫌われ、ちゃいましたぁ……!」
聞こえたのは、妖夢の落胆した、湿っている声。
見えたのは、妖夢の泣きじゃくり、涙が止まらない姿。
迂闊だった。私にだって、何かできたかもしれないのに。
甘く見ていた。天がどれだけ悩んでいるのかを。
甘く見ていた。妖夢が彼のことをどれだけ大切に思っているのかを。
……甘く見ていた。この二人の間にできる渓谷の深さを。
「……そう。それで、彼は止めたの?」
「止めようと、して、腕を掴みました。けどぉ……振り払われちゃって……!」
声の震えは、次第に大きくなっていく。
涙の落ちる間隔は、次第に短くなっていく。
私も、そんな妖夢を見て、泣きたくなってきそうになる。
……けれど、妖夢の方が悲しいのだ。私は泣くべきではない。
私は、彼の為にも、彼女の為にも、何もしてやれなかった。
今、自分のするべきことは。
「貴女、一度くらいで諦められちゃうの?」
「諦めたくなんてないです! けど、彼はもう、外の世界に帰る、って……」
なるほど。一生会えないのか、帰ったら。
けれど、それは帰ることができたらの話。
「よく考えてみなさいよ。紫が呼び出したのよ? 帰らせるか決めるのは紫よ。天が勝手に帰るのは無理」
境界を操る妖怪の紫でない限り、外の世界と幻想郷の行き来は、自由自在には不可能。
たまに外来人がこちらに流れ込むだけ。
自分の意識のままにそれができるのは、今のところ紫のみ。
天が勝手に帰るのは、事実上不可能なのだ。
紫が帰らせることを許可するならば話が別だが、その可能性も極めて低い。
彼女は、結構さっぱりとした性格だ。
もし今、このタイミングで外の世界に帰らせるくらいなら、とっくに紫の方から幻想郷を追い出していることだろう。
これで外の世界に帰ることについては解決。
「でもねぇ……彼、一人だしねぇ……もし、幻獣が来たら……
あえて『死ぬ』ということを強調する。
瞬間、震えていた妖夢の肩が、ビクンと大きく震える。
「死んだら、もう絶対会えないわね。外の世界にだったら戻ってくる可能性は、低いけどある。けど……さすがに死んじゃぁね……」
もう一度、大きく肩を震わせる。
妖夢は気付かない。ここが冥界だということに。
彼女は、本当にどこか抜けている。彼と同じだ。
「……結局、最後まで一人で死んじゃうことになるのね」
そう言った瞬間、妖夢が見たこともないような速度で飛び始め、冥界を降りた。
私に「いってきます」も言わずに。
そして、一人呟く。
「……バカね。お互い、嫌えるはずなんてないのにね」
彼と彼女が帰ってくることを信じ、玄関へ。
廊下を歩いて自室に入り、あたかも日常が流れていることを、自分に認知させる。
「はぁ~……お腹空いたわね。早く二人のコックは来ないのかしら」
―*―*―*―*―*―*―
幽々子様の言葉を聞いていて、いきなり飛び出してしまった。
挨拶もしないで、彼のもとに。
自分も今までにないくらいのスピードを感じて飛んでいることに気が付く。
自分がどれだけ彼を想っているかが、明確な尺度となっている。
どこにいるかはわからない。
けれど、だからといって探さないのは嫌だ。
それで、彼が死ぬのは、何よりも嫌だ。
飛んでしばらくして。
……いた。間違いない、天君だ。
かなり遠いけれど、絶対に天君だ。私にはわかる。
のだが。
――落下し続けている。
あ、あれ、なに、して……
彼が落下する理由は、大きくわけて三つほど考えられる。
一つ。栞ちゃんの含む霊力までもが切れて、飛ぼうにも飛べない。
一つ。続いた厳しい修行の疲労で、飛んでいる途中で意識が途切れた。
……一つ。自ら、死を――
「天君!!」
私は、飛び出した。
色々考えるよりも、彼を助けることが先だ。
どれにしても、彼が自力で落下を止めることはない。
そして、全力で飛び始めて、気付く。
――あ、まにあわ――
――いやだ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
絶対に、間に合わせる!
瞬間。
白玉楼を出たスピードを、さらに凌ぐ程のスピードが。
風を切り裂き、光景のスクロールは早く、目まぐるしく。
けれど、それでも。間に合うかどうかはわからない。
お願い! 間に合って――!
―*―*―*―*―*―*―
もう地面に半秒程で着き、大きな肉塊と血海をつくろうとしたところで。
重力通りに、体が動かなくなった。
正確には――誰かが俺を空中で受け止めた。目を閉じている俺には、わからない。
「はぁっ……はぁっ……間に、合ったよ……神様……!」
この声は。しゃらん、と、鈴が鳴ったように高い、凛とした声は。
「妖夢……」
「よかった、ですよ……天君」
目を開けて、彼女の優しげな表情が、俺の心に傷を付ける。
この笑顔に見惚れ、惚れたのだと思うと。
この笑顔で、死のうとした俺を、出ていこうとした俺を、助けてくれたと思うと。
「何で……助けたんだよ……! 俺はもう、ここでも外の世界でも毛嫌いされるんだよ……! このまま死ねれば、どれだけ楽だったことか……!」
涙が自然に流れ、腕を目の上に乗せ、妖夢に見られないようにする。
せめて、最後まで弱い所を見せたくない。
妖夢に抱えられたまま、彼女が地面に着地。
俺も、彼女の腕の中から出て、地面に立つ。
そしてすぐに、下が地面なのも気にせずに、仰向けになる。
未だに腕を乗せていて、昼の太陽が眩しいかのようになっていた時。
「ほら、天君。そんな所に頭をつけては、汚れますよ?」
そう言って、妖夢は俺の頭を上げ、もう一度下げた。
が、俺の頭がついたのは、硬く、冷たい地面ではなく――
――柔らかい、少し温かい、妖夢の膝だった。
膝……枕……?
「妖夢……なに、して――」
「私を含めて、この幻想郷で貴方と関わった全員は、『
そう言って、彼女は俺の頭を撫で始めた。
優しく、優しく。細く小さい、他人よりも冷たい指と手。
だけれど、俺にとっては、これほど温かい、頼りたいものはなかった。
それに伴って、俺の流す涙の量も増える。
さらには、妖夢の『好き』。恋愛的な意味ではないけれど。
だからこそ、俺の心を揺らすのには、十分過ぎた。
「天君の力じゃない。他でもない、天君が。私は、天君の全部が好きです。努力を続けるところとか、優しいところとか、笑顔が眩しいところとかも」
俺の涙はさらに増え、頭を撫でてくれる手は、依然として優しいまま。
……いや、さらに優しくなっただろうか。
俺は、彼女の手を振り払ってしまったのだ。
きっと、悲しかっただろうに。人から見捨てられたら、誰だって悲しい。
俺が一番、知っていることだったのに……!
「でも、唯一ですが、嫌いなところもあります。それは、そうやって自分一人で抱えて、自分一人で頑張って、自分一人で泣くところです」
俺の涙と共に、嗚咽が止まらなくなる。
俺は、妖夢になんてことをしてしまったんだ……!
「いいじゃないですか、他人に頼っても。それは弱さじゃない。逆に皆が心配します。私が一番心配しているのには、自信がありますよ? ふふっ」
妖夢の優しく笑う声が聴こえる。
俺は、妖夢に、謝らないといけない……。
「妖夢……本当に、ごめん……俺は、なんてことをしたんだろうな……!」
「そうやって素直に謝るところも、私の好きな天君のいいところです。えらいえらい、なんて」
妖夢の手が、頬にも移動した。
頬を擦られた後、俺が流していた涙をすくい上げられた。
「泣いてもいいんですよ。少なくとも、私の前では。私も、嬉しいんですよ。私の前で泣いてくれることが。それだけ、私に心を許してくれていることが」
そうして、最後に。
俺は妖夢に体を起こされて、抱きしめられた。
「目一杯泣いてください。力に固執することはないんです。どんな悩みも外に出してください。……私が全部、受け止めるから」
「……妖夢ぅ! ぁぁぁああ!」
震える声で。弱々しい声で。
俺は声を上げて泣いた。今まで生きてきた中で、他人に見せた泣き顔は、一番ひどいものだったろう。
他人に見せた泣き声は、一番濡れていただろう。
そして、わかった。やっぱり俺は、どうしても妖夢が諦めきれない。好きなんだ。
――いや、
どんよりと淀んだ灰色の雲は一切なくなり、ただ快晴の蒼い
その陽光が照らしたものは、決して場所や空間だけにとどまることはなかった。
―*―*―*―*―*―*―
本当に良かった。
天君を助けるのも間に合ったし、思い切り泣いてくれるし。
間に合ったことに関しては、想いの強さが成せる技だったかな? とも思っている。
恥ずかしいけれど、何をどう言おうと、私は彼が大好き。
やっと、本当の意味で信頼してくれたんだ。
今までも信頼するとは言ってくれた。それも嬉しかった。
けれど、それは所詮口約束だった。でも。
今はこうやって、泣いてくれている。
私も泣きたい。嬉しさで、思い切り。
けれど、今泣くのは違うと思うんだ。
今は、笑顔で天君を受け止めるべきだと、そう思う。
ふと、依然に私と彼の胸元にかかっているペアネックレスが。
眩しい陽光を反射させて、精一杯の輝きを見せた。まるで、私達の『嬉しい』の気持ちのように。
無限にも続く蒼い
―*―*―*―*―*―*―
「……ありがとう。もう大丈夫だ」
「ええ。それは良かったです。もう、無理しないでくださいね?」
俺は妖夢に気付かされた。気付かせてくれた。
大切なことを、たくさん。
俺はもう、迷う必要も、一人で背負う必要もないんだ。
力に執着する必要もない。
――皆は、
そう思った瞬間。聞き覚えのある声が二人分、頭の中で響いた。
(……やっと、気付いたんだね、天)
――やっと気付いたかよ。遅すぎだ、俺。
妖夢と一緒に白玉楼へ飛んでいった。
気がつけば、すぐに着いていた。
向かう途中に聞いたのだが、幽々子もこのことを知っているらしい。
それどころか、妖夢を俺のところへ行かせるよう、感化したらしい。
廊下を歩いて、幽々子の部屋の前。
この部屋に緊張感を持って入るのは、もう何度目になるかわからない。
深呼吸の後に障子を開け、一人の亡霊の姿。
そして、その亡霊は、いつもとなんら変わらない笑顔で、こう言ったのだ。
「あら、おかえりなさい、二人共。私、お腹空いたわ♪」
「ふふっ……ええ、ただいま作ります」
「ははっ……了解、主様。作ってくるよ」
俺と妖夢は幽々子の部屋を後にして、台所へ向かう。
本当、幽々子のこういうところはありがたい。
何も気にしないで、あたかも何もなかったかのように接してくれる、寛大さと優しさが。
―*―*―*―*―*―*―
そこは、ただひたすらに暗かった。
私の部屋とは真逆。そして、目の前には、見慣れた影のような人物。
君が私を呼び出すなんて、珍しいこともあるもんだね、ソラ?
――まぁな。ちょっと世間話っつーか、俺のことでな。
ホント、手のかかる天だよね。あんなのはすぐに気づくべきなんだよ。そもそも間違えるべきじゃない。
――それには同意だ。全く、俺にはつくづく呆れる。なぁ、栞?
……ねぇソラ、丸くなった? 暴力的じゃなくなったねぇ。
――改心でもしたんじゃねぇの? 俺にも言われたよ。変わったな、って。
本当に変わってるのはどっちだ? って返してやれば良かったねぇ。
――違いない。にしても、栞もオレへの対応が、随分と甘いんじゃね~の?
天があんまし気にしなくなったし、大丈夫だと思ったんだよ。『信頼』してるんだよ? ほれほれ?
――それは馬鹿な俺にだけで十分だよ。……ただ、俺には信頼をつきこんでやってくれ。頼むぜ?
……まさか、ソラって――
――あぁ、そういうのいいよ。別にオレはどうでもいいだろ? ……それに関しては、俺には言うな。意味がなくなる。
……肯定と捉えるよ。わかった。言わないと約束する。……私は、天とソラ、二人を『信頼』するよ。
そう言って、私は『黒』から抜け出して、白の部屋に。
戻った後には、『黒』でこんな呟きが響いた。
――勝手にしろ。俺を『信頼』するにせよ、――
――オレを『信頼』するにせよ。
―*―*―*―*―*―*―
……どうして?
目の前には、神社が広がっている。見たこともない場所。
「……あっれれ~……ここ、どこ?」
ありがとうございました!
ビクンと震える妖夢(意味深)。
な、なんて卑猥なんだ! けしからん!
狼々「僕がもっと妖夢ちゃんをビクンビクンさせてあg(ピチューン
すみません。いや、ほんとに。
てか、膝枕を代わってほしいよ、天君。
最後の口調は、もしや……?
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