東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

ほんっと~に遅くなり、すいません!
まだまだ治りません。ここまでしつこい風邪は初めてです。
熱は引きましたが。(3月3日現在)

あと、次回で第4章終了します。
ですが、幻獣との戦いが終わるわけではありませんよ。

今回のタイトル……あっ(察し)。
まぁ、こうすることは最初から決めていたのですが。

では、本編どうぞ!


第42話 逆上

 まだ妖夢は戻ってこない。恐らくもうすぐで戻ってくるだろうが。

 

 今は、雷の技の練習中だ。新しいスペルカード。

 ようやく、ちゃんとした『弾幕の』スペルカードができたのだ。

 

 さて、結構前にだが、霊力と栞の能力を使うと、その能力に対応して霊力の色が変化することを栞から聞いた。

 今回は雷系統なので、黄色に輝くことになる。

 

 栞は未だにあの状態だが、能力や霊力に関しては使わせてくれる。

 ツンデレなのか? ……いや、ねぇな。俺にデレるなんてな。

 

「……天君。少し、お話があります」

「お、妖夢。戻って――」

 

 戻って来たか。そう言おうとして、自然と言葉が止まる。

 

 妖夢の顔が、違う。どういう風に違うかは――真剣味と怒りが入り混じったような。

 怒りの方は少なめだが、確かに存在しているだろう。

 

「――どうしたの。そんな顔して」

「……天君。今から私の言うことをよく聞いてください」

「お、おう……」

 

 いきなりどうしたのだろうか。妖夢が呼び出される前は、こんな感じじゃなかった。

 恐らく、というか確実に。幽々子が何か言ったのだろう。

 

 表情からして、かなり深刻な問題だとも思える。

 それも、俺に関連した。いや、俺が()()の可能性が高い。

 

 わざわざ俺に聞かれないようにして幽々子と会話し、この表情で妖夢が話しかけている。

 つまりは、そういうことだ。

 

「あのですね。天君は何故、そこまで修行に必死なのですか?」

 

 必死な理由。先程の質問に一応肯定しているので、嘘を吐くわけにもいかない。

 正直に。

 

「……強く、なるため。信頼されなくなるから」

「え、っと……話が見えません。強くなりたい。それはわかりました。ですが、何故信頼になるんですか?」

 

 あくまでも、淡々と述べていく。

 

「そのままだ。俺が弱いとダメなんだよ。ここに呼ばれた意味がない」

「……すみません、わからないです。とにかく私には、そうとは思わない、としか言えません」

 

 何故か聞きたいのがこっちになってきた。

 すぐにわかるだろうに。弱かったら、見捨てられる。

 ここに呼ばれたのは、幻獣に勝つため。頼られなくなる。

 

「あのな、幻獣に勝てないと、俺が頼れないだろ。わざわざ弱いやつを幻想郷(ここ)に残す必要もない」

「……それですね。はっきりと言わせてもらいますが……()()()()()()()

「あ……?」

 

 間違い? どこがだ。正論だろう。

 

「いや、だから、弱いと幻獣と戦えない。そしたら、皆は――」

「ですから、そうじゃないんです。根本から違うんですよ」

 

 根本が……? わからない。

 思案顔で考えていたら、妖夢が言う。

 

「あのですね……皆はそんなこと少しも考えていませんよ?」

 

 そんなわけがない。自分の中で即答した。

 霊夢も、魔理沙も、レミリアも、咲夜も、幽々子も、紫も。

 それこそ、妖夢や栞だって。

 

 何故か。それは――

 

「――皆、俺の力が良いと思ってるんだ。それがくすんじゃいけねぇだろ」

「い、いや、何を言って――」

「そのまんまさ。俺自身じゃなく、()()()()好きなんだよ。皆、皆、皆」

 

 わかったのだ。檮杌戦で。

 結局のところは、『俺の力こそが全てだったんだ』、と。

 

 ここの皆は優しい。何故か。

 

 

 

 ――幻想郷が危険だから。

 

 考えてもみろ。幻想郷に幻獣や、裏の黒幕三人組がいなかったら、俺はここに来ていないんだ。

 そうして、俺が呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――いや、『俺の力が』呼ばれた。

 

『力』、というよりも、『能力』の方が正しいだろうか?

 最初はまだ強くなかったし、能力は外の世界でも少し発現していたみたいだからな。

 

「あ、あの、ホントに何言って――」

「俺はそれでもいいよ、正直。贅沢は言わないさ。でも……求められてるものを、失くすわけにはいかない。もう嫌なんだよ。見捨てられるのはさぁ」

 

 後に、俺は自分でも考えられないことを言う。

 この言葉で止めておけばよかったのに。

 

 この言葉が、負の連鎖の始まりなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほんっと、妖夢はいいよな。強いからさぁ」

 

 一瞬、妖夢の目が見開かれる。

 

 今まで俺は、外で何を覚えたのかと言いたくなる。

 自分でもわかっているだろうに。いや、自分が一番わかっているだろうに。

 

 ――妖夢の能力は、妖夢の努力があってこそのものだと。

 

「わ、私は強くありません。実際未熟ですし、まだまだ修行中の身ですから」

「少なくとも、俺より強い。当然だ、期間が違うからな。だからこそ、俺は強くならないといけない。そうしないと、次の幻獣に勝てない。恐らく、檮杌よりも強いヤツが来るからな」

 

 だんだんと口数が増えていく。

 

 それは、妖夢にしっかりと伝えることだけでなく――

 

 

 

 ――『()()()()()()()()()()()()』目的の様に感じる。

 

「え、ええ。ですから、今頑張って修行して――」

「足りないんだよ、それじゃあ。皆が、俺が死んでからじゃ遅いんだよ。求められる以上のことをしないと、意味がない」

 

 そう、命に関して以外にも、何に対しても言える。終わってしまった後では、遅すぎるのだ。

 どれだけ嘆こうが、後悔しようが、泣き叫ぼうが、悔しがろうが。結果は変わらない。

 

 十分に安全マージンを取らなければならない。

 そのためには、『最低限』ではダメなのだ。できるだけ、理想の状態に近づける。

 

「だから協力があるんじゃないですか。何のために幻獣戦闘グループが組まれてると思ってるんですか?」

「ああ、そうだな。だけどさ、死の危険がある以上、不確定な未来のことは言ってられないんだよ。全ては今だ。自分の力を底上げすることが最善だ」

 

 極論だが、実際そうなのだ。例ならいくらでも、溢れかえる程にある。

 

 幻獣が予想以上に強かった、戦闘環境が悪かった、メンバーに何かしらの不都合があり、戦闘に参加できなかった、

 幻獣が霊力に強くなっていた、自分の技が全て効かない種類の幻獣だった等……挙げればきりがない。

 

 黒幕三人組に至っては、何もわかっていないのだ。

 即死技を持っていてもおかしくはない。なにせ、あれだけ強い幻獣を下につけるのだから。

 

「だからって、そんなに無理してもいけません。体調を崩しては、修行どころじゃ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあどうしろって言うんだよ!? あぁ!? さっきも言っただろ、起きた後じゃあ遅いんだよ!」

「ひゃっ……!」

 

 ここから、負の連鎖が加速していくことになる。

 

 俺の突然の怒号に、妖夢の肩が大きく震えた。

 

 俺が今まで、妖夢に怒号なんてあげたことがないし、こんな言葉遣いもしたことがない。

 

「俺のせいで皆の内、死人が出たらどうすんだよ!? 俺が頑張らなかったから、あの時修行しておけば、って後悔する分にはいい! それで死んだ奴が戻ってくるならいくらでもするさ! けどなぁ、死人は生き返らないから死人なんだよ!」

 

 一方的で、理不尽な怒りは。

 

 徐々に徐々に、形になっていく。

 

「で、ですから、それで倒れられるのも心配なんですよ。全部自分のせいにするのが間違いなんです」

 

 妖夢はそれでも、優しく言ってくれる。

 しかし、俺は歯止めがきかない。

 

「自分のせいにせずに死人が出るなら、俺は嫌だ!」

「誰のせいとかじゃないんですよ。……天君が一人で頑張らなくても大丈夫なんです。()()()()()()()()

 

 この言葉は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――俺にとって、()()()言葉だった。

 

「あぁ……? ……そうか、そうかよ、そうなんだな、わかったよ」

「え、っと……そら、くん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の()()()()()()ってことかよ。俺はいらないってか、ははっ……」

 

 皆がいるから大丈夫。()()()()()()()()

 ずっと信頼を渇望していた俺には、そう聞こえてしまった。

 

 ずっとずっと、そのために頑張ってきた。それこそ、檮杌戦よりも前から。

 渇望でもあり、信念とも呼べるそれが、否定されて崩されていった。

 

 音もたてずに、静かに崩れていった。それも、実にあっけなく。

 

 

 

 そうして俺は、間違ってこう認識してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――妖夢に、一番大切な人に()()()()()のだと。

 

 再び、最愛の人に捨てられたのだと。

 

 それに、この気持ちは……この恋は、かなうものじゃない。

 

 妖夢の目は限界まで見開かれて、その瞳はしきりに『黒』を映し出す。

 

「ぇ……いや、そうじゃ、そう、じゃ――」

「いいんだよ。もう。……俺はどっか行くからさ。今からでも、外の世界に帰るよ」

 

 そう言って、冥界を……白玉楼を、出ていこうとする。

 

 そうしようとした瞬間。腕を掴まれる。

 

「ぁ……! いか、ないで……!」

 

 妖夢の声が。確かに、そう聞こえた。『行かないで』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ここで戻っておけば、まだよかったものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は妖夢の手を――()()()()()

 

「……!」

 

 妖夢が鋭く息を吸い、声になっていない悲鳴が。

 けれど、俺にはそれでも。

 

 そのまま空を飛び、冥界を降りていく。

 

 

 

 俺は降りる。どこまでも、いつまでも。

 

 

 

 俺が見た雲の色は、いつの日かの真っ白な雲とは違い、灰色がかっていた。

 

 

 

 

 しばらく飛んで、地上から高度200m程度の地点で。

 

 

 もう、一切がどうでもよくなってきた。

 外の世界に戻っても、またあの生活が始まるだけ。

 

 ……なら、いっそのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――死んでしまえば、いいんじゃないか。

 

 

 

 ここからなら、確実に死ねる。

 

 

 

 ふっ、と全身から力を抜き、浮遊しなくなった。

 

 

 

 

 

 たちまち自由落下が始まり、落下速度がどんどんと加速していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 栞が何かを叫んでいる。けれど、それさえも頭に届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、地面はすぐそこに――――

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 あれほど幽々子様に言われたのに。

 自分でもわかってたのに。私はそんなつもりで言ったんじゃないのに。

 

 彼が一人で背負うつもりの重荷を、少しでも軽くしたい。

 一緒に、背負いたい。

 

 そう思って言ったのに。けれど、それは。

 

「俺の代わりがいるってことかよ。俺はいらないってか、ははっ……」

 

 彼は、乾いて、絶望に満ちた笑いと目をしていた。

 以前、私が彼の悲しい顔を見たくない、と言った。

 今まで数回、彼の悲しい顔を見て、胸が苦しくなった。

 

 けれど。今見ている彼の顔は、今まで見てきた中で一番、私の心を締め付けた。

 見ているだけで、涙が出てきそうだ。

 

「ぇ……いや、そうじゃ、そう、じゃ……」

 

 声までも震えている。

 今の私は、どんな顔をしているだろう。

 

「いいんだよ。もう。……俺はどっか行くからさ。今からでも、外の世界に帰るよ」

 

 この言葉を聞いた瞬間、嘘であってほしいと思った。

 

 外の世界に彼が帰ることは、永久の別れを意味する。

 

 彼と永遠に会えない。一年会えなかっただけでも辛かった。

 それがずっと続くなんてこと、考えたくもない。

 

 私に恋を教えてくれた彼。愛しい、かけがえのない彼。

 

「ぁ……! いか、ないで……!」

 

 依然として震えている声で、彼に縋るような思いで、彼の腕を掴み、制止する。

 

 ……けれど、私の思いと同時に、腕が振り払われた。

 

 ショックだった。私に振り向いてくれるどころか、必要ともされていないと思って。

 彼との楽しかった日々は何だったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……私が、期待してた、だけ……? 勘違い、してた……?

 

 

 

 

 

 

 彼はすぐに白玉楼から飛び立っていった。後ろさえも振り向いてくれない。

 

 

 

 私は、どうしようもなかった。

 足の力が抜けて、その場に座り込んだ。

 

 視界がかすみ、それが自分の流す涙のせいだとも気付かない。

 

 そしてすぐに、幽々子様がやってきた。

 

「……妖夢、一応聞くわ。どうしたの?」

 

 本当にどうしたのだろうか。私だって聞きたいくらいだ。

 

 今になって、自分の流している涙に気付き、こう言った。

 

「ゆゆ、こ、さま……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……天君に、嫌われ、ちゃいましたぁ……!」




ありがとうございました!

二人の勘違いが加速する……!

妖夢ちゃんが可哀想だろ! 何やってんだよ天は! これ書いてんの一体誰だよ!
……あ、私でした。

狼々「妖夢ちゃん、苦しかったね。代わりに僕g(殴

はい。妖夢ちゃんと結婚したい。妖夢ちゃんは可愛い。
異論は認めない。

新しく、オリジナル小説を書き始めました!
よければ見てください! なんという宣伝だろうか。

これからの活動報告は、Twitterで行います。大事な話や特別話は、こちらの活動報告にも書きますが。

ではでは!

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