東方魂恋録   作:狼々

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どうも、狼々です!

早速謝罪をば。
2月26日の投稿がストップしてしまい、すみませんでした。
風邪引いてました、はい。
書き溜めを作らなかった私が悪かったです。

今後の体調管理には十分気をつけます。

では、本編どうぞ!


第40話 強く、ならなくちゃ

妖夢が昼になる前に、昼食を作るために白玉楼へ帰っていった。

さて、再び暇。かといって、何かをしていい訳でもなし。

 

にしても、変態『さん』とは、中々可愛い言い方だ。

妖夢らしいというか、初々しい感じが何ともいえない。

 

(あ~、暇だな~)

(そだね。でも、もうそうでもないらしいよ?)

 

……は? 何言って――

 

その瞬間、部屋の扉が開いて、大多数の人間が押し寄せた。

大多数、と言っても、5人程度なのだが。

それに、最近見たばかりの顔。

つい二日前。檮杌撃破に至った時の、幻獣戦闘グループの皆だ。

 

「やっほ~い、天。遊びに来てやったぜ~?」

 

にやにやとしながら、皆より先に俺のところに来て言う。

いや、俺、命が危なかったんですが。遊びに来たって……

 

「ほら魔理沙。そういうこと言わない。天も大変なんだから」

 

霊夢が魔理沙に言う。

霊夢はちゃんとしてくれる。

 

「今日はお見舞いよ。取り敢えず、生きててなによりよ」

 

今度はレミリアが言う。

ホント、生きててよかったよ。死んでも幽々子が何とかしてくれるだろうが。

幻獣第一戦で殺られるのは避けられた訳だ。

 

「妖夢は大変だったのよ? 『いやぁ! 私を残して死なないで!』って泣き叫んでたんだ」

 

妹紅が、妖夢の声を真似して言う。

妖夢がそんな様子を見せていなかっただけに、驚く。

 

……俺自身、妖夢がそうなったら、どうなるかわからないが。

自分でも怖くなってしまう。どうなるのだろうか。

……いや、想像はしない方がいいか。そうならないことを願うためにも。

 

「そうだったか。皆、無事でよかったよ。遅くなったが、お疲れ様」

「何言ってんのよ。私たちは殆ど何もしてないじゃない。貴方がお疲れ様よ」

 

咲夜がそう言って、皆が同時に首を縦に振る。

いや、皆がいないと勝てなかったし……

 

「俺だけが戦ったんじゃないだろ? 皆の力あってだ。あの時の檮杌が動けなかったのがその証拠だ」

「全く、そういうところは謙虚じゃなくていいのよ。胸を張っていいのよ」

 

霊夢はそう言うが、俺は、あまり胸を張ることには慣れていない。

外の世界では、胸を張ることなんてできなかったしね。

 

「いや、でも……」

「でも も何もないの。天が一番貢献したことに変わりはないだ」

「そうだんだぜ! それに、人里の皆からは『ああやって』呼ばれてるんだしな!」

 

ああやって……?

少なくとも、天または新藤の、名前じゃない。

となると、異名とか通り名、通称なのか……?

呼ばれる側の俺としては、とても気になるところだ。

 

「どうやって呼ばれてるんだ? 不名誉だったりは……?」

「安心しなさい。不名誉なことは全くないわ。それだけに、最初は人里の皆から聞いた方がいいわよ」

 

レミリアはそう言っているが、気になってしょうがない。

一見名誉溢れる呼び名でも、俺にとって不名誉な名前の可能性もある。

 

例えば――戦いの『天才』、だとか。まぁ、そんな安直でもなさそうだが。

 

「わかったよ。で、何か他に用はあるのか?」

「いや、特にはないのよ。生存確認と、お見舞いだけ。あんまり長居する訳にもいかないし、帰りましょう、皆」

 

霊夢の呼びかけで、皆が部屋からぞろぞろと出始める。

それぞれが挨拶をしてくれて、俺はそれに応えてゆく。

 

楽しかったし、嬉しかった。

俺のために、皆がわざわざ来てくれたと考えると。

やっぱり、幻想郷は外の世界よりもいい。

 

 

 

そして、三日目の朝を迎えた。

暇。この言葉を最近使いすぎだと思われる。が、それほど暇なのだ。

にしても、皆お見舞いに来てくれて嬉しかったな~

 

 

昼食を食べて。

意外にここの昼食も美味しい。

病院食とかじゃなくてよかった。まずい時が多いからね。完全な偏見と失礼ではあるが。

 

刺激物と濃い味付け・歯ごたえのあるものを避けて

配送にも時間がかかって温かいものは冷えて、冷たいものはぬるくなるかららしいが。

でも、出してくれることには、感謝の気持ちを示したいものだ。

食べたことないけど。

 

その時。コンコン、とノックが響いた。

ん……? ノックをするのは、妖夢とか鈴仙くらいだが、慣れたくらいになくなった。

昨日の皆はノックをしてなかったが。

病室にはノックが基本なのに、それがない状況に慣れつつある自分がいる。

かといって、ノックが必要なことをしているわけでもないが。

 

「どうぞ」

 

短く声をかけ、入室を促す。

静かに扉が開いて見えた相手は――勇儀と萃香だった。

 

「勇儀に萃香! 久しぶり!」

「おう、久しいね! 会えて嬉しいよ!」

「私もね! 私としてはいつでも会えたけど、勇儀と一緒に来たかったんだよ」

 

勇儀と萃香とは、宴会で会って以来だ。

お酒に耐えられなかった思い出が甦る。が。

 

「……なぁ、あの時俺が飲んだお酒のアルコール度数、いくつだった?」

「「……あ」」

 

二人が声を揃えて。

 

「ご、ごめんな? つい渡しちゃったんだよ。次はちゃんと低いの渡すからさ?」

「そ、そうそう」

 

さすがは鬼、といったところか。

嘘を吐こうとしない。こんな些細なことでも誠実でいようとする。

その精神は、大きな宝だとも思える。それだけ貴重なものだと思うから。

 

「いや、いいんだよ。俺も普通のお酒なら飲めることがわかったんだ。今度……一緒に飲もうな?」

「ああ、約束したからね!」

 

勇儀の眩しい笑顔。やはり姐さんみたいな人だ。

優しげなところが魅力。

 

「そうだね! 退院してすぐでも……なんなら、今でもいいんだよ?」

 

萃香が伊吹瓢を見せて、はにかむ。

この無邪気な笑いも、彼女の魅力の一つであろう。

 

「いや、今は……な? で、何か用か?」

「お見舞いだよ。天の活躍ぶりは、地底にもしっかり届いているよ」

 

な、なんか恥ずかしいな……

有名人みたいな感じだ。

 

「幻獣相手に頑張ったんだってね。お疲れ様。それと、おめでとう」

「本当によくやったね。私は嬉しいよ」

 

今度は萃香と勇儀は労いの言葉をかけてくれる。

 

「ありがとう、二人共。そう言われると、頑張った甲斐があったよ」

「なに、頑張った奴には当然さ」

「ホント、死ななくてよかったよ」

 

皆は外の世界の人間とは違って、俺を求めてくれる。

俺は、それがたまらなく嬉しい。信頼されてるんだ、って感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……じゃあ、信頼され続けるには、どうするべきだろうか。

 

「俺も死ななくてよかったよ。二人とお酒が飲めるんだからね。もう一年くらい経っちゃったけど、必ず地底には行くよ」

「ああ! こいしとさとりにも会わせたいね」

 

『こいし』、『さとり』は確か、防衛グループに呼ばれていた気がする。

となると、その二人も地底に住んでる結構強い人なのか。

例の如く、人の可能性は限りなく低いが。

 

「じゃ、私達はもう出るよ。早く元気になれよ?」

「ああ。ありがとう、二人共」

 

じゃあな、と去っていく二人を見送って、再び部屋が静かになる。

けれど、今の俺は暇じゃあない。

ずっと、こんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、俺が求められている意味は何なのだろうか。

皆は、本当に俺と仲良くしたいから、友好的になっているのだろうか。

 

 

……違う、かもしれない。

 

じゃあ、何で俺と交流をしているのだろうか。

 

それは当然、幻獣と戦うための戦力を、増やした状態で維持させるため。

俺が幻想郷(ここ)に呼ばれた理由を考えればわかる。

 

じゃあ、俺はどうして信頼されているんだ。どういう意味の『信頼』なのだろうか。

何に対しての『信頼』なのか。

 

 

 

 

――幻獣と、戦うこと。

 

じゃあ、皆に信頼され続けるには。

 

――強くなって、幻獣との戦いに勝っていくこと。

 

それは、ここにいる意味と同じ。

だったら、俺が信頼されているのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺自身じゃなく、()()()なんだ。

 

 

 

 

ようやく、俺がするべきことが見えた。やっと見つけた。

俺がやるべきこと。それは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ただ、力を手に入れること。

 

 

そこまで考えていると、部屋の扉が開いた。

けれど、それに見向きもしないで、思考を続ける。

当然、誰が入ったのかは、どうでもよかった。

 

 

俺は、強くならなくちゃいけない。

皆から、見放されていってしまう。

 

見放されないためにも、強くなる。

強くなって、見放されないように。

 

信頼されているのは、俺じゃない。俺の力なんだ。

もうこの際、俺自身に信頼を寄せてくれなくても構わない。

俺の一部でも、信頼してくれれば――

 

「――らくん! ――そらくん! ――天君!」

「あ……?」

 

ふと、現実に引き戻された。

引き戻したのは、妖夢だった。

 

「ああ、来てたか、妖夢」

「その、どうしましたか? 目が虚ろになってましたよ? 何か悩んでいるんですか?」

 

悩んでいる、か。

悩みなんかじゃない。嘘も吐くことはないはずだ。

 

「いや、何でも? それより、また来てくれたのか。俺は嬉しいよ」

「貴方に、会いたいんですよ……言わせないでください」

 

少し顔を紅潮させて、目を逸らしながら言った。

 

 

 

 

 

 

なら、俺のこの恋はどうなるのだろうか。

 

 

 

 

 

絶対に、叶わないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

あぁ、そうなのか。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、一方的な片思いを続けていくことになるのか。

 

「……天君?」

「あ……あ、ああ、どうした?」

「……何かあったら、私に相談してくださいね?」

 

柔らかな笑みで、悲しげな感じの少し入った笑顔。

しかし、いつもと変わらない優しげな笑顔。

 

「何でもないよ。心配してくれて、ありがとうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその笑顔が、いつもよりも眩しく見えた。

 

 

話しているのも、少し億劫な感じだった。

いや、億劫、と言うよりも、上の空みたいな感じだった。

心ここにあらず、という表現がぴったりなくらいに。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

天君の様子がおかしかった。

いつもはあんなに無愛想な感じじゃない。

 

いつも笑顔が似合う、素敵な素敵な青年。

恋をしている私の目線だから、少し過大評価かもしれないけれど、私自身はそうは思わない。

けれど、今日は殆ど笑顔を見せていなかった。見せても、乾いた笑顔のみだった。

 

天君が嘘を吐いていたのは明白だった。けれど、彼はそれでも隠そうとする。

このことが意味するのは、二つの可能性。

 

一つは、私が原因であること。一つは、相談できるほど信頼されていないこと。

 

後者は、あってほしくないし、可能性も低いだろう。

でも、前者ならまだわからない。けれど、私は身に覚えがない。

 

じゃあ、別のこと……? 私が気付いていない、第三の可能性……?

 

 

そんなことを考えて見る彼の乾いた笑顔は、私の胸を締め付ける。

 

「……じゃあ、私はそろそろ行きます。明日、帰ってくるんですよね?」

「あ……ああ、そうだ。明日から帰って修行だな」

 

……なんとなく。なんとなくだが、わかった……気がする。

 

「はい。じゃあ、また明日」

「ああ、また明日な」

 

そう言葉を交わして、部屋を出る。

 

平坦な廊下が、どこまでも長く感じた。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

(ねぇ、どうしたの天? いつもは大好きな妖夢ちゃんにあんな態度で接しないよね?)

(……そうだな。何でだろうな)

 

妖夢が帰った後、栞に問い詰められていた。

その声には少し、怒気があるような気もする。

 

(……何かあった? 私が見ている中では、特に何もなさそうだけど……)

(いや何も? 見てる通り、何もない。ま、明日からまた修行なんだ。頑張らなきゃな)

(ねぇ天。私そろそろ怒るよ……?)

 

何に怒るというのだろうか。

 

(いや、何でだよ。本当に何もないんだって)

(……そ。なら、もういいよ)

 

最後に発した栞の声は、どこまでも冷たかった。

だけど、そんなことまで気にしていられない。

 

 

 

 

強く、ならないと。

力を、手に入れないと。

 

 

 

 

その日は過ぎて、次の日。

 

「よっしゃ、退院だ!」

「はいはい、おめでと~。またここに来ないことね」

「ぜ、善処します……」

「ついこの前もそう言ってた覚えがあるんですが……」

 

今、部屋には俺と永琳、鈴仙がいる。

今日は退院日だ。今から永遠亭を発って、白玉楼に戻るところだ。

 

「じゃ、じゃあ、ありがとう。もう行くよ」

「ええ、気を付けて。次は解剖もするかもね?」

「お気をつけて。今回は刀を持ち出そうとはしませんでしたね?」

 

う……やはりバレていたか。あれでごまかせるとも到底思っておらず、ごまかせたらラッキー程度だったが。

にしても、解剖は本格的にまずい。俺が死んじゃう。劇薬も同じくだ。

 

二人に見送られながら飛び立って、竹林を抜ける。

目指すは、白玉楼。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

彼が飛んでいった後。

 

「……さて、もっと治癒能力の強い薬品、作らないとねぇ……」

「そうですね~、多分また来るでしょうからね。それも遠くない内に」

 

やっぱりねぇ~、死なないといいけど。

ま、彼のことだから、そう簡単には死なないでしょうけど。

 

「それで師匠、天さんの様子、少しおかしくなかったですか?」

「あ、やっぱりそう思う? 余裕がない感じがしてたわよね~……」

 

私だけでなく、鈴仙もそう思っていたようだ。

余裕がない、焦っている、必死になっている感じが見て取れた。

 

……何もないことはないんでしょうけど、もう少し休みなさいよ。

 

心の中で彼にそう告げて、永遠亭の中に戻る。

鈴仙も、私にパタパタとついてくる。

 

 

春だというのに、吹いていく風は、悲しく冷たいものだった。

 

―*―*―*―*―*―*―

 

しばらく飛び続けて、白玉楼が見えた。

見えた瞬間、スピードを大きく上げて向かう。

 

十数秒後、白玉楼の玄関に着いた。

自分の飛行速度に若干の驚きを覚えながらも、部屋へ。

 

今は昼前だということもあり、やはり台所から料理の音が聞こえてくる。

俺が白玉楼から離れて、帰ってきた時はいつもこの音が聞こえてくる。

その度に、『あぁ、帰ってきたんだな』って感じる。

 

前々回、前回のこともあり、先に幽々子の部屋へ向かう。

……どんな言葉を言われるのか、少し怖くなってきた。

 

 

 

幽々子の部屋の前。一瞬深呼吸をして、障子を開ける。

 

「ただいま、ゆゆ――」

「何してんのよ!? お腹に穴開いたんですって!? 心配かけないでよ!」

 

あ、やっぱり怒っていらっしゃる。

でも、少し涙も見える気がする。

 

「ご、ごめん。で、でも『生きて帰ってこい』っていうのは守れたし……」

「じゃあ死にかけだったらいいの? ……どれだけ、心配したと思うの?」

 

幽々子の悲しそうな表情。

 

「……本当にごめん。もうこのままじゃいないからさ。頑張って強くなるよ」

「……え? わ、私はそんなこと――」

「じゃあ、妖夢のところに行ってくるよ」

 

幽々子の言葉を途中で遮って、台所へ。

 

 

 

俺のいない幽々子の部屋で。

一人、呟く声が。当然、俺には届かない。

 

 

 

「……何か、あったのね」




ありがとうございました!

完全に文章が支離滅裂ですね。すみません。
早く治したいものです。

進学先の課題にも追われていて、中々厳しいものがあります。
じゃあ何でこんな作品書いてんだ、って話ですが。
すみません……! 楽しくて、たまらないんです……!

ではでは!

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